女騎士に調教師
西欧歴1046年 4月28日(日)
コヨーテ(逢魔梓あるいは木立天)
ゲスブラザーズが、私が楯にしているテーブルを回りこんで、挟撃しようとしている。
早々に切り札をを使わざるを得ない。
私が纏っているコートの生地が札状に解け、素早く折曲がっていき、それらはクマバチの形を変わっていく。
「ひえ、またあの蜂でゲス!」
クマバチがゲスブラザーズ達の目を塞ぐ。乱射されるゲスガン。振り回されるさすまた。『ハバキ』を二体にぶっ放す。
「ゲスゥ!?」
「んでえ!?」
「うあっ!」
クソッ! 痛み分けだ! ゲスブラザーズ達は黙らせた。そして、こちらも流れ弾を食らってしまった。右腕が燃え上がる。なんて威力だ。腕の皮肉を貫通し、出血している。コートを熊蜂に代えてしまってのが裏目に出てしまった、私としたことが! 悲鳴をかみ殺し、私はバックル式ベルトを外して、止血
帯代わりに腕に巻く。
「ははは……。
流石はコヨーテ! ここまでやるとは!」
「……Wo-wo-wo! な~に気取ってルんだ?」
啖呵は切ったものの、痛みで集中力がかき消されていく。どんな気張ったって、つまりはこのザマ。人間の体は。『毒溜みの巫子』の体は。
そして転生者大池の右腕は、チートという本性を見せ始める。皮膚から突き破ってきた触手が回りのテーブルと椅子、ガラス辺を砕いては寄せ集めていく。ガラクタの吹き溜まりの中心となり、右腕は大きな『蓑』を成していく。
角材の脚、骨組の胴、板の鬣、グラスの底の目、ガラスの牙、金具の爪。
それは、ガラクタ細工の獅子。千切れた右腕を内包し、転生者大池鈍一郎を守護する。
「そう! これこそ、我がチートの真骨頂だよコヨーテ君!」
「チートの愚ノ骨頂っテ言っタのか?」
ライオンを模した家具は、遠雷のような呻きを上げ、透き通った牙を剥き、私に躍り掛かってきた。私は後ろに跳んで避けようとする。
鉄の爪が、左脚を引き裂く。体勢を崩して、床に伏せる。
「うあッ!?」
クソッ! 女騎士の逆転劇から、お次はケダモノの調教かよ!




