ゲスブラザーズ
西欧歴1046年 4月28日(日)
コヨーテ(逢魔梓あるいは木立天)
「何カ訊けよ? マスコミが居ナいと目立たなクて寂しイか?」
ノンビリしてられないと言いつつ、くっちゃべって、童子様と合流する時間を稼ぐ。流石に一人じゃ手に余る。無意識異神の肉で作られた転生体は、何故だか電撃にはさほど抵抗力がない。自画自賛ではなく、コヨーテと紫隠童子は、転生者狩りとしては最高戦力。けど一人で片手落ち。バディアクションのお約束。
「き、君はなぜ転生者狩りをしているのかな?」
「何故? 分からないのカ?」
「なんだって? 一体どういうことだ?」
大池は机に座っている私に近づいてくる。私はラウンジの出入り口側に、大池は窓ガラス側にいる。心は身構えるけど、体は敢えて弛緩させる。
男ってホント鈍感だよな。いちいちハッキリ言ってやらないと分からない。言ったら言ったでヘソ曲げるし。
腰かけていたテーブルが傾き、ひっくり返される。大池が痺れを切らして『ちゃぶ台返し』をしたらしい。
机を跳び、中空で対超自然用霊威射出筒『ハバキ』を抜き、回転式弾倉型シリンダーを回転。シリンダー内では、触媒である私の血液が撹拌され、霊力を抽出される。
トリッガーを引く、圧縮された霊力が弾丸となって大池へと射出される。転生者相手には決定打にはならないけど、牽制としては十二分。
大池鈍一郎は二メートルほど吹っ飛び、窓ガラスに激突。大池の臭いケツで窓ガラスは粉砕されたけど、大池はガラスが割れる前の反動で床側に跳ね返り、うつ伏せに倒れた。なんなら、そのまま地獄まで落ちればよかったのに。
そのまま毒溜みの巫子の腕から、『毒溜みの剃刀』を出し、うつ伏せの大池に踊りかかる。私はハリウッド映画の悪党みたいに、主人公に逆転されるまで、余裕こいてダラダラ能書き垂れたりとかしないんだよ。時間が無いってさっき言ったろ。
しかし、大池はカーペットの床を転げまわって一撃を回避する。
「がは……! そうか、君も荒んだ社会のフラクタル、というワケか。
ならば、戦わざるを得ないな!」
テンパってテーブルをひっくり返しておいて、何カッコつけたこと抜かしてんだ?
「手伝ってくれたまえ! ゲスブラザーズ!」
大池のヤロー、よりにもよって最低最悪な賞金稼ぎコンビを呼びやがった。童子様の情報には居なかった。たぶん、駄目押しに雇ったんだ。
ラウンジの正面入り口の扉が開き、二人組――いや、二体組が現れる。
一人――いや、一体は大柄で肌は虹色、豚のような頭に、太鼓腹のオーク。
「そう、ミーはデスブラザーズの黒光り兄鬼でゲス!」
もう一体は、小柄で緑色の肌、禿頭に鷲鼻、耳の端は尖っているゴブリン。
「んでぇ! オイラは、デスブラザーズの垢鬼なんでえ!」
「出たナ!、ゲスブラザーズ!」
「違うゲス! ゲスブラザーズでゲス!
じゃなかった、デスブラザーズでゲス!」
ゲシュタルト崩壊して、デスブラザーズとゲスブラザーズを上手く見分けられなくなってきた。
「コヨーテ! テメエこのヤロー! 毎度オイラ達をバカにしやがってえ!
今日こそ、その気障な頭捩じ切って、賞金ゲットして、焼き肉風俗カジノ三昧なんでえ!」
ざけんな。人の首にかかった賞金を三ヶ月くらいで使い切ってしまいそうなヤツらに、この首はやれない。
「役者はそろったようだね!」
「ハンッ、観客は誰も居ナいぞ!」
転生者大池は、その加勢に勢いがついたのか、その体内から大量の愛素が、噴出される。
この気配、『チート』を使う気だ。
「私のチートをご覧に入れよう!
チート、『ジーク』!」
そして、大池鈍一郎の右腕が千切れ、湿った音を立てて床に落ちた。




