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賊・逢魔倶楽部(完結済み)  作者: オルタ
二話「明るい復讐計画」
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乳酸特盛汗だく

 西欧歴1046年 4月28日(日)

 コヨーテ(逢魔梓あるいは木立天)



 ああああ! 太ももが! 太ももが! 乳酸に! 乳酸に!


 非常階段50階昇りとか、もう二度とやらねえ! ……でも、意外に階段って昇る分には筋肉痛なりづらいよね。マスメディア連中や警備員で辺りに『目』が増える前に、あらかじめ非常階段に昇っている。ブルースホテルまでは、私達の『仲間』が運んでくれた。彼のことも、いずれ紹介するよ。童子様のリサーチ通り、監視カメラは無かった。


 あくまで大池は元首相ってことか、警察の数は少ない。マスコミや警察のヘリなんて飛んでいたら、諦めてお家に帰って、夕飯の献立を考えないといけないところだった。つまり、今回の大池のの特番は、完全なヤラセ。スカイラウンジにコヨーテがお出ましになるというに、わざわざヘリまで飛ばすメリットはない。番組制作費はプロデューサーがピンハネしてることが多い。少ない予算で(視聴率)が取れるなら、それに越したことはない。



 ブルースホテルはスカイラウンジの階層で待機中。五月に近いとはいえ、夕刻の風が沁みる。くしゃみをこらえるのに必死だった。都市がライトアップされつつある。けれど、今は夜景を楽しんでいる暇はない。



 停電予定時刻まであとわずか。童子様の情報通り、スカイラウンジには偽コヨーテがやってきたらしい。俄かにラウンジがどよめている。


 直後の停電。そして爆竹の乾いた破裂音。カーテンは閉め切られているから、夜景の光を灯りにすることはできない。


 悲鳴、ざわめき、騒動。


 何せ極悪人のコヨーテとの対談だ。誰もが相応のプレッシャーを感じているだろう。


 そう、爆竹すら銃火器の発砲音を連想させてしまうほどに。マズルフラッシュが無い時点でフェイクなんだけど、パニックと大衆の移ろいやすさが、理性をかなぐり捨てる。


 サイコホラーの定番よろしく、非常階段が付けられた壁――蝶番が有る側に隠れる。ドアが空いたら、扉と壁に板挟みになって、死角に紛れるポジション。懐かしいな。妹のみずめを驚かせようとしてココに隠れていたことがある。でもアイツにゃバレてた。敵わないね。


 さておき、段取り通り扉は開かれ、報道陣と偽コヨーテと胡乱な賞金稼ぎ達が雪崩れこんでくる。動画配信サイトで捕り物を中継してるはっさん辺りか。慌ててドミノ倒しになって、非常階段から落っこちるなよ~そこまで面倒見きれないからな~。


 ガスマスクの中に仕込んだボイスチェンジャーをオン。『毒溜みの巫子』の左腕の擬態を解く。対超自然用霊威射出筒『ハバキ』に、弾丸となる私の血液入りのシリンダーを突っ込む。各種手投げ弾ぬかりなし。オムツも履いてきた。万端。


 さあ、転生者狩りの時間だ。


 大池鈍一郎。よもやさっきの人だかりに紛れて逃げていないよな?

 

 ゆらりスカイラウンジの内部に入る。


 スカイラウンジの中は、報道関係者用の椅子が敷かれている。ラウンジ中央には、主催者である大池と、偽コヨーテが席につくためのテーブルと椅子が備え付けられていた。テーブルの上には、飲料用のグラスと、ピッチャー、資料なんかが置かれている。緊迫したコンテンツを提供するハズの場だったんだろうけど、部屋の端にあるバーラウンジが場違いというか、マヌケに見えた。


 その薄暗い会場に、大池鈍一郎がいた。


「コヨーテ、まさか本当に来るとは!?」


「こんバんは、大池鈍一郎。

 お招き預カリ、光栄デす」


 コートの裾を摘まみ上げ、カーテシー――西洋婦人の挨拶風のお辞儀。


 私は大池鈍一郎と偽コヨーテが座る予定だったテーブルに腰かけ、ガスマスクをズラし、用意されていた水入りグラスを傾けた。流石に少し喉が渇いた。唇をつけないよう、口に注ぐように飲む。手袋つけてるから、指紋も残らない。


 いくらなんでも、この騒ぎで警備員は勿論、警察だって駆けつけるだろう。


 ノンビリはしていられない。


「では、ゆルり歓談、と洒落こもうカ?」

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