黒ギャルメモタルフォーゼ
西欧歴1046年 4月8日
肇ことのは
区立鶴声高等学校――私達が通う高校の玄関先で、東雲先輩と私は別れた。のぼせたようにうわの空。魂が頭から染み出ているみたい。そんな心持ちで慣れない校舎内を進もうとすると、いきなり後ろから肩を叩かれた。
びっくりして振り向くと、そこには小麦色の肌に、ショートカットの女子生徒がニヤニヤしている。一足早くきた初夏のように陽気を帯びた女の子。さっそく少し着崩した制服の学年章を見るに同じ年代。すっぴんで、天真爛漫さが際立っている。
あれ、どこかで見たような……。
「ことのん! 私だよ私!」
「その声……え、もしかしてリンダ?」
リンダ――林田幸子は「イメージ変わったっしょ?」とウインクした。
「なんで? どうしたのそのカッコ?」
中学生までのリンダはというと、今どき珍しい黒ギャルファッション。髪を金色に染めるのは勿論、着崩した、というか、適用に体にひっかけたような着こなしの服からブラジャーやショーツがチラチラ見えて、スカートの丈は短くて太ももをでんと出し、たわんだダクトみたいなルーズソックスを履く。
でも、今は髪の色を戻してカットし、今は肌の色も大分『抜けて』、ケバケバしさは無くなっていた。相変わらずスカートの丈は短いけど――ああ、周りを見る限り私以外みんなそうか。私は、怖い人に絡まれるのが怖いから、説明書みたいな学生証の指定通り、制服は着ている。
「いや~、リンダ達もいよいよ高校生じゃん? でも悲しいかな、あと三年で成人じゃん? 学校生活楽しみつつ、しっかりしなきゃ、と思ってさ!」
リンダは、オーバーに私の両肩を叩いた。
リンダ―林田幸子は、中学の頃から活発で「幸子って名前、なんかダサいから」と、なんとも親泣かせな理由で、苗字の林田をりんだ――リンダを自称するような子。自己主張が結構強いけど、悪い人じゃないよ。私の事を気にかけてくれる、ドン臭い私とは違って、気が回るし、優しい友達。
……それでも、彼女の急な変貌ぶりに、私は口を半開きにしてしまっていた。
「なんだよ~、なに寝ぼけてんだよ~」
リンダは私の肩を掴んでグラグラ首を左右に揺らした。
「いや、寝ぼけて無いけど」
今朝から色々なことが起こりすぎて、私の脳は処理落ち中。
「この、爽やかなウチの良さを分かってないな?」
「……リンダ、だれか好きな人が出来たの?」
驚いた時の猫のような顔をするリンダ。私もつい彼女の目を見る。
「まっさか! ハッハッハ!
将来のことも考えてこの恰好になった、ってさっき言ったじゃん!
ことのん、やっぱまだ寝ぼけてんでしょ! ダメだよ、夜更かしてアニメ見ちゃ!」
リンダは、ばしばしと私の背中をたたいた。




