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賊・逢魔倶楽部(完結済み)  作者: オルタ
二話「明るい復讐計画」
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大池鈍一郎

大池鈍一郎


 西欧歴1046年 4月22日(月)

 木立天(逢魔梓、あるいはコヨーテ)



「本日のゲストは、第七六代総理大臣であり、今は転生者でもある大池鈍一郎さんに、わざわざ海外からお越しいただいております」


「どうも、大池鈍一郎です」


 スタジオから湧き上がる拍手。時折りやらせの口笛。


 転生者になった大池は、例外にもれず若返っていた。つぶらともいえる細い線で描かれた目はそのままに、全体の輪郭はより細くなっていた。短い髪を、後ろに撫でつけている。まあ、もともと顔立ちはしょう油顔で整っているので、そこまで大きく変わった様子はないけれど、その声の張りは、確かな精力を感じる。


「大池鈍一郎元総理、貴方も転生者となった今、コヨーテの悪行について、どう思われますか?」


「いやあ! 元とはいえ、未だに総理と呼ばれますのは、なにやらこそばゆいですな」


 大池の朗らかな言葉に、スタジオから笑い声が響く。画面の向こうから漂う、チグハグした和やかさ。コメントショーのユルさが気持ち悪い。このコメンテーター達、カグツチ中がゾンビパニックになろうが、爆撃されようが、暢気ノンキにくっちゃべそう。


「コヨーテ、という犯罪者が世間を賑わせておりますが、私はですね、コヨーテも社会の被害者であると思います」


「社会の被害者、ですか?」


 お前《大池鈍一郎》らの被害者なんだよ。こっちは。アホんだら。


 こいつが神詰パワープラントの安全装置を解除する、そんなバカげた法案を成立させなければ、あの事故は起こらなかった。少なくとも、暴走は先延ばしに出来た。


「この国も随分と所得による格差が開いてしまいました。まあ正直総理大臣のボーナスも、正直良かったのでね。だから私も転生者になれたという現実があるのですが。ハハハ。

 私が思うに、コヨーテはこの酷薄な資本主義経済の淀みが生み出した、影だと思うのです」


 何をいけしゃあしゃあと。この美国で貧富の差が広がったのは、大池が政権を執っていた時、外資の規制緩和と、|新自由主主義《政府ではなく資本家主体の経済体制》に切り替えたからだろ。


「神詰パワープラント事故以降、この国には元気が無くなってしまった。あのような事故が二度と起こらないよう、私は反神詰派を掲げておりますし、総理大臣を辞した今でも、私なりにこの国に報いたいと思っております」


 なんだそりゃ、みそぎのつもり? まあ、コイツの倅も、未来の総理候補として与党が推している。つまり、そういうことだろう。反神詰派も、息子の為の票田にしてやろう、そういう算段だろう。そして、政治家はいつか裏切る。


「だから、少なくとも私は転生者として対立ではなく、和睦を求めたいと思っております。


 コヨーテの自首勧告と、減刑の為に弁護側にも立つ予定です。


 海外でも、死刑制度を反対する声は強まっていますが、現在コヨーテは発見次第『排除』の許可が降りてますから。コヨーテ側にしても、相当追い込まれていると思います。彼、あるいは彼女も疲れていると思うんですよ。そういった追い込みが、コヨーテに自暴自棄に追いこんで、更なる転生者狩りへと駆り立てる要因になっているハズです」


 スプリンクラーのように放射されつづける自信と、無塵無菌室から出てきたばかりのような大池の存在感。コイツの本性を知らなきゃ、そりゃあ誰だって彼を信頼するだろう。けれどペテン師というのは、古今東西、誠実な人間の真似をする。だから、どんな人間であれ、そいつの意図を見なければいけない。


「確かに、自業自得とはいえ、そういった面はあるかもしれません」


 目眩がするほどの、苛立ち。認知的不協和。


 あ~、煙草吸いて。珈琲を一息に呷る。


「そこで、です。

 私は、コヨーテと対談の場を設けようと思っております。

 四月二八日の午後六時。

 場所は、殻之内からのうちのブルースホテルの最上階で、お待ちしております。

 コヨーテさん、この番組をもし観ていたら、是非お会いしましょう」


 私は珈琲を吹き出した。

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