覚醒都市
西欧歴1046年 4月8日
肇ことのは
武士屋駅に停まったら、東雲先輩は痴漢を駅員さんに引き渡した。それまでの行程を、私は呆然と見ていた。転生者の東雲桜真先輩に助けられた。
少女漫画みたい。
私の代わりに、勇気を肩代わりしてくれた人。
東雲桜真。
そんな彼の姿を、ずっと目で追っていた。
「あの、ちょっと?」
一段落ついて、コチラに近づいてくる彼を、見上げてる。
「おい!?」
「は、はい!」
彼の大きな声でようやく、視界を覆っていた意識が頭の方に戻ってきた。
「ごめんなさい、ちょっと私――。
私のことなのに、何もかもやってくれて……」
「いや、あんなことがあったばかりだしな。仕方ない。
それに、その様子じゃ……」
確かに、上手く平静を保てていないけれど……。
「どうする? 今日は学校休むか? このまま行くなら、一緒に学校まで送っていくけど」
「あ、いえ、行きます……」
早退して、お父さんとお母さんを心配させたくなかった――本心を言ってしまえば、あんな事に遇った後なのに、東雲くんと一緒に学校へ行けることに、強く惹かれていた。今まで転生者という人種に、芸能人やプロスポーツ選手のような、縁遠いものを感じていたから……下心、だよね。
「分かった。じゃあ、送っていこう」
ドギマギしながら、私達は登校した。
私達の高校は、通学路であるコンコード街を通っていく。コンコード街の上空では、朝早くから鳥居型宅配ドローンが高層ビルに荷物を懸架していき、頭上を交差していく。
通勤時間の陰鬱にも思える静寂を、商業、公用問わないアナウンスが、掻き乱す。
こんな朝早くから、赤土財閥が主催している献血カーが停まっている。流石は赤土財閥が関わったボランティアで、献血をすれば、商品券を貰えて、ココアまでご馳走してもらえる。気風の良さは、流石は赤土財閥。
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ホログラムAIアイドルのミクニーちゃんが、地面に設置された投射装置からデフォルメされた女体のシルエットを召喚させ、甘ったるい声で明るいニュースを読み上げる。
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監視カメラ内蔵の『見守り地蔵』が市内のいたるところに設置され、対テロ対策はバッチリ。風車型風力発電機が春風に揺れてはカラコロ音を立てて、コンデンサにエネルギーを送り込んでいた。
止まらないせわしなさ。美国の文化発信地の中央。コンコード街。
あとがき
サブタイトルは、新居昭乃の「覚醒都市」より。




