冷えたタイと、フラトリサイド
逢魔梓(木立天、あるいはコヨーテ)
みずめは目を覚まさない。
神詰パワープラント事故から、一度も目を覚まさない。
心臓は鼓動を絶やさず。脳波もある。
でも、目覚めない。吉夢に微笑むことも、悪夢にうなされることもない。
あえて。あえて、誰か知っているなら教えて欲しい。
今の彼女は、生きているの?
沈黙ほど、惑うものはない。まして、生あるものの寡黙は。
みずめは、今は何を感じ、何を思っているのだろう?
幸せ?
それとも、指一本自由にできない身体の棺に魂を横たえて、それを強いている私を恨んでいる? 異次元の神と呼ばれているモノの手に、その生を弄われたまま。
それとも――
頭がこんがらがってくる。
みずめに会うたび、こうやって彼女の首を、そっと掴んでいる。
いっそ、このほっそりとした首を絞めてやることこそが、彼女にとって一番の救済なんじゃないか――そう逡巡しているまにまに、彼女の強く温かい首筋に、熱い脈が駆けめぐっていくのを、冷えて脂でベタつく、モタつく私の手のひらが――。
そこからいつも、私は慌てて手を離す。
変わらない。何も変わらない。
現実も悪夢も、それらは延々と、どこかしら壊れていきながら、騙し騙しで続いていく。
私は備え付けのパイプ椅子に腰かけた。重々しさに、軋みを上げる。
息をつく。
そうだ、みずめと、話をしよう。
また、話をしよう。
「みずめ。
この前さ、めっちゃ面白い子に会ってきたよ。
しかも、その子に助けられちゃってさ。
いや、本当命拾いしたよ。危ないところだった。
ほんと、ダメな姉ちゃんだよね――」
私は、みずめよりも三〇秒早く生まれた。
そしてみずめは、私よりも十年長く生きていたかのように、それは出来た妹だった。
双子って、どうもどちらかが劣性になるらしい。それが私。
比べられたことは数え知れない、何も感じなかったワケでもない。
それでも、私が倒錯しているとしても、大事な家族だから。




