スーパーお捌きタイム
西欧歴1046年 4月15日
東雲 桜真
人間、女としては凄まじい速度の突き。その切先をなんとか刃留在の刀で止める。しかし、愛素を吸い取ってしまう『毒溜みの巫子』の腕の刃は、俺の刃留在を飴細工のように溶かし、断ってしまう。折れた剣を投げ捨て、新たな刃留在の刀を二本造りだす。
幸い、奴のブレードの間合いは狭い。その刃渡りは、せいぜい包丁ぐらいしかない。刃留在の刀の間合いにはそう簡単には入れない。あの豆鬼もだ。読み通り、コヨーテの攻撃は止み、間合いを取り始める。
子鬼が動きだす。俺が刃留在を奮う。コイツの電撃を食らうのは厄介だ。
「両手に花ダな~! 東雲きュ~~ん!」
コヨーテも子鬼の動きに呼応して、攻撃を仕掛ける。子鬼は剣で切るには小さすぎて厄介、コヨーテの毒溜みの腕は、得物をあっという間に消耗させてしまい、距離を取ると銃撃による牽制で体勢を崩される。徹底的に対転生者戦に特化した装備と戦い。
この二人の連携を捌き切れず、とうとうコヨーテの一撃が、俺の胸を貫く。
「あ……」
全身を巡る愛素が、毒溜みの腕の刃に吸い取られ、痛覚遮断が強制的に解除される。
それは死の呼び水。
目を剥くほどの激痛。
冷酷なコヨーテは、なんの躊躇もなく突き刺さったままの刃を捻り、真横に俺の胸を引き裂かれる。肺も俺の核も、パックリと割かれてしまった。
寒い。体が熱を失い始めている。急激な愛素の喪失、意識が遠のいていく。
死にたくない。
まだ、死にたくない!
こんな、まるでただの『人間』みたいに死んでしまうなんて!
……。
…………。
………………。
まだ、生きている?
真っ二つに割れた俺の芯。
その欠片と欠片の断面から伸びた触手が、手と手を取り合い。
ザワザワと。体の中を、頭の中で、俄かに内なる魔手が暴れ出す。
意識の中にまで入り込み、蠕動しながら撫でまわす。
傷口から無数の神のまみえる手の奔流。
溢れてはめくれていく。
俺が覆いかぶされていく。
全てが投げ出される。
全てが膨れ上がる。
全てが変えられてしまう。
体も、心も。
あらゆる絶頂よりも万能的で、虚無的な感覚。
『無意識異神』より賜った『法悦』。
それは転生者の、更なる転生。
新たな姿。
更なる力。
コヨーテと、あの虫鬼があっけに取られてこちらを見ている。
不信心者が神を見上げた時も、こんなサマだったのか。
悔い改めよ。
死者は甦る。
最後の審判だ。




