表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賊・逢魔倶楽部(完結済み)  作者: オルタ
一話 オウマクラブ
29/488

スーパーお捌きタイム

 西欧歴1046年 4月15日

 東雲 桜真


 人間、女としては凄まじい速度の突き。その切先をなんとか刃留在ばるざいの刀で止める。しかし、愛素を吸い取ってしまう『毒溜みの巫子』の腕の刃は、俺の刃留在を飴細工のように溶かし、断ってしまう。折れた剣を投げ捨て、新たな刃留在の刀を二本造りだす。


 幸い、奴のブレードの間合いは狭い。その刃渡りは、せいぜい包丁ぐらいしかない。刃留在の刀の間合いにはそう簡単には入れない。あの豆鬼もだ。読み通り、コヨーテの攻撃は止み、間合いを取り始める。


 子鬼が動きだす。俺が刃留在を奮う。コイツの電撃を食らうのは厄介だ。


「両手に花ダな~! 東雲きュ~~ん!」


 コヨーテも子鬼の動きに呼応して、攻撃を仕掛ける。子鬼は剣で切るには小さすぎて厄介、コヨーテの毒溜みの腕は、得物をあっという間に消耗させてしまい、距離を取ると銃撃による牽制で体勢を崩される。徹底的に対転生者戦に特化した装備と戦い。


 この二人の連携を捌き切れず、とうとうコヨーテの一撃が、俺の胸を貫く。


「あ……」


 全身を巡る愛素が、毒溜みの腕の刃に吸い取られ、痛覚遮断が強制的に解除される。


 それは死の呼び水。


 目を剥くほどの激痛。


 冷酷なコヨーテは、なんの躊躇もなく突き刺さったままの刃を捻り、真横に俺の胸を引き裂かれる。肺も俺の核も、パックリと割かれてしまった。


 寒い。体が熱を失い始めている。急激な愛素マナの喪失、意識が遠のいていく。


 死にたくない。


 まだ、死にたくない!


 こんな、まるでただの『人間』みたいに死んでしまうなんて!


 ……。

 …………。

 ………………。


 まだ、生きている?


 真っ二つに割れた俺の芯。


 その欠片と欠片の断面から伸びた触手が、手と手を取り合い。

 ザワザワと。体の中を、頭の中で、俄かに内なる魔手が暴れ出す。

 意識の中にまで入り込み、蠕動ぜんどうしながら撫でまわす。

 傷口から無数の神のまみえる手の奔流。

 溢れてはめくれていく。

 俺が覆いかぶされていく。

 全てが投げ出される。

 全てが膨れ上がる。

 全てが変えられてしまう。

 体も、心も。

 あらゆる絶頂よりも万能的で、虚無的な感覚。

 『無意識異神』より賜った『法悦(ホーエツ)』。

 それは転生者の、更なる転生。

 新たな姿。

 更なる力。


 コヨーテと、あの虫鬼があっけに取られてこちらを見ている。


 不信心者が神を見上げた時も、こんなサマだったのか。


 悔い改めよ。

 死者は甦る。

 最後の審判だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ