ジ・暗転
西欧歴1046年 4月15日
肇 ことのは
カグツチは武士屋前、スクランブル交差点。自動車道が循環すれば人が停まり、人が循環すれば自動車が停まる。そのシグナルは止まることなく。人の流れも淀みがない。迷うということを許されないような、完成されたマスゲーム。クイズ番組のように、例え迷っていても、必ず答えを――ベターザンベストを常に急かされているような。横断歩道の白線と、その間のアスファルト。
放課後、扇子マートフォンのSNSを見直す。これで四度目。
さっき、東雲先輩から「また、放課後に遊びに行かないか」とお誘いが来た。
正直、以前ほどトキメキはない。輝いていた彼の、その光以上に大きな影を見てしまったような気がして。
この前、襲ってきた偽コヨーテが言っていたことが引っかかっていたから。
――お嬢さん! コイツ等に近寄るな!
――コイツ等は、俺の――俺の妹を――
転生者狩り達の意図が、分からなくなってくる。彼らは、転生者を狙う反乱分子と一般的には言われているし、現に街中であんな武装をしていること自体、やっぱりまともじゃない。
でも、もし東雲先輩が、あの偽コヨーテの妹さんに、酷いことをしていたのだとしたら……。
そして、リンダの警告が反芻されていく。
――あんまり、転生者と関わらない方が良いと思う。
それでも、東雲先輩は私を庇ってくれてた。
微かな疑問は「あれは転生者狩りのブラフだった」という憶測と「東雲先輩が、そんなことをする訳がない」に上塗りされていく。
でも、あの時の先輩は恐かった……。
でも、彼は私を庇って――。
でも――
でも――
堂々巡りの末、トグルはオンに。
なんとなく、リンダや木立先輩には相談しなかった。自分で決めたことに、また迷いが
考えすぎで少しクラクラしながら、待ち合わせ場所に移動する。
コンコード街。この国のうら若い文化の発信地と言われている。けれど、建物は大分くたびれていて、そこに一生懸命スタイリッシュを重ねて、どうにか瑞々しさを保とうとしていた。沢山の行き交う人達。彼らより沢山の土砂降りみたいな足音。あゆたの笑い声、那由多の溜め息。
「お待たせ」
涼やかな声が、多すぎる騒音を一掃する。東雲先輩?
あれ、なんだろう、いつもと、声の雰囲気が雰囲気が少し違う……?
声のする方を見れば、東雲先輩がやってきた。柔らかそうな髪、白い肌。彫像のように整った顔だち。ほっそりとしているけど、引き締まっているのが身のこなしでわかる。
「昨日の今日で呼び出してゴメンな」
あれ、東雲先輩の声――ううん、東雲先輩の体から、何か違う音が聞こえる?
不思議に思いながら、私は被りを振った。
「い、いえ! 全然大丈夫でひゅ?」
噛んじゃった……恥ずかしい。先輩も苦笑していた。
「迎えの車を呼んであるんだ」




