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 草原地帯で勢いよくそう叫び、麹町先生は右手を掲げた。


「…………?」


 いかにも変身しそうな流れだったのだが、何も起こらない。

 周囲の草草が風で揺れるだけだった。


「や、やだっ、ちょっと……」


 麹町先生も予想外だったのだろう。照れながら携帯を取り出し、どこかに電話をしはじめる。


「……もしもし? コッコ、ちょっと何も起きないんだけど」


 どうやら電話の相手はコココさんのようだ。


「掛け声が違う? ……あっ、本当だわ……」


 気を取り直して。


「さあ、恐怖に震えるがいい、勇者どもっ♪」

「な、何をするつもりだアインシュタインッ!」


 いや二回目だから分かるだろ。

 変身だよ、変身。


「――メタモルフォーゼ・トランスフォーメーションッ!」


 掲げた右手から放射された黒い光。

 白衣が闇に染まり、先生のナイスバディの肉体から複数の突起物が突き出す。

 同時に身体全体も肥大化していき、奇怪な姿へと変貌した。


「うわっ……何だよ、これ」

「あははっ、どうもー♪」


 毛の生えた前肢で俺達に挨拶をするそれは数秒前まで麹町先生だったもの。

 しかし、今では全長五メートルはある巨大な蜘蛛の化け物以外の何物でもなかった。

 

「なっ……お、お前は」


 メメメの目が見開く。


「逃げようったってそうはいかないわよ。私の大事なお人形さん?」

「私のお人形さん?」

「勇者っ、こいつだ」

「こいつ?」

「私を人形にした敵、パペットスパイダー」

「パペットスパイダーか……」


 黒々と鈍く光る本体、不気味に光る紫色の眼。

 VRリアリティだと分かっていなければ、おしっこちびる君になるに違いない、圧倒的な存在感。


「あなたと私は運命の赤い糸で結ばれているの。ほら、早く諦めてこっちに来なさい」

「イヤッ、私はお前の人形なんかじゃないっ! 勇者っ!」

「はいはい、要はこいつを倒せばゲームクリアって訳だな」


 メメメはこくりと頷く。


「……こいつが吐き出す糸に気を付けて。もし触れてしまったら―ー」

「シャアッ!」


 パペットスパイダー略してパぺスパの口が糸を吐いた。

 ホースから勢いよく飛び出す水のように一直線に俺達に向かってくる。


「言ってるそばからかよっ!」

 

 物凄い速度で糸は向かってきたが、パぺスパとの距離が開いていたのが幸いし、難なく右に回避。

 しかし、糸は途中で軌道を変え、俺達の方へと――


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