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「620円になりますーっ。ありがとうございましたー」


 ガコンッと後部ドアが自動で閉まり、タクシーが走り去っていく。


「ふぅ、何とか目的地に辿り着いたなぁ」


 大変だったぜ、と汗を拭く仕草をする俺を、メメメのジト目が見ているが、そんなことは気にしない。

 メメメと手を繋いでいる姿を、他の生徒に見られるより全然マシです。


「……勇者がタクシー使うっておかしいだろ」


 つぶやくように愚痴を言うメメメ。


「次からはタクシー禁止だからな!」

「分かった分かった。もう使いません」


 別に使う必要ないしね。

 とりあえず学校周辺のエリアから離れられたわけだし。

 こんな大通りから外れた住宅街だったら、知り合いに見られる心配もない。


「で、これは誰の家なんだ?」

「さあ? お姉ちゃ……女神様はここに行けとしか」

「お前が設定を忘れるなよ。グダグダになるから」

「もう十分グダグダだよっ! このタクシー勇者! ワンメーター勇者め!」

「はいはい……じゃ、とりあえず呼び鈴押すぞー」


 ピンポーン。

 

「はーいっ」


 玄関を小走りする足音、そして扉が開いた。


「来たわね」

「えっ、先生?」


 出迎えたのは、なんと保健室の麹町由夏先生だった。


「先生……何やってるんですか。まだ勤務時間なんじゃ」

「コッコに頼まれたから仮病で早退したの、エヘッ♪」

「エヘッ、じゃねえ……」


 保健室の先生は替わりがきかないのに、部活中にケガした奴いたらどうするんでしょうか。


「それにしても、凄いっすね、その恰好」

「えっ、そうかな。家ではいつもこうだけど」

「そうなんですか。へー」


 きっと実際の姿は違うのだろう。

 でも、VRグラス越しに見る麹町先生の姿は恐ろしく異常だった。

 白衣姿なのは見慣れてるからまだいいとして、白いひげ生えているし白髪だし、相対性理論でも発見しそうな見た目だった。


「あっ、忘れてた。ええと……ちょっと待っててね」


 麹町先生が何かを思い出したように部屋へと戻っていく。


「おい、メメメ。あの姿はちょっとかわいそうじゃないか?」

「別にわざとじゃないもん。キャラクターに合わせて自動で見た目が変わるように設定してるだけだし」

「ということは、あれは博士キャラか。ということはお前の呪いの解き方を知っているのかもしれないな」

「おおっ、さすが勇者」


「ごめーん、待たせたね」


 アインシュタイン麹町が小走りで帰って来る。手には用紙の束と、大きなカギを持っている」


「じゃっ、行こっか♪」

「えっ、行くってどこに?」

「ええとね」


 麹町先生は持っていた紙を目を通す。


「……勇者よ、よく来たな……分かっている。ハーフエルフに掛けられた呪いを解いて欲しいんじゃろ、と」


 うわーいかにもその紙に書いてあるセリフを読んでますって棒読み。


「だが生憎、材料が足りないのじゃ。悪いが私と一緒に魔の山に来てくれんか? そこに生えている『呪われた木』の実が必要なのじゃ」

「呪われた木……嫌な名前だな」

「行ってくれるか?」

「勇者、行ってくれる?」

「はいはい、行きます行きます」


「いいえ」の選択肢があるわけでもないのでノータイムで即答する。

 最初からその場所を教えてくれればよタクシーで一発だったのにな。

 

「さすが勇者じゃー。では天才発明家であるワシの最高傑作の一つ、『TOHU号』に乗せてやろう」

「TOHU号……?」

「これじゃよ」


 麹町先生は車のキーをくるりと回し、ぺろりと舌を出した。



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