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3日目-3

ブウウウウウ、ブウウウウウ。

会社から支給されているスマホの震え着信を知らせる。

すみませんと軽く謝ってからスマホを確認すると電話の相手は細川さんだった。

「細川さん、風邪大丈夫なんですか?」

俺の電話の相手が細川さんだと分かった2人がこちらを注目してくる。

「そんなことより、太田が死んだって本当か?」

「本当です。鈴木さんの部屋のドアノブで首をつっていたそうです。」

「そんな…。」

「警察署で昨日のことを説明しているんですが、細川さんの体調が許すなら刑事さんがお話したいみたいなんですが。」

あまりにチラチラ見てくるので空気を読んで細川さんと話せるか確認する。俺だってある程度は空気の読める社会人なのだ。

「話せるよ。大丈夫だ。一ノ瀬君ばかりに頼りっぱなしでは申し訳ないからね。」

電話をスピーカーにしますね。と細川さんに確認をとり細川さんとの会話が2人にも聞こえるように机の真ん中に置く。

「八木だ。体調悪いところすまない。少し話を聞きたい。」

「森といいます。もし話している最中に体調が悪くなったら遠慮なく言ってください。」

「細川です。流石にそちらに行くことはできないけど話すことは大丈夫です。お気遣いありがとうございます。鼻つまってるので聞きとりにくかったら言って下さい。」

簡単に自己紹介をして森刑事がメモを見ながら昨日のことを確認していく。

「昨日昼過ぎに鈴木さんの家に機材を設置しに行かれて16時ごろ設置が終わり鈴木さんをビジネスホテルまで送られたそうですが、それからのお話をお聞きしたいのですが。」

「そうですね、ビジネスホテルに行ってチェックインをしてからから鈴木さんとは分かれました。

それから体調が悪かったので病院で熱を測ったら38度の熱があったので会社に連絡してそのまま家に帰って寝てました。」

「確認のために聞くが、昨日の23時から3時ごろまで何をしていた?」

八木刑事のいきなりな質問に細川さんが戸惑った感じがしたのであわてて説明をする。

「太田さんの死亡推定時間がその時間なんです。俺も聞かれました。」

「ああ、そういうことですか。

近くのコンビニにスポーツ飲料と冷えピタを買いに行きました。時間は詳しく覚えていないんですが24時ごろだったと思います。

病院から帰る時に簡単に食料は買い込んだんですが、この2つを買い忘れてしまって。せっかくコンビニ来たならと思って他にもいろいろ買いましたけど。家を空けたのは20分ぐらいだと思います。」

「また変な時間に買い物に行ったな。どうせなら朝行けばいいものを。」

「家帰ってすぐ寝てしまって目が覚めたのが夜だったんですよ。1人暮らしなんで熱で動けなくなると困るから動けるうちにと思ってコンビニに行ったんです。」

「へぇ。それはそうと昨日太田さんと言い合いしてたらしいじゃないですか。コンビニ行くって言いながら太田さんを殺しに行ったんじゃないんですか?」

「あれは言い合いではなかったって言ったじゃないですか!」

意地悪く言う八木刑事に俺は慌てて言うが細川さんに気にしないでいいよと言われてしまう。

「社内ではあれぐらい普通のことですよ。太田が難癖つけるのはいつものことでしたし、ほかの人とも言い合い…もっと酷いときは怒鳴りあいしてましたよ、太田は。

いつもは聞き流してましたけど、さすがに体調悪くてイラだってたんですよね。」

「その苛立ちが積もり積もって殺したってことはないのか。」

「ないですよ。そんなに疑うんならアパート近くのコンビニの防犯カメラを調べてください。マスクした僕が買い物してる姿が映ってると思いますよ。

それに太田が鈴木さんの家にいるのを知ってるのは僕の会社の人なら全員知ってるんでその人たちも調べた方がいいんじゃないんですか?太田とみんな言い合いしてましたから。」

「やめてください、八木さん。犯人は山田春香だって言ってるじゃないですか。」

どんどんヒートアップする言い合いだったが、森刑事の思わぬ発言に緊迫した空気が固まる。

「山田春香ってまさか?」

困惑する細川さんに森刑事がなぜか自慢げに説明する。

「そうです、太田さんと細川さんの部下だった山田春香さんですよ。

一ノ瀬さんが鈴木さんが撮った動画の幽霊は山田さんではないかと相談されてますし、設置したカメラに山田、俺が悪かった。だから許してくれ。やめてくれ、殺さないでくれ。って音声が残ってます。

それに死亡推定時間に山田さんに似た人を見たという情報もあるんですよ!だから犯人は山田さんに間違いないんです!八木刑事、細川さんは犯人じゃないですよ。」

幽霊犯人説を自慢げに唱える森刑事に緊迫した空気が粉々に砕かれ八木刑事が申し訳なさそうに口を開く。

「すまん、言いがかりだった。気をつける。」

「すみません、僕も熱くなりすぎました。」

「山田春香について聞きたいんだが覚えているか?」

「あの子は本当にいい子でした。物覚えも早いし、素直で教えがいのある可愛い後輩でした。うちの会社は労働時間も長くてブラックなのに愚痴も言わないし。幼いころ両親が離婚して女手ひとつで育ててくれたお母さんに恩返しするんだって言ってた山田さんがまさか自殺するだなんて…。」

「どうして自殺したか知っているか?」

「仕事でミスをして…それが会社に大きな損害を与えるぐらい大変なミスで山田さんがクビにしても解決できないぐらい酷いものでの話は聞いてます。」

「部下だったんだよな?なんでそんな他人事なんだ?」

「その時出張に行っていて何があったのか見てないんですよ。後で太田に聞いても詳しく教えてくれませんでしたし。調べてみても何も分からないんです。」

「わかった。言いにくいことを答えてくれて、ありがとう。」

「そういえば鈴木さんはここにいないんですか?」

鈴木さんの声がしないことを細川さんは不思議に思ったらしい。電話での会話だから見えないし分からなかったのだろう。

「鈴木さんは体調を崩されて病院にいらっしゃいます。1人暮らしで家に帰っても看病できる人がいないので今日だけ病院に入院されるみたいですよ。」

森刑事がサラリと答える。入院って聞いてないぞ。さっき下に行ったときに聞いたのだろうか。

聞きたいことは一通り終わったのだろう。八木刑事と森刑事が顔を見合わせ頷きあう。

「長いこと話込んでしまいましたが体調は大丈夫ですか?お聞きしたいことも聞けましたし…でも、お聞きしたいことがあったら連絡してしまうかもしれませんが、ゆっくり休んでください。ご協力ありがとうございます。」

森刑事が丁寧にお礼をいい電話を終了する。

「一ノ瀬さんもありがとうございました。細川さんにも言いましたがまたお聞きしたいことがあったら連絡すると思いますが、お付き合いしていただけると助かります。あと、事件のことで何か思い出したら連絡ください。」

八木刑事と森刑事と連絡先を交換し、お礼を言われながら警察署を後にした。




会社に戻ると俺の報告に心配してくれたようでボス達が待ち構えていた。

ソファーにテーブルが置かれ簡単な衝立で仕切られた簡単な来客用スペースに連れていかれ、刑事さんたちに説明したようにボスにも昨日からの一連の流れを説明した。

「そうか、一ノ瀬、お前は大丈夫なのか?」

「第一発見者になってしまった鈴木さんは体調崩して入院していますけど、俺は大丈夫です。

言い忘れていたんですが、あの動画みてから2日連続で金縛りにあってるんですが、その金縛りの最中に女の人の声が聞こえるんですよ。」

「は?」

ボス達の視線に耐え切れず必死に問題がないことをアピールする。

「すみません、俺も初めてのことでてっきり寝ぼけてたとか聞き間違えかと思ってたんですよ。

流石に2日連続で聞こえたなら聞き間違えじゃないなって思いまして。日吉も昨日の時点でとりあえず様子見だなって言ってたんで大丈夫です。

それでですね、あの動画を日吉に視てもらいたいんですが、動画日吉に送ってもいいですか?」

「あの先生なら変なことに使わないし送ってもいいぞ。」

ボスの許可をとり日吉に今日のことを簡単に文章にまとめて動画と一緒に送る。

ボスの日吉に対する信頼はどこから来ているのか不思議に思うが、一度心霊現象のことで日吉のお世話になったからその時になにか信頼できるようなことがあったんだろう。

日吉は忙しいといっていたから返事が来るのがいつになるかわからないけどこの動画で何かわかるかもしれない。




昨日の金縛りでとめてっていってたのはこの殺人事件のことなのか?

布団の中でゴロゴロしながら考える。

俺が考えたって解決するわけないのにいろいろ考えてしまう。

目撃証言とか動機とかいろいろ揃ってるけど、犯人は亡くなった山田春香さんだなんてありえないと思いたいし。

亡くなった人が生きてる人間を殺せるなんて考えたくないよなぁ。

金縛りの女の人はあの子をとめてって言ってたけどあの子って誰だ?優しそうな男の人のことか?なぜか細川さんだと思ったけど、もし細川さんだと仮定して、細川さんをとめて欲しいってことなんだろうか?

まさか、細川さんが太田さんを殺した犯人だからとめてほしいなんてことはないだろうな?

今日も金縛り来るんだろうなぁなんて思いながら今日も浅い眠りについた。



また来たのか。今日こそは寝ると気合いを入れて早めに寝てたのにと金縛りがきた俺は動けず、寝たままの状態で内心ため息をはいた。

3日連続となると慣れたものだ。

いや、慣れたくはないが。どうせあの女の人なんだろうなぁ、3日連続ですね、今日はどんなご用件ですか?寝たいんで来なくていいですけど。なんて投げやりに思う。

すると昨日と同じように頭の中にスライドショーのように写真が流れ始める。

ちょっと前に流行ったSNSピクシィのログイン画面かぁ。友達のブログとかミニゲームとかいろいろあったなぁ。

映像が変わったと思ったら今度はID入力の絵に切り替わる。

IDはharuharu

ハルハルって誰だ?日吉も名前はたしか義晴だからハルではあるけど違うだろうなぁ。まさか山田春香のハルとか?なんて考えているとまた絵が変わる。

次はパスワード入力の画面らしい。

パスワードは03180721

昨日と同じ優しい雰囲気男の人の絵が思い浮かぶ。

顔はわからないのに細川さんだと思う。

そして、昨日と同じで止めないといけない気がする。

-あの子を止めて-

また、女の人の声だ。まさか細川さんが太田さんを殺した犯人だから止めろってことか?まさかなぁ。わからないことだらけだ。

わからない、なんなんだと考えていると金縛りが急に終わった。

どうして写真に撮ったような絵が頭の中に浮かぶだろうか。

このまま寝てしまったら忘れてしまうので、枕元においてあるスマホを手探りで見つけて金縛りの最中に見たIDパスワードとメモっておく。

ついでに時間をみたら2時半か。今日もきちんと寝れなかったけど明日は休みだから思う存分寝てやるなんて思いながら浅い眠りについた。

3日目終了です。やっと事件が起きました。

4日目で事件解決する予定です。

あともう少しお付き合いいただけると嬉しいです。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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