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少女弓士、冒険者ギルドへ向かう

本日更新二回目です

 そして、テオの予想通り。

 何の問題も無く一行はフォルスの街の門へと到着していた。

 街、という単語からも想像の出来ない程大きな街だが、それはフォルスの街の経済力を同時に示していた。

 経済力のある街には自然と商人も集まり、それを狙って盗賊も集まる。

 自然と護衛として冒険者も行き交うようになり、フォルスの街の冒険者ギルドは大きくなり続けた。

 次第に冒険者の街と呼ばれるようになったフォルスは、今ではそれ自体が一大産業となっている。


「感謝しますわ。今の手持ちでお礼をしても良いのですけれど……命を助けていただいた対価としては、安すぎますわね」

「い、いえ、そんな……。私なんて、何も出来てませんし」

「道具を使うのも実力のうちですわ……あ、良い考えがありますわ」


 道具というのは自分の事なんだろうなあ、とテオは苦笑する。魔動鎧といったものに対する扱いは、普通はこんなものなのだろう。


「クロスさんは、冒険者ですわよね。ですから、父に頼んでロイダール家からクロスさんに優先的に依頼を出す事に致しますわ」


 優先的に依頼を出す。

 それは通常、有名な冒険者に商人などが本人を指名して依頼を出すことだ。

 危険な依頼も多いが、難易度の割には報酬の多い仕事も多かったりと、出す側にも受ける側にもメリットが多いため、豪商が優先依頼を出す場合は、実質的なお抱えにしたいという意思表示でもある。


「え、え。でも、そんな……」

「まずは一つ。後程ギルドのほうへ依頼を出すようにお願いしておきますわ」


 成程、とテオは心の中で手を叩く。

 ロイダール家というのがどんな家なのかは分からないが、どうやらクロスを測っているようだ。

 お礼などと言っているが、恐らくはある程度の難易度をもった依頼になることだろう。

 だが、まともそうだ……とテオは考える。その依頼とやらは、クロスの今後の為になるかもしれない。


「では、ごきげんよう」


 言いたいことだけを言って去っていくヨノに手を振りながら、テオは溜息をつく。

 どちらにせよ、厄介ごとが一つ増えたのは確かだと言えるだろう。


「で、クロスちゃん。この後はどうするんだい?」

「えっと……とりあえず冒険者ギルド、行きましょうか」


 確かに、それしかないだろう。テオは頷くと、クロスの後について歩き出す。


「で、クロスちゃん。冒険者ギルドってなんだい?」

「へ? えーっと……ですね。なんて言ったらいいんでしょうか」


 冒険者ギルド。

 クロスの説明によると、冒険者への情報提供や仲間募集、依頼の仲介などを行う組織であるらしい。

 各町にあるが連携をとっているわけではなく、当然街ごとに規模も異なる。

 ぶっちゃけた話で言えば、冒険者と名乗った者が冒険者であるようだ。


「適当だなあ……」

「あ、あはは……。でも、ギルドに登録すれば情報交換や仲間の募集も円滑に進むんですよ?」


 その言葉を聞いて、テオはクロスの顔を覗き込む。


「……本当に?」

「え、えっと……ほら、優秀な人に良い情報も仲間も優先的に集まりますから……」

「世知辛いねえ」


 うなだれるクロスの肩を、テオはポンと叩く。

 こうして並ぶと、大柄なテオと比べてクロスは小さく見える。

 でも、そこが好みなんだよなあ……などと考えていると、テオは自分達を見つめる視線に気付いた。


「なんか見られてるねえ、俺達」

「え? そ、そういえば視線を感じるような……」


 それは殺気といった物騒なものではなく、単純に好奇の視線。

 それもクロスにというよりは、テオに注がれている。


「……俺がイケメンすぎるからかな」

「そ、そうなんでしょうか……?」


「そうとも。分かる人には分かるのさ……クロスちゃん、もっと俺に惚れていいんだよ?」


 そう言ってはみたものの、そうでない事はテオにもクロスにも分かっている。

 ヨノを助けた時に言っていた言葉を信じるとすれば、テオは魔動鎧としては相当な高級品であるらしい。

 そんなものが街中を歩いているのだから、好奇の視線で見られるのも仕方ないといったところだろう。


「あ、ほら。着きましたよ。あそこです」


 クロスがパタパタと手を振って指し示す先には、三階建ての大きな石造りの建物が鎮座している。

 絶え間ない人の出入りと、時折聞こえてくる下品な笑い声。

 建物の豪華さと比べると、あまり良い雰囲気の場所とは言えそうに無い。

 笑いの種類からすると、この街に来る途中で出会った盗賊連中と同じであるようにすらテオには思える。

 建物自体は立派だが、建物が立派だから中にいる人間も立派かといえばそうでもないだろう。


「あのさー、クロスちゃん」

「はい?」

「まさか、あの三階建のがそうだったりしないよね?」

「え? えーと……その建物であってますよ?」


 一縷の望みをかけてテオはクロスに問いかけてみるが、クロスから帰ってきたのは疑問符付きの反応だ。


「そ、そっかー。立派な建物だねえ」

「あ、はい。そうですよね。この街でも結構大きいほうですから目立ちますよね」


 あはは、と言って笑うクロスとは逆に、テオは嫌な予感しかしない。

 何故なら、先程まで楽しそうにしていたクロスが……ギルドの建物が見えた途端に、一瞬動きが止まったのを見たからだ。

 今も隠しているつもりのようだが、早鐘のように動いている鼓動がテオに隠しきれるはずも無い。

 ……よく分からないがクロスに緊張、あるいは覚悟を強いるような何かがあるのだろう。

 テオは、そう確信していた。

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