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4、専属メイドが付きました

フィーわたしは勇者様が謁見の間に入ったのを見送ったあと、メイド長に呼ばれていたのを思い出してすぐにメイド待機室に向かいました。


え、顔を真っ赤にして座り込んでいたんじゃなかったのかって?そそそそんなわけないじゃないですか。


って、わたしは誰に言い訳しているんでしょう。


それはおいといて。


メイド待機室に入ると、そこにはメイド長と、同じメイドの仲間たちがいました。いつもなら椅子に座ってお菓子を食べたりみんなとおしゃべりしている光景が目にとびこんでくるのですが、今日はわたしの入ってきた扉を囲むようにメイド長を中心に整列していました。


え、なにこの状況?


頭をフル回転させて導き出したわたしの答えは、


「ああ、わたしここで食べられちゃうんですね…」


『『『どうしてそうなるのよ!?』』』


え、違うの?じゃあ一体?


「まったく、あなたって子は…」


そう言いながらメイド長は呆れながらこちらに歩み寄ってきた。


「メイド長、わたしはみんなに囲まれてなにをされるのですか?」


「少なくとも、あなたの想像していることでないのは確かよ」


それじゃあ、みんなのパシリという線はなしか。あれ、それ以外思いつかないよ。


「これは、あなたを祝うためにつくられた場よ」


「え、メイド長それってどういう―――」


意味がわからなくて、つい聞き返してしまった。


「フィー・クルーガー」


「っ、は、はい!」


急にメイド長に名前を呼ばれたので、つい反射的に背筋がのびてしまう。ああもう、どうにでもなっちゃえー!







「本日よりあなたを勇者様専属メイドといたします。」




………




…へ?


『おめでとうフィー!』


『勇者様専属なんてうらやましな~』


え、嘘?これはいったいなんの冗談?


そう思ったけど、みんなの目に嘘の色はこれっぽっちも感じ取れない。


「え、わ、わたしが勇者様専属メイド?ほんとに?あのお方に仕えることができるの?」


「そのとおりよフィー。しっかり勇者様に仕えるんだよ」


メイド長のそんな励ましの言葉を聞いた瞬間、わたしは―――――


『あ、フィー。どこいくのよ』


「いかせてあげなさい」


『メイド長…』


「…頑張るのよ、フィー」


勇者様の元へむかって走っていた。





◆◆◆◆◆◆






「で、フィーは僕の専属メイドになったと」


「はい、勇者様♪」


ついさきほどまで、フィーの説明をうけていた僕は、抱きついてるフィーを離すと一つの質問をした。


「なあ、フィー。専属メイドって何?」


そんな質問に、フィーは抱きつきをはずされて若干不機嫌になりつつも答えてくれた。


なんだか猫っぽいというかなんというか…


「専属メイドとはですね、城や貴族邸で働く給仕メイドと違い特定の人物に仕えるメイドのことです。専属メイドは仕える人の様々な事をサポートする役目があります」


「へぇー。例えばどんなものがあるの?」


「例えば、秘書の役割や身のまわりのお世話、もっというと戦闘のサポートなども含まれます」


「なるほど、つまりパートナーってことか」


「そういうことです。さすが勇者様、理解が早いですね♪」


ちょっとバカにされた気がしたがこの際気にしない。


それにしても、


「ぜんぜんかまなくなったね」


「あはは…あの時はその…勇者様に見惚れてしまってて」


うん、僕はなにも聞いてないぞ。


はぁ、どうして僕にはラノベの主人公みたいに難聴持ちじゃないんだろうか…


あ、そうだ。


「ねえ、その勇者様っていうのはやめてくれないかな」


「え」


「いや、名前で呼んでもらったほうがいいかなって思ってさ」


「! あ、あ、あ、」





あ、このパターンまずいかも





「ごめんなさいごめんなさい不快にさせる気はまったくなかったんです。わたしはただ、勇者様と一緒にいられると思ったらうれしくって。気づかなくて申し訳ありません。なんでもしますから、お側にいさせてください!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ―――」


うなぁーやっぱりこうなっちゃううのかー!


昔似たようなことがあったから、どうなるかぐらい予想できたはずなのに!!


と、とにかく!なんとか誤解を解かないとまずい!!


「フィ、フィー、誤解だ。僕は怒ってもいないし不快にもなってない。フィーが専属メイドになってくれて僕も嬉しいんだ!」


「ほ、本当ですか?」


涙声で上目づかいでそう聞いてくるフィー。可愛すぎる。


じゃなくて!今は早く誤解をとかないと。でないと何をしでかすか分からない。


それに、女の子が泣いているのは見ていて嫌になってくる。悲しいような、胸を締め付けられるような気持ちになる。


「本当さ。こんな可愛い娘が専属メイドになってくれるんだから嬉しいに決まっているじゃないか。それに僕は、フィーの一生懸命なところが大好きだしね」


実際、僕の質問に対して一生懸命に説明してくれた彼女には心惹かれたし。


って、これってなんだか告白みたいだ。


…言い終わってから考えてもしょうがないんだけど、かなり恥ずかしい。


「! っ、うっ、うっ」


あ、あれ?なんかまずいこといったかな?


なんでさっきより涙出てるの?ねぇ!?


「うわああぁぁぁぁぁん」


「ぐはっ!?」


急に泣きながら抱きつかれた。頭から……


頑張れ、僕の鳩尾みぞおち。君の耐久力はこんなものじゃないはずだ!


「ぐすっ、う、うれしいです。ひっく、ゆ、勇者様に専属メイドとして認めてもらって…」


「!」


そうか、フィーは僕に拒絶されるのを非常に怖がってたのか。


多分メイド達にとって、勇者専属メイドっていうのは大きな目標であり、夢なんだろう。逆にその勇者に拒絶されることは、彼女らにとっては死ぬよりつらいことなんだと思う。


そんな不安定な状態のフィーに否定的なことを言えばこうなるのは火を見るよりも明らかだったはずなのに…


僕は右手を、抱きついてるフィーの背中にまわしてゆっくりとその背中をさすり、もう左手で頭をやさしく撫でた。


「! ゆ、ゆうしゃしゃま!?」


「不安にさせちゃってごめんね。でも安心して。僕はフィーを専属メイドとしてちゃんと認めているから、ね?」


なんかものすごく偉そうに言っている自分を本気で殴り飛ばしたい!


…でも、本心だから仕方ないかな?


「ゆうしゃ、しゃま。っ、ゆ、ゆうしゃしゃまぁぁぁぁぁぁぁ」


あれ?また泣き始めちゃったよ。


ど、どうしよう!?


と、とりあえず、このまま抱きしめていればいい、かな?


「うわああぁぁぁん」







◆◆◆◆◆◆






「先ほどは、申し訳ありませんでした!」


「いや、別に気にしなくていいから。頭をあげて、お願いだから!」


さっきのことを気に病んだフィーがずっとこの調子なのだ。


ちなみにここは、城の中で僕にあてがわれた部屋だったりする。家を用意できるまでここを拠点に活動してほしいとかなんとか。


どっちにしろ、こんなところを誰かに見られでもしたらいらぬ誤解を生みかねない。ので僕はいま、必死でフィーをなだめている。




~少年ナデナデ中~




ようやく、落ち着いたところで僕は改めてフィーに確認する。


…しようと思ったんだけど、少々撫ですぎだったみたい。フィーは恍惚の表情を浮かべてボーッとしてしまっている。


しばらく待っていると、「はっ!?」と我に返ってくれた。


「えっと、それじゃあ今日からよろしくってことでいいのかな?」


「はいっ!どうか末永くよろしくお願いします。」


うん、どうやらフィーは本当に僕の専属メイドというものになったようだ。末永くってのがちょっと気になるけど、こっちもしっかりと挨拶しておこう。


「こっちこそ。これからよろしくね」


「はいっ、勇者様♪」


うんうん、可愛い可愛い。もう面倒だから隠さない。


あ、そうだ。


「ねぇフィー、僕のことは勇者様じゃなくてカイトってよんでくれるかな?せっかく仲良くなれそうだしさ。どうかな?」


「わかりました。カイト様♪」


さっきと違って不安要素がなくなったせいか、素直に受け入れてくれた。


さっきみたいになっちゃうかもしれないと内心ビクビクしてた僕は、その反応をみてホッとしてた。様付けは継続のようだけど…




閑話休題




「それじゃあ今後の方針を決めようか。まずは、なにをしたらいいのかな?」


なにをするにしろ、まずは今後の方針を決めないと行動することもできない。


とりあえず、魔王討伐を最終目標に、大まかなものを考えておかないと。


フィーは紅茶をの入ったカップを僕に差しだしながら、


「そうですね…。あ、カイト様は魔物との戦闘経験はありますか?」


と、質問に質問を返してきた。


魔物…か。この世界にはやっぱりそういう類のものが存在しているのか…


「ないね。僕のいた世界に魔物はいなかったし。」


まぁ、むこうの世界で魔物なんていたら洒落になってないけどね。


いやまてよ?そしたらそもそも今の文明自体、出来ていなかったのかもしれないし…


「でしたらまず、ギルドに入ることをおすすめします。」


「ギルド?」


「はい。ギルドとは専門職の方々が所属する同業組合で、主に3つのギルドに分かれています。商売を生業なりわいとする商人ギルド。魔法技術に特化した魔法ギルド。そして雑用から魔物討伐まで様々な場面で活躍している戦士ギルド。各ギルドには登録手続きと最低限の技術さえあれば所属することができます。」


「ほぇー、なるほどね。で、僕はどこに所属したらいいのかな?」


「カイト様は魔物との戦闘経験を積むために、魔物の討伐依頼が多くくる戦士ギルドをおすすめします」


「僕でも入れるのかな?」


「カイト様は武器を使うことはできますか?」


「うん。一応ね。」


そういって僕は、こっちに来たときからずっと腰に差していた日本刀を指差した。


え、なんで持ってるのかって?生徒会は武器の所持を義務付けられていたから、常に何か武器を持ってないといけなかったんだよ。たとえそれが、生徒会活動初日でもね。


ちなみにこの日本刀、妖刀「村正むらまさ」だったりする。無論、ゲームのように呪われていたりとかはしていないけどね。


装備してもちゃんとはずれるからね。


「でしたら問題ありません。さっそく戦士ギルドに行って登録しましょう。」


ギルドかぁ。一体どんなところなんだろう。


そんなことを考えながら、僕はフィーに淹れてもらった紅茶をすすった。


この紅茶、美味しいなぁ~



次回は、少し解説を入れようとおもっています。


誤字・脱字等ありましたら、コメントに書いてもらえると幸いです。

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