1、始まりは穴から
処女作です。
温かい目で見守ってください
「はぁ…はぁ…」
僕、新井海斗は現在、全力疾走している。
「はぁ…はぁ…」
え、なんでかって?
「はぁ…はぁ…。くそ、逃げ切れない」
「まちなさいよ海斗。いますぐ生徒会室に戻って、アタシとイチャイチャするのよ!」
「…海斗、逃げないで。逃げたら監禁するよ?」
「てめぇ海斗。俺にこいつらを押し付けるんじゃねー!」
この追いかけてくる人たちと関わりたくないからだよ。
◆◆◆◆◆◆
僕の通う高校『暁ヶ丘学園』は少し特殊で、生徒会役員の武器所持が許されている。理由は、生徒などが起こした問題への対処のためと表ではなっているが実際は外部への宣伝のためらしい。
しかもこの高校は非常に治安がよく問題などほとんど起きないため生徒会はいつも暇をもてあましていると評判だった。日本刀が使えた少し面倒くさがり屋の僕は、「ここなら楽にできるかも」と思い立候補したのだ。
そして見事、生徒会副会長の座を勝ち取ることに成功したのだ!
…その選択をした当時の僕をおもいっきりぶん殴ってやりたい。
◆◆◆◆◆◆
~生徒会 初日~
「あ、海斗だー!」
「…ひさしぶり」
「な、なんで二人がここに…」
僕は初日から、最も再会したくない人たちと再会してしまった。
「なんでって、そりゃあアタシも生徒会役員だし」
と、元気の良いこの子は桜葉優奈。いわゆる幼馴染というやつだ。ふわっとした茶髪をツインテールを腰まで伸ばし、右腕には生徒会の腕章を付けている。低身長なのと童顔なのが相まって、かなり幼く見える。
昔から人目や場所を気にせず僕にくっつく癖があって、それが嫌だった僕はこの子と距離をおいていたのだ。
「ひさしぶりー!あたしの大好きな海斗~♪」
「だぁーもー抱きつかないで!離れて!!」
「絶対いやだ」
こう言われたらもうどうしようもない。優奈が離れるまでしばらくかかるだろう。
え、自分から離れればいいじゃんだって?…僕だってそうしたいさ。
しかし、優奈ははオーストラリアのコアラよろしくばりに抱きついてくるので人の力では無理。
なので、こうなってしまったら、向こうから離れるまで待つしかないのだ。
「…優奈ばかりずるい。代わって」
静かにそう言ったのは、さっきから無言だった片桐美琴。黒髪でいわゆるボブカットという髪型にしている。目の上まで前髪を伸ばしているが、目が隠れるのは好きじゃないらしく、ぎりぎりのところで切っているという。基本無表情なので、何を考えているのかわかりにくい。
一見まともそうだけど、それは見た目だけ。なぜなら――――
「…小学生の頃から海斗を見てきた私にも抱きつく権利はあるはず」
「美琴には、海斗の自室とお風呂場の隠しカメラがあるでしょうが」
「それとこれは全く別」
そう、美琴は昔から僕のストーカーなのだ。あまりにしつこく、しかも堂々としているので、もう半ば諦めている。
ぐすっ、な、泣いてなんかいないんだからね。
「なんだお前ら、またイチャついてんのか?」
後ろから声が聞こえてきたので振り返ったら、僕の悪友の井上孝が頭を掻きながら呆れたような態度で立っていた。
「あれ、孝も生徒会役員なの?」
と言いながら、美琴と言い合いをしている優奈の抱きついている腕をそっとはずす。注意が反れたおかげで、なんとか抜け出すことができた。
孝は自分の右腕を出し、腕章を見せ付けてきた。
「ああ、書記をやることになった」
「…私は会計」
いつの間にか言い争いは終わっていたらしく、いつの間にか隣に立っていた美琴にも腕章を突き出された。
ん?待てよ?
生徒会のメンバーは『会長』『副会長』『書記』『会計』の計四人。
って、ことは…
「そう、アタシが会長よ」
瞬間、嫌な予感が的中した僕は窓から飛び降りて逃走した。
◆◆◆◆◆◆
そして、ハイパーダッシュしている今に至る。
「まずい、少しバテてきた…このままじゃ…」
捕まったら最後。一生抱きつかれの刑か一生監禁生活のどちらかだ。
正直、どちらもかなり遠慮したい。というか本能が拒絶しています。
「くそ、どうしたら…」
そう思った途端、目の前に大きな穴がぽっかりと開いた。
一瞬かなり驚いたけど、すぐに冷静さを取り戻す。
目の前には暗く、先のまったく見えない謎の穴。しかも空間に穴が開いている。
一方背後からは、先ほどの三人の足音がどんどん近づいてきているのが聞こえてくる。
選択肢は二つ、か。
「…いちかばちかだ!」
僕は穴に飛び込むことを選択した。
瞬間、僕の体は暗い闇の中に吸い込まれて消えた。
ついに、書いてしまいました。
まだまだ、つたない文章ですがよろしくお願いします。
少なくても週1以内には投稿する予定です。