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やってる事が悪役っぽい

休みの日にケーキを届けに守矢神社に訪れ、そのまま皆で雑談をしながらダラダラと過ごしている。


「へー、早苗が小学生の時に仲良しだった子かー」


「はい。神奈子様と諏訪子様を見れるくらい強い力を持った子でした」

寄り添うようにしてアルバムを見ながら話していた。


「早苗ばっかりかまわないで私もかまってー」


「諏訪子、行儀悪いよ」

背中から抱きつき首に両手を回してぶら下がる諏訪子を神奈子が注意している。


「卒業した春休みに引っ越して行っちゃったんです。最後に手紙を出したのが幻想郷に来る前で、お別れの手紙でした。れーちゃん元気にしてるかなぁ……」


「俺が死神になってた時に世話になってた子も、仲良しだった変わった女の子の話をしてたな。その子も友達から手紙が出せない場所に引っ越すからってお別れの手紙をもらったって」

諏訪子にされるがままの状態で話を続けている。


………

……


そんな話をして数日が経ち、紅魔館でいつものように過ごしていると小町が慌てて駆け込んで来て美鈴と押し問答を繰り広げていた。


「何だろう、あの詰め寄って言い争ってる二人の間に挟まれてみたいって思った」

外から窓を拭いていて見えたらしく、思わず欲望を漏らしている。


そんな飛んでいる恭夜に気がついたらしく、小町は手招きをして呼んでいた。

仕方なく妖精メイド達に後を頼み、そのまま小町の元へと向かった。




小町を落ち着かせてから美鈴と共に話を聞くと、恭夜が思っていた以上に大変な事が起きているのが嫌でも理解出来ていた。


「……は?」


「だから大変なんだよ! 恭夜があたい達の手伝いをしてくれた時にボッコボコにして捕らえた怨霊。管理が甘すぎる外の死神が逃がしちゃって、不意を突かれて何人かの死神も喰われてるんだよ!」


「……」

七不思議の時に立ち向かったらしく、実に厭らしい手を使われたのを思い出して表情を歪めていた。


「生身の人間に物理的な影響が出るくらいの力を蓄えてるんだ。こんな事は前代未聞で大混乱、それがこっちにまで飛び火して映姫様も大慌てなんだよ!」


「それで手が足りないから俺に……って事?」


「お願いだよ、あたい達に出来る事なら何でもするからさ!」


「ん? 今なんでもするって……あっ、ごめんなさい嘘です! 痛い痛い痛い!」

やらしい目付きになったのを見て美鈴が溜め息を吐きながら足を踏んだらしく、それが予想以上に痛かったらしく涙目になっていた。


「お嬢様と咲夜さんには私から伝えておくから、恭夜はこの死神と一緒に行ってあげなさい。これは壁を越えるチャンスかもしれないわよ」


「わかったよ」

紅魔館に居る者達の言葉は簡単に受け入れるらしい。



そのまま映姫の元に小町と共に向かうと本人は不在らしく手紙が残されており、恭夜だけで白玉楼に向かうようにと書かれていた。


「言われた通りに白玉楼に来たら外来人の青年仕様に着替えさせられて、何故か楼観剣だけ渡された件について」


「恭ちゃんは妖夢待ちなのよー」


「てか何で俺に渡すの?」


「妖夢が来たらすぐにこのスキマから行けるでしょ?」


「俺、何でも屋じゃないんだけどなぁ……」

あらゆる点で使い勝手がよく、開き直ったレミリアは様々な条件を付けて最長一週間で貸し出しを行っている。


特に地底の鬼達には気に入られていて、地底の宴会の度に紅魔館一同が招待される程。


最初は所詮人間だと侮っていたようだが勇儀の八割強の力で殴られても痛い痛いとお腹を押さえて転がり悶えるだけの姿に度肝を抜かれ、試しに同じような一撃を受けた若い男の鬼は気絶してあらゆる物を上から下から噴出する始末。



「寧ろ早くそうなるべきよね」


「そうねー」


「うわぁ……朝に来て、既に夕方とか妖夢の準備って何やってるの? 客なはずなのにお昼もおやつも俺が作ったんだけど」



そしてそのまま日も落ち……


「俺を呼んでる……」

夕飯まで作りワイワイ騒いでいると急に楼観剣を手にして立ち上がり、フラフラとスキマへと向かっていく。


「あ……まぁ、いっか」

紫はそのままハンカチを手にしたヒラヒラさせながら見送っている。


「妖夢の準備が来たら直接送るから安心してねー」

恭夜の分のおかずをサッと嬉しそうに確保しながら幽々子は手を振り見送っていた。


………

……


外の世界、月夜の校舎で逃げ惑う少女達を追う怨霊と化した存在。


それは数ヵ月前、死神(仮)の恭夜の手で彼岸まで送られたはずの……


『ククク……油断していた死神を喰って力を手に入れてやったわ。まずはあの時に食べ損なったお前達からだ!』

恭夜の苦労が水の泡になった事が改めて判明した瞬間である。


「ダメ、外に出られない!」


「それなら走るよ! 怜子も早く!」


「う、うん!」

かつて恭夜に幾度となく助けられた三人の少女は追ってくる存在から逃げている。


「何なんだよあれ!?」


「うっさい! 黙って走れ!」

一人の男子生徒が恐怖で顔を歪めながら叫び、先頭を走る少女に怒鳴られていた。




走って逃げ打開出来ないか探っていたが、そのまま屋上まで追い詰められて逃げ場を失ってしまった。


「も、もうダメなんだ……!」

男は三人の背後に隠れて悲鳴を上げるだけで情けない姿を晒している。


「やっぱりあんたはダメだわ、見た目だけの中身スッカスカ。怜子、告白を断ったのは正解だったね」


「あんた男だろ! あたし達を守るくらいしなさいよ!」


「……」

自分達を盾にする男を三人は冷たい目で見ていた。


『まずはお前をじっくり苦しませてから身体ごと魂を貪ってやろう』


「っ……死神さん……!」

恐怖で身が竦み咄嗟に口に出たのが、名前を教えてもらえなかったかつての同居人の事だった。


『あの厄介な死神はいないみたいで助かるなぁ』


「……助けて、死神さん!」

少女はそう叫ぶと、最後の別れの時に貰い大切に首から下げていたホイッスルを思いきり吹いた。



ホイッスルから綺麗な音が響くも何の反応もなく、不快そうな顔をした怨霊が少女を睨み付け少しずつ迫っていた。


「……っ!」


『何をしたかは知らないが、俺の腹の中で長く苦しんで極上の魂に……グエッ!』

少女を掴もうとしていた怨霊が、苦しそうな声と共にバウンドしながら屋上の端へ吹き飛んでいく。


「……しまったなぁ。妖夢を待ってたのに、笛の音が頭に響いて先行して来ちゃった」

スキマから現れた瞬間に危ない光景を目撃、怨霊を加速して蹴り飛ばしたらしく華麗に着地しながら呟いていた。


「死神さん……?」


「ん? ……あぁ、君か。今は人間だから死神ではないよ」

持ってきてしまった楼観剣を片手に笑顔で話しかけている。


「〜!」

助けに来てくれた事や、同じ人間だという事に嬉しさと安心感で涙が溢れて思わず抱きついていた。


「よしよし怖かったね」

役得だと思いながら片手で優しく抱き締め、背中をぽんぽんしている。


『お、のれぇぇぇ……! また邪魔をする気か!』


「どう見ても小物なんだよなぁ。妖夢には悪いと思うけど、さっさと終わらせて帰ろう。……妖怪が鍛えたこの楼観剣に、斬れぬものなど、少ししか無い!」

少し前に楼観剣は扱える事が判明しており、あの異変の時に妖夢が霊夢に放った言葉を真似ていた。


少女に離れているように言うと楼観剣を抜き、悪いと思いながらも鞘を空高くに放り投げた。

そして楼観剣を両手で持ち、下段で構え身を低くしながら走り出した。


『そんなナマク……ラ?』

その通り過ぎ様に斬られたと思ったら力が一気に抜け、更に後ろから戻ってきた恭夜に斬られ、喰ったはずの死神達の魂と呼べる核が切り裂かれた部分から溢れ落ちていく。


「おー。こまっちゃんが魂的な核さえ無事なら再生させられるって言ってたっけ」

そう言うと落ちてきた鞘を片手で掴み楼観剣を納め、儲け儲けと呟きながら溢れ落ちた核を近くに転がっていたコンビニの袋にしまっていく。


『か、返せぇぇぇッ!』


「元々お前のもんじゃねーだろ。これで二回斬ったら、やや厄介な幽霊レベルになってて笑える。いやぁ、慢心って怖いなぁ」

容赦なく全力で二度斬ったらしく、並の死神では対処できないレベルだったものが一気に弱体化していた。


『オォォォォォッ!!』


「うん、ナイスタイミング。そしてまさかの黒」

理性を捨てて襲いかかってきた怨霊に飛ぶ斬撃が直撃し、吹き飛ばされていくのを見て呟いている。


「魂魄妖夢、只今見参しまし……ど、どこ見てるんですか!」

白楼剣を手にセーラー服姿の妖夢が空から舞い降り、バッチリ恭夜に見られていた。


「いや、目の前に降りてきたから……」


「〜っ!」

真っ赤になりながらポカポカと軽く叩いてくる妖夢はとても可愛らしい。



「……」


「怜子? ……うわ、顔怖っ!」


「大好きな死神さんが知らない女の子とラブコメしてるんだもん仕方ないね」

一緒に隠れて見ていた二人が静かになった少女の顔を覗き込むと、凄い怖い顔になっているのを見て引いていた。


怯えるだけだった男子生徒は気絶しているらしく何の反応もない。




「いてて。ほら、楼観剣」


「恭夜さん、帰ったらお仕置きしますから! 剣術の稽古を数倍厳しくしますからね! それとこれ!」

悪魔の女王から貰ったものの抜けないので放置していた直刀を妖夢から手渡された。


「……え? 銃剣は? ナイフは? 鞭は?」


「ないです。大鎌も野太刀も閻魔様が許可してくれませんでしたから」

かなり頼るのに武装の許可は一切出さない鬼畜な映姫である。


「お腹痛くなってきた……」


「ほら、来ますよ!」


『カエセェェェ!!』

血走った目で四つん這いになり獣のような動きで高速で迫ってくる。


「うぐぐ……やっぱ抜けない! 天空のなんたらみたいに俺の子供世代じゃないとダメとかのアレかこれ! ちなみに俺は幼馴染み派だから。追加されたのはあまり好きじゃないから」


「訳分からない事を言ってないで、あいつの見た目が怖いんですから早く!」


「キリッとした顔で力が抜けるような情けない事を言うなよ……」

恭夜の前では素が出やすくなっており、お化けが怖いのも開き直る始末。



「……死神さんの名前はキョウヤ、どんな漢字なんだろ」

そう呟きながら長い髪を三つ編みにし始めた。


「え、聞こえたの? 風も強いし、結構離れてるのに?」



そんな話がされているとは露知らず


「俺気がついたんだけどさ、あいつパンツ覗くのに四つん這いになったんじゃない?」


「変態じゃないですか!」


「ああ、恐ろしいな」

一人だとシリアスだったが妖夢が来て余裕が出来たからかコメディ路線になっていた。


「……理性がなくなっているのか、猪みたいに直進しか出来なくなってますけど」


「通り道に霊力を込めた毬栗を置いておくだけで苦しんでるんだよな」

何かの役に立つかもしれないと腐らないような処理がされ、食べられない代わりにとんでもなく危険な物になっている。


実際に走り回る怨霊は自らズタズタになっていき既に虫の息だった。



「こいつは唆されただけだろうし、黒幕はどっかにいるんだろうな」


「閻魔様が慌てるくらいですから、流石にこんな小物じゃないでしょう……鬼より鬼だって言われません?」

いい笑顔をしながら追加で毬栗を撒いている恭夜を見て呟いている。


「ハハハ、ざまぁないぜ! ……ん? とりあえず幽香に合格貰えるくらいにはSみたいだけど」

霊力を込めた毬栗でダメージを受けすぎて人型を保てず魂だけになり、外の世界の三途の川に強制的に引っ張られていった。


「うわぁ……」


「とりあえず一時的に驚異は去ったか。はよスキマ開いて帰らせて」


「あ、そうでした。しばらく外の世界で暮らして、解決するまで帰ってきちゃダメって伝えるようにと」


「俺の通帳とカードに印鑑……それと手紙」

妖夢から外の世界での生活に必要な物を渡され、それをしまうと手紙を読み始めた。



『親愛なる七夜月恭夜様へ。


この手紙を読んでいる頃、貴方 はきっと外の世界で活躍しているのでしょうね(笑)


ここからは砕けた言葉になるけど、完全に解決するまでこちらには戻せないわ。

生活費もこれでもかってくらい入れておいたから、時間をかけてでも解決してきて頂戴。


内は霊夢で外は恭夜、幻想郷が守れて安心出来るわ。

幽々子の世話は藍がするから、妖夢と一緒にがんばってね。


紫より愛を込めて』



「藍の過労死待ったなし」


「……これは早く解決しないといけませんね」

各勢力の従者達は時折会合と言う名の愚痴を言い合っていて、思っている以上に仲がよかったりする。


「今日はどっかのホテルに泊まって、明日安い曰く付きの物件探そう」


「……お化けは嫌です」


「死神さん! それならまた私の家に!」

終わったのを確認して毬栗を避けながら少女が駆け寄ってきた。


「うわ、グイグイのアレが! 久々なのに変わってない!」


「恭夜さん、いつか本当に刺されますよ」

寧ろ私が斬っても……と思っている。


「怖いことを言うなよ……」


………

……


そのまま男子生徒は放置し、毬栗を回収してから学校から出て帰宅している。


妖夢が持ってきていたゴルフバッグに三本の刀を入れて恭夜が担ぎ、途中の分かれ道で友人二人は改めて恭夜に礼を言って帰っていった。

そして三人は少女の自宅に向かい、気まずい空気のまま到着している。


「そっか。ご両親、飛行機の事故で……」


「うん……でも死神さんにまた会えてよかった」


「……」

妖夢はそわそわしながら出されたお茶を飲んでいる。


「でも今回はいつまでこっちにいるかは分からないよ。終わったらすぐに帰る事になるし、明日には終わるかもしれないし」


「それでも私にはもう死神さんしかいないから……」


「それなら終わったら連れて帰っちゃおうかなー、なんて」


「それ、本当?」


「また自分から地雷を踏み抜くような真似を……」

妖夢はボソッと呟いていた。


「え? ただ二度とこっちには戻れないよ。それに生活も不便になるし、俺も週に二回くらいしか里には行かないから滅多には会えないし」


「いいよ。もうお父さんとお母さんもいないし、あの二人とお別れするのは寂しいけど死神さんと同じ場所に行けるなら全部捨てられる」

辛い現実を受け止めるのに恭夜との思い出を拠り所にしていたらしく、危ういレベルの依存の域に達している。


「そっか。とりあえず今更だけど自己紹介しようか」


「あ、そうだね」

お互いに名前を知らないままなのをようやく思い出していた。


「俺は七夜月恭夜、それでこっちが」


「魂魄妖夢です」


「私は東雲怜子です」


「それなら怜ちゃんと呼ばせてもらおう」

黒い勇者に憧れている恭夜はこれ幸いと呼び方を決めていた。


「私は怜子さんと。それと今更ですが恭夜と呼び捨てにします」


「それじゃあ私は恭夜さん、妖夢さんって呼ぶね」


「呼び捨ては背中を預ける相棒っぽくていいな。怜ちゃんも慣れたら呼び捨てでもいいからね」


「うん」



それから数日が経過し……


「見つからねぇ……」


「黒幕に唆されて死神を喰らった怨霊、悪霊ばかりで見つかりませんね」

毎夜、闇に紛れて探索しているがなかなか尻尾を掴めずにいた。


「二人ともお疲れさま。コーヒーと緑茶を用意してあるよ」

自宅で帰りを待っていた怜子が、温かい飲み物を入れて二人を出迎えている。


「怜ちゃん、ありがとう」


「怜子さん、ありがとうございます」


「……何かいいな、このやり取り。心があったかいっていうか」

今まで独りだったからか嬉しそうだった。


「そいつはよかった。それよりもさっき出掛ける前に知った、怜ちゃんが早苗と幼馴染みだった事に衝撃を隠せなかったわ」


「恭夜がアルバムを見て、水を吹き出していたのは汚かったですよ」


「私のがビックリだよ。でも二人に付いていけば会えるんだよね?」


「まぁ……嫌でも会えるよ。寧ろ向こうから来るし」

恭夜にだけはド変態になっている事実は隠してあげていた。


「楽しみだなぁ……」


「こっちの世界に関する色んな手続きが大変だけども」


「このお家を土地ごと買い取った恭夜はおかしいですけど」

今後も何かしらあった時の外の世界の拠点と怜子の思い出も考慮しての事らしい。


「私が付いていくのに学校を辞める時の書類も用意してくれてご飯も美味しいし、家が毎日ピカピカだし、おやつもお店のより美味しいし……特にあの耳掃除は凄かったなぁ」

恭夜の圧倒的女子力の高さに遊びに来た二人の友人も落ち込む程であり、更に選ばれし耳掃除の勇者に挑んで全員返り討ちにあっている。


「んふふー」

神や悪魔をも虜にするレベルに達しており、中毒性が高いのでまだしてもらっていない普通の者達はしてもらうのを禁止される程。


最近ようやく加減する事を覚えたらしく、彼女等は初期の腕の耳掃除を体験していた。



「あ、それと一般人には見えないからと恭夜親衛隊二号が送られてくるそうですよ。幽々子様が来る前に伝えるようにと」


「あれから何日経ってると……」


「恭夜が私の下着を見た衝撃で忘れていたんです」


「目の前に降りてきたから見えただけで、ちょっとした事故だったのに……」


「あはは……ヒッ!?」

何気なく見た窓からメイド服を着た大きな女性が覗いていて、怜子は思わず悲鳴を上げていた。


「ん? あ、もう来てるじゃないか。少し怒った顔で妖夢を見てるぞ」


「私には無表情にしか見えないんですけど……」


「あ、あがってもらう?」

動揺しながらも怜子はどうするか尋ねていた。


「ああ」


「最近彼女以外に更に増えましたよね。どこで拾ってくるんだってみんなに叱られてましたけど」


「え……」

あんなやばい空気を放つ存在が何体も守護していると知り、流石に引いている。


「俺も知らないわ。各勢力のトップや従者、何故か来ていた邪神を筆頭とした神々が勢揃いしてたから可哀想だった」


「泣いてましたね。取り囲まれている相手に恭夜が近づいて何かを囁いて、そのまま相手を受け入れて見事に自分に依存させてましたし」

相手が女性じゃなければ助けなかったようだが。


「恭夜さんって凄いね」

付いていけなくなり思考を放棄していた。


「腕が六本で下半身が蛇の女性ですから、かなりインパクトがありました」


「ちなみに紅魔館の敷地内に作ったちょっとした小屋に彼女達は二人で住んでもらってるよ」

二人とも特別仕様のメイド服とホワイトブリムを付けており、恭夜は大変満足している。


「私、かなり凄い体験してきたと思ってたけどまだまだなんだなぁ……」


「そうだよ。俺なんてしたくない体験しまくってるよ」


「それ聞きたいなー」


「昨日の俺対インチキ霊能力者多数対悪霊軍団in怜ちゃんのクラスメートのお嬢様邸で満足してないの?」

厄介事を怜子が引き受けて来たらしく、高級車の迎えまで来てしまい昨晩はかなり大変だったらしい。


「まさか人間に足を引っ張られて苦戦する恭夜が見れるなんて思いませんでした。最終的にはおだてて盾に使う作戦が有効だと気がついて、全滅するまでうろうろして時間を潰していましたが」


「素敵な笑顔で凄い心を抉る言葉をインチキ霊能力者達に投げ掛けて、最後はあんな華麗に倒してたのは凄かったなぁ……」

美鈴や白蓮からラーニングした技を繋げて戦い、何もさせずに死神の核を吐き出させ回収してから三途の川まで送り返していた。


「こっちに来てから一番弱かったよ。腹一杯食わせてもらったから報酬もいらなかったし、気に入られたからなのか飯ならいつでも来ていいってあの髭のダンディが言ってたな」

ゲストとしてのマナーは完璧であり、やたらエレガントに決めながら大量に食べていたようだが。


「インチキ霊能力者達を追い出してから、今日はパーティーだって凄かったよね。私、あんなドレス初めて着たもん」

悩まされていたものがなくなり、盛大に騒ぐ事になって三人も正装させられていた。


「お金持ちって凄い、改めてそう思った。ダンスもちゃんと習っててよかったよ」

どこに出しても恥ずかしくない状態に仕上がっており、妖夢達をリードしてダンスを踊れる程。


「ぽ」


「あぁ、わかったよ。帰ったらお前とも踊ってあげるから」

一を聞いて十を知る仲になっているらしいが、恭夜以外には何を言っているかわからない模様。


「おっきいなぁ……」

いつのまにか入ってきて恭夜の傍に立つ怪異の一人に対して呟いていた。


………

……


深夜の学校の校庭に強力な結界が張られ、激しい戦いが繰り広げられていた。


ようやく居場所を突き止めたがそれまでに元凶の蓄えた力があまりにも強大で、二人がかりでも劣勢を強いられている。



「……三人でもダメかよ」


「……通りませんね」

半霊を自身と同じ姿にして恭夜を中心に一点集中で攻撃を叩き込んでいるが効いておらず、無駄な足掻きに高笑いをしながら巨大な腕で薙ぎ払ってきていた。



『ホホホ、児戯に等しいの。妾には効かぬ!』



「チッ、本体に届く前に取り込まれた浮遊霊やらを壁に阻まれるから……煽ってきて腹立つけど露出が凄くてドキドキしちゃう」


「真面目にやらないと咲夜達に言いつけますよ」

劣勢ではあるがまだまだ余裕があるらしく、軽口を叩き合いながら攻撃を避けている。



『もうすぐ月が満ちる……妾の力が最高になった時が坊や達の仕舞いじゃ』


「それなら冥土の土産にその豊満なバストに顔を……痛い痛い痛い!! ちょっと何か脚に刺さったよ!」


「刺したんです!」

こんな時でも不真面目な恭夜の太もも辺りを、たまたま所持していた針でチクッとしたらしい。



そしてそのまま満月が……


『ふぅ……力も満ちた、一思いに楽にしてやるかの』

先程よりも禍々しい力が膨れ上がり、明確にこちらを潰す宣言がなされていた。



「ようやくまともに行けるぞ、妖夢」


「はい、手筈通りに」

こちらも満月になるのを待っていたようで、紅い瞳を輝かせた恭夜がニィッと口角を上げながら宣言している。



『さぁ、死……?』

霊を纏わせて巨大化した腕を振り下ろそうとしたが、懐に飛び込んできていた恭夜に片手で止められていた。


「よっと」

そのままもう片方の腕を黒幕の腹に突き入れている。


『ギッ……ガアァァァァッ!!』

見た目の麗しさとは違い激しい痛みに獣のような叫び声を上げ、何が起きたのか分からないといった顔になっていた。


「あー……あったあった。妖夢ー!」

そのまま腹の中を無理矢理探り取り込んでいた一番強力な死神の核を握ると、ブチブチという音をたてながら引き抜き背後を見ずに妖夢に向かって投げている。


「はい!」

コンビニの袋を広げて待機していた妖夢は上手くキャッチしていた。



『ギィィィィ! 妾の、妾のお腹がぁぁぁ!!』


「霊体でも痛いんだなぁ」

再び同じように腕を突き入れて何かを探しており、苦しむ黒幕の姿を見て呟いていた。


「それでは力を削って三途の川に送りましょう」


「あ、俺の差し込んでる腕の隙間から刀を入れてグリグリすればいいんじゃね?」


「貴方は鬼なんですか?」

纏う力を切り離すつもりだったらしく、恭夜の発言にドン引きしている。


「敵に容赦はしたらいかんよ」

侵入者を排除するので慣れているらしく、苦しむ黒幕を見ても平然としている。


「ですが流石に」


「妖夢はピュアだなぁ……今の俺には眩しすぎる」


『早く抜いてぇ!』


「余裕あるのかないのかわかんねーなこいつ。悪い部分は抉りましょうねー」


「私、絶対悪に染まりません」

目の前で行われている恐ろしい光景に妖夢は誓っていた。


「魂から力を削ぐの、みかんの皮を剥く感じに似てる」


『だ、だんだん痛みが気持ちよくなって……も、もっと!』


「へ、変態だー!!」

そう言いながらも力を削ぎ落とす手は止めず、ドン引きしながら削っている。


「やってる恭夜も変態に見えますよ」


「シリアスに格好良く戦ってた前半がダイジェストになってそうな気がする……俺の覚醒フラグ的なやつとかあったよね?」


「まぁ、全部台無しですよ。寧ろこんな残酷な手段を思いついたのが失敗なのでは?」


『あぁぁぁ……』

力が削ぎ落とされ続け、徐々に人型を保てなくなりつつあった。


「こんなのに食われた外の世界の死神達」

そのまま普通の人間の魂レベルまで力を削ぎ落とし、魂を三途の川まで送り返している。


………

……


「すぐに帰ろうとしたら、妖夢と一緒に一週間の休暇をもらったでござるの巻」


「藍さん、ゲッソリしてましたけど……」


「マジでいい土産とマッサージやら何やらで労わないとやばいかもしれん」


「ニュッて、女の人がニュッて……」

怜子は理解が追いつかないらしく、紫は新しい玩具を見つけたと言わんばかりの笑顔で帰っていった。


「初々しいなぁ」


「恭夜も最初は騒いでましたよね。一回だけ事故でキスしてましたけど……斬りますか?」

当時は何とも思っていなかったが、今になってイラッと来たらしい。


「なんで!?」


「いえ、腹が立ったので」


「さっきの方が教えてくれた学校指定の水着と制服は持っていかないと」

紫から恭夜の嗜好を好き勝手にある事ない事吹き込まれたらしく、着替えの他に水着や置いていくはずだった制服も持っていく事を決めていた。


「間違ってないけど色々間違ってるんだよなぁ……」


「さっきの方がそれを着れば簡単に惚れてくれるって」


「俺は優しくされたり、笑顔を向けられるだけで簡単に好きになるから」

好きになってもらうのは簡単だが、そこから本当に自分が恭夜を好きという事を信じてもらうのが大変だったりする。


「でもおっぱい好きって死神さんだった時に言ってたよね?」


「いや、確かにそれは言ったけどさ……」

包み隠さず性癖を語る常識を投げ捨てている者の鑑。


「私、死神さんに会ってから成長したんだよ?」

以前は普通サイズだったが、数ヵ月たった今ではたゆんと揺れる程になっていた。


「くっ……!」

胸囲の格差に妖夢はグサッと来ている。


「妖夢が地味にダメージ受けてて笑った。……いてっ!」

思わず笑ってしまい妖夢に頭を叩かれていた。


「女性を胸で測る恭夜にお仕置きしただけです!」


「いや、おっぱいに貴賤はないし。無から全部いいし」

マイスターなだけはあり、全てを愛する素敵な紳士である。


「わ、私のは?」


「最高」

全てを愛しているが大きいのが特に好きらしく間髪入れずに答えていた。


………

……


こちら側での様々な処理も終わり、服や下着等の生活に必要な物を買い揃えるのに毎日三人で出掛けている。

今日も色々と回り、大きなモールまで足を伸ばしていた。


「何か黙って立って待ってたら、凄い声をかけられるんだけど」


「恭夜は見た目だけならかなりいいですし」

一緒に試着待ちの妖夢が呟いていた。


「アドレスと番号が書かれた紙がたくさんあるの」

色々な店で二人が試着している間に店員に渡された物らしい。


「可愛い妹さんって言われた私はどうなるんです? 私のが年上ですし……どうせならこ、恋人に見られた方が自然かと」

チラッチラッと露骨に見ている。


「む……いや、でも違う世界で幸せだろうし」

一瞬混線して幸せな未来を歩む自分達の姿が見えたらしい。


「違う世界?」


「極めて近く、限りなく遠い世界かな……後でおもちゃ売り場見ていい? 新しいベルト買って帰りたい」

いつもは紫に頼んでいるらしく、シリーズが終わると河童達に貸してあげている。


「私はいいですよ」


「私もいいよ。今後必要な物とか服、下着とか買ってもらったんだもん」

試着を終えてちょうど戻ってきていた。


「まぁ、向こうに行ったらあまり服とか買いにいけないからね」

資金はかなりあり男の甲斐性を見せている。


紫から度々どちらがいいか?等と写真や文字を見せられ、それに答えると成果が出たら通帳に振り込んでおくと言われている。


運が絡む選択は恭夜に任せているらしく、最近はてゐを抱きつかせてから選ばせるという神すら恐れる究極フォームで選択させたりとやりたい放題。



「向こうでもっと大きくなっちゃったらどうしよう……」


「そうなったら俺が頼んでみるよ。それに付き合うまである」


「変態」

ジト目の妖夢が恭夜に対してぼそりと呟いていた。


「いや、外の世界にって意味だからな。ふっ、やはり妖夢はむっつり……いって!」

顔を赤くした妖夢に足を強く踏まれて思わず声が出ている。


「ほら行きますよ!」


「はいはい」



そのままベルトや関連商品一式を購入していると見知らぬ中学生くらいの子に話しかけられ、立ち話もなんだからと四人でモール内にあったカフェに入った。


恭夜の奢りで皆が注文したい物を頼んでから席に座り、最近上京してきた事や特撮に関する話を一時間ほど楽しんでいた。


「普通にヒーローが好きないい子だったな……今の俺には眩しすぎる」


「恭夜がナチュラルに挟む今みたいな言葉にも反応して目をキラキラさせてましたね」


「うーん、あの子どこかで見た事があるような……」


「一度帰宅してから午後も二人の買い物の手伝い、がんばっちゃおうかな」


「私達の服等を持たせていますしね」


「何よりもおもちゃが一番大きい荷物だよね」


「これでも自重したんだけどなぁ……二つ前とか紫に土下座して連れてきてもらって凄い買ってたし、今回はガチャも自重したし」

今はその全てを河童達が研究名目で弄っており、いつかガチで変身出来るんじゃないかと密かに期待していた。


「あ、それなら私もちょっと見てたよ」


「あのお蔵入りさせられたスペルカードのやつですか? 光杖『リボル……」


「それは名前も威力もマジでダメだったやつだから、紫が喜びながらも怒ってたやつだから。しかもそれはかなり前のやつ」

侵入者に使ったらしくグリグリして決めポーズの一欠までの動きも再現したが、爆発の威力と名前で紫に感動されながらも怒られたらしい。


「そうなんですか」


「?」

怜子が分からない話だからか不思議そうに小首を傾げている。


………

……


荷物を自宅に置き、そのまま夕方まで三人で街を彷徨いていた。


「留守番してくれてる彼女にもお土産を買わないとなぁ」


「恭夜さんの事が大好きなんだよね。恭夜さんが暇な時は当たり前のように後ろから抱えるようにして一緒にいるし」


「死ぬまで絶対に離れないって言ってくれてるから素直に甘えられるんだよなぁ……」

怪異や異形だろうが関係なく甘やかしたり、甘やかされたりするのがいいらしい。


「なるほどなー……」


「だからたこ焼きとか買って帰ろう。はふはふしてる姿が超見たい」

あーんする気満々でそわそわしていた。


「はふはふするんですか?」


「もう一人は湯豆腐ではふはふしてたからな」

建てた小屋によく入り浸っており、怪異二人も喜んで迎え入れて一緒に食事をしたりしているらしい。


「あ、今夜は湯豆腐がいいなぁ」


「ちくわ大明神」


「ああ、把握……誰だ今の」

三人の側を誰かが颯爽と走り抜けていった。



カットされたりしてる部分で格好良く決めたり、シリアスやったりしてるはず。



セブンでDSで貰える色サーナイトは七月八日まで。

九日からは色ゲンガー。

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