特別編 様々な世界で(魂)
「神と邪神が俺が誰を最初に孕ますかのトトカルチョをやっていた件」
「エセルドレーダがダントツ人気で、妾が二位、ルルイエ異本が三位だったな。咲夜、早苗、慧音、白蓮と続いていたが」
「まぁ、当然ね」
そう言い髪をファサっとやりながら、お茶を飲む恭夜の隣で家計簿を付けていた。
「エセルの容姿で子を孕んだら何かこう背徳的な……この前エセルとイチャついてキスしてたら急に慧音が入ってきて超頭突きしてきたから困る」
在宅のはずなのに返事がなく不安になり預かっていた合鍵で入ると、その返事がない当人が少女とキスしてイチャついていてキレたらしい。
「空気が読めない半獣でしたね」
「まぁ、理不尽な暴力の仕返しにあの乳を満足するまで触り続けたから痛み分けだな」
心許した相手にはナチュラルにセクハラをするようになっており、最近よく訪ねてくる慧音がその餌食になっている。
「妾が帰ってきた時に慧音が色っぽい声で汝に甘えていたのはそれが原因だったか」
「そのあと滅茶苦茶」
「言わせるか!」
アルは危ない事を口走ろうとした恭夜の言葉を遮った。
………
……
…
「しかし、最近は汝も異世界を楽しむようになったな」
エセルドレーダが買い物に行ったのを確認してからそんな事を言い出した。
「楽しまないとやってられんよ」
「あの桃色の髪の少女も汝を呼び出すとはついてなかったな。最狂で最悪の女好き魔術師、使い慣れてきた二挺の銃で無双まで始めて」
まだ人間なのに化け物のような性能であり、某地獄のように戦いたいから戦い、潰したいから潰すようになっている。
「照れるぜ」
「契約の口づけをされた時に舌を入れて蹂躙し始めた時は頭を抱えたが、ぼんやりしている少女が正気に戻った時に思いっきり蹴られていたな。ありがとうございますっ!と喜ぶ汝は変態の鑑と言えよう」
キスしてきた相手が美少女でテンションが上がったようで、神や悪魔も虜にするキスのテクニックを存分に発揮させたらしい。
「最近兄妹設定にハマってるアルにはそれを言われたくないんだが……」
「汝よりは遥かにマシだと妾は思うが」
「俺をお兄ちゃん呼びしてるのを九郎と向こうのアルに見られてドン引きされてたのに?」
抱きつき甘えてすりすりと胸元に顔を埋めている所を一部始終見られたらしく、遊びに来た二人にドン引きされていた。
「もう何も怖くない」
その事を思い出してアルの目から光がなくなっている。
「それは死亡フラグですよ」
「あの時、汝がやけに紳士だと思ったら……」
二人が来たのを察知して超紳士にアルを甘やかしたらしく、恭夜はそれに付き合う優しいロリコン魔導師だとあちらの二人には思われている。
「泊まりに来るって言っておいたのにエロゲやって聞いてないからー」
三泊していったらしく、その間は気まずい思いをしたようだが恭夜はニヤニヤ見ているだけだった。
「ぐぬぬ……!」
「まぁ、それはこの際置いとこうか。神々は最近このままの状態でオロオロする俺に飽きてきたのか、魂だけをオリジナルに近い世界の主人公等の肉体に入れるって手法を取り始めて超怖すぎる」
「いきなり汝が倒れて意識をなくしたり、朝になっても起きてこない時の事だな?」
里の往来で倒れた時は異変レベルで騒がれ、永遠亭に担ぎ込まれて魂が抜けていると言われて全勢力全知己が全力で魂の捜索を行ってくれていた。
「うん。しかもロボ物がブームなのか、そのせいで運命やらをリアルで動かせる技術が身に付いてるっていうね」
追体験をしているようなものだが記憶や感情も受け継ぎそれがダイレクトに来て、結末を知っている物に関しては出来るだけ変えないようにはしているようだが……。
「汝が叫びながら目覚めた時は何が起きたのかと心配したのを妾は覚えてる」
「フラグ立てをどう間違えてどうやってああなったのか、ピンクの人にめっちゃ執着されて超怖かったから……」
「うむ、絶対聞きたくない」
「『君さえ来てくれれば僕は解放……もとい自由になれるんだ! フリーダムだけに!』とか言いながら執拗に狙われる怖さを教えてあげたい」
何となく相手にも自分の魂が入ってるんじゃないかと思うくらい執拗で、こちらを見つけると優先目標を無視して真っ先に向かってくるレベルだったらしい。
「それは少し見てみたいが」
「第三者から見たらそうだろうよ。後は宇宙海賊だったり、何故か水先案内人だったりと……しかも俺はリアルなのに神々はゲーム感覚だから厄介すぎる」
「妾達からしたら少し寝坊してるなってくらいの時間だが、汝は何年もその世界で過ごしているからその日の朝は妾達にベタベタしてくれるのだな」
会えなかった数年間を埋めるように抱き締めたりするようで、魔導書娘達は満更でもないらしい。
「好きな人に会えないってマジ辛いからな。……ちなみに最後は俺が差し出されて和解、あのプランを一回試してみましょうって事になって決着ついたんだよな。『イィィィィヤッホォォォォォウ!!』とかいう歓喜の声を上げながら艦から降りて行ったアイツを全力でしばきたかった」
「その映像を這い寄る混沌に見せてもらうとしようか」
その光景を物凄く見たくなったらしい。
「ちなみにオペレーターが脱走しないようフラグを積み重ねた結果、その姉の方が一緒に脱走って酷い結果になるって展開もあったなー」
やる事なす事裏目になったりして泣きそうになったのは秘密だった。
「汝は詰めが甘いし、必ず何かしらうっかりして忘れるから仕方ないな」
一見完璧なように見えるが身内だけになると少々ポンコツになるらしい。
「嫌な予感しかしないから、俺をうっかりとか言うな。それと最後まで乗り切ったご褒美をくれるっていうから……ほら、一発芸の為にこんな事が出来るようにしてもらったんだぜ!」
「俗に言うレイプ目というやつになって妾はドン引きなのだが」
「ちなみに何の能力も向上しない代わりにオンオフ自由。早苗に見せたら知ってたみたいでド興奮してたし、何かしらの牽制に使えそう」
早苗もその作品をしっかり見ていたらしく、オンオフ自由な所を羨ましがられていた。
………
……
…
諏訪子と神奈子が他の神々に少しは自重するように言ってくれたようで、あれから一ヶ月は特に何事もなく暮らしている。
「覇道さん御一行がナチュラルに遊びに来た時はマジで頭を抱えたわ」
「大十字九郎が断りきれなかったと言ってマスターに土下座してましたね。マスターのような美しい土下座には程遠かったですが」
「俺達が拾ってきたデモンベインを見て驚いてたよな。別世界の色んなメカニック達が嬉々としてフルカスタムしてるから、あちらさんのとは別物だし」
全てのスペックが上でさらに河童の技術で地道に強化されており、クトゥルーの腕だけ召喚の応用でデモンベインの腕だけ召喚して殴るという荒業も使えるようになっている。
「しかも一週間満喫して帰っていきましたね」
「野菜中心で少し不満そうだったけど、俺の料理の腕を見せつけたら満足そうにしてくれてよかった。拳闘を文字通り叩き込まれたけどウィンフィールドさんはマジパネェよ」
「マスターが一撃で気絶しかけたのには見ていて私も驚きました。前のめりに倒れそうになったのに踏み止まり、美鈴に教わった鉄山靠を叩き込むマスターも完全に人間を辞めてましたね」
「顎に鋭い一撃を貰って意識が朦朧としてたから覚えてないんだよな。気がついたら執事さんもダメージ受けてふらふらしてたし」
意識を刈り取ったと思ったら予想外の重く速い一撃を貰ってしまい、恭夜の意識がハッキリするまで動きが取れなかったらしい。
「それから帰るまで毎朝マスターと庭で手合わせしてましたね。楽しそうに話もしていたみたいですが」
「元執事だから話も合ってすっかり仲良くなったよ。次も歓迎するって言ったら覇道さんが凄く喜んでたなぁ」
手を握られぶんぶん振られて困惑し、助けを求めて九郎を見たが思いっきり目を逸らされていた。
「あんなに食べていたのに体重が減ったと大喜びしてました。野菜中心の生活の効果でしょうけど」
「ふぁ……汝等は朝早いな……」
そんな話をしていると目を擦り、あくびをしながらアルが入ってきて席についている。
「お前は遅くまでエロゲやってるからだろうよ。エロいシーンのボイスが聞こえてきてエセルが発情、そのせいで今日は寝不足でテンションが下がり気味な俺です」
「妾はようやく全ルートコンプしたから、次はファンディスクで追加キャラを攻略だ」
「さいですか……そういやにとりが持ってきた俺だけが攻略対象のゲームはどうなったの? 携帯機で出来るみたいだったけど」
にとりは幅広く手を出しているようで外から来たジャンク品で携帯ゲーム機を作り、今まで取っていた恭夜のデータを使った乙女ゲーもどきを作っている。
「妾とエセルドレーダを使うと簡単に終わるようになっていたな。ただ霊夢達でやる場合、妾とエセルドレーダとの契約イベントをどうにか起こさせないようにしないと難易度がルナティックになるから困る」
「意味がわからないよ」
「だが妾はテストプレイを終えてデータとソフトを返している。代わりににとり印の第二弾、幻想郷を舞台にした格ゲーを楽しんでおるのだ」
スッと胸元から携帯ゲーム機を取り出し起動させている。
「……」
無茶しやがってと思いながらも当然のようにアルの胸元を覗き込んでいた。
「戦闘タイプが近距離、中距離、遠距離で分けられていて使いやすさもそれぞれ違うと説明されたが……」
十字キーでキャラクターを見せている。
「ジョインジョインジョインって音が気になって仕方がない。これトキとかいないよね?」
「幻想郷の者達だけだな。この恭夜は全キャラで最弱なのだが、組んだパートナー次第でチート性能になると最近になって妾は気がついたのだ!」
冷や汗を流しながらお願いだから違うキャラを選べ的な動きをしており、初心者ならまず選ばないようなキャラだった。
「マジかよ」
最弱なのは認めているので異論はないらしい。
「小町と組ませても強くはならない……が、自害のコマンドを入力すると死神化するのも妾が見つけた」
「なにそれこわい」
自害のコマンドも怖いがそれを使ったアルの事も怖くなっていた。
「ちなみにアリスと組むとアリスが使う人形が汝に変わるという特殊なのもあるぞ。チーム名がアリスを護る生き人形とかなり不気味だが」
「聞いてるとちょいやってみたくなるな。ただ自分で自分は使いたくないが」
「ふふふ、いつか出る製品版を買うしかないな」
そう言うとゲーム機を再び慎ましい胸元にしまいこんでいる。
「てか製品版も作るのかよ」
「……今月はマスターががんばっていたから黒字ね」
そんな二人の側でエセルドレーダは家計簿をつけていた。
………
……
…
「同じ世界で二週目ってなんだよ……」
「今回は妾達も見ていたが、汝には同情したぞ。あの姉妹の好感度を満遍なく上げて脱走回避をしたと思ったら、今度はまさかの修羅場イベント発生に神々は爆笑していたが」
「悪いとこ取りされた二週目とかやってられんよ。何でまたあのピンクの人に執着されたのかわからんし、アイツは容赦なく嬉々として捕獲しようとしてくるし……」
二週目だし上手くやれるだろうと様々な事をして他人には奇跡が起きまくったようだが、自身には都合の悪いイベントばかり起こってしまったらしい。
「金赤赤桃とマスターはやたらモテモテでしたね。マスターの魂が入っている体は修羅場で真っ青になっていましたが」
「まぁ……あれだけがんばればエンドクレジットで名前は間違いなく一番上にあるな」
ギリギリな訳の分からない事を言っていた。
「まぁ……そうですね。神々も大満足みたいでしたし、しばらくは安心出来ます」
「そこまでしか見てないから知らないと思うけど、そこから帰ってくるのに宇宙海賊と水先案内人も二週目やらされて十年以上かかってるからね」
一週目よりアグレッシブに行動したのが仇になり、他二つの二週目もやらされていた。
ロリに対する抵抗は完全になくなってるこの世界線。
神々は運命に満足したようだから、きっと今後は危惧していた自由の方で遊ばれるだろうなぁ。
オンオフ機能だけを貰って喜んでしまったのが間違い。