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平和な日常回

ある秋の日の深夜、静かな地下図書館を小悪魔と見回っていた。


「こうやって二人で図書館を見回りをするのがすっかり日課になってるな」

ランプを片手に周囲を照らしながら歩いている。


「えへへ」

メインヒロイン枠に滑り込んでいるのか、嬉しそうに腕を組み密着しながら歩いていた。


「可愛い」


「日々増えて広くなる図書館を把握しているのは私とパチュリー様に恭夜さんだけですから、見回りは必然的に私達二人で嬉しいです」

最近の恭夜は主に司書をしており、日々増える本の場所を地図に書き足している。


「見回りに行ってくるって言った時、咲夜が一瞬凄い顔して怖かったの」

今日は咲夜が一緒に寝る日だったらしく、寝る前の見回りに行く事を告げると嫉妬心から怖い顔になっていたらしい。


「昨日は美鈴さんが凄い顔したって言ってませんでした?」


「パチュリーとフランだけは普通に送り出してくれるんだけど、あの二人は何か一瞬怖い顔した後に笑顔で送り出してくれるから余計に怖くて……」


「気にしない方がいいですよ」


………

……


レミリアが霊夢の所に遊びに行くと言い出し咲夜が日傘の準備をしていた。


「恭夜は?」


「地下でフランドール様のお昼寝の為の子守唄をいい声で歌っております」


「そう。あれよく寝れるのよね」

仕方がないと霊夢への土産用の恭夜のクッキーが入った袋を咲夜に渡し、日傘を差しながら外に出ていった。


「はい」

咲夜は他にも色々と持つとその後に続いた。




博麗神社に着くとやる気のない霊夢が境内を掃除しており、空から降り立った主従を見て面倒くさそうな顔をしている。


「素敵なお賽銭箱はあそこよ」


「ふふ、霊夢ったら面白い冗談を言うじゃないの」


「今日は咲夜だけ?」

きょろきょろしながら霊夢は呟いていた。


「そうよ。フランのお昼寝に付き合っているから恭夜は居ないわ」


「珍しいわね。普段の恭夜ならレミリアを優先させそうだけど」


「今頃私を探してるかもしれないわね」


「それより宴会の度に強いお酒を回してるのは誰なのか分かったの? 毎回最強のキス魔が降臨して恐ろしいわ」


「前回は霊夢が逃げそびれてビクンビクンしてたわね」


「そこでシレッとした顔の咲夜なんてノーガードで背中に手を回しながら受け入れてたらしいじゃない」

恋人のように抱き合い貪るようにキスをする二人に、見ていた皆はドン引きしていたようだが。


「あれは出来るだけ時間を稼ぐ為にした事ですわ」

厄介な二人に見せつけるチャンスを活かしたらしいが、早苗と青娥は終わるのを並んで待っていて無意味に近かった。


「気絶組と呆け組の二人は知らないだろうけど、最後は永琳が謀って女の子にされてたのよ。どことは言わないけど、目をキラキラさせたフランと地底の鴉に凄い吸われて酔いも醒めていたみたいだけど」

レミリアは見なかった事にして助けなかったらしい。


「あー、あの見知らぬ女性が恭夜だったのね」


「永琳の試薬でよくなってるから私と咲夜は見慣れてるけど、フラン達は知らなかったのよ」

紅魔館の常備薬を無料にしてくれるからと受けているらしく、改良される度に飲まされている。


「なんていうか、今度遊びに来たら少し優しくしてあげようかしら……」


「あ、これお土産よ。恭夜のクッキー」

里の喫茶店でケーキの次にレア物扱いのクッキーであり、少し値は張るが紅魔館御用達という間違ってはいないポップのお陰で即完売するくらいの人気がある。


「あら、ならお茶菓子にしましょうか」


「咲夜も一緒にお茶しましょ」


「ありがとうございます。では私が準備をして参りますので」



あれからだらだらとあーでもないこーでもないと三人で話を続けている。


「最近恭夜が紅魔館から出てこないってクレームが私に来るんだけどどうにかならないの?」


「そんなの知らないわよ」


「寧ろ今までが出て行きすぎだっただけですわ」


「まぁ、一年の八割くらいを紅魔館以外で過ごしてるようなものだったものね。レミリアの貸し出し禁止宣言で一触即発になって、一人の男のせいで幻想郷がピンチだったわ」

濃密な殺気の中、恐怖でカクカクした恭夜が執事業務に専念したいからと小さな声で目を逸らしながら言った事でなんとか納まったらしい。


「今まで好き勝手されてきたから主としてしっかり守ろうと決意したのよ」


「実際に守っているのはお嬢様ではなく私と美鈴、小悪魔とメイド隊ですけど」


「うっ!」

痛いところを突かれて怯んでいた。


「皆が虎視眈々とお嬢様が何かやらかさないか、その詫びとして恭夜を借りれないかと狙っておりますのに……何かしら騒ぎを起こす前に潰す大変さを考えてください」


「だ、だって」


「皆が分かっていてお嬢様が何かをやらかす方向に持っていっているんです」


「で、でもなめられっぱなしじゃ……」


「全部負け惜しみの嫉妬から来るものだと思えばいいんです。お嬢様の事を主として心から愛している恭夜……持たざる者達の嫉妬ですわ」

三割の恋人欲しさと七割のレミリアに対する愛とで、人間としての成長率・成長速度が限界を超える程。


「……そうよね!」


「何があろうと必ず最後はレミリアの所に帰るものね。後は隠してるつもりなんだろうけどメイド好きだし」


「……」

メイド好き=自分の事が好きと変換した咲夜が少しニマニマしていた。


………

……


「……で、私がその能力を持った外来人に狙われた時に恭夜に助けられたのよ。『博麗の巫女に手を出すな』って普段のちゃらんぽらん具合から想像できないくらい格好良く」


「あの子、基本的にヒーロー気質だから。悪役みたいな言葉を吐くのにねぇ」


「『この短期間でどれくらいの妖怪や人を殺してきた? 力に溺れて覚えてないよな、そんな奴は苦しんで死ね』って顔面に拳を叩きつけてたわ」

幻想郷を守る為に霊夢のしない汚れ仕事を進んで行っており、厄介な外来人や不完全な転生をした者を地獄に送っている。


「あら、西瓜割りかしら?」


「一応生きてたわよ。死なない程度に手加減したって言ってたけど、顔がグチャグチャだったわ……」


「流石に霊夢の前だから加減したのね」


「館への侵入者でしたらバラバラにして宵闇の妖怪への餌付けに使っていますね」

定期的にご飯を与えているからかルーミアに凄い懐かれている。


「後は外から来たルールが分かっていない妖怪から子供達を助け出した時もどこからともなく現れたわ。子供達が隙を見て笛か何かを吹いて、その音が響いてすぐだったかしらね」


「それはパチェが作った使いきりのホイッスルね。吹いた者の所へ迅速に行かなければいけない魔法がかかっていて、吹くと恭夜の脳内に音が響くらしいわよ」


「あ……いきなり死んだような目になって飛び出して行った時ですね」


「……確かに現れた時は目が死んでたわね。泣いてる子供達を見て驚いて目に光が戻ってたわ」


「子供好きなのよねぇ……いつも逃がしちゃうし」


「無事助けられたけど、恭夜に美味しい所を全部持っていかれたわ。女の子は命の危機から解放されてわんわん泣いて抱きついてたし、男の子は恭夜の派手な戦い方に目をキラキラさせてたし」

チルノの劣化能力で殴った部分を凍らせるピンポイントフリーズという、役に立つんだか立たないんだか分からない技を編み出していた。


「見映えがいいくらい派手なのよね。ちなみにえげつないのもあるわよ?」


「生きたままの解体ショーは素晴らしい腕だと思いますわ。来た当初の歯をガチガチ鳴らしながら涙を流して、吐きながらバラしていた頃が懐かしいです」

咲夜は昔の恭夜を思い出してほっこりしている。


「やっぱり咲夜はズレてるわね……」

流石の霊夢も咲夜の懐かしむ所がそれなのかとドン引きしていた。


………

……


その頃渦中の人物は……


「お嬢様と咲夜がいない」

すやすや眠るフランをベッドに寝かせてタオルケットをかけ、館の中を探し歩いていた。


「どこ行っちゃったんですかね」


「本当ですね」


「そろそろお茶の時間ですよね」

最近は週の半分は来ている三月精が恭夜に付き従い一緒に探している。


「まぁ、今日は四人でお茶しようか」

ちょうど隣にいたルナの頭に手をぽんと置き、優しく撫でながら呟いた。


「はい!」


「あっ、ルナだけまた……」


「当たり前のように撫でられてる……」

ルナだけは恭夜が撫でたりするタイミングが分かるらしく、毎回撫で撫でされている。


「サニーとスターもおいでー、パイ焼くぞぉ」


「リンゴですか!」


「桃ですか!」


「ミート……はおやつには出ませんよね」

サニー、スター、ルナとそれぞれが食べたい物を主張していた。


「天子からたくさん桃貰ったし、ピーチパイかなー」


「やった!」

スターは一番お気に入りのピーチパイで嬉しくなり、羽をパタパタさせてニコニコしている。


「しかし……お前達の家には大きさ的に流石に入れないって行ったら、入り口大きくしたからって誘いに来た時はその行動力に驚いたよ」


「ルナが張り切って大きくしたんですよ」


「朝からがんばってたわよね」


「サニーとスターもやる気満々だったじゃない!」


「うん、慕われてると思うと嬉しくなる。癒されるわ」

近くに来ていたスターとサニーの頭を撫で撫でしながら微笑んでいる姿は絵になっていた。




パイを焼きルナと自分にはコーヒーを入れ、スターとサニーにはココアを用意していつもの使用人だけの休憩時間を利用したお茶会を開いている。


「それで大妖精が恭夜さんと仲良くなる近道はパンツを見せる事だって言っているのが分かりました」

サニーが他の妖精メイド達から聞いた情報を話していた。


「なるほどなー……今度来たら大ちゃんはちょっとお説教。最近妖精メイド達のスカートの丈が短くなってたのはこれが原因か」

チルノに呼ばれて振り返った所で大妖精が盛大に転び、思いきり見てしまい謝罪やら何やらで優しくして仲良くなったのを勘違いしてしまったらしい。


「……」

スターも事故で思いきり見られており、二人が居ない所でかなり優しくしてもらっているからか頬を朱に染めながら静かになっていた。


「……その手が」

ぶっちぎりの好感度を持ったルナはその手があったかと午後にでも実行しようとしている。


「とりあえずお約束ですし……やーん、恭夜さんのえっちー」


「ぐっ! おま……げほっ! ごほっ!」

何がだろうと考えながらコーヒーを飲もうとしたが、サニーが躊躇なくメイド服の裾を持ち捲り上げたのを見てむせていた。


「ちょ、ちょっとサニー! 何であの緑の巫女みたいな事してるのよ!」


「そうよ! 恭夜さん真っ赤になってむせちゃったじゃない!」

スターは立ち上がり早苗を引き合いにだし、ルナは恭夜の背中を擦りながら抗議の声を上げている。


「ちょっとあの変態の方の巫女と一緒にしないでよ!」


「ごめん」


「流石に言い過ぎたと思う」


「まさかの早苗の扱いに全俺が泣いた」

落ち着いた恭夜が三月精から早苗への評価にホロリと来ていた。



しばらく騒いでいると渦中の早苗が現れ、ますます混沌としたお茶会になり始めている。


「全く……パンツを見られたくらいで仲良くなれるなら、私はもう恭夜さんと結婚して子供も孕んでますよ」


「君は毎回俺の服のどこかにそっと自分の下着を忍ばせるのやめてくれない? 最初それやられた時、咲夜に凄い問い詰められて泣きそうだったんだけど」


「あっ、今脱いだやつのがいいって事ですか? もう……特別ですからね」


「やめろォッ!!」

頬を朱に染めモジモジしながら立ち上がろうとする早苗の肩を慌てて掴み無理矢理座らせている。



「うわぁ……」


「恭夜さんを振り回せるのはあの巫女だけね」


「ぐぬぬ」

ルナは形振り構わぬアピールが出来る早苗が少しだけ羨ましいらしい。



「え、いらないんですか?」


「ここでいるとか言ったら、俺はただのド変態だろ……」


「それじゃあ後で二人きりの時に……ね?」


「凄い可愛い仕草で言ってるけど、やろうとしてる事が酷いから台無し」



「でも何だかんだで仲良しよね」


「恭夜さん、こんな自分にどんな形でも好意を寄せてくれるのは嬉しいって言ってたし」


「わ、私だって」



「ようやく落ち着いた……あ、それと諏訪子さんと神奈子さんに文句があるんだよ。おみくじにいつまでも白紙入れておかないでほしい」


「あれはこの前恭夜さんが引いたので全部ですよ」


「おみくじ引いてるのに白紙だし、無言で見せると当たり!って諏訪子さんに言われるしで……おみくじに当たりなんてないだろ!」

毎回白紙を引かされてイラッと来ている。


「でも里の人や外来人の人達は引けない当たりですよ。あれはお二方が私の旦那様に相応しい存在だけが引くように、特別なおまじないを込めて入れたものですからね」

二十枚程入っていたようだが、毎回恭夜が引き続けてなくなったらしい。


「そう言えば二回くらい『私とデート出来る券(諏訪子)』ってのを引いて鼻水出たな」

どうしたらいいか分からず、今もそれは机の中に眠っていたりする。


「諏訪子様、いつ使われるかってワクワクして待ってますよ」


「もう一枚は(神奈子)って書いてあって本気でどうしたらいいかわからない」

諏訪子が悪ノリして書いたらしく本人はその存在を知らなかったりする。


………

……


夜になり早苗や三月精が帰り、レミリア達も霊夢を連れて帰ってきていた。


「レミリア、何か怖いのがいるけど」

疲れ果てて庭の隅の恭夜菜園の側で体育座りをしている。


「大方誰かしらに振り回されて疲れた恭夜でしょ」


「美鈴から早苗が来ていたとの報告がありました。早苗が下着を脱ぐ脱がないで大騒ぎをして、ルナ・チャイルドも対抗して脱ごうとして恭夜が『誰か女の人呼んでぇぇぇ!!』と助けを求める叫びを上げていたと」

あれからも色々と大変だったらしく、精神的疲労から菜園で癒されているようだった。


「まぁ、幽香もあの八尺の女も居るし大丈夫でしょ」


「あ、本当だ。幽香は笑顔で恭夜に話しかけながら手だけでシッシッ!ってこっちにやってるし、もう一人は付かず離れずの距離で見守ってるわね」

肉体的精神的に最強の護衛達である。


「大きい方は最初恭夜に死を招いて連れていこうとしていたのに、今じゃ恭夜LOVEで恭夜を害する者に恐怖を振り撒いているのよね」


「でしょうね」


「最初はガリガリ長身だったのに、恭夜の好みじゃないと分かると今みたいな感じになったわ。あらゆる部分がビッグサイズで恭夜もご満悦だし」

大体出掛ける時は一緒で里以外に行く時には並んで歩いたりもするらしい。


「win-winの関係じゃないの。でも流石の恭夜もセクハラはしなさそうね」


「してるのよねぇ……」


「『合意の上だから! 合法だから!』って私達にボッコボコにされながら叫んでいたわ」

一時期どうにも挙動が怪しく皆で後を付けたらしく、土下座して胸を触らせて貰っている所に遭遇して弾幕や格闘戦でフルボッコにされていた。


「何が合意の上だったのか気になるわね」


「最初は白いワンピースと白い帽子だったのに、今は恭夜の趣味で紅魔館仕様のメイド服とホワイトブリムよ」

長身すぎるメイドで普通の者達は不気味さすら感じているが、恭夜はそれがいいと誰もいない時には色々な角度から眺めて満足そうにしていたりする。


「咲夜に対する好意がバーストしてメイド好きになった感じかしらね。それよりお腹が減ったわ」


「今咲夜が恭夜を捕獲して連れていったから、もう少しくらい我慢なさい」

いつのまにか傍に居た咲夜が消え、座って幽香と話していた恭夜の姿もなくなっている。


「それならいいわ。……んー! 今日も一日平和だったわー」

伸びをしながらそう呟きレミリアと共に館の中に入っていった。

妖精達に超モテる代わりに、ロリコン扱いされてしまう模様。




新世界樹3か世界樹Ⅴの発売はまだかなー。

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