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欲望には忠実だから

いつものように米屋でダラダラしていると、知り合いや顔見知りが米を買いに来て仕方なく手伝いをしていた。


「評判いいじゃないの」


「七夜月の兄ちゃんの事が好きな里のみんなとかがよく来てくれるんだよ。それにあの天狗のお嬢さん方も新聞の定期講読の受け付けもしてくれないかって頼みに来たしな」


「そうなんだ」

特に興味はないらしく聞き流しながら減った店頭の米の補充をしている。


「許可したら二人ともタダで新聞配ってくれるようになって母ちゃんも大喜びよ」


「文のは誇張表現が多々あるけど読んでて面白いんだよねー。はたてのは真面目で正確だから安心感があるし」

文の方には都市伝説、はたての方には簡単レシピのコーナーを半ば無理矢理任されているからか、恭夜も無料で貰っている。


「都市伝説ってやつの最初の回、あれを見た里の子供達はちゃんと夕方には家に帰ってくるって親には評判よかったみたいだぞ。子供達は凄い怖がっていたが」


「まぁ、あれは外の世界でも子供達を恐怖のドン底に陥れてたから。もし人里に出てきて悪さしたら、霊夢やら白蓮さんやら慧音やらが出てくるから大丈夫だと思うけど……」

外の世界よりも安全だと言えるくらいその三人を恭夜は信頼して信用している。


「それに七夜月の兄ちゃんもいるしな。里の子供が行方不明になって危ない時に助けてくれたって言ってたぜ」


「慧音からの頼みは断れないし、子供達は可愛いからねー」

慕ってくれる子供達にはとても優しく、子供達の兄のような感じになっていた。


………

……


そして昼時になるといつもの蕎麦屋に入り、席に着くと三人前の蕎麦を注文している。

そしていつものように先払いがしたいと言い、常連だからと店の親父から許可を貰ってさっさと代金を支払っていた。


「ズーッ」

最初に普通に食べ、次に薬味を入れて食べている。


「いただきます」

ふらりと現れた霊夢が当然のように向かいに座り、用意されていた蕎麦を食べ始めていた。


「私もいただこう」

一緒に来たであろう慧音も恭夜の隣に座り、用意されていた蕎麦に手をつけている。


「……待ってたよ。詳しく話を聞くのは食ってからだな」




食べ終わると自分と霊夢の分を払おうとする慧音を止め、そのまま三人で店を出ていった。


そして慧音宅の一室に案内され、テーブルを挟んで二人と向き合っている。


「夏祭りの出し物?」


「ああ。妹紅が手伝いがほしいと私に相談に来ていてな」


「ああ、最近始めた焼き鳥屋さんか」

暇だから始めたらしく、何度か串作りや鶏を捌くのを手伝っている。


「その件で少し……いや、かなり不快な噂が流れていてな。夜中に迷いの竹林のどこかで白髪と黒髪の夫婦がやっている、酒も焼き鳥も美味い焼き鳥屋があると」


「価格もお手頃だけど、迷い込んだ時にしか行けないって私も聞いた事があるわね。夫婦でってのは初耳だけど」


「基本的に海外とか日本の神様達が来るような場所でやってるから仕方ない。妹紅も最初はそんな方々にタメグチな俺にビクビクしてたけど、今じゃ慣れて一人でも立派に対応してるみたいだし」

妹紅が焼き鳥屋を不定期でやるせいか、やっていない時は仕方ないと恭夜がいる紅魔館に来て大騒ぎになっている。


「とにかく手伝いを頼みたいそうだ」


「私はこの後の妖怪退治に付き合ってもらおうと思って」


「みんな俺を便利屋か何かと勘違いしてない?」

一年間里で暮らしていた時のイメージが強いらしく、里を歩くだけで色々頼まれたりするらしい。


「まぁ、それは……仕方ない」


「寧ろ便利屋以外の何者でもないわね」


「うわぁ……それなのに人気があるのは爺ちゃん婆ちゃん子供達、それと男連中のみっていう」

普通の人間の女性からの評価はいい人止まりにしかならないらしく、里で好意を持ってくれる女性はやはり他とは少し違った者だけだった。


「……癖が強いからな」


「ハマるとやめられなくなる感じよね」

二人は頷きながら何か納得している。


「人を珍味みたいに……とにかく手伝えばいいんでしょ。霊夢の方はめっちゃ行きたくないけど」


「助かるよ。妹紅には私から伝えておく」


「何で私の方はそんなに嫌そうなのよ」


「好戦的な奴は博麗の巫女には勝てない、なら隣にいるやつを狙おうって毎回なるからだよ」

恭夜ばかり狙われるようで、毎度返り血を浴びる事になる。


「通常恭夜は一番弱いのよねー。泥酔恭夜は思わずドン引きするくらい強いのに」


「いや、てゐをおんぶした時の俺が一番強いと思うの」

ラック値が限界を超えて振り切れ、あらゆる現象が恭夜の味方になるので劇場版限定フォーム的な立ち位置。


「あれは反則じゃないの。何のデメリットもないし、二人の些細な動きで相手には壊滅的な被害が出るなんて」

小石を蹴るだけで様々な事が起き、最後には敵対した相手が酷い事になるらしい。


「そう言われてもなぁ」


「それと最近急に髪型変えたみたいだけど、どうしてかしら?」


「輝夜とゲームやってて、その主人公があまりに格好良くて真似してみただけ。俺も年とったら桐生さんみたいに格好良くなりたいなぁ」

一時的に髪型を真似ているらしく、思った以上に似合っていて紅魔館組には好評だった。


「普段よりもワイルドさが出て似合っていると私は思うが」


「……これはこれで」

髪型を変えただけで普段よりもかなりワイルドに見え、慧音も霊夢も新鮮な姿に内心ドキドキしていたらしい。


「アリスに髪を切ってもらって、上手くこの髪型に出来てよかった」

毎朝セットするのをがんばっていて、小悪魔と咲夜が微調整を手伝っている。



機嫌が良くなったまま霊夢と妖怪退治に向かい、いつものように狙われている。

その隙に霊夢がそのまま巻き込むようにして弾幕を放ち、恭夜は退治される妖怪を掴んで盾にしてしのいでいた。


………

……


盾を使っていたが容赦のない霊夢の弾幕に巻き込まれ、それが盾を貫通して手や頬に怪我をしてしまい永遠亭に足を運んでいた。


「舐めておけば治るでしょって言われたでござる」


「ん……」


「それで診察室から出たら鈴仙にぺろぺろされてて……いてて」


「へー」

ジト目の輝夜をよそに縁側に腰かけたまま傷をぺろぺろされ、傷口に染みている。


「染みて痛いけどちょい興奮するよね」


「変態」


「このままほっぺにもしてくれるのかと思うとドキドキしてソワソワしちゃう」


「そういえば、あのリアル岩砕き動画の再生数がかなり凄い事になってるわよ。冗談半分だったのにね」

真偽を確かめるのに色々と検証されていたり、人間じゃない説やらが飛び交い大変な事になっているのを二人は知らなかった。


「岩を持ち上げて移動させて、殴って砕いたり、蹴り砕いたりしただけなのに不思議……ほわっ!」


「んー……」

鈴仙がいきなり顔を掴み頬の傷口を舐め始め、ビックリして妙な声が漏れている。


「いつもの事なのにねー」


「く、くすぐったい……確かに何が再生数を増やしてるかわからん」

早苗に対して常識云々言っている本人の常識が幻想郷基準で、外の世界基準では超非常識だった。


「岩を砕く以外に何かしてる所を撮影してみる?」


「うーん……ナイフ捌きとか?」

咲夜並とはいかないが、魚や動物の解体は咲夜よりも遥かに上手くなっている。


「熊と戦うとかは?」


「タフで疲れるから嫌だし、襲ってこない熊には手を出さない主義だから」

疲れるのが嫌なだけで倒せない訳ではないらしい。


里の者が何人も襲われる事件があった時に討伐隊に同行し、手分けをして探している時に遭遇して徒手で闘い勝利を納めていた。


里の者達が合流した時には恭夜が熊と真正面からぶつかっており、その巨大さと狂暴さに迂闊に手を出すわけにもいかず固唾を飲んで見守っていたらしい。

そして目の前で殴り殺す所まで見ていたからか、同行した者達からは熊殺しという親しみ?を込めた呼ばれ方をされている。



「そうなると……後はもう泊まった日の翌日に幼女姿の兎達にくっつかれまくってる姿を撮るくらいしかないわね」


「ロリコン扱いされそうだから嫌だよ」


「永琳の薬で女の子になった姿を女装って名目にするか」


「絶対に嫌だわ」

ラック値だけが高いドジっ娘になってしまうので嫌だった。


「ん……あ、動いちゃダメ」


「アッハイ」

ペロペロしていた鈴仙に注意されて動くのを止めている。


「……出来るだけ気にせず話してたけど、ド変態カップルに巻き込まれてる気分なんだけど」

抱きつき妖艶な表情でぺろぺろする鈴仙と、極めて普通な恭夜を見て呟いていた。


「ん……姫様も反対側の傷口を舐めてみるというのはどうですか?」


「何かいつのまにか膝にふわふわしたのが……」

恭夜大好きな妖怪兎がいつのまにか膝に乗っており、手を置くと身体を擦り付けてくる。


「し、仕方ないわねー」

輝夜もちょっとやってみたかったらしく、反対側に座るとドキドキしながら傷口を舐め始めた。



美少女二人に抱きつかれながら頬の傷口を舐められている姿は異様な光景であり、出会したてゐもドン引きして気づかれない内に立ち去っている。


「これ絶対誤解が生まれるよね。将来的に紅魔の龍って呼ばれたいのに、これじゃ無理だろうなぁ……」


「んー」


「ぺろっ、これは血!」


「……輝夜は見た目だけなら超美少女なのに、中身が超ガッカリで台無しすぎる」

恭夜はそれは見事なブーメランを投げていた。


「それは私と恭夜がお似合いって事ね」

かなりの似た者同士であり、相性も抜群にいいダークホース枠である。


「もうちょっとおっぱいがあれば即求婚してるのになぁ……いだだだだ!! 傷口を舌で抉るようにすんな!」


「……」

額に青筋を浮かべ、無言でぐりぐりと舌で傷口を抉るようにしていた。


「う、嘘ですから! 輝夜くらいのが最高で……いだだだだだ! やめて! 鈴仙もやめて!」

輝夜がやめたと思ったら、鈴仙がぐりぐりし始めて苦しんでいる。


「……」


………

……


「永琳が助けに来てくれなかったら延々と拷問される所だった……」


「手が空いて治療しに行ったら泣きながら二人に舐められてるんだもの、驚いたわよ」

頬と腕に消毒をして絆創膏を貼り、呆れながら椅子に座り直している。


「ほっぺがまだじんじんしてる……」


「あれだけ傷口を刺激されれば仕方ないわよ」


「永琳が来てくれて本当によかった」


「ふふ……それよりこれ」


「……トトカルチョ?」

紙には見知った少女達の名前と倍率が書かれており、欄外には逆プロポーズと全員と書かれている。


「ええ。貴方が誰と結婚するのかって何年も積み重ねてきた物らしいわよ」


「何で俺の結婚が賭けにされてんだよ。一番人気は咲夜……と見せかけて全員ってなんだよ」

皆が本命に賭けた後に冗談半分で賭けるらしく、全員が一番人気になっていた。


「誰調べなのか地底の者達まで入っているから不思議ね」


「自称系の青娥さん、早苗は地味に強いなぁ」

このツートップに遅れて咲夜、慧音、白蓮とよく里で行動を共にしている順になっている。


「あのナチュラルストーカーズね」


「あの二人にはモテているって分かるだけ嬉しいけどね」


「あら……」


「外来人に敵視されるから妻だの嫁だの自称するのはやめてもらいたいけど」

里以外で襲われれば解体ショーが始まり、ある程度知能のある妖怪達は恭夜=ご馳走を残してくれる上位の妖怪と思っている。


「無理でしょうね。月で堂々と歩いて捕まらないくらい無理ね」


「月の話はやめて……お嬢様に無理矢理連れていかれて、挙げ句はぐれてみんなが帰ってからも二週間くらい監禁されてたトラウマががが」

色々と思い出した豊姫と依姫の二人が帰してくれるまで、隔離用の堅牢な部屋に一人だけで閉じ込められていたらしい。


「あの二人に連れられて帰ってきた時は本当に驚いたわ」


「一番辛かったのは毎日休みで暇な月の兎達が見に来た事だった。動物園の動物みたいな扱いで、お菓子とか投げ渡してきたし」

誰かが興味本意でマシュマロ的なお菓子が放物線上に投げ、それを上手く口でキャッチしたのが原因だったりする。


一週間経つとお悩み相談室のようになり、長蛇の列が出来て的確なアドバイスをしている所に色々思い出した二人が来たらしい。



「ちなみにその二週間大騒ぎだったのよ? みんな帰ってきたと思ったら、恭夜がどこにも居ない!って毎日レミリアが飛び回っていたくらい」


「あの頃は咲夜と一緒じゃないとチルノより弱かったから、無理矢理連れていかれてすぐに隠れてたんだよね。それで即捕まったんだけども」

今なら多少は戦えるが、レミリアのように簡単にあしらわれる事は間違いない。


「天照様を筆頭に様々な神々や悪魔が、恭夜を目当てに手土産を持参して来てると知ったらどんな反応をするでしょうね」


「間違いなく冗談だって思われて終わりだと思う。最近じゃお酒たくさん持ってご飯食べに来たり、すっかり常連になった日本の神々が海外の神々を連れてきたりとか誰も信じないだろ」

守矢神社が主に集まる場所だが、目当ての恭夜が居ないと皆で紅魔館に押し掛けてくるので厄介極まりなかった。


「あれは実際見ると凄い光景よね……『恭夜は儂(私)が育てた!』とか言い出す仲直りした国生みの夫婦とか」


「最近色々麻痺してるなー……異変が起きても全く怖くないレベル」


「まぁ、そんな方々に囲まれていればね」


「それでも異変じゃ俺は動く薬箱だけどねー」

そのせいか皆が安心して相手をぶっ飛ばすらしく、見ていて可哀想になるようだった。


「ふふ、それじゃあ今日もお勉強しましょうね。最低でも今月中には外の世界の一般的な医者の技術と知識は持ってもらわないとね」


「えっ……ま、まだ習い始めて三ヶ月も経ってない……」


「来月には外の世界でいうベテランの医者、再来月にはゴッドハンドと呼ばれる医者のレベルまで上げるから」


「い、いやそれは無理だと……」

素敵で無敵でとても美しい笑顔で言う永琳が恐ろしく見えている。


「レミリアも『私の恭夜が医者に? わざわざ健康診断に呼ばなくてよくなるの? ……週に三日だけなら許可するわ!』って」


「それ休みの日も含めて週三日だよね……泣けるぜ」


「恭夜がやる気になる事を言いましょうか」


「今ションテンがガリサーだから、何を言われてもやる気にはなれないと思う」


「私の言う目標が達成できたら、来年から紅魔館の健康診断は恭夜に担当してもらうつもりよ」


「マジで!?」


「ええ。何なら永遠亭の健康診断も任せてもいいわ」

永琳はこれでもかと釣り餌を垂らしている。


「これはもう本気を出すしかないな……」


「……」

普通に頼んできたら何でもしてあげるのになーと考えながら、やる気を出した恭夜を優しく見守っていた。

尚、一ヶ月ちょいでどうにかなる模様。



さっきポケモンの映画観てきたけど、ルギアがイケメンすぎる。

見終わってドーナツが食べたくなったからミスドに寄った俺。

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