表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/100

超番外編 かなり危険な現代生活13

こちら側では一騎当千。

まったりとした休日の午後、春も近くなり庭で美鈴が庭の手入れをしているのを見ながら訪ねてきた紫達の話を聞いていた。


「意味がわからないよ」


「だからね、勝ち抜きトーナメント方式で毎年イベントを開いているのよ。聞いたことないかしら? 学園地下に広大な施設があるって」


「いや、すぐ他の生徒達から隔離されたから聞いた事ないよ……」

友達も最初の三人しかおらず、今でも時間が合えば仲良く遊ぶ仲だったりする。


「とにかく地下にあるの。様々な環境で戦えるようにこの時期だけ神々の力を借りるし、三位入賞までは賞金もちゃんと出るのよ?」


「興味ないっす」


「モチベーションを上げる為にも参加してもらえないかしら? というよりも恭夜が参加するの前提でみんなチームでエントリーしてるのよ」

どうにか倒して箔を付けたいと考えている所が多く、遠回しに恭夜が参加するのを紫に打診する所が多い。


「どうせハンデとか言って俺だけ武器なしとか言われそうだしなぁ……」


「私としては恭夜は異形との戦い以外ではそんな使えないみたいな空気があるから、それを払拭するのに参加してほしいのよ。河城さんも恭夜用に面白いアイテム用意するって張り切っていたし」


「え、それなら絶対やだよ。両腕にガントレット型のワイヤー射出装置付けさせられた時なんて腕がもげるかと思ったし」

言われた通りに射出して突き刺し、巻き戻そうとして腕がもげそうになったらしい。


「だ、大丈夫よ……多分」


「もし参加したとして賞金は普段から稼いでるしいらないけど、勝ち残ったら何かご褒美あるの?」

異形ジェノサイダーは既に一生遊んで暮らせる分の報酬を貰っており、両親の遺産もあるから賞金に興味がなかった。


「え?」


「うちの班に後一人後衛が欲しいなーって。いざという時には1・1・2で別れて対処出来るし」

後一人加わればバランスが取れるがただでさえ過剰な戦力故に補充要求が通らず、悶々としていたのをここで通そうとしている。


「う……ら、藍?」


「よろしいのでは? ただ恭夜君、もしかしたら君の所に住まわせてもらう事になるかもしれないが」


「それは面談してからかなー。部屋はあるけど協調性がある子じゃないと班に入れる意味がないし」


………

……


物凄い広さの地下に大量の観客が居り、観客席からエントリーしたチームが繰り広げる戦いを見ている。


「心臓がやばい、異形と戦ってる時のがいい」

両腕ににとりが軽量化したワイヤー射出装置を付けられ、他に一切の武装がない恭夜が控え室でソワソワしながらウロウロしていた。


「先輩はチーム戦なのに一人で参加させられてますけど、ナビは私が担当しますから安心してくださいね」


「大ちゃんマジ天使。他のみんなは観客席で巨大なモニターで見るって言ってたな」

間近でインカムを付けてくる大妖精にドキドキしながら話している。


「五対一で最後まで勝ち残ったら後衛の方が一人追加されるんですよね」


「だから死ぬ気で勝ちに行くよ。これを逃したら補充されないだろうし……武器間に合わなかったとか言われて困る」

仕方ないからと間に合わせのワイヤー射出装置だけが届けられ、槍とハンマーで何とかするように言われている。


威力をかなり抑えて投擲禁止を言いつけられており、怪我をさせてもいいが致命傷は絶対に避けろとも言われていた。

永琳や見つけてきたこちら側の看護学生が待機しているので致命傷以外ならどうとでもなるらしい。



「一人一人倒すしかないですね。河城先輩に戴いたパソコンでちゃんとナビをしますから、がんばりましょうね!」


「うん、がんばる。……さっきから大ちゃんがかなり近くていい匂いがしてソワソワしちゃう」

意外と余裕があった。




そんな打ち合わせ兼イチャつきをしていると遂に時間が来てしまい、控え室から出て戦いの場に赴いている。

一つ前の組のステージは岩場だったようで、巨大な岩が砕けた跡やらが見えて少し怖くなっていた。


「知らない学園の知らない五人組だ……やっぱ可愛いけど」

チラッと対戦相手を見るとロリからお姉様系が揃っていて、それぞれが薙刀やら洋弓やら得物を手にして作戦会議をしている。


ボーッとしながら待っていると実況が今回のフィールドは密林だと言い出し、岩場が格納されるとどうやったのか広大な密林を模した物に早変わりしていた。

両チーム中へ、と言うアナウンスに従い密林に足を踏み入れると湿気や気温まで再現されていて無駄な技術に溜め息を吐いている。



「……」


『ターゲット、先輩を取り囲むように動いています。接触まで二十秒です』

インカムから聞こえる大妖精の声に癒されながら、どう戦うべきかを考えながら自然と槍を創り出していた。


しかし……


「うぐっ……!?」

大量に身体を流れている霊力が急に減少していき、槍が保てなくなり霧消していく。


「うふふ、私以外の四人で貴方の霊力を封じる術をかけるのは成功みたいね」

リーダーと思われる女生徒が薙刀を手に近寄り、他の四人にも出てくるように指示を出していた。


「なんつーえげつない事を考えるんだ。一斉にかかってくるものだとばかり……うっ!」

距離が縮まれば縮まる程に霊力が抑え込まれて力が抜けていき、遂には膝をついている。


「呆気ないものね。これで私達の勝ち……!」

このまま意識を刈り取る為に刃の潰された薙刀を降り下ろした。


「なんてな」

抑えられたフリをしていた霊力を解放し、再び槍を創り出して薙刀を受け止めている。


「なっ!?」


「博麗か守矢の札を使ってたら危なかったけど。何か道具を使わないでダイレクトに術をかけるからこうなっちゃうんだよ」

四人は逆流してきた霊力封じの術をモロにくらってひっくり返り気絶していた。


「えっ、嘘! ……はうっ!?」


「お約束お約束」

槍の柄で胸を突き、自身の霊力を相手の霊力と反発するように流して気絶させている。


『先輩、お見事でした。……ただ最後のはお腹でよかったんじゃないですか? さっきの演技の時も先輩あの女性の胸見てましたよね?』


「み、見てないですし、胸を突いたのは偶然なんです……」

実況や観客が盛り上がり歓声を上げる中、恭夜は大妖精の冷めた声が怖くて言い訳をしながら密林から撤退している。


………

……


その後も相手の練度不足や大妖精のナビに救われて順調に勝ち進み、後二回勝てば念願叶う所まで来ている。

だが毎回霊力封じをされるので徒手オンリーで戦っており、ドサクサに紛れてしてしまったパイタッチやらを大妖精にチクチク言われて精神的に辛くなっていた。


「最後の一人とラブコメ的な事になってた時にインカムから聞こえてきた声が……大ちゃん、意外と独占欲強いんだなぁ」


『違います。あんな見え見えのハニートラップにかかりそうな先輩を助けただけですよ?』


「以後気をつけますです、はい」

準決勝のステージは岩場であり、相手が輝夜の学園のチームだった。


運良く見つけた潜んでいた一人の背後から近づき軽く絞めて気絶させ、所持していた銃を回収してマガジンの中のゴム弾を全て捨てている。

一発だけ適当に撃って完全に空にしてから外していたマガジンを戻し、気絶している少女を拘束して転がしてからその銃を手に岩場を移動していく。



「輝夜のとこのチームは銃とナイフ、格闘術でバランス良すぎるから困る。そしてこっちの通信傍受してるだろうから迂闊に大ちゃんから情報も貰えない……あ、ラッキー」

足を挫いたらしく岩を背にしながら足首を固定している少女が見え、そっと回り込み真上から強襲しようとしている。


「いたたたた……」

張り切りすぎて挫き方も酷く、固定しても痛みで動けないようだった。


「はい、ご苦労さん」

岩から飛び降り目の前に着地、銃を突きつけて投降しろと言わんばかりにニコニコしている。


「……はい」


「狙撃の子じゃないな……しかも痛そう」

刃を潰してあるナイフと銃を回収して、後ろ手に縛り足も縛ろうとしたが挫いた所を見て悩んでいる。


「な、何を……」


「治っても君はギブアップしてるから動いちゃダメだからね」

魔法で治しながら注意をし、残り三人とどう戦うか考えていた。


「嘘……」

あれだけ辛かった痛みも腫れも引き、完全に治った事に驚いている。


「じゃあ、こうして……と」

足をしっかり縛ってから先程のように銃からゴム弾を抜き、二つ目の銃を手に入れた。


「あ、ありがとうございます」


「縛っておいてなんだけどお大事にね」

そう言うと周囲を警戒しながら残りの三人を探しに行ってしまった。




「俺に気配遮断スキルがあるのか、向こうが集中できていないのか」

あれからすぐに三人目と四人目を見つけ、背後から忍び寄り最初の子と同じように気絶させていた。


「あちゃー、まさか一対一になるなんて思わなかったよ」


「振り返るとロリっ子が銃を構えて岩の上から俺を狙っていた。……毎回思ってたけど何でみんな制服でスカートなのか。丸見えすぎてこっちが気まずい」


「ッ! ……わっ、わわっ! あぁぁぁっ!!」

バッとスカートを抑えて後ろに下がり、それでバランスを崩して落下して行った。


『……今までも見ていたんですか?』


「いや、あの、たまたま目に入っただけです……」


「くっ、この変態! 痛かったじゃない!」

涙目の少女が岩に再び登り恭夜を指差して文句を言っていた。


落ちた時に全身を打ち付け、持っていた銃もどこかに行ってしまい刃を潰したナイフを手にしている。



「俺が悪いみたいに言うな!」


「鈴仙から聞いてるんだからね。このメイドマニア!」


「DIE」

その言葉が引き金となり隠し持っていた銃で少女を狙い撃ち始めた。


「ひゃあっ!! こ、このてゐ様をビビらせるなんてやるじゃないの!」

霊力の弾が頬を掠り、足をガクガクさせながらまだ喋っている。


「お前は俺が倒すんだ……今日、ここでぇ!!」

メイドマニアだと観客全員にバラされ変態のレッテルまで貼られ、怒りやら羞恥心やらで覚醒したのか銃を乱雑にポケットにしまうと身の丈を越える程の蒼い大剣を創り出し、岩の上の方に左腕からワイヤーを射出して飛びかかっていった。


「あ……詰んだ」


「斬り捨てぇ……ごめぇぇぇぇん!! よっと、口は災いのもと」

そのままてゐを斬り捨て、先ほどのワイヤーを回収しつつ別の岩場に右腕からワイヤーを射出して着地している。


一応加減はしてあるが物凄く痛い斬撃がてゐを襲い、あまりの痛みに意識が強制シャットアウトしていた。

メイドマニアだと発覚して二割くらいの観客に引かれているが、残りの八割の内の名家の者は至急何かを手配する電話をしている。



『決まりました! メイドマ……じゃなく、メイド好……でもなく、メイド王が新技で決めましたぁぁぁぁあ!!』

実況のお姉さんは完全に善意で言ってくれたようだが、その言葉は恭夜の心にグサッと刺さっていた。


………

……


決勝の相手はまさかの早苗の在籍する学園のチームで、当然早苗がリーダーのようだが何故かメイド服を着用している。

そして恭夜は笑いすぎて涙を浮かべながら訪ねて来た紫に手渡された、メイド王と書かれたハチマキを装備していた。


「これで俺は一生おっぱいとメイド好きの変態ってレッテルを貼られるんだ……」

既にデータベースの好きな物の欄にメイドと書かれている。


「みなさん、最後は荒野で障害物なしの戦いです。戦いは数、まずは恭夜さんを金縛りにする!」

ネガティブな恭夜は開始の合図を聞き逃しており、その隙を早苗達は突いている。


早苗を除いた二人が走り恭夜を真ん中にしたトライアングルを作り出し、一番最初のチームと違い早苗お手製の札を使って霊力の封印と行動制限の呪詛で封じようとしていた。



「ギッ……!」

最初に食らった温い封印とは違い身体の動きまで止められ、霊力の流れが最低限にまで押し止められる苦痛に顔を歪めている。


「集中砲火!」

早苗の号令で五人がそれぞれ高めた霊力をぶつけ始めた。


弓で霊力の矢を射る者に霊力を衝撃波にしてぶつける者等、恭夜の戦い方を研究して得た物を使用している。

あれから早苗を筆頭にお嬢様方も変わっていったらしく、八雲以外の学園の追随を許さない程に成長していた。

皆が仲良しで温く過ごしていたのがよかったのかチームプレイに秀でており、補い合う戦いが出来て隙がない。



「……やりましたか!」

衝撃で煙が巻き起こり姿が見えなくなり、攻撃の手を止めるようハンドサインを出しながら早苗は言ってしまった。


「……超痛いよ」

前日に小悪魔姉とにゃんにゃんした事で魔力は充実しており、苦手な障壁で致命的なダメージは防いでいるが血は飛び散っている。


撒き散らされた血が札に付着しているが効果は続いており、身動きが取れないままだった。

こんなに速く追い込んだ早苗達に称賛の声と耐え切った恭夜に対する驚きの声が聞こえてくる。



「このまま削りきりましょう」

そう言うと早苗は再び攻撃の指示を出し……


「き、起爆」

飛び散った自身の血を使った魔術を発動させ、その血が付着している場所が一斉に爆発して札も一緒に消し飛んでいる。



爆発の衝撃で砂煙が巻き起こって視界が悪くなり、それぞれの位置が掴めなくなった。

早苗は焦りながらも風の流れを読み指示を出そうとするが、どこに誰がいるか分からず迷っている。



「……早苗達の戦いは素晴らしかった! コンビネーションも! 戦略も! だが、しかし! まるで全然! この俺を倒すには程遠いんだよねぇ!」

抑えられていた霊力を解放して砂煙を吹き飛ばし、早苗にそう告げていた。


「不意打ちしてくるものだとばかり……」


「正直マジで負けるかと思ったから不意打ちとか思い付かなかっただけ。……さぁ、上げて行くぞ!」

ポケットから準決勝で回収した銃を取り出し、すかさず弓を持っている二人の女生徒を狙い撃って気絶させている。



「それ返してなかったんですか!?」


「決勝の間だけ貸して貰えるように頼んだ。今日の俺は全距離行けるのだぜ」

日頃から鈴仙の厳しい指導を受けて射撃も出来るようになっているが、それはいつかガンカタをしてみたいという不純な動機から来ていた。


「ですがまだ三対一、勝機はありますよ!」

早苗はハンドサインで何かを指示し、スカートをふわっと翻して距離を取っている。


「見えっ……てません、はい真面目にやります」

大妖精から何か言われたらしくすかさず否定し、離れかけた一人の少女に向かって突撃していった。


「は、速っ」


「まずは一人……! 風か!?」

背中に蹴りを叩き込もうとしたが見えない何かに脚を押し返され、更に強い風が恭夜を阻み少女との距離が離されている。


「私が居る限り二人への攻撃は許可しません」


「やっぱり早苗か。さっき翻った時に素敵な縞……場を和ますジョークです、恭夜ジョーク!」

インカムで何か言われたらしく顔を青くしながらジョークだと言っていた。


「恭夜さんが優勝したいって言うなら、この私を倒してみてください!」


「何か告白したら倒せそうな気がする」


「こ、告白してくれるんですか?」

キリッとした空気を出していた早苗だが、告白と聞いて髪をいじりながらデレデレし始めている。


「神奈子様が観客席で頭抱えてるよ。早苗は可愛いと美人が同居してるから俺ドキドキしちゃうなー(棒)」

早苗を熱く見つめながら言い、離れた二人を見ないようにしながら大妖精の指示通りに撃っている。


「そ、そんな事を言われたら照れちゃいますよぉ……」

デレデレしすぎて風で守るのを忘れているらしく、指示通りに撃った霊力の弾丸は二人に直撃して意識を奪っていた。


「さて……早苗が告白してほしいと言うなら、俺に勝ってみせろ!」

さっきの早苗の台詞を自分も言いたかったのか殆どパクっている。


「はい! ……あ、あれ? いつのまに私だけ?」


「……フッハハハハハハハハ。笑えますねぇ、今の一件で早苗は優位性を失った。一方俺は一対一の状況を作り出せた。随分と差がつきましたぁ。悔しいでしょうねぇ」


「……あっ、今のいいです! 何かいいです! 私の心に火がつきました!」

挑発も兼ねた恭夜の台詞に動じず、早苗は逆に燃え上がってしまった。


「あ、あれー?」


「私の愛を受け止めて……ください!!」

全霊力を込めて今まで生きてきた中で最大の風を生み出し、その暴風を恭夜に向けて解き放っている。


まさかの事態に観客席には強固な霊的シールドに物理的なシールドが幾重にも張られ、実況をしていた者やスタッフ達も気絶している少女達を回収して慌てて避難を始めていた。

神奈子と諏訪子は早苗の行動に頭を抱え、ただ逃げ場のない恭夜の無事を祈っていた。



「……怖い怖い怖い!」

そんな風を見て槍を作り出しながらオロオロしている。


早苗は少し横にずれて座り込み、肩で息をしながら成り行きを見守っていた。

これが生まれて初めて出した全力であり、何故か妙にスッキリとしていた。



「威力は魔力で和らげるってパチュリーが言ってた。だから……後は言霊を乗せるだけ」

魔力と霊力を混ぜ合わせて新しく作り出した槍は三叉で白く輝き、創造するのにイメージした槍の力が強すぎるのか持っている手から全身に痛みが走っている。



「破壊神槍『トリシューラ』!! ……手があっち! 全身いってぇ!」

破壊神の持つ槍の名を宣言してそれをキリッとした顔で投擲したが、やはり痛くて辛かったらしくその場でごろごろしていた。


投擲された槍は風に阻まれる事なく暴風の中心に到達し、風の流れを完全に吹き飛ばす為に込めていた力が爆発。

そして思惑通り見事に風を吹き飛ばしていた。



「……完敗ですね」


「だからやりたくなかったんだよー! こんなに痛いの久々すぎる!」

ごろごろ転がりながら文句を言い、そのまま早苗付近まで来ていた。


………

……


「……そんな出来事が一週間前にありました」


あの後は早苗が負けを認め、ごろごろ転がる恭夜が優勝になっていた。

しかし調子に乗って使ってみたトリシューラの影響で右手は深刻な火傷、体内は霊的な大ダメージとかなりの痛手を負っていたようだった。

火傷に関しては永琳や神奈子、諏訪子がすぐに治していたようだが。



「完治に一週間もかかったなぁ……その間は大ちゃんと一緒にオペレーターが出来て幸せだったけど」

休養しろと言われたが13班を動かすには恭夜が必要で、仕方なくオペレーターをやらせていたらしい。


「旦那様もようやく明日から復帰ですね」


「モニター越しに見る咲夜もよかったんだけどな。鉄壁具合が半端なかったが」


「私が旦那様以外に見せるはずないじゃないですか。二人きりじゃないと……」


「可愛い」

目の前でモジモジする咲夜を見てストレートに言っている。


「でも日中のお見舞いは凄かったですね。最後に戦ったチームの学園の方々、この前旦那様が連れていかれたお寺の方達、警察関係の偉い方々、名家の方々、それと自称政府のこちら側に詳しい偉い方々までがひっきりなしに来てましたし」

皆が回復の速さに驚いていたが、恭夜本人はなかなか全快しない事に不満を持っていた。


「そのせいでみんなが入れる部屋に未使用の部屋のベッドを運んで、そこで寝かされてた俺の身にもなってほしかったわ。ベッドは苦手なのに」

基本的に畳に布団が好きだからこの一週間は辛く、しかも寝ていないと皆に横になるよう言われて退屈で仕方がなかったようだ。


「霍青娥様は昨日まで毎日来られていましたね」


「うん、しかも色気が半端なかった。治ったら遊びに来るよう言われたけど、そんな暇ないな」

リハビリもしないといけないのでしばらくは離れられない。


「でも言霊を乗せただけであそこまで破壊力等が上がるんですね」


「だから普段は何も言わずに投げたり創ったりしてるんだよ? 入学直後に投げたなんちゃってグングニルは練度も低く名前もモノマネだったから平気だったけど」

名前の重要性に気がついたのは藍とマンツーマンでこちら側の歴史を教えてもらっていた時だった。


「一週間前のあの槍を見たら理解できますね。急激に減っていく霊力に魔力、そして白く輝く美しい三叉の槍……みんな思わず息を呑んでましたよ」


「正直二度とやりたくない。今後も使うなら直接会って許可を貰えって諏訪子さん達が言ってたけど、シヴァ神とか怖いし遠いし直接会うとか無理無理」

様々な神話を知っているからこそ一番怖いと思っており、それならグングニルやロンギヌスの許可を貰いに行く方がマシだと思っている。


「まず旦那様は学園長と国の許可がなければ海外に出られないですしね」

裏側とは言え恭夜は外交で使えるカードのジョーカーであり、同時に要警護者でもある存在だった。


「ハワイ出雲大社でヌシカンさんに会うって事も不可能でマジ泣ける。……そういや大会前に小悪魔姉妹の実家に連れていかれた時は驚いたな、何故かご両親やら親戚やらが勢揃いしてたし。長生きだからか見た目ダンディなお爺ちゃんと可愛らしいお婆ちゃんが、俺で言う十代以上も前のご先祖様レベルの方だったし」

そんな大変な数にも物怖じせず、小悪魔姉妹に世話になっている事をしっかり話す恭夜は大物だった。


姉妹揃って一度里帰りする時に好きな人を連れていくと手紙に書いていたらしく、娘LOVEな小悪魔父が思いっきり飛びかかってきたが癖で思いっきりぶん殴ってしまっていた。

それを見ていた小悪魔妹より見た目は幼いが恭夜より年上の悪魔の女の子達が群がってきたり、恭夜好みのお姉さんタイプの悪魔が寄ってきたりと色々大変だったらしい。



「こぁとここぁから聞きました。二人の父親を完膚なきまでに叩きのめして、契約じゃなく二人を自分の物にしたとか」


「うん。二人の母親に腕とか足とか取れても再生するから、痛い目にあわせてほしいって言われたから」

四肢に槍を撃ち込み身動きが取れなくなった所に近づき、持参してきた納豆のパックを開けて幾つも口の中に入れるという悪魔も恐れる所業をやらかしたらしい。


小悪魔姉妹も当初は苦手だった物で、当然小悪魔父達も苦手だった。

高笑いしながら満面の笑みで納豆を注ぎ込む姿に皆が恐れ、あいつのが俺達より悪魔なんじゃないか?という呟きも聞こえてくる始末。

慣れれば美味しいのに、と呟く小悪魔姉妹に皆がギョッ!とした目を向けたのは言うまでもない。



「そうだったんですね。二人もずっとこっちに居られますって喜んでましたよ」


「俺が負けたら二人は返すって無理矢理決められてたから。で俺が勝ったから二人はもう俺の物だから返さないって言ったら、ダンディなお爺さんが豪快に笑いながら了承してくれたんだよ。これからは好きな時に遊びに来なさいって鍵までくれたし」

小悪魔の一族の本家の当主だったようで、気に入られた恭夜はその親戚に担ぎ上げられて宴の中に運び込まれていったようだ。


恭夜邸の地下図書館最下層には一つ、鍵のかかった悪魔を模した扉だけが固定されて置いてある。

家族以外には何の為にあるのか分からず、オブジェのような物としか思えない物だった。



「その後の宴会でこぁの親戚のお姉さんの胸を思いっきり揉んでいたとか」


「アルコール入ってたから覚えてないんだよ……マジで惜しい事をした。翌朝、帰る時にめっちゃ潤んだ瞳で見てきてこぁとここぁに両足をグリグリされたなぁ」

おっぱいマイスターの称号は伊達ではなく、場数を踏んだ事で相当なテクニックを有していたのが仇になったようだ。


「……旦那様、テクニシャンですし」

ポッと頬を赤らめながら自身の身体を抱き締めている。


「グヘヘへ、お嬢ちゃんも同じ目にあわせてやろうかー」

冗談半分にベッドで隣に腰かけていた咲夜を押し倒した。


「あっ……は、はい」

そしてお願いしますと呟いている。


「……咲夜ぁ!」

その可愛らしさにもう我慢の限界だったらしい。



次で加入する新入りの為のお話。

将来は大ちゃんの尻にしかれるのは確定的に明らか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ