超番外編 かなり危険な現代生活9
この世界の二人はこんな感じ。
警察署内に作られた捜査本部に二人の女性が居り、何かを言い合っていた。
上半身が無惨に食い千切られたような猟奇殺人の事件で、目撃情報も何もなく全てが行き詰まっている。
「先輩! それって冗談、ですよね?」
「本当よ、上から辞令も出てるわ。……何の進展もないまま捜査本部はこのまま解散、私と貴女は都市伝説だと思っていた部署に異動」
流石に急な異動を命ぜられて頭を抱えていた。
「風の噂に聞いた、化物が居る事を前提に調べるっていう部署ですよね」
「……やっぱりこれって体のいい左遷よね。小町のミスをフォローするのにも限界があったんだわ」
「映姫先輩だって小さいって言われて突っかかったりしてたじゃないですか! あたいはそれが原因だと思います!」
「……ここで小町と言い争っていても仕方ないわ。とにかく明日から異動だからデスクの整理をしないと」
映姫と呼ばれた女性はさっさと出ていってしまった。
………
……
…
それから数日が経ち、地下にある部署にお爺ちゃんと二人の女性が未解決の事件のファイルをチェックしては戻してを繰り返していた。
「――学園から今回の事件の首謀者は片付けたと報告が来たから、あんた達が捜査してた事件もお蔵入りになるよ」
お爺ちゃんは慣れたものらしく、さらっとそう告げて自身のデスクに帰っていった。
「片付けた……って」
「今回の事件の犯人を……?」
未だにオカルト的な物を信じていない二人は片付けるという言葉に衝撃を受けている。
翌日に送られてきたファイルを未解決事件の棚にしまい、改めてお爺ちゃんに話を聞きに向かっていた。
「私も来週には定年、だからあんた達には包み隠さず話しておくよ。ここはね――――」
証拠の写真や動画を提示しながら語られた話は二人にとって衝撃的なもので、詳しく知りたければアポを取って現学園長の八雲紫に挨拶に行きなさいという言葉で〆られていた。
運良く話を聞いた当日にアポが取れ、午後六時に街から外れた場所にある邸宅に来るように秘書の女性に伝えられている。
時間通りに着くよう邸宅に向かい……
「うわ、でかっ」
「……もしもし、今着きました。はい、はい……わかりました」
電話をして切るとほぼ同時に門が自動で開き、駐車スペースがある場所に二台の車が置かれているのが見えていた。
その二台の側に駐車して玄関らしき扉に向かいチャイムを鳴らすと扉が開き、キリッとしたメイド服の少女に中に招き入れられていた。
靴を脱いでスリッパに履き替えて案内された部屋に入ると、写真で見た八雲紫が待っていたが凄くだらけていてやる気が一切ないのがよく分かる。
「いらっしゃーい。私の家じゃないけど適当にくつろいでー」
「は、はぁ……」
「調子が狂うわ……」
仕方なく紫の前の席に腰掛けて様子を窺っていた。
「さっさと終わらせましょうか。貴女方があのお爺ちゃんに変わって配属されたのよね。今後ともよろしく」
警察関係にも八雲家は根深く関わっており、異形に関わる情報は逐一流れてくるようになっている。
「……それであの化物はいったい?」
「人の妬み、憎しみと言った負の感情が集まり産み出される異形。そんな終わりのない戦いを私達は何百年と続けているわ」
鬼退治等の伝説も情報封鎖が出来なかった事から広まり、おとぎ話や逸話として残る形となっている。
「異形……」
「何か他に呼び名とかないんですか?」
「ないわ。下手に名前を付けると言霊が宿って厄介な事になるもの。あんな存在の呼び名は異形で十分よ」
何百年も前に名付けようとして色々あった資料があるのか、誰も名前を付けようとしないらしい。
「それと今回その異形を始末したのは貴女の学園の者だと聞いたのですが」
「ええ、そうよ。今はそこで気持ち良さそうに寝てるわ」
離れた場所にあるソファを指差しながら答えている。
「他にも色々とお聞かせしてもらいたい事が……」
………
……
…
「……成る程」
「あの学園の謎をこんな場所で知らされるなんて」
「こんな場所で悪かったな。で、誰だよあんた等」
寝起きで自分の大切な家をこんな場所扱いされてるのを聞き、不機嫌そうに身体を起こして二人にキツい口調で尋ねている。
「こら、小町! 申し訳ありません、私がキツく叱っておきますのでお気を悪くしないでください」
「痛いですよ先輩!」
映姫に頭を掴まれ無理矢理下げさせられており、悪気は一切なかったのに理不尽だと考えていた。
「で、誰?」
ふぁ……と欠伸をして開いた口を手のひらで隠しながら改めて尋ねている。
「私は四季映姫で、こっちのは小野塚小町。警察の未解決事件の見直しをする部署にいるの」
「生意気なお子様……いだだだだ!」
余計な発言で更に心証を悪くしようとした小町だが、映姫にアイアンクローをされて悶えていた。
「俺より小野塚さんのがお子様っぽいと思いますけど。上司にアイアンクローされてますし」
「ここは彼のご両親と四人の祖父母が残してくれた大切な家なのよ。それをこんな場所呼ばわりしたら、穏和な彼でもこのような態度になりますわ」
一応恭夜への心証が悪くならないようにフォローを入れている。
「それは……ごめん、あたいは君の気持ちを考えてなかったよ。仲直りしてもらえないかい?」
映姫から解放されると恭夜の元に近づき、プライベート用の自分でしっかりと謝っていた。
「まぁ、いつまでも意地を張っていても仕方ないですし……」
何より眠気が飛んだのと胸が大きいのを確認して態度が軟化している。
「よかったよ! 今度お姉さんがラーメン奢ったげるからね!」
「それは楽しみです。味噌がいいなぁ」
味噌ラーメンが大好きでインスタントラーメンも味噌という徹底ぶり。
「ちなみにうちの切り札は胸の大きな女性には物凄く優しい事が一部で有名よ」
「やっぱり胸ですか、胸なんですか?」
ギリッと会話をして徐々に仲良くなっていく二人を憎々しげに見ていた。
予め夕食をご馳走する事になっていて、咲夜の手料理を皆で楽しみ会話も弾んでいる。
映姫が会話に混ざりながらよく見てみると殆ど国籍がバラバラで、容姿もロリからスタイル抜群の女性しかいない事が分かった。
恭夜をよく見てみると服の左胸の辺りに可愛らしいカエルのバッジを付けていて、見た目とのアンバランスさに思わず笑いそうになってしまう。
「……? あぁ、これ欲しいんですか? 特に何の力も込められてないケロちゃんバッジなら腐るほどあるのであげますけど。ってか持っていってくださいお願いします」
帰ってくる時にダンボール三つ分くらい持たされたらしく、身内や友人に配っても大量に有り余っているらしい。
「え? あっ、いえ、可愛らしいなと思いまして」
「随分可愛らしいの付けてるなーってあたいも思ってたよ」
既に小町は恭夜と打ち解けたらしく、他の女性陣とも仲良くなっていた。
「咲夜」
「はい、ここに」
既に準備済みだったらしくケロちゃんバッジを持った咲夜がサッと現れ、映姫と小町の前に置いてすぐに恭夜の隣の席に戻っていった。
「固いのかと思ったら柔らかい謎素材……」
「あ、付属品と付け替えたら髪飾りにも出来るって書いてありますよ先輩!」
謎素材のバッジと説明書を見ながら二人は騒いでいる。
「何か重いなぁって思ったらダンボールの中からカエルの置物が出てきたり、諏訪子様やりたい放題すぎて笑うしかない」
「旦那様の部屋の隅に設置されたあれですね。たまに見られているような気がするので庭に置きませんか?」
「そうだなー……菜園にでも設置しようか」
確かに見られている気がするからと最近は壁の方にカエルの顔を向けていた。
「それはダメだよ、雨とか降ってたら私が濡れちゃうでしょ」
「……ん?」
お客様が居るからと左隣の席は空けていたはずだが、声が聞こえてきたので目を向けた。
「神奈子と早苗の目を盗みながらあれを分社扱いにするのに二週間もかかっちゃった。これで交通費なしで行き来が出来るよ!」
気の迷いから一週間で幾度も関係を持ってしまった、素敵な笑顔のロリ神様が座っている。
「神様でも交通費かかるんだなぁ……」
「寂しかった?」
「いや、全然」
「もう素直じゃないんだから。今日はもう帰るけど、これからちょくちょく遊びに来るからね」
ばいばーい!と呆気に取られる咲夜を尻目に帰っていってしまった。
「嵐のようなロリ神様だった。幸い俺と咲夜しか見てなかったようだけど」
「……あれが神様」
そんな出会いや再会から二週間程が経ち、いつか力を借りる時の為に実力が見たいと警察コンビが再び七夜月邸にやってきていた。
「こまっちゃんと四季さん、いらっしゃい。学園長はまだ来てないからくつろいでて」
「あはは、恭夜君悪いねー」
「お邪魔します……ちょっと待ってください、こまっちゃんって何ですか?」
ナチュラルに小町を親しげに呼ぶ恭夜に思わず待ったをかけていた。
「え? 小町さんをそう呼んだだけですが。毎日メールしたり昨日はラーメン御馳走になったりして仲良くなりましたし」
「そーですよ映姫先輩。昨日早く上がらせてくれたじゃないですか」
約束を果たす為にアドレスと番号を交換し、ちゃんとラーメンを奢っていたらしい。
「な、なんで貴女は私を誘わないの!」
「だって映姫先輩忙しそうでしたし」
「『先輩、あたい久々に彼に会いに行きたいんですけど……』とか言うからてっきり貴女の彼氏と会うものだと思ったじゃない! そうじゃなかったら私も貴女の分の書類整理を引き受けなかったわよ!」
モジモジしながら頼む小町に苦笑し、仕方なく先輩風を吹かして引き受けた事を後悔していた。
「もう先輩、私に彼氏がいるわけないじゃないですかー。居たら毎日遅くまでファイル整理に残ったり、地下に泊まったりしませんよー」
「私だっていないわよ! 孫がみたい攻撃をしてくる両親、見た目がこんなだから寄ってくるのは変な男ばかり……しかも夜中にコンビニに行って同業者に会えば補導されそうになるし」
「先輩が必死すぎて恭夜君が引いてますよ」
「こまっちゃんが酔ってエレエレした時よりは引いてないよ。昨日ここまで連れてくるの大変だったんだから。咲夜もドン引きです……って言ってたし」
そのまま処理をしている内に眠った小町を咲夜に任せ、綺麗にしてから客室に寝かせたらしい。
「……小町、七夜月さんに手を出したら逮捕よ。未成年なんだから」
「そんなの当たり前じゃないですかー」
「それなら俺から手を出すのはありなんですか?」
二人が会話をするのを眺めていたが少し口を挟んでいる。
「ダメに決まっているでしょう」
「あたいに手を出したら将来養ってもらうよ」
「四季さんの無表情が超怖い……まぁ、出さないけど。最近は色々厄介な事もあるし」
こちら側の者からしたら恭夜は歩く宝石箱のようなもので、諏訪子の加護を受けたドMとして知名度も一気に上がって最近ちょっかいを出されるようになっている。
「物凄く貴重な存在だと資料で見たけど……直接会っても実感がわかないわね」
「あ、先輩もそう思ってました? 基本的にそこらの男子高校生と同じですし、あのメイドの子曰くおっぱい星人ですし」
「咲夜は何言ってんの!?」
知られたくない秘密を咲夜によってバラされていた。
「よし逮捕しましょう」
「やめて! 俺は別に悪い事してないよ!」
手錠を取り出しにじり寄ってくる映姫にビビり、椅子から立ち上がり小町の後ろに逃げ込んでいる。
「まぁまぁ、先輩落ち着いて。この年頃の子だと仕方ないですって」
「そ、そうね。この年頃でど、どーてーなぼーやは大人な私達の魅力にもやられて」
「顔赤いしすっごい目が泳いでて無理してる……」
言い慣れない言葉にしどろもどろになっている映姫を見て、恭夜はニヤつきそうになるのを必死に耐えている。
「うわぁ……」
小町は小町でドン引きしていた。
………
……
…
それからすぐに紫達が訪れ、異形を誘引する術式が組まれている学園内に小町と映姫を連れて戻っていく。
到着してすぐ様々な班に紫が今後世話になる二人を紹介し、それぞれが己の獲物を手にしながら話を聞いている。
「十二月も近いし負の感情も強くなってるから今年からの新参者は注意なさい。前から居る者は気を緩めないように」
二月と十二月は特に強くなるので激戦が想定されており、数も増えて毎年怪我人や離脱者が増えてしまう。
「……まぁ、今年は13班もいるし怪我人は少ないでしょうけど。頼るのは最終手段、とにかく気をつけるように」
そんな紫の言葉に皆が元気良く返事をし、それぞれの持ち場に散っていった。
「あの、七夜月さんが貴女の話を聞かないでお茶飲んでましたが……」
「水筒で普通に飲んでましたね。あの金髪の女の子と青い髪の女の子も飲んでましたけど」
疑似三兄妹は寒さに弱く温かい飲み物で暖を取っていたらしい。
「いつもの事よ。あの班には専属のオペレーターもいて、その子から聞くでしょうし。……私達も行きましょうか」
恭夜班とお揃いのインカムを付けた緑の髪の少女が居り、恭夜達と何か話をしてから校舎に走っていった。
広い学園長室の中には多数のモニターがあり様々な班が異形を駆逐する姿が映っていて、何人かの女生徒が手元のレーダーのような物とPCに表示される既存の異形のデータを見ながらオペレートしている姿も見られる。
他のオペレーターから隔離されるように用意された場所には先程の緑の髪の少女が居り、何かを答えながら様々な処理をこなしていた。
「今日は7班と行動を共にしてください。……はい、数人病欠していますから穴埋めも兼ねています。過剰じゃないか、ですか? この時期は統計的に考えると多い方が安全ですから」
指示を出しながら全ての班のデータを確認、救援要請も随時チェックしている。
「……刀に遊ばれる恭夜は相変わらず可愛いわ」
幽々子から贈られた刀で異形を切り裂く姿がモニターに映り、紫はうっとりとした表情で見ていた。
「どうやって手に入れたのかは謎ですが、魔理沙と霊夢用にと持ってきたミニ八卦炉と陰陽玉で二人の火力も上がりましたね」
恭夜は班員用に色々用意しているようだが、霊夢にあの巫女服を渡したら思いっきりひっぱたかれて変態呼ばわりされる羽目になっている。
ミニ八卦炉と陰陽玉は購入時に霖之助にかなり吹っ掛けられたようだが、恭夜がデートをしてくれるのならば五百円でいいという取引の末に手に入れている。
ちなみに今週末がその予定らしい。
「七夜月さんよりもあの班にいる子達のが強力なような気が……」
派手に暴れるフラン、レミリアがかなり目立っていて恭夜は良くも悪くも普通に見えている。
「あのメイドの子もナイフで華麗に切り裂いてますし、後方の三人も討ち漏らしを的確に処理してますよ先輩」
「恭夜はいざという時の為に節約するから地味に見えるのよ。あの姉妹があのペースで戦うと後半使い物にならなくなるから、必ず途中で恭夜が止めるわよ……ほらね」
紫がそう話しているとモニターに恭夜が映り、二人に向かって何かを叫ぶと暴れるのをすぐに止めている。
「あ、七夜月さんの後ろに!」
巨大な狼のような異形が口を開き飛びかかるのを目撃し、思わず目を閉じてしまっていた。
「えぇぇぇぇ……」
すると隣から小町が信じられないというような声を漏らすのが耳に入ってくる。
「……え?」
目を開いてモニターを見ると、巨狼が恭夜の持つ蒼い槍に串刺しにされている姿があった。
「霊力を固めて作る槍、想像して創造する事が出来るのは今の時点では彼だけよ。もうすぐレミリアも出来そうだけど」
色違いでお揃いの紅い槍を作り出そうと、想像して創造する事を毎日自室でがんばっている。
「何て危険な……」
常時人を殺せる武器を所持しているような物と考えて映姫はゾッとしていた。
「だからこそ貴女方に貸し与えられるのよ。異形絡みの調査に武器なしで他の子達を連れて行かせる訳にはいかないもの」
「おおっ! 鋭い回し蹴りで首を消し飛ばして……違うのに飛び乗ったと思ったら顔面を踏みつけてますよ先輩!」
身体も暖まったらしくモニターに体術だけで暴れ始めた恭夜が映し出されていた。
「半分になって帰ってきた時は卒倒するかと思ったけど、それでも十分すぎる程でよかったわ」
諏訪子の加護を受けてきたと告げられて頭を抱えたが、夏までの強さと同等でホッとしたらしい。
「今後危険な調査を私達が行う時には彼を貸していただける、という事ですか?」
「ええ、今の内から様々な方面に恭夜を見せつけておかないといけないからね。警察のお偉い方々も恭夜が貴女達と一緒に行動していると知れば挨拶に来るわよ?」
八雲側は最大戦力を無償で貸す事で恩を着せる事ができ、今後も色々と手回しが楽になってwin-winの関係らしい。
特殊な事件の調査にこちら側の者を派遣してもらえれば命を落とす者が減る、と警察側は八雲と何年も交渉していてそれがようやく実っていた。
「……彼ってそれ程までに貴重なんですか?」
「世界的にも珍しい強すぎる霊力を持った男、過去の英雄に比肩するような力、見た目も最上級。そんな恭夜の精子は億でも安いって言われる程よ」
この国も含め様々な国で男子の質が年々落ちており、海外からも買い取りたいという話が来ている。
そんな本人を友人なんだから貸してくれと西行寺の某お嬢は何度も頼み込んできているようだが。
八雲本家はそんな超レアな恭夜を確保した紫に完全掌握されており、隠遁している紫の母親はそんな娘の行動を手紙で知って笑い、九歳くらいの紫に似た女の子と二人でのんびり暮らしている。
ほんの少し目つきが恭夜に似ているような……。
「お、億!?」
「まぁ、売らないけどね。彼と波長の合う子が好意を持って産んでもいいと思った場合は子作りさせるけど」
その為に様々な場所に派遣してはフラグを立てさせたり、普段は緩い恭夜を使って自身の学園への対抗心を削ぎ落とそうとしていた。
「な、生々しい……」
「私も恭夜が最盛期を迎えたら孕む予定だけど、どんなスペックの子が産まれるか今から楽しみだわ」
高スペック同士の子供故に期待度が凄く、生まれが低スペックでも恭夜のように突然急激に伸びる可能性もあるから大事に育てられるのは間違いなかった。
「へー、大変なんですね。映姫先輩、そんな恭夜君を預かるなんて責任重大ですよ」
「うぅ、胃が痛くなるわ……」
予想以上に大切にされている存在を預かる事になり、胃がキリキリと痛んでいる。
………
……
…
二人が見学をしてから十日程が経ち、もうすぐ十二月に突入しようとしていた。
「って言っても午前中に微量のデスクワークをして午後に恭夜の家に遊びに行くくらいしかやる事ないんですよねー」
「ほぼ毎日来るのは恭夜さんに迷惑がかかるからって言ってるのに。あ、これお土産です」
映姫はコンビニで購入した飲み物が入った袋を咲夜に手渡し、だらけている小町の隣に座った。
「それは別に構わないですよ。学園長とか週五で来ますし」
「ありがとー。最近はお偉いさん方が恭夜と八雲さんによろしく言うように訪ねて来るから大変なんだよね」
すっかり仲良くなっていつのまにか名前が呼び捨てになっている。
「あはは、疲れてるならマッサージくらいは出来るよ?」
「んー……後でお願いしようかな。明日はお休みだしね」
「また泊まってく? 美鈴がお酒一緒に飲める相手が出来て喜ぶよ」
「そうだね、そうしようかな。あの人と話ながら飲むのあたい結構好きなんだ」
「吐くのはやめてね。片付けとこまっちゃんをお風呂に入れるのが大変だから」
物凄く馴染みすぎるくらい馴染んでいて家族みたいな扱いになっている。
「あはは、ごめんごめん」
異性というよりも弟のような扱いをしているが、最近美鈴の惚気で少しずつ洗脳され異性として見始めている。
「相変わらず仲良しね」
「俺は四季……映姫さんも遊びに来て欲しいですよ」
疎外感を感じないように名前呼びをしている。
「小町、今度から私も誘いなさいね。恭夜さんからお誘いされてるんだから」
「はーい」
「しかし二人はこぁとここぁ見ても動じなくなったよね」
離れた場所でパチュリーとアリスの回りをちょろちょろしている小悪魔姉妹を見て呟いた。
「恭夜が大好きなだけの面白い悪魔だよね」
「今更悪魔くらいで驚きませんよ。あの時のゾンビは夢に出ましたけど」
「あの二人が居ないと色々と大変だから、こまっちゃん達が慣れてくれてよかったよ」
体内を流れる魔力の調整は小悪魔姉妹頼りであり、二人とはよく同衾して互いに補い合っている。
「こぁちゃんはあたいみたいで、ここぁちゃんは映姫先輩みたいですよね」
「へぇ……どこが?」
「それは間違いなくたゆんたゆんな部分の差かと……い、いひゃいれす」
余計な事を口にした途端映姫が立ち上がり、ニコニコしながら恭夜の頬を強くつねりながら引っ張り始めていた。
「うふふふふ」
「自然に地雷を踏み抜くから止める暇もなかったよ」
笑顔が怖い映姫に弄ばれる恭夜を見てそう呟いた。
二人は劣化相棒+劣化地下編纂室みたいな感じ。
普通の人から見れば左遷、こちら側を知る者から見れば栄転。




