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超番外編 かなり危険な現代生活6

ある意味過去編的なもの。


無反応な機械のような空を飛ぶ異形が現れ、危険度も不明故に恭夜班が派遣されている。

恭夜を前衛に攻撃を仕掛けて動きが鈍り始めていたが、最後の抵抗なのか少しだけ前に出すぎた鈴仙に謎の閃光を放ち……


「しまっ……!」

恭夜はそんな鈴仙を庇うために突き飛ばし、そのまま避ける間もなく閃光に飲まれてしまった。



「あっ……恭夜ぁっ!!」

慌てて立ち上がり見回したが恭夜と異形の姿形はなく、鈴仙は真っ青になって恭夜の名を呼びながら探し始めている。


咲夜も真っ青になりながら鈴仙のように名前を呼びながら探し始め、霊夢と魔理沙は紫に報告をしてから捜索を始めていた。


………

……


???


「……逃がしたか。しかし、ここはどこなんだろう。携帯も圏外で繋がらないしインカムで話しかけても反応ないし。学園内の森のような場所なのに」

銃剣を腰に下げたケースにしまうと独り言を呟きながら歩き始めた。


しばらく歩くと争うような声が聞こえてきて、急いでその場に向かっている。



「こいつら急に増えたわ……!」


「くっ……後ろよ!」

黒髪ロングで枝のような物を手にした制服の女生徒と銀髪を三つ編みにした和弓を手にした制服姿の女生徒が異形に囲まれていた。


「えっ……?」

接近を許してしまい振り上げた拳が黒髪の女生徒を捉え……


「ふんっ!」

たが割って入った恭夜の蹴りで頭を砕かれてそのまま消えていった。


「あ……」


「……誰?」


「詳しい事は後にしよう。今は切り抜ける事だけを考えて」

ケースから二本の銃剣を取り出し握り締めてそう告げていた。




先程まで戦っていた異形より遥かに弱く、数が多い事以外は大した事はなく恭夜無双で簡単に殲滅していた。

が、不審人物であるのに変わりはなく二人から武器を向けられ銃剣をしまってから両手をあげて降参している。

そのまま無言で連行され、見覚えのある学園の学園長室に通された。


「八意さん、蓬莱山さん、ご苦労様。それでこの方が?」


「はい、いきなり現れました。囲まれていた所を助けられたのですが、かなり怪しいので連れてきました」

銃剣の入ったケースは取り上げられ、一応と後ろ手で縛られている。


「……」

紫に似た知らない女性が学園長の椅子に座っており、恭夜は何かを察したのか少し顔色が悪い。


「……それで貴方はどこから来たのかしら? うちの制服を着ているみたいだけど、貴方みたいな生徒がいるはずないんだけど」


「……信じてもらえるかわからないですけど」

そう前置きをして推測等を交えて今ここにいる理由を話始めた。


………

……


「……成る程、未来から来たって事ね。あの時に反応したとても強い力はその異形かしら」


「そうとしか思えないんです。多分この時代に逃げ込んだあいつを狩れば戻れると思います」

既に拘束は解かれているが銃剣は流石に返してはもらえない。


「ええ、そうよ。すぐに部屋を一つ空けなさい。……しばらく私のお客が逗留するのよ」

すぐにどこかに電話をかけ、恭夜の住む場所を確保してくれている。


「……」


「……」


「……怖い」

既に自己紹介をしており二人が女尊男卑の学園のものだと分かってしまい、ジーッと見てくる二人が怖くて仕方がなかった。


未来で様々な学園のトップにいる大体の者はこの学園で過ごしており、この時代では紫や藍も在籍している。




そんな出会いから数週間が経ち、この時代の面々との挨拶もお面を付けて済ませ今は八雲家の用意した一軒家に住んでいた。

霊力ではなく体術だけで刈り取るから燃費も使い勝手もよく、ずば抜けた戦闘力からか事あるごとに呼び出されている。

報酬も未来と変わらず出ているから恭夜は気にしていない。


「未来での片寄った思想を緩和出来ないかと夜の見回り兼討伐にあの二人と回っていたら……」


「恭夜、早く来なさいよ」


「置いていくわよ」

独り言を呟く恭夜が制服姿の二人に急かされていた。


「休みの日に呼び出されるようになりました。どうしてこうなったのか私には分かりません」

夜にかばう等の行動を繰り返した結果好感度がずば抜けて高くなっていた。


「いつも制服なんだから私服くらい買いなさいよ」


「だって学園長がタダで何着も貸してくれるから。これなら学園行く時も楽だし」

接していて分かったが今は二人とも女尊男卑の思想はなく、普通の男女としての関係を築いている。


「私服くらい買いなさい。……見た目と性格はいいのに服装に無頓着すぎるわ」


「八意、何か言った?」

二人は名前で呼んでくるが、恭夜は名字で呼び捨てにしている。


「何でもないわ」


「さいですか。……絶対APP18あるよね、この二人」

恭夜含めて皆が振り返るような容姿をしており、逆に声を掛けられない程だった。


この時代に飛ばされる前は家族とよくTRPGをしており、GMではなくプレイヤーとしてよく参加している。

最初は普通にロールプレイをしているが、途中から某希望厨のようなキャラに変貌して引っ掻き回す厄介な男だった。

君達のような希望の踏み台になれるなんて!と稀に弾除けになったり、自由すぎてGMが頭を抱えたりとやりたい放題。



「だけど恭夜がゲーマーだったのは嬉しい誤算だったわ」


「八意と一緒に部屋に乗り込んできた時は何が起きたのかと思ったけどな」

今は学園近くの八雲家が管理している家に住んでおり、紫の母親である学園長を含めて毎日誰かしらが訪ねてきている。


「そろそろえっちな本も増えたかしら?」


「輝夜、公衆の面前でやめなさい。家捜しならこの後に出来るんだから」

来る度に二人とも楽しそうに家捜しをするらしく、大切な物は巧妙に隠している


「蓬莱山が家捜しするのは分かるけど、何で八意までノリノリなのかが疑問すぎる。毎回いつのまにか洗濯機を動かしてたりもするし」


「ま、まぁ、いいじゃないのそれは」


「目が泳いでて怪しさマックス。蓬莱山は何か知らない?」

慌てる永琳を見て思わず輝夜に尋ねていた。


「永琳の鞄が不自然に膨らんでた事くらいしか」


「知ってるじゃないか。てか柔軟剤とかなくなってたわけじゃないし、膨らんでたっていったい何が……」

いったい何を盗られたのかが分からず悩んでいる。


「あ、着いた。早く服を買って恭夜の家で遊びましょ」


「そ、そうよ!」


「この事は後でキッチリと追求しよう」


………

……


二人を伴って帰宅すると購入した服を着てこいと脱衣場に押し込められ、その間に二人は家捜しをし始めていた。

選んでもらった服を着ながらレミリア達を思い出し、物凄いホームシックにかかって泣きそうになっている。


「……帰りたいなぁ」

この世界では異邦人の一人ぼっちであり、過去の両親と自分を見に行って孤独感が更に強まっていた。


「ちょっと帰りたいってどういう事よ!!」


「俺が着替え中なのに突撃してくるなよな。てか何で耳をすまして聞いてんだよ」


「べ、別に今はいいでしょその事は」

嫌なフラグを折っていく内に違うフラグが立っていたらしい。


「いや、よくないと思うの」


「あまり追求するならこの前の見回りの時に永琳の胸を凝視してた事をバラすけど」


「ちょっ」


「デレデレしちゃって気づかれてないと思った? 私は知ってるんだからね」

輝夜の美貌に流されずにいる恭夜が永琳にデレデレしていたのを見て嫉妬している。


「逆にあんな美人さんのを凝視しないで誰のを凝視するんだよ」


「私」

ふふん、と胸を張って即答していた。


「俺、山と丘だったら山を見たい派なの」

大は小を兼ねる派で大きい方が好きだった。


「馬鹿ね、丘には丘のいい所があるのよ」


「触らせてくれるなら良さが分かるかもしれないなー、ぐへへ」

手をわきわきさせながら少しずつ輝夜に近づいている。


「別にいいけどそうなったら責任取ってもらうわ」


「それは無理だなぁ」

何となくそろそろ別れの時が来るのを察しており、友人としての付き合いも最小限にしようと考えていた。


「私達と一緒にこの時代で暮らせばいいじゃない」


「俺はイレギュラーだから、いつかは消えるんだよ」

決着をつける時が別れの時であり、仲良くなればなるほど別れが辛くなる事から目を反らしていたがそれも出来なくなっている。


「……それなら未来で絶対捕まえるからね。私、欲しいものは必ず手に入れないと気がすまないの」


「イヒヒ、楽しみにしとくよ。美人さんに迫られるとか男冥利に尽きるし」

ただし紫には怒られる模様。


「永琳もきっと同じ事を言うわよ」


「やばい、八意に言われたら元の時代に帰るのが凄く楽しみになりそう。スタイル抜群の大人のお姉さんとかマジでたまらんわ」

元の時代ではチラ見した程度で会っていないから、ちょっと楽しみなようだった。


「スケベ」


「やだ……その冷たい目で言われるとゾクゾクしちゃう。冗談はさておき、晩飯はまた食ってくんだろ?」

女子と一緒に青春を満喫している。


「そんなの当たり前じゃない」


「それじゃあ、準備してくるから。……てか毎日食べに来るのはどうなんだよ」

毎晩食べて行くので寮の前まで送る事になっていた。




夕飯が終わり二人を寮まで送り、自宅で寛いでいるとチャイムが鳴り玄関まで出ている。


「はい……八意?」


「あの、中に入ってもいい?」

いつもとは違い制服姿でモジモジしながら遠慮がちに聞いてきていた。


「いいよ、忘れ物? 電話かメールしてくれたら明日届けに行ったのに」

招き入れてから鍵をかけ、数時間前まで使っていた部屋に案内している。



部屋に案内しても何かを探すわけでもなく、持ってきていた鞄を置いて深呼吸をすると意を決したらしくいきなり抱きついてきた。


「ちょっ、いきなり何を!」


「……思い出が欲しいの。貴方は近い内に居なくなるって輝夜から聞いたのよ」

輝夜ではなく永琳の方が好感度が高かったらしく、元の時代に帰したくないという思いがとても強い。


「お、思い出?」


「……わかってるくせに」


………

……


外は既に明るくなりチュンチュンと鳥が鳴き始めていた。


「……色んな意味でやっちまった」

隣で恭夜の腕を使ってスヤスヤ幸せそうに眠る永琳を見て呟いている。


小悪魔姉で鍛えた技術で色々やったらしく、恭夜という存在を刻み付けるには十分すぎるほどだった。

互いに名前で呼び合うようにもなり、身も心も一つになっている。



「でも可愛かったからいいか」

もうどうにもならないのは確定してしまったから開き直っていた。


「お、おはよう」


「永琳起きてたの?」


「今……」

そう答え照れながらも恭夜にそっと抱きついている。


「可愛すぎて辛い」

背に軽く手を回して抱き寄せて密着した。


「これで私は貴方を忘れない、あなたの時代で勝ちに行くわ」


「そっか」

青春を謳歌した代償にしてはご褒美であり、少し怖いが元の時代でどうなっているか楽しみでもあった。




それからの数週間は二人とデートをしてみたり、二人がお泊まりに来たりと別れを惜しむように三人で行動を共にしている。

二人に何かあったのを察した輝夜は二人きりにはせず、二人の間をキープして永琳を牽制しつつ恭夜と腕を組んで山ではなく丘の良さを力説している。

そんな光景を見ていた学園の生徒は難攻不落の二人と共にいる恭夜を見ては驚いていた。


「結局学園長に永琳と蓬莱山以外と会う時は必ず何かしらのお面つけさせられてたな。安いし分かり難いからって言ってたけど」

夜の見回りの当番の時にはお祭りの屋台で売っていそうなヒーロー物や魔法少女系のお面を被らされていて、今はパンのヒーローのお面をつけている。


「……」


「……」


「今日でお別れだけど、大体十年後にまた会えるから」

すっかり暗くなってしまった二人に明るく声を掛けているが、約二ヶ月の生活で二人とこのまま青春を謳歌したいという未練が残っていた。


「……そうね」


「十年とか私達だけ二十歳余裕で越えちゃうじゃない。……大人のお姉さんの魅力でノックアウトしろって事?」


「蓬莱山がおかしい事を言ってるけどそろそろ行こうか。俺は元の時代に帰る為に、他の人達はこれ以上被害を出さない為に」

魔力で出来た紅く禍々しい槍を手にしながら二人を促していた。




機械のような異形は修復以外に手足まで付き、さらに一回り巨大になり頑強になっていた。

この時代に現れる異形とは全てのスペックが段違いであり、救援に駆けつけた者達も手を出せない。

お面の男だけは巧みに攻撃を避け、持っている槍で少しずつパーツを削り落としていく。


「足なんて飾りですって誰かが言ってたんだぜ? 飛んでりゃよかったのに」

機動力を得て恭夜に対抗する為に付けた両足だが、紅い槍で簡単に砕かれてしまいバランスが取れず前方に倒れ込んでしまった。


「ほいっと」

起き上がろうとして地についた腕を槍の刃の部分で軽く切断し、もう片方の腕も同じように切断して初遭遇時と同じ状態に戻している。


一方的すぎる展開に皆が呆気に取られる中、そのままトドメを刺そうと身体の上に登り槍を振りかぶり……


「……」

輝夜と永琳にだけ見えるようにお面を外し、何かを呟くと容赦なく異形の核を撃ち貫いた。


凄まじい閃光と断末魔のような音が上がり、皆が気がつくともうその場には異形もお面の男も存在していなかった。

唯一残っていたのは彼が付けていたパンのヒーローのお面だけであり、この時代から本当に居なくなったのだと理解して輝夜と永琳は凄い喪失感を味わいながらもお面を回収して学園長の元へと報告に向かっていった。


「……何が『さよなら、また会う日まで』よ。格好つけちゃって、あんなに強いなら最初から言いなさいよね」


「きっと私達が甘えないように私達に合わせていたんでしょうね。任せればいいって考えてしまうし、彼が去った後の事まで考えて……」

冷静に話しているようだが二人とも少し瞳が潤んでおり、声も若干震えていて覇気がなかった。


………

……


元の時代に戻ってきたようだが足元の異形は叫び声のようなものを上げ続け、さらにかなりの上空に現れたらしく凄い勢いで落下している。

地表まで後少しという所で異形が狂ったような声を上げて消えてしまい、緩衝材がなくなってしまい恭夜は真っ青になっていた。


「し、身体強化!」

魔力と霊力で内と外を強化し、そのまま……



恭夜がロストして三日、咲夜と鈴仙に八雲の二人は暗い雰囲気のまま学園長室で待機している。

他の者達が必死に捜索しているが手がかりも全くなく、絶望的な状況に皆が何も言わずソファや椅子に座っていた。

ノックもなくいきなりドアが開き、皆が目を向けるとスーツ姿の永琳と物凄いお洒落をした輝夜が立っている。


「……貴女達、どうしてここに?」


「鈴仙から彼が消えたから手を貸してくださいと連絡があったからよ。待ちに待った時が来たわ」


「ふふん、女尊男卑って捏造した噂を自ら流したりしてこっちの動きを悟られないようにしてて正解ね」

今日に到るまでの八割は嘘だったようで、可愛さが普段の120%増しな輝夜は胸を張ってどや顔を決めていた。


鈴仙に関しては学園の校風が合わずに悩んでいたのを知った二人が八雲側に預ける為に一芝居をし、後は運を天に任せて恭夜に拾われるように仕向けていたらしい。

恭夜が消えたという連絡を受けてからすぐにネタばらしをし、かつての仲間も会いたがっているからたまには帰ってきていいと和解も済んでいる。



「確かに捜索するには数が多ければいいけど……待ちに待った時が来たってどういう事?」

皆は恭夜が消えて落ち込んでいるのに嬉しそうな二人の様子にイライラしていた。


「……本当に十年待たされるなんて思わなかったわ」

そう呟くと鞄から古くなったパンのヒーローのお面を取り出している。


「それってあの時に紅い槍で妙な強い異形を倒して消えた男の……あぁっ!?」

紫も救援の名目でその場に居たようで特徴を色々と思い出し、ようやく正体に気がついて思わず椅子から立ち上がっていた。


「あの日、あの時、あの場所に居たのよ」


「そ、そんなバカな……」

紅い魔力の禍々しい槍と剛の戦い方をしていたからか、蒼い槍で柔の戦い方をする恭夜と結び付かなかったらしい。


「あの貴女方と旦那様のご関係は?」

嫌な予感がしながらも咲夜は尋ねている。


「学園在籍時代にイチャイチャして一線を越えた仲」


「これからすぐに一線を越えてイチャイチャする仲」

一人は本当の事を言い、もう一人は願望を言っていた。


「旦那様にお仕置きをして私もなりふり構わず一線を越えます」

輝夜はスルーしたようだが永琳に関してはスルーできず、帰ってきたら即動こうと覚悟を決めている。


「過去で何があったかは知らないけど、彼は私のお婿さん候補なんだからね!!」


「本妻、妾。……ふっ」

永琳は自分を指差してから紫を指差して鼻で笑っていた。


永琳から爆弾が投下された事で学園長室は物凄くカオスで大変な事になっていた。


………

……


「入りたくないでござる」

無事に着地出来たようで五体満足で帰還の報告に来たようだが、仲で騒ぐ声に入りたくなくなっている。



「とりあえず永琳のはズルだからなしよ!」


「その意見に私は賛成よ!」


「流石に反則で無効ですわ!」


「色仕掛けじゃないですか!」


「……私は一緒に居られるなら何番目でも」


「ふふ、負け犬達の遠吠えが心地いいわね。基本的には年上が好きって言っていたし、今の私なら間違いなくドストライクよ」



「よし、お家に帰って二ヶ月ぶりに大天使フランちゃんを甘やかそう」

甘え上手と甘やかし上手が合わさって最強であり、犯罪の匂いがぷんぷんする組み合わせになっている。


海外では普通と言われてフランとの挨拶で軽く頬にキスをするようになっていた。

口ではないのが不満で、一度だけ頬に触れる瞬間に正面を向いて口にキスをしてもらっている。

好感度がカンストしている皆の前だったせいで、それを見た直後にフランの背後に列ができていたようだが。



「早速……ヒッ!?」

そっと離れて帰ろうとするとバン!と学園長室の扉が開き、そこにはこちらを見て皆が怖い笑顔で手招きをする姿があった。



逃げられる訳もなく重い足取りで中に入ると永琳に手を出した事を烈火の如く責められ、何故自分達には手を出さないのかと責められている。

永琳だけはニコニコしながら可愛らしく手を振ってきたりして余計に他の者達を煽る結果になっていた。

据え膳食わねばなんとやらだと言い返すも、私達は据え膳じゃないのかと痛烈なカウンターが返ってきて何も言えなくなっている。


「うぐっ……!」


「私が、私達が毎日毎日旦那様の就寝前に無防備さを装って部屋を訪れていますのに。立派な据え膳を食べていませんわ」

この中で一番執着している咲夜は先を越されたのが本気で悔しいらしく、さらなる追い詰めにかかっていた。


「……咲夜は大切な家族だから。そういう欲求を満たす為に手を出すのは違うかなって」

こんなもっともらしい事を言っているが


「ですが同じ家族のこぁには手を出しましたよね?」


「ちょっ」

咲夜は更なる爆弾を投下してきた。


「色々問い詰めないといけないし、今日は徹夜になるわね。藍、今から恭夜の家に行くから準備をするわよ」


「御意」


………

……


久々の自宅で感慨に耽る暇もなくソファに座らされ、何事かと集まる面々に事情が説明されていた。

永琳は十年間の寂しさを癒すために恭夜の隣に座り、そのまま腕を絡めて密着して甘えている。

皆の視線が痛いままこうなった経緯を説明し始め、それが終わるとイライラした藍が即座に永琳を引き剥がし女性陣だけが集まって話をし始めていた。


「つい三時間くらい前まで同年代だった女の子が年上のお姉さんとか俺得」


「とりあえず反則だから魔力の調整云々でこぁとここぁ以外とは雰囲気に流されるまではそういう事をしないって決まったわ」

逆に流されればあっさり決まってしまうという事で、皆それを分かっていて受け入れている。


思春期の男子高校生の流されやすさを甘く見たアリスの敗けだった。



「安心した。だから糸を解いてください、お願いします」

逃げないようにとアリスの魔力の糸でソファに固定されている。


「はいはい」


「……あ、永琳」


「残念な結果になっちゃったけど、私はいつでも……ね?」

立ち上がった恭夜の元にいち早く近づき、腕を絡めながら耳元で囁いた。


「う、うん」

数時間前までは同年代だった少女が大人の色気溢れる魅力的な女性になっていて改めて緊張している。


「おっぱいなの? ねぇ、やっぱりおっぱいなの?」

いつのまにか近づいてきていた輝夜が反対側からそんな事を呟いていた。


「いや、おっぱいはすべからくいい物だから貴賤はないし。蓬莱山は美しさに磨きがかかってるなー。美人すぎて誰も付き合ってくださいとか言ってこないレベル」

誰もが自信を失うレベルの美しさであり、恭夜の指摘通りに誰もが遠巻きに見ているだけだったりする。


今回は十年ぶりだという二人に譲り旧交を暖めさせ、残りの者は夕飯の準備等を始めていた。



「しかし蓬莱山はそんな変わってないのな。何かやたら若々しいし、制服着たら高校生で通じそう」


「そ、そう?」

十年ぶりに褒められてちょっと嬉しかったらしく、頬を朱に染めて照れていた。


「永琳と違って全く緊張しないから安心できるわー」


「私が十年前みたいに腕を絡めたら動揺してたものね。年上のお姉さんが好きって公言していただけはあるわ」

今もピッタリとくっついていて十年分の充電を行っている。


「だって永琳も変わらずいい匂いがするし、あの時より成長してる身体を密着させてこられたらそうなるわ」


「貴方だけの為に自分を磨き続けてきたから当然よ。……貴方のご両親を見殺しにしてしまった事は謝っても許してもらえないと思っているわ」

いつどこでそうなったかを聞いていたが、タイムパラドックスが起きるのを恐れて動く事は出来なかった。


「許すよ。多分だけど修正力が働くからどうやっても俺の両親は助けられない。あの日、俺の両親が殺されて俺の心が一度砕けるのは絶対に変えられないんだ」

実際に前学園長が手回しをしていたようだが、その全てが何かしらのアクシデントに見舞われて現場に到着できずにいたらしい。


「……ありがとう。でもあの公園で転んで泣いてた男の子が小さい頃の恭夜だったなんてね」

二人きりでデートをした時に偶然遭遇し、転んで泣く小さな恭夜に永琳が声をかけ擦りむいた膝を消毒して絆創膏を貼ってあげていた。


「飲み物を買って戻ったら、小さな時の俺が永琳に手を振りながら両親の元に戻っていく姿を見て驚いたよ。あの時のお姉ちゃんが永琳で、そのお姉ちゃんが隣に居たんだし」

言わないようだがその時から年上のお姉さんが好きになってしまい、それがトリガーになり姉代わりで厳しく苦手だった華仙の事も大好きになっている。


「ふふふ、妙に照れていたのはあれが原因だったのね」


「永琳と私でどうしてここまで差がついたのか」

いい雰囲気の二人をジト目で見ながらそう呟いていた。


「だって美人すぎると逆に引くあれが発動してたから。永琳もそうだったけど、あの日に手の届く存在なんだって分かったし」

積極性の差が今の差でもある。


「私だって当ててみたりしたじゃない!」


「いや、からかってるだけだと100%思うだろそんなの。その気になってもからかってただけでしたー、とか言われたら俺は立ち直れないし」

美人には最大の警戒をしており、家族以外は信用するのに凄く時間がかかる。


「なら永琳の事はどうやって信じたのよ」


「服を買いに行った日の夜に思い出が欲しいって後ろから抱きつかれて、一度話し合おうって振り向いたらキスされたから」

超積極的で相手からキスをされてすぐに心を許してしまったらしい。


「うぅ、永琳からお風呂上がりのアイスをもらって食べてないで私も行ってればこんな事には……」


「制服着て訪ねて来た永琳はポイント高かったな」


「ブレザー姿の時によく私をチラチラ見ていたのに気がついていたもの」

ブレザー姿に心惹かれていたようで色々と捗っていた。


「……!」

それを聞いた輝夜は何かを思いついたらしく、目がキラキラし始めている。


「チラチラというか堂々と見てたけどな。魔力も霊力も最低限しかないから早くご飯が食べたいわー……」


パンのヒーロー以外のお面も装着していたから過去では体術が凄い変人扱いされていたりする。

どう足掻いても両親は助けられず、永琳に手を出すのも確定されてる。

本編よりも色々恵まれてるのは確定的に明らか。

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