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超番外編 かなり危険な現代生活4

集合回。

こちらでは長短で書き分けられる事がある彼女達をこう使わせてもらっております。

地下図書館の読書スペースに特別に許可を出し、パチュリーが魔方陣を描いている。

フランやレミリア、咲夜に美鈴と住人達も集まって何が起きるのかとワクワクしながら眺めていた。

そして自筆の魔導書を開き何かを唱え始めると魔方陣が発光、皆が眩しさに目を閉じ……


「あぁ、ご主人様ぁ! 凄くいい匂いですぅ!」


「待って! タイム! イヤぁっ!! ……んんーっ!」

可愛らしい女の子の声と恭夜の切羽詰まった悲鳴が聞こえ、慌てて目を開けると恭夜にのしかかり顔を両手で押さえてキスをする女の子がいた。


「喚んだのは私よ」


「ぷはっ、もうこの方と契約しちゃいましたもん」

向こうのまんまな小悪魔が召喚されている。


「俺のファーストキスが……でも可愛いからラッキーなのかもしれない。舌の感触が生々しかったけど……えへへ」

どうやら舌まで入れられていたらしく、思い出して頬を朱に染めて照れていた。


「……」

実は寝ている時に何度もしている咲夜。


「……」

同じくローテーションで一日置きにしている美鈴。


「厄介なのを喚んだわ」


「早くどうにかしなさいよ!」


「お兄様が取られちゃうよ!」

そんな二人を他所に三人はそれぞれ焦っていた。



「……とりあえず名前を教えてくれたけど小悪魔って呼ぶから」


「はい、お好きに呼んでください。私の名前を教えた時点で私はもう完全にご主人様のものですから」

抱きついて胸元にすりすりしてくんかくんかしており、もう完全に懐いている。


「……仕方ない、もう一度違うのを喚んで使い魔にするしかないわね」

そんな小悪魔を見て溜め息を吐き、再度召喚の為の呪文を唱え始めると再び閃光が放たれ……


………

……


「……これで契約は完了しました。パチュリー様、これからよろしくお願いします」


「貴女はいきなり恭夜に飛びかからなくて助かったわ。契約もちゃんと出来たし」

紙の契約書だがパチュリー以外には破れず、破棄されない限り目の前の悪魔の少女は元居た場所には帰れない。


「あら? 誰かと思えば貴女だったの?」


「えっ、お姉ちゃん?」

髪がロングのいつもの小悪魔と髪がショートの幼い雰囲気の小悪魔に似た少女は互いに驚いている。


「……姉より妹のがしっかりしてるな。姉の方にキスされた時の色んな感触が忘れられない」

夢で数年過ごしたから大人ぶっているが、まだまだ思春期だから仕方がない。


「キスなら後で私が幾らでもしてあげるわ。……最後の仕上げ的な意味で」

毎日こつこつと恭夜に栄養剤だと偽り自身の血を混ぜて作った薬の入ったカプセルを飲ませていて、パチュリーの計画は既に最終段階まで来ていた。


「ごくり……」

まじまじとパチュリーの唇を見てしまい、思わず喉を鳴らしている。


「あの、ご主人様? 妹と私の呼び方どうします?」


「小悪魔(姉)、小悪魔(妹)でいいんじゃね?」


「小悪魔と小小悪魔とか」

恭夜とパチュリーは基本的に区別出来ればいいと考えていて、こんな感じの案しか出す事が出来なかった。


「こぁちゃん、ここぁちゃんはどうですか?」

そんな二人の案に不安を覚えてり美鈴が割って入ってきて提案をしている。


「なにそれかわいい」


「私達にないセンスを持っているなんて」

一瞬で名前を思いついた美鈴を二人はちょっと尊敬するような眼差しで見ていた。


「いえ、シンプルに考えただけなんですけど……」


「私がこぁで」


「私がここぁ?」


「姉妹っぽくていいんじゃないかしら?」

観察していたレミリアも口を挟んでその名前を推奨している。


「それに決まっても分かりやすく小悪魔(姉)、(妹)表記はするってさ」

誰かに向かってそんな事を呟いていた。


「恭夜が何を言ってるのかわからないわ。時々意味不明な事を言うわよね」


「俺だって口が勝手に動くから意味不明ですしおすし。こぁとここぁちゃんの部屋は図書館内にもある部屋使ってもらうよ。こぁにはパチュリーの手伝いを頼むつもりだし、ここぁちゃんはパチュリーの使い魔だし」

地下図書館内にも部屋が幾つもあり、パチュリーはその内の一つに住んでいて食事等の時間以外は殆ど地下にいる。


「はい、ご主人様の望むがままに」


「さてそろそろ飯にしよう。学園長から貰ったフルーツでフルーツサンドとコーヒーか紅茶でいい?」

甘いものが食べたくなったようで皆に尋ねていた。


「はーい!」

フルーツサンドと聞いてフランが嬉しそうに両手を上げて賛成している。



「あ、そうそう。ここぁ、私だけじゃなくて恭夜の言う事も聞きなさい。基本的に私が指示を出していない時は彼に付いていればいいわ」


「わかりました」

この主従は今後の事を話し合いながら皆の後に続いて地下から上がっていた。


………

……


「食べながらでいいから聞いてね。こぁとここぁは夏休み開けたら居ない間の掃除等を頼む。パチュリー優先で出来る範囲だけでいいよ。わからなかったら庭仕事終わりの美鈴に言えば教えてくれるから」

美鈴は咲夜と恭夜が出ている間に洗濯等をしていて、恭夜が悪いからと言っても家族だからと返して黙らせている。


「はい」


「わかりました」

既に皆との自己紹介も終わっており、大量のフルーツサンドに舌鼓を打ちながら恭夜の話を聞いていた。


「ふぅ……俺も食べよう」


「お兄様、あーん」

小柄な体格を存分に活かして膝に座ると、自身の食べかけてのフルーツサンドを差し出している。


「あーん」

フランにはかなり甘くされるがままに口を開けてフルーツサンドをかじった。


「えへへ」

満足そうに残ったのを食べている。



「「ッ!」」

その手があったか!とばかりに美鈴と咲夜が立ち上がっていた。


「げほっ! ごほっ! ……いきなり立ち上がらないでよ! ビックリしたじゃない!」

優雅に紅茶を飲んでいたレミリアがいきなり立ち上がった二人に驚いてむせていた。



「簡単な物だからってソファで食べるの選んで正解だった」

テーブルには大量のフルーツサンドが乗せられた大皿とそれぞれのカップが置かれている。


「ねー」



午後になり早速小悪魔姉妹が働き始めると恭夜は夕飯の買い物に出掛けていった。

咲夜が広すぎる屋敷の案内をしながら掃除や洗濯について教えていて、パチュリーはそれと地上階と二階を見る為に三人に付いて回っている。

レミリアとフランは部屋で日本語の更なる勉強に励んでおり、美鈴は庭の手入れをしていた。


「貴様が七夜月恭夜だな?」


「あの、どちらさまで……?」

スーパーに向かう途中の住宅街を歩いていると目の前に高級そうな車が止まり、中からサングラスをかけた黒服の男が二人出てきてビビっている。


「乗ってもらおうか」

後部座席のドアを開けて乗るように言ってきた。


「……はい」

みんなに何かされて相手側に死人が出ると困ると考え、どうか何事もありませんようにと祈りながら車に乗り込んだ。


そのまま運転席と助手席に二人が乗り込み、恭夜にシートベルトをするように注意をしてから発進して行った。


………

……


「うふふ、こうやって会うのは二週間ぶりかしらー?」


「心臓が止まるかと思いましたよ……」

一時間近くかけて到着した和風の豪邸の一室には着物姿の幽々子がおり、それを見た恭夜はホッとして力が抜けていた。


「申し訳ありません。お嬢様からの指示とはいえ、あのような態度を取ってしまいまして」

二人の黒服の男は申し訳なさそうに恭夜に頭を下げている。


「いえいえ、最初以外は丁重に扱っていただけましたし気にしてませんよ」

暑いからと飲み物を渡されたり、酔っていないかを確認されたりと丁重に扱われていたらしい。


「二人は下がっていいわ。また彼が帰る時に呼ぶから」


「それでは失礼致します」

二人はそう言って退出して行き、そのまま幽々子と二人きりになっている。


「……」

ちょっとしか話していないので何故呼ばれたのか分からず、そわそわしながら部屋を見回していた。


「妖夢……私の従妹を助けてくれたお礼をどうしてもしたかったの。無理矢理連れてくる形になってごめんなさいね?」


「気にしてないです。それより今からでも戻ってスーパーに行かないと特売に間に合わなくなるので」

ちゃんとしたお金持ちの家は落ち着かないらしく、少しそわそわしている。


「あのメモの商品と同じ物を集めさせてるから大丈夫。お夕飯前までにはちゃんと家まで送らせるから」

恭夜が買おうとしていた商品の数段上のランクの物を集めていて、それもあって少々時間がかかるらしい。


「まぁ、それなら……」


「だから私とお話しましょ? 紫のガードが固くて大変だったんだからー」

隙を突いて連れてきたらしく、今頃八雲の関係者が大慌てしているのは間違いなかった。


「それを突破する西行寺さんの家の方々が怖いです。一回振り切ろうとしたら必死の形相で色んな人やら犬やらが追いかけてきて怖かったのに」

そこいらにいるおばちゃん達も実はかなりのやり手だったらしく、奥様情報網で場所や逃げ道を特定されて大変だったらしい。


「えっへん」

そして幽々子は何故か自慢気に胸を張っている。


「うわぁ……ヒッ!」


「……」

襖の隙間から熱い視線を注ぐ何かに気がつき恭夜は短い悲鳴をあげていた。


「あ、妖夢。紹介するのをすっかり忘れちゃってたわね。ほら入って入って」


「は、はい」

入るように言われて入ってきた妖夢も幽々子のように和服で、それがとても似合っていて可愛らしい。


「……可愛い子って何着ても似合うよなぁ」

小声で呟いていた。


「先日はありがとうございました。七夜月さんのお陰で大した怪我もなく、こうして生きていられます」


「いえ、あれは鈴仙さんががんばっていたからですよ。俺よりも彼女にお礼を言ってあげてください」

あの時鈴仙が妖夢を背負って逃げ続けていなければ間に合わなかった。


「彼女にはしっかりお礼と私の気持ちを贈らせていただきました」

直にしっかりと礼をいい、ちょっとした品物を送っている。


「そうでしたか」


「はい」


「あのね、紫じゃなくて私のお婿さんになると妖夢も付いてくるのよ?」

何かお得みたいな感じで言い始めた。


「学園長は藍さんが付いてくるって言ってましたよ。それに本人の意思を無視するのはちょっと」


「わ、私は七夜月さんがいいのなら……」

恥ずかしそうにチラチラ見ながらごにょごにょ言っていて、誰がどう見ても好意を持っているのが分かる。


危険を承知で助けに来たという話と動画で見た圧倒的な力。

実は抱っこされた時も少しして気がついていたようで、薄目を開けて間近で見るキリッとした表情と鈴仙を気遣う言葉を聞いている内に好意を持つようになったらしい。



「……これが主人公補正か。人生最大のモテ期」

流石にここまで露骨だと妖夢からの好意に気がつき、自身のモテ期が来ているのに紫に縛られている事を内心で嘆いていた。


「妖夢の初恋だけど、本妻は本家の私だからね?」


「それはわかっていますよ。私はお傍に居られればそれで……」

高望みはしないようで、傍に居られるのなら二号さんでもいいようだ。


「何故か既に西行寺さんと結婚する流れになってて怖い……」


………

……


そのまましばらく話しているとクーラーボックスと共にここに連れてきてくれた男性が入ってきて、幽々子に何かを伝えると礼をして再び部屋から出ていった。


「今日はこれくらいにしましょう。また機会を見てお呼びするからね? それとこれ、クーラーボックスごとあげる」

そう言いながら男性が置いていったクーラーボックスを恭夜の方に押している。


「凄く嫌な予感しかしないので、今度は我が家に来てください。どうせ俺の情報は筒抜けでしょうし」

また拉致されるのが嫌で逆に招待する事にしていた。


「あら嬉しいわー」


「あのぅ、その……」


「魂魄さんもよかったら西行寺さんと一緒にどうぞ。一人で来てももてなしますよ……癖のある家族が沢山いますが」

一番酷い奴が主人だから集まってきても仕方がない。


「あ、ありがとうございます!」


「妖夢よかったわねー。それじゃあ、恭夜くんの家まで送らせるから」


「ありがとうございます」

拉致されて元の場所に戻されるだけだが、しっかりと礼を言っている。




そのまま行きと同じように高そうな車の後部座席に乗り、自宅の前まで快適なドライブを楽しんでいた。

二人に礼を言いクーラーボックスを持って家に入っていった。


「ただいまー」


「あ、おかえりなさい。かなり時間かかってましたけど、どこまで行ってたんです?」

通りかかった美鈴が返事をしてくれて、そのまま遅かった理由を尋ねている。


「ちょっと隣の県まで」


「隣!?」


「……美鈴ー」

緊張の糸が切れてクーラーボックスを置いてから美鈴に抱きついた。


「あっ……ふふ、よしよし。お姉さんにはいつでも甘えていいですからね」

ドキドキしながらも頭に手を伸ばして優しく撫で撫でし始めた。


「俺、将来結婚するなら家族とがいいよ。打算がないのって家族と鈴仙さんくらいしかいないし……あ、華仙姉さんもいたわ」


「……誰ですか?」

聞きなれない名前に撫でるのをやめて抱き締めてから尋ねてきた。


「町外れのこの無駄に広い豪邸から少し行った場所に一軒家あるでしょ?」


「あの二階から見える無人の家ですよね?」


「二年前くらいから海外に居るんだけど、小さい頃から面倒見てくれたお姉さんが住んでるんだよ。ご両親は田舎に帰って一人暮らしで、今年の年末からは日本に居られるって手紙来てた。掃除をお願いって鍵まで同封してきたしちゃっかりしてる」

華仙は近所のお姉さんだったらしく、今でも交流があり恭夜の両親が亡くなった時も帰国して来てくれていた。


そのまま心が壊れた恭夜を残していくのに躊躇いを感じていたが、スカーレット夫妻に任せてほしいと言われて帰っていった。

しばらくは手紙も電話もメールも帰ってこない事に不安を覚えたようだが、昨年十月から連絡も取れるようになって安心している。


「それならご挨拶に行かないといけませんね」


「そうだね。その前に定期的に掃除に行かないと」

夏休みが終わる前に行くつもりのようだ。


「お庭もあるみたいですし私も行きますよ。二人なら早いですし」


「そうだね。……小さい頃はお姉ちゃんと結婚する!って言ってたらしいわ。それで俺が中二の時にアプローチしてくる同僚が鬱陶しくて諦めさせる為、俺を婚約者だって偽ってデートした事もあったなー」

APP17は伊達ではなく仲良さそうに腕を組んで歩く姿に敗北を悟って諦めたようで、以後アプローチもなく安心して過ごしているらしい。


「……へぇ」

思い出す恭夜に嫉妬して強く抱き締めていた。


「美鈴とか咲夜について手紙で書いたら、帰って来た時に話がしてみたいって書かれて返ってきたよ」


「それは楽しみです」


「うん、パーティーしようね」

大好きな姉のような存在の帰還が本当に待ち遠しいらしい。


………

……


買う予定だった食材をスーパーで買ってきてくれたのだと思い込んだままクーラーボックスを開け、中に入っている買う予定だった食材より数段上の食材+お土産と称したその他多数の食材に卒倒しそうになっていた。

それぞれが一つで皆がお腹いっぱい食べられるおかずが作れるくらいの値段である事を知っており、金持ちって半端ないという感想と感謝の気持ちを心で告げて調理に入っている。


「学園長に話をしないとマズイよなぁ……」


「ああ、紫様は幽々子様の所に乗り込んで牽制しに行っているよ」


「藍さん。凄い汗ですしお風呂に先入ってもいいですよ?」

走り回っていたのか汗びっしょりで、拭うハンカチも濡れて使い物にならなくなっている。


「恭夜君が拐われたという報告を受けて今まで探していたんだよ……」

藍は近辺を走り回っていたらしく、恭夜の名を大きな声で呼びながら走り回る不審な美女に皆が変な者を見る目で見ていた。


「あー……」


「幽々子様から連絡があって私は恭夜君が本当に帰っているかの確認、紫様は西行寺の家に向かわれたんだ。無事でよかった……本当によかった」

拐ったのが武装した集団だったら抹殺されているかもしれないと考えてしまい、不安な気持ちのまま探し回っていたらしく思いきり抱き締めている。


「あ……でも携帯を鳴らせば一発だったんじゃ? それかGPS。何か俺の位置がわかるようにとか言って学園長と藍さんは登録してませんでした?」


「……言わないで」

焦りすぎてその事を忘れていたらしい。


「藍さん、首筋も汗が……」

読んだ漫画の真似がしたくなり、その首筋に舌を這わせて汗を舐めていた。


「うひゃあぁぁっ!!」

ビックリしすぎて力強く抱き締めている。


「こいつは嘘を吐いて……いる味……ごめ、苦しっ……!」

予想外の行動に全部言う前に限界が来て思わず謝っていた。


「はうぅぅっ」

弱点だったらしく強く抱きついたまま動けず、そのまま恭夜を巻き込み床に座り込んでいる。


「危なかった、ブリーカーで死ねぇ!されるかと思った……」


「恭夜君があんな事するからぁ……」

二人きりだとデレデレ甘甘で口調も甘えた感じになっている。


「いや、だって俺はブチャラティ好きだから……」


「せめて部屋で二人きりの時とかなら……」


「汗をたくさんかいて腰を抜かして俺に抱きついている藍さんの色気が半端ないです」

匂いフェチで可愛いお姉さん好きのダブルパンチでノックアウト寸前。


「やっ、ダメ!」


「実に乙女らしいけどそれでも離れようとしないし、抱きつくのもやめないから俺は反応に困ります」

藍の香りで頭がくらくらし始めていた。


「うー!」


「もう藍さんしかないんじゃないかって思ってきた。……ちょっと藍さんの汗で湿ってきたのもご褒美と思えるレベル」

普段とのギャップが激しく、全てがドストライクで藍の事しか考えられなくなってきている。


「……」

それを聞いてさらに強く抱き締め始めた。


「そして咲夜が凄い怖い顔で仁王立ちをしていてオワタ」

藍を招き入れたのが咲夜でキッチンに様子を見に来たらしく、抱きつく藍の背後で凄い怖い顔をしている。


「旦那様へのお仕置きは後でします。八雲藍様、お風呂の準備が出来ましたわ。立てないようでしたら私が肩を貸しますので」


「咲夜のお仕置き……咲夜のって付くだけで胸が高鳴るのは何故だろう」


「お、お願いします……」

藍は渋々恭夜から離れ、ふらふらしながらも立ち上がった。


………

……


藍はそのまま泊まっていく事になり、夕飯は高級な食材を使った料理を皆で美味しくいただいていた。

夕飯後にそれぞれが解散する中、パチュリーが寄ってきて十二時過ぎに部屋まで来るよう言われて現在赴いている。


「はい、ベッドに腰かけて」


「小悪魔姉妹が部屋の鍵をかけてるのが不安なんだけど……」

言われた通りに腰かけているが扉の鍵をかけている姿に不安を覚えていた。


「目を閉じてー」


「無視なんですね、わかります」

聞いても無駄だと分かり目を閉じている。


「……っ」

何かを呟きながらナイフで自身の指の腹を切り、溢れ出た血を唇に塗り幾ばくかを口に含むと魔法で指の傷を塞いだ。


「……」

ドキドキしながら待っている。


「……んっ」


「んむっ……んんーっ!」

口腔に侵入してくる舌と血の味に目を開け、離れようとするが見越していた小悪魔姉妹が逃げられないように身体を押さえつけていた。


「ダメですよご主人様」


「乙女の口づけなんですから」

やはり悪魔は悪魔であり、二人とも妖艶な笑みを浮かべている。



「はぁ……これでよし。私のファーストキスと貴方への贈り物」


「キスは嬉しい、血の味がなけれ……いだだだだだ!!」

全身を駆け巡る激痛にベッドの上でのたうち始めたが、小悪魔姉妹が全体重をかけて押さえ込んでいるので殆ど動けない。


「あー……毎日薄めた血の入ったカプセルを飲ませてたけど魔力の通り道が細かったものね。薄めない私の血を飲めばそうなるわ」


「これ…マジ……死……ッ!!」

何かを言いかけてビクン!と大きく身体を跳ねさせ、そのまま目を見開いて動かなくなった。


「あ、大人しくな……ご、ご主人様ぁっ!!」


「し、心臓が停まってます! パチュリー様!」


「し、心臓マッサージよ!」

予想外の展開に慌てて指示を出している。



しばらく心臓マッサージを繰り返していると息を吹き返し、文句を言いたいが何も言えずベッドに突っ伏していた。


「マジで爺ちゃん、婆ちゃん、父さん、母さんが六人で楽しそうにお茶飲んでる姿が見えた……」

ようやく喋ったと思ったら臨死体験中の事を話始めている。


「ご、ごめんなさい」


「『パチュリーちゃんに殺されかけてやんのwwwwww』とか草生やしてた爺ちゃんにドロップキックを叩き込んだ所で目が覚めた。孫が死にかけてんのにノリが軽すぎるだろ……」

止まっていた心臓が動き出した事で魔力を完全に物にしたらしく、様々な魔法や魔術の行使も可能になっている。


「死後の世界から見てるのね」


「誰でもいいからはよ抱け、曾孫見せろとか言う爺さん達に見られたくないわ」

死んでるから自由な面々を相手に苦労してきたらしい。


「まだ高校生ですものね。あ、これ宅配されてきたの受け取っておいたの忘れてたわ」

少し小さめのダンボールを部屋の隅から持ってきて手渡してきた。


「……玄関に置いておけばよかったんじゃ? てか美鈴居なかったんだ」

素直に受け取りながら尋ねている。


「ええ。続きが気になって急いでたから持ってきちゃったのよ」


「なるほどなー。マーガトロイドさんから……可愛い」

そのまま封を切ってダンボールを開けてみると可愛らしい人形が入っていた。


「……」

パチュリーは見当を付けたようだが何も言わず恭夜の様子を伺っている。


「手紙もついてないしプレゼントかなこれ? 可愛いからいいんだけど」

優しくダンボールから取り出して諸々チェックしていた。


一流の人形遣いのメンテナンス技術もしっかりと覚えていて、この人形に所々未熟な部分があるのも理解できる。

流石に人形製作までは教えてもらっていないので作ることは出来ない。



「とりあえず今日は泊まっていきなさいな。死にかけたから見ていないと不安だし」


「私達はそれぞれの部屋に戻りますね。ご主人様、無理はなさらないでください」


「パチュリー様がご心配されますから」

そんな事を言い二人は礼をして部屋から出ていった。



「……二人の前だったから強く見せていたけど、正直あなたの心臓が止まった時は目の前が真っ暗になったわ」

人形をテーブルに座らせている恭夜の背中にひしっと抱きついている。


「美人さんにそこまで言われるなんて男冥利に尽きる」


「私は本当に……!」


「久々に父さんと母さんに会えたし逆に感謝してるんだよ。次に会う時は俺が天寿を全うしてからだって笑ってた」

両親は一人っ子でどちらの祖父母の親戚も亡くなっていて、気にかけてくれる存在はいれども血の繋がりで言えば恭夜は完全に天涯孤独だった。


「……その時は私も一緒に行くわ。恭夜のお爺様にご挨拶もしないといけないもの」


「まだまだかなり先の話だけど、爺ちゃん喜ぶと思うよ」


………

……


魔力が満ちてこの世界でも色々出来るようになって数日が経ち、理想の自分が扱えていたものが全て使用できるようになっていた。

そして……


「はい」


「もうこのパターンは新しい家族が増えるってわかるわよ」


「お兄様がお出掛けして帰ってきてみんなを集めるとねー」

スカーレット姉妹はもうパターンを読める用になっていて、まだ本題を言う前に理解していた。


「何だか私が来た時みたいね」


「パチュリー様の時も朝からそわそわしていましたし、分かりやすいんですよ」


「誰が来るか楽しみですね!」

家族が増えるのは誰も反対ではないらしく、それぞれが誰が来るのかワクワクしている。



「はい、アリス・マーガトロイドさんでーす」


「どうも。……?」

私服のパチュリーを見て不思議そうに小首を傾げていた。


「あら、マーガトロイドの人形遣いじゃない」


「そう言う貴女はノーレッジの魔女じゃない」

互いに知っているのか早速話を始めている。


「貴女はどうして日本に?」


「暇が出来たから元婚約者の様子を見に来たのよ。物凄い霊力だけじゃなくて魔力まであるのには驚いたけど」


「ふふん」

自分が与えた物故にパチュリーは得意気だった。


「まぁ、五十年くらい居るかもしれないけど」


「私は六十年居るつもりだけど」


「あー、間違えたわー七十年居るつもりだったわー」


「……もういっそ死ぬまでいたら? 権力的な意味で二人なら余裕で出来そうだし」

小学生的な言い争いを始めた二人に提案していた。


「私はそうするわ。ここ凄く居心地いいし、ご飯は美味しいし、趣味に没頭出来るし、恭夜も居るし」

食費や衣服にかかる一生分のお金も既に稼いでおり、それでも使いきれない程の資金がパチュリーにはあるらしい。


「……確かに日本製の人形のパーツってクオリティが高いのよね。私はお母さんに相談してから決めるわ」

母親に永住したいと相談したら反対されそうな気がするが。


表のマーガトロイドはハンドメイドのドールの老舗であり、アリスの作るドールはとても素晴らしく一体で何十万とする物ばかり。

そんなアリスのドールコレクターも存在していて、初期の作品は何百万という高値で取引される程。



「それがいいよ。パチュリーはもう帰る気ないみたいだけど」


「恭夜の傍にいないと心配だもの。一回死にかけてるんだから」


「パチュリーが原因だけどな。死に触れた事で霊力の限界値が底上げされるって予想外の事も起きたけどさ」

日本で有数から世界で有数の霊力保持者にランクアップしており、ようやく計測出来るようになったが再び計測不能になる程。


「死に触れるって本来ならありえない事だもの。飛躍的に伸びてもおかしくはないわ」


「ノーレッジの魔女、貴女まさか……」



「何か二人は意気投合してるし、もう解散していいよ。おみやげのおやつが冷蔵庫にあるから各自好きな時に食べてね」

話し合う二人を邪魔しないように解散を宣言していた。


「はーい!」

フランが元気に返事をすると皆が冷蔵庫に向かって行き、恭夜を含む三人しかこの場には残らなかった。



「貴女が思っている通りよ。私の血を唾液が混ざったけどほぼ薄めずに飲ませたの」


「ノーレッジの……もうパチュリーって呼ばせてもらうわ。貴女は何を考えているの? 潤沢な魔力の流れる貴女の血を多少でも魔力を持っている者に飲ませるとか死ねって言ってるようなものよ。強すぎる魔力は猛毒みたいなものだし」


「えっ」

まさかのアリスの言葉に紅茶を二人の前に置きながら恭夜は驚いていた。


「大丈夫よ。漫画で似たような事をして乗り越えてパワーアップしたのがあったもの」


「それって超神……」

一緒に読んでいたからそれが何か即分かり、読ませなければよかったと本気で後悔している。


「それなら私の血も飲ませればいいのね」


「いや、その発想はおかしい」

アリスの言い出した事に思わずツッコミをいれていた。


「あー。確かにマーガトロイド……アリスの魔力を取り入れれば更にパワーアップするかもしれないわ」


「それなら今晩にでも。カフェで話してみて気に入ったし、長くお世話になる私からの贈り物でもあるわね」


「いや、食費だけ入れてくれれば……部屋に鍵をかけて寝るしかないじゃない!」

前回の苦しさと魂が抜けるという感覚が脳裏を過り逃げ腰になっている。


「解錠魔法って便利よね」


「ええ、基本中の基本だけど便利よね」


「綺麗な魔法使いのお姉さん二人が怖い事を言ってる……夜這いだったらウェルカムなのに」

侵入する気満々な二人に恐怖を覚えていた。


「あらあら、こぁに夜這いされてパニックになっていた男が面白い事を言ってるわ」


「まさか下着姿で布団に入ってくるとは思わないだろ常識的に考えて……凄く柔らかかったです」


「何が?」

興味津々なアリスはkwsk!と凄く知りたがっている。


「そりゃおっ……危ない! 会って数時間の女性に何を言おうとしてるんだ俺は」

どうやら小悪魔姉で念願叶っていたらしく、そのせいか最近はいつも以上に紳士で皆からの好意も加速している。


「まぁ、何となく予想は出来るんだけどね。思春期男子だし仕方ないわ」


「うぐっ」

ニヤニヤして見てくるアリスに怯んでいる。


「部屋であんな事してれば……ねぇ?」


「ああ、やっぱり。あの人形を通して見てたのね」


「……は?」

贈られてきた人形は自身の部屋の机に座らせており、毎日手入れをしたりしていたから余計に意味が分からなくなっていた。


「細部の手直しに毎日のお手入れ、人形の新しい服の作成をする所まで見ていたわ」

メインでの人形作成は不可能だがアリスのアシストをする為の技術は完璧であり、それを見ていたこちらの世界のアリスは喉から手が出る程に助手として恭夜が欲しくなっている。


「全部見てるじゃないか……」


「お母さんも一緒に見てたけど」


「親子して何やってんの!?」

今までにないくらい凄いのを招き入れてしまったと心の中で後悔していた。


「恭夜の割れた腹筋を見て凄く興奮してたわ。『アリスちゃんがいらないならママが貰っちゃおうかなー』とか言ってて流石の私も引いたけど」


「いや、それを聞かされた俺は超引いてるんだけど」



「ふふ、何か二人とも楽しそうだし私はそろそろ地下に帰ろうかしら。ごゆっくり……」

アリスに翻弄される恭夜を見捨ててパチュリーは気配を消しながら地下に帰っていった。



「お母さんの話は引くだけだから置いておきましょう」

思い出したくないようでその話は切り上げる事にしている。


「あまり追求すると怖い事になりそうだからそうしよう。空港でご飯食べてる時、アリスさん凄い見られてたよね」


「あれは鬱陶しかったわね。恭夜が来る前も何人も声をかけてきてウザったかったわ」

下心丸出しな片言の英語で声をかけるも流暢な日本語で辛辣に拒絶され、プライドもガタガタにされた男が多数存在している。


「俺が声をかけた時に思いっきり睨んできたのはそういう……」


「またその手の相手かと思ったんだもの」

かなり強気な女性で見た目の可愛らしさからは想像出来ない程の激情を内に秘めていた。



そんな新しい家族が増えて順風満帆な七夜月一家。

新たな出会いや新たな関係も明らかになった。

夏休みも終盤だが、まだまだ夏は終わらない。

ロング小悪魔がいつもので、ショート小悪魔が新しいの。

こちらではよく使われる呼び方を使わせてもらう事にしました。


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