表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/100

寺生まれのKさん(予定)

地底では鬼と宴会をしたり、酔った勢いで空に土下座して頼んでみたりと毎日楽しく過ごし、あっという間に一週間が過ぎ去っていた。

名残惜しみながらも家に早く帰りたいのもあり、次の目的地を探しに出発していった。


「……太陽が眩しいぜ」

久々の太陽がかなり眩しかったようでグラサンを装着している。


そのまま人里に向かって飛翔、勇儀に鍛えられてまた少し成長したようで以前より速く飛べるようになっていた。




永遠亭に向かおうと思ったが普段から様々な事をしているし別にいいかと判断、悩みに悩んだ末に帰宅せず命蓮寺に向かう事にしていた。

到着すると元気に挨拶をして来る響子に挨拶をし、ふと気になった事を試してみる事にした。


「おはよう!」


「……おはよう!」

恭夜が何をしたいのかを理解したようで山彦らしく同じ言葉を返している。


「恭夜」


「恭夜!」

ただ声は響子の方が大きいのは仕方がない。


「大好き」


「大好き! ……ウェイ!?」

満面の笑顔で言い放ってから何を言ったのか理解し、びっくりしすぎて違う星の言語が出ていた。


「そっかー、俺も響子ちゃんの事好きだなー」

考えていた思惑が見事に決まりニヤニヤが止まらなくなっている。


「ち、違うの! 今のは山彦で別に好きって訳じゃ!」


「……なんだ、響子ちゃんに嫌われてたのか俺」

全力で好きじゃないと言われてションボリしていた。


「そ、そうじゃなくて!」


「これこれ、からかうのはそこまでにしておやり。恭夜は相変わらず意地悪じゃの」


「はっはっはっ、女の子から大好きって言われたかったもので。マミさん、お久しぶりです」

響子をからかっていると声に気づいたマミゾウが現れ止めていた。


「特に彼女がそわそわしているから早く行ってやるべきじゃ。儂はこれから貸本屋に行ってくるから、土産に期待して待っておるんじゃな」

その場で人間に化けて見せ、そのまま歩いていってしまった。


「マジかっけぇ、まるで平成狸……ん? あ」

クイクイと袖を引かれて見ると、響子が頬を膨らませて怒ってますアピールをしている姿が目に入る。


「どうしよっかなぁ、アノ事を大声で……むー!」


「ひ、秘密にする約束したでしょ? お菓子、お菓子作ってあげるから、ね?」

どうしようもない秘密を握られているのを思い出したようで、響子の口を手で塞ぎながら再び懐柔しようとしていた。


「……」

お菓子と聞いてコクコク頷いている。


「……はぁ、それじゃあ俺はお世話になる事を伝えに行くから」

響子の口から手を離すとそのまま寺の門を潜り中に入っていった。




何故かそわそわうろうろしていた白蓮に声をかけ、しばらく厄介になる事を伝えると満面の笑みで出迎えられた。

そして部屋まで案内してもらい、荷物を隅に置いて振り向くとニコニコした白蓮が座布団に座って膝をポンポン叩いていた。


「……え?」


「疲れたでしょう? お姉ちゃんが膝枕してあげますから」

耳掻きまで用意してあり、最初からこうする気満々だったようである。


「いや、でも」

正直すぐにでも膝に頭を乗せたいが堪えていた。


「今晩から色々お手伝いをお願いしますから、その前にしっかり休んでもらいたいんですよ」


「わかりました」

ドキドキしながら白蓮の膝に頭を乗せている。




そのまま耳掃除をしてもらったり、仰向けになった白蓮の顔と双子山を見たりしている内に眠ってしまった。

気がつくと夕暮れになっていて、何故か雲山が身体の下にいて布団変わりになっている。


「雲爺、雲爺じゃないか!」

バッと身を起こすと正座して雲山に向き直った。


「うむ」

雲爺と呼ばれて嬉しそうに返事をしている。


「……この二人が仲良しな理由が未だにわからないわ」

一輪は白蓮の代わりにスヤスヤ眠る恭夜を見ていたらしく、現在は目と目で話し合っている一人と一入道を見て何故仲良しなのか疑問に思っていた。


「空から幻想郷を見てみようって企画をやってからだよ」

一輪協力の元でやったらしい。


「うむ」

少し目を離した隙に何故か雲山と合体していて、恭夜の目と口の部分以外が雲の鎧になっていて雲山の顔はお腹の位置にあり、どう控え目に見ても新手の妖怪にしか見えない。


「うわぁ、何か凄い怪しい……」


「これは一発芸的な感じでいけるんじゃないかと思ってるんだけど」


「そのままの姿であの巫女の前に立ったら退治されそうよ」

それくらい妖怪のような見た目になっており、正直夜中に出会ったら腰を抜かしそうなくらい怖い。


「ちなみに俺は入道を操れないから雲爺の防御力は0。霊夢に攻撃されたら死んじゃうかもしれない」

ただ怖い見た目なだけで全然強くなかった。


「あははっ、見た目だけ怖いんじゃ意味ないわねー」


「俺だったら見た目だけでも逃げるけど」



しばらくそんな雑談をしていたが、夕飯の時間になったらしく雲山をキャストオフして一輪の後に続いて部屋から出ていった。

接しやすいぬえの隣に座ろうとしたが一輪に手を掴まれ、何故か星の隣に座らされている。


「これド緊張するけども」

どちらかと言えばぬえの隣がよかったらしく、星の隣になってド緊張していた。


「恭夜君は私の隣ですよ。宝塔を拾って届けてくれるお礼もしないといけませんし」


「困った時はお互い様ですし、別に気にしなくていいですよ」

大体見つけては星に直接届けていたり、通りすがりのナズーリンに渡したりしていて、拾う回数が二桁を越えてからはお礼はいらないと断り続けている。


「おかわりとかは私が装いますから遠慮なく言ってくださいね!」


「まぁ、それくらいなら」


「男の子はたくさん食べるとナズーリンから聞きましたからね。聖もそう言ってましたし」

そう言うと恭夜用のお茶碗を持って早速ご飯を装いに行ってしまった。


「何だろう、あの背中を見ていると凄く嫌な予感がする……」

不安な気持ちになってナズーリンと白蓮を見たが、目が合うと気まずそうにサッと目を逸らしている。




「ちょっ、あははっ!」

少しして戻ってきた星の手にあるお茶碗を見て何かを言おうとしていたが、予想できない物を見せられて笑ってしまっていた。


「?」

星は何で笑っているのか分かっておらず、不思議そうに恭夜の元に向かっている。


茶碗に山のように盛られた白米を崩さずに運ぶ姿と、あれを食べきらないといけないという恐ろしさから恭夜は笑うしかなくなっていた。

目の前に置かれて冷や汗がダラダラ、白蓮とナズーリンは相変わらず目を逸らして見ないようにしている。



「うわー、恭夜ってそんなに食べるの?」

思わず二度見したぬえが星に尋ねていた。


「これくらい男の子だから食べるはず。足りないくらいかな?」

自信満々で答える星の背後では少し顔を青くした恭夜が首を横に振っている。


「……じゃ、早速食べようよ」

そんな恭夜の反応を見てもフォローはせず、マミゾウの隣に座ってニヤニヤしながら成り行きを見守り始めた。


「それじゃあ、いただきます」

白蓮の言葉に皆も続き、恭夜にとっては試練の時間が始まった。


………

……


「苦し……寝れない……」

隣で期待する星がいたから残す事も出来ず、苦しさを表に出さず全て食べきったらしい。


「恭夜はしっかり男を見せたね、見ててちょっと感動したよ」

星以外の者はその恭夜の奮闘を影ながら応援していたらしい。


食べ終わるとすぐに食費がかかるから明日からはみんなと同じでいいと星に告げ、軽快な足取りを装って部屋に戻っていた。

白蓮に目配せされた村紗が後を追い、歩きが牛歩の如くだった恭夜に肩を貸して部屋まで連れてきてくれたらしい。



「食べられないよりは……うっ…………いいけど、正直明日の朝御飯……はいらない……」

吐きそうになりながらも耐えて村紗に話しかけている。


「だろうね」


「うぅ……」

言葉は発するが身体は微動だにせず布団の上で苦しんでいた。


「そろそろ行くね? 明日からしばらくの間よろしく」


「うん……」

見送る事は出来ず、村紗の立ち去る足音に返事だけしている。




そんな出来事から数日、どちらかと言えば妖怪寄りな恭夜は寺を訪れる妖怪達と仲良くなったりしていた。

一輪が居る時は大体雲山を装備していて、一度訪ねて来た霊夢に新手の妖怪だと思われてぶっ飛ばされたりもしている。


「霊夢怖い、超怖い。雲爺を装備、それで気配を消して肩を叩いただけなのに凄い悲鳴とビンタからの弾幕で殺されるかと思った……」


「正直私は恭夜君が頭から着地して鈍い音がした時に、死んでしまったと思い焦りましたよ。そこに弾幕を撃ち込む巫女が凄まじくて助けに行けず……」

星はその時一緒に居て助けようとしてくれたようだが、直後に行われた霊夢の容赦のない弾幕に助け出す事が出来なかったらしい。


「慣れてますから平気っす。意識を取り戻した時、こまっちゃんがまた?って顔してこっちを見てたのが」

三途の川の常連になりつつあり、最近は映姫が小町がサボるからと直々に早く帰りなさいと追い払いに来る始末。


「それは確か死神……って、それは死にかけていたって事!?」


「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ。そんな珍しい事じゃないですし」

紅魔館を出てからは幾度となく死にかけていて、三途の川は見慣れた景色になっている。


「珍しっ……ここにいる限りは私が守りますから安心してください!」

あまりの事に言葉を失ったが、命蓮寺に居る限りは守ると宣言していた。


「それなら白蓮さんから守ってくださいお願いします。何かよくわからないけど、あまり話さなかった翌日の朝はムスッとして手合わせに本気出してくるんです!」

大体ここに来てからは普段交流がない一輪や村紗と親睦を深めており、白蓮といる時間が圧倒的に少ないせいだと思われる。


「えっと、それはちょっと……」


「ですよねー。魔力での身体強化を教えるって言われて、どうやるのかと思えば美鈴式で教えられて……俺の身体はボロボロだ!」

魔力の通りを良くする為にと言われて白蓮の魔力を毎日たくさん流し込まれ、それが徐々に体内に定着して流れる魔力が完全に質のいい物に替わっている。


「凄い絶叫を聞いてみんなが集まって来た時の聖はかなり慌ててましたね」


「必死に何か言ってましたけど正直痛くて聞いてられませんでしたよ。ちなみに針しか通らないような細い穴に箸をグリグリしながら無理矢理通すのを想像してもらえるといいかもしれないです。霊力はたくさんあってマジでよかった……」

魔力での身体強化はまだ教えてもらっておらず、全身に魔力が行き渡るように流されている状態だったりする。


「そういえば聖の攻撃を避けるでも受け流すでもなく、毎回受けているんです? 恭夜君の動きなら受け流す事くらい出来ると思うのですが」


「いやー、ちょっと諸事情がありまして。打たれ強くなろうかなと」


「揺れるのガン見してるからだよねー」

通りかかったぬえがそれだけを言い残して行ってしまった。


「揺れる……?」


「何でもないです、ぬえちゃんの戯言です。それよりそろそろ写経の時間なので行ってきます」

完全に命蓮寺に馴染んでいて、最近は白蓮に寺生まれになりたかったと相談する程。




そんな事から一週間が経った。

村紗と遊びに行って溺れかけたり、雲山と一輪と一緒に空から幻想郷見てみたりしていた。

残念ながら寺生まれじゃないから寺生まれのKさんにはなれなかったが、印の結び方や真言の唱え方を教えてもらっている。


「うわー! 何か俺の指から出たし超怖い!」

白蓮や星の監視の元で恭夜が適当に格好良さ重視で結んだ印、それが二人の張った二重の結界をあっさりと破壊して消し去っていた。


「……今のは?」


「い、今いったい何が……」

呆然としていた二人もビビる恭夜の声で我に返っている。


「……よく考えたらちょっとかっこいいし、結界を消滅させた印だから滅印掌とでも名付けよう」

どうやらちょっと気に入ったらしい。


「以後使ったらお姉ちゃん怒ります。一番困る怒り方をします」


「えー……」

白蓮に使用禁止を告げられて物凄く不満そうな顔をしている。


「泣きながら怒ります」


「使わないからやめて!」

そう言われた瞬間不満そうな顔をしていた恭夜は使わないからと必死になっていた。


「恭夜君が細かな気遣いをして負担を減らしていた事を知って嬉し泣きしてた聖、それを見て勘違いした他の者達にボコボコにされて……」

あまりに不憫だったあの光景を思い出して星は目頭を押さえていた。


「大丈夫、お姉ちゃんの言うことを恭夜がちゃんと聞いていれば怒らないからね?」


「うん……」

ぬえが余計に煽ったせいで白蓮が止めに来るまで必死に逃げ、背中に碇が直撃して吹き飛んだりしていたようだ。


「しかも涙すら武器にした聖に完全服従……私だけは味方でいてあげよう」

日に日に白蓮に逆らえなくなっていく恭夜を見て、ホロリと涙が溢れていた。

白蓮に愛されているけど束縛が半端ない事になってる。

星は味方になってくれるけど、基本的に白蓮寄りだから意味なし。

雲山とは爺ちゃんと孫的な関係。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ