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番外編 三週目の世界で

気がつくと向日葵だらけの場所に立っていた。

周囲を見渡しても向日葵だらけで、一瞬ここがどこだか分からなくなっている。


「……ああ、ここは幽香の向日葵畑か。でもどうして俺はここに居るんだろう? 孫や曾孫に囲まれて天寿を全うしたはずなのに。幽香達もボロボロ泣いてたなぁ」

そんな光景を見て微笑みながら逝ったみたいだが、目を覚ましたらこんな場所に立っていたようだ。


咲夜と結ばれはしたが様々な勢力との争いが勃発。

レミリア達からの命令と言う名の懇願で、咲夜に恭夜に愛人を作らせる許可を出させたりと異変レベルの騒動まで起きていた。

色んな意味で身体がもたないと咲夜が愛人に賛成した事で異変は治まったが、理不尽にも霊夢と魔理沙に恭夜が八つ当たりでぶっとばされている。

それからは多数の異母兄弟が産まれ、軽く恭夜以上のスペックを有していたのは言うまでもない。



「……若返ってる」

手鏡や先に逝った咲夜の形見の懐中時計等も全て所持しており、自分の姿を確認していた。


紅い瞳に白髪ではない黒髪、皺のない若い頃の自身の顔に驚いている。

ただこの世界が自分の居た世界ではないと分かり、もう二度と愛していた咲夜に会う事が出来ないのだと理解してしまった。



「……人里にもいけないな」

幽香に見つかる前に魔法で自身の気配と姿を消して歩き始めた。


………

……


「……ダメだって分かってたけど見捨てられないよ」

気絶した鈴仙を背負い、迷いの竹林をひたすらに歩いている。


もう生に未練もないのか死ぬまで隠遁しようと竹林に来たようだが、落とし穴に落ちて気絶していた鈴仙を見つけていた。

こちらを知らないと分かっていても助けずにはいられず、穴に降りて鈴仙を助けている。


古くなってはいるが大切にしている竹の櫛に導かれ、何事もなく永遠亭に到着。

気絶している鈴仙を入り口にそっと降ろし、下級妖怪が寄り付かないような結界を張ってからその場を後にした。



「……取り合えず今まで会得した物は使えるみたいでよかった。材木集めて、あまり人が来ない場所に家を建てて目立たないようにして過ごそう」

知っている者達に出会いたくなく、自給自足での生活をするつもりらしい。




そんな出来事から数年が経ち、現在も迷いの竹林の奥地に居を構えていた。

最初に助けた者が紅い瞳なだけで害がないのを里の者に伝えたらしく、時折迷い込んでくる者達も穏やかな存在にホッとしている。

絶品な料理に空調の効いた室内でとても過ごしやすく、皆必ずお礼と言って何かしら置いていったりと人間側からの友好度もなかなかに高い。


「兎さん、あまりここには来ない方がいい。お前さん達の飼い主も見つかりたくないだろうしな」

最近は何羽かの妖怪兎が様子を伺いに来ており、居を移すのも面倒だからもう来ないように伝えている。


「……この前あの薬を飲んでから怪我をしても治りがおかしいくらい早くなった」

去っていく妖怪兎達を見送りながら呟いている。


「あれは何十年か前に真剣な顔した輝夜に貰ったんだったか、すっかり忘れて飲まなかったけど。……とりあえず飲んでみるかって飲んだのは間違いだったか」

そんな理由で飲んだらしく変化も特になかったので気にしていなかったが、最近は怪我の治りが異常な程に早くなり不安になっていた。


「……まぁ、死ねなくなっても今の俺には関係ないわ」

平均的な妖怪なら一方的に退治もでき、大妖怪クラスでなければ死なずに済む。




そんな事を考えていた時から数ヵ月が経ち、紅い霧が発生するという懐かしい出来事が起きた。

それに続いて冬が終わらない異変、夜が終わらない異変、花が咲き乱れる異変、妖怪の山の異変、怨霊が現れた異変、空を飛ぶ船の異変、神霊が現れる異変。

その全てに関わらず、ただひたすらに本を読み身体を鍛えていく日々。

霖之助とも客と店主の関係で本を購入するくらいの接点くらいしかない。

ただ最近は……


「……でね、師匠ったら私にばかり飲ませるのよ。酷いと思わない?」


「君が試薬の治験にされている事だけはよく分かったよ。だけど前に言わなかったかい? もうここには来ない方がいいって」

見知っている見知らぬ少女、鈴仙・優曇華院・イナバが湯呑みを手に愚痴を溢す姿に溜め息を吐きながら告げている。


「え、嫌よ。ここ私以外だと兎達しか知らないし、貴方のご飯美味しいし」


「だからって毎日来るのはどうかと思うよ兎さん」

出会いが違えば印象も変わるなと呆れながらも普通に対応していた。


「そ、それに……」

髪をいじりながらチラ見してきて、目が合うと顔を赤くして俯いてしまった。


「それに?」


「二回も助けてもらってるから何かお礼出来ないかなって……」

一度目はこの世界で目を覚ました日、二度目はつい最近の事である。


「ああ、それなら別に気にしないでいい。たまたま助けられただけだし、それでお礼は君にも悪いからね」

お茶を啜りながら言う姿はとても紳士的だった。


「いいの! 私がやりたいんだから!」


「……そうだな、好意を無下には出来ないか」

すっと立ち上がると鈴仙の元に近寄っていく。


「そう、素直に……あ、え?」


「こういう事がいいって言うかもしれないけど」

鈴仙を押し倒して紅い瞳を見つめ、咲夜に可愛いと言われてしまった口角を上げた悪い顔(自称)をしている。


「や、優しくしてね……?」

悪い顔(自称)を見てきゅんきゅんしながら何かを期待するように目を閉じてしまった。


「……じ、冗談だから! もっと貞操は大事にしなさい。本当に好きな者と結ばれるまではそのような行為をしたらダメだ」

珍しく顔を赤くし慌てて鈴仙から離れ、貞操を大切にしろと言っている。


「……意気地無し」


「うわー、このお嬢さんはいったいなんなんだー」

好かれる行動は取っていないはずなのに、何故か好意を向けられて半ばパニックだった。


「愛の戦士」


「キリッとした顔で何言ってんだお前。何かもう頭が痛い……」

この子はこんなんだったっけ?と顔を手で押さえている。


「えっ、大変! 頭が痛いなら早く布団に横にならないと!」


「君が帰ったら横になるから大丈夫。寧ろ早く帰ってほしい」

何かもう鈴仙の扱いがかなり雑だが、恭夜の知っている鈴仙とは180°違うから仕方がなかった。


「私が帰ったら……? はっ! し、師匠を急いで呼んでくるから待ってて!」

自分が帰ったら寝る→心配させまいとしている→凄く体調が悪い→死んじゃう→師匠!

という思考が瞬時になされたらしく、自分だけの憩いの場を捨て去る事を決めたらしい。


「……戸締まり戸締まり」

念入りに戸締まりをし、魔法で開かないように細工をしている。



三十分もしない内にノックと女性二人の声が聞こえてきたがガン無視。

声が聞こえなくなったなと思ったらいきなり木の扉がぶっ壊れ、鈴仙が雪崩れ込んできた。


「無事! ……みたいですね」


「よし、ちょっと尻を出しなさい。反省するまでひっぱたくから」

穏やかな恭夜だが流石に扉を破壊されたのは我慢ならなかったらしく、自分の子供達にした仕置きを鈴仙にもしようとしている。


「そ、そんな過激なプレイを初体験から経験するのはちょっと……」

が言われた本人は勘違いして頬を赤らめてモジモジしていた。


「プレイ言うな! あぁぁぁ、凄く頭が痛い……」



「心中お察しします。それで死にそうって言うのは貴方?」

一人の女性が部屋に入ってきて尋ねている。


「いや、違いますよ八意先生。兎さんの勘違いでしょう」


「私の事でしたら永琳でいいですよ。勘違い、ね……へぇ、意外です。ご自分で薬も作っているんですか」

棚に並べられた幾つもの小瓶の中に入っている粉薬を見て感心していた。


「お金なんてないですし、自作するしかないですから」

自慢する事ではないですけど、と穏やかに微笑みながら永琳に答えている。


長く生きて見てきた中でもドキッとする程の微笑みで、頬が赤くなるのが分かり少しだけパニック。隣で何故かハァハァしている弟子が最近おかしくなった原因だと分かったようだが、それも仕方ないかと理解したらしい。



「えっと……永琳先生にわざわざ出向いて戴いたみたいですから、お昼ご飯くらいご馳走させてください」

久々にジーッと見つめられて照れたらしく、話題を出そうと提案していた。


「師匠、ご馳走になりましょう」


「え、ええ、そうね。ご馳走になります」


「……兎さんと永琳先生なら口も堅いでしょうし、名乗らせてもらいます。私の名前は七夜月恭夜、少しだけ普通ではない人間です」

以後お見知りおきを、と物凄く優雅に紳士的に決めている。


「……素敵」


「……洋館とかに居たら絶対似合いますよね」

見た目は二十代前半の若い男だが、雰囲気や女性に対する気配りに心の余裕さが大人の魅力としてブーストされていた。


「鈴仙さん、貴女は箸を運んでください。永琳先生は座ってお待ちください」

エプロンを付けながらそれぞれに言葉をかけて台所に向かった。



「はーい! ……あっ! 今、私の事名前で呼んだよね? ね!」

初めて名前で呼ばれて嬉しくなり、まとわりつきながら行ってしまった。


「……この薬を独学で作れる技量に知識がある。そんな人間がこんな場所に転がっているなんて予想外だわ。どうにか引き込めないかしら」

弟子を含めて三人体制になれば色々と楽も出来るからか、他の勢力に取り込まれる前にどうにか引き込みたいと考え始めていた。




そんな出来事から数週間が経ち、相変わらず鈴仙が来る事以外は変わらない日々を過ごしていた。

鈴仙に何度か宴会に誘われるが丁重にお断りをし、平穏な日々を享受している。


「ニャルちゃん達はどんな世界でも同一神物だったとは。もっと早く連絡が欲しかった」

再び遊びに来た邪神達から魔導書を手渡され、部屋の隅に禍々しい本が積んであった。


「黄金の蜂蜜酒をこんなに置いていってくれるなんて、俺もうハーちゃん大好きだわ」


<デレキター!


「何か竹林の奥の方から歓喜の叫びが聞こえたけど……まぁ、いいか」

再会した事でテンションが上がった邪神達と酒を呑んで盛り上がり、その場のノリで家の増築まで手伝ってもらって今じゃ二階建ての広めのお屋敷くらいになってしまっている。


「……あの日は普通の人間が見たら発狂して死ぬような光景だっただろうなぁ」


「ふんふーんふふふーん」

思い返しているとワイシャツ一枚だけの鈴仙が当然のように目の前を横切っていった。


「……いや、ちょっと待て! 何で兎さんが二階から降りてくるんだ!?」

その姿が自然すぎて思わず二度見してツッコンでいる。


「……え? だって空き部屋たくさんあったから」



「永琳先生に一度看てもらった方がいいんじゃないかな……」

自分の知っている鈴仙とは全く違う、エロくて色々と残念な鈴仙に頭を抱えていた。


「どうなってるのか分からないけど、あのシャワー借りるからねー」

この家は魔法やら名状し難い何やらで作られており、外の世界の家より遥かに快適になっております。


「……迷いの竹林の奥地とはいえ、こんなにでかい家を作ったのが間違いだったか」


………

……


「それでこれから宴会に行くんだけどね」

いつものブレザー姿だが風呂上がりで少し色っぽい。


「ああ、花見の季節だからか。それなら早く行った方がいい、ここからだとどこに行くにしても距離がある」

禍々しい魔導書を捲りながら話を聞いている。


「師匠と姫様が恭夜も連れてきなさいって言ってたの」


「俺はいかないよ。あまり誰かと接点を持ちたくないんだ」

鈴仙と知り合ってしまったのは例外であり、今後知り合いを増やすつもりもないらしい。


「でもでも試しに一回だけでも」


「いかない。俺はこの家でひっそりと静かに暮らしたいんだ」

見知っている見知らぬ者達に会うのは心が痛み、目の前の鈴仙のように以前の姿と重ねて見てしまうのも辛い。


「……」

立ち上がるとブレザーを脱ぎ、ネクタイを外し始めた。


「?」

いきなりなんだ?と鈴仙に目を向けている。


「……」

スカートがストンと落ち、ワイシャツのボタンを外し始めた。


「ちょっ、やめなさい!」

慌てて立ち上がると手を掴んで脱ぐのを止めていた。


「行くって言わないと全部脱ぐ」


「痴女か貴様は!?」


「愛があるから為せるのよ!」


「愛!?」


「さぁ、どうするの? 私は恭夜の前でなら全裸になっても平気だけど、それを誰かに見られたりして困るのは誰かしら?」

襲われている演技をするのは確定的に明らかであり、下手したら性犯罪者扱いで大変な事になるかもしれない。


「……わかったよ、わかったから服を着てくれ。こういうのは絶対誰かしら来るから」

行く事を了承すると手を離して距離を取った。


着替え終えると黄金の蜂蜜酒を一瓶だけ渋々持ち、手を差し出してくる鈴仙の手を握り返している。

家の戸締まりをしっかりして、そのまま神社の方に向かって飛び始めた。




懐かしい博麗神社に騒ぐ者達の声、咲夜の姿を見つけて心がズキンと痛んだが顔には出さないように鈴仙の後を追っている。

皆興味津々に見てくるが知らないフリをして、永遠亭の者達が集まる場所に向かった。


「へぇ、貴方が永琳の言ってた……」


「……七夜月恭夜と申します。今宵限りですがよろしくお願いいたします」

名乗りたくはなかったが仕方なく名乗り、今夜限りというのは強調している。


試すように背後から殺気や妖気をぶつけてくる者をチラリと見て、精神を軽く揺さぶるような神話生物の醜悪なイメージをぶつけ返した。

軽い悲鳴とへたり込む音が聞こえたが無視。

精神的に脆い妖怪の天敵であり、既に人間では抑えられない存在。



「蓬莱山輝夜よ。堅苦しいのは好きじゃないし、恭夜って呼び捨てにさせてもらうわ」


「ええ、それで結構ですよ」

背後で悲鳴を上げた者の関係者に目を付けられたな、とチリチリと首筋に走る何かで理解できていた。



宴会が始まってからは皆から離れ、空を見上げていつものようにボーッとしている。

その恭夜に忍び寄るのは幾人か、中には警戒している者もいる。


「……俺は貴女方に敵対する気も、干渉する気もありませんよ」

振り向きながらそう告げた。


各勢力のトップと従者が揃っており、それぞれが値踏みするように見てくる。

皆カリスマ全開だが全く気圧されず、軽く受け流して逆に値踏みするように見ている。



「貴方は何者? 管理者でもある私が力のある存在に何年も気がつかなかったなんて信じられないのだけど」


「死んだはずなのに生きていた、年老いたはずなのに若返っていた亡霊のような人間ですよ。迷いの竹林の奥に結界を張っていますから気がつかなかったのかもしれません。……誰だかは知らないけど、こんな状況にした存在を俺は恨むよ」

愛した存在が先に逝った場所に逝けず生まれ変わる事も出来なくなり、もう誰にも会いたくなくて引きこもり生活をしていたが……。


「……」


「俺は静かに、ただ静かに暮らしたいんだ。愛した者の元にも逝けず、輪廻の輪からも外れてしまった。……だから俺の事は夢でも見たのだと思って、今後は関わらないでください」

年上キラーは伊達ではないようで寂しく切ない表情は警戒心を薄れさせ、対峙し並び立つ者の心をきゅんきゅんさせている。


「ん、んんっ! で、あんたの名前は?」

神奈子が咳払いをして改めて名を尋ねていた。


「……いや、話聞いてました? 今後関わるつもりはないって言ったはずですけど」


「それに私達全員を知っている事についても詳しく聞かせてもらおうじゃないか。引きこもっていた割には私達がそれぞれのトップだと理解していたみたいだしねぇ」


「……俺の事を全て話したら関わらないでもらえるんでしょうか?」

こうなってしまった以上全てを打ち明けて、今後は一切関わらずに迷いの竹林に住んでいればいいと思い始めていた。


「ああ、関わらないよう考慮するよ」


「それ絶対考慮するだけですよね」


「結果は神のみぞ知るってやつさ。まぁ、私は神だし? 結果は知ってるんだけどね?」

胸を張って堂々と不正します宣言をしている。


「匙加減自分次第じゃないですかやだー!」


「おっ、なかなかノリがいいじゃないか! 冷めてるだけじゃなくってよかったよ」

何が嬉しいのかわからないが、近づいてきてバシバシと肩を叩いてきた。


「あだだだだだ」


「ほらほら早く言って楽になりなって!」

他の面々が唖然とする中、ヘッドロックをして頭をわしゃわしゃしている。


「わ、わかりましたから! 早く離してください!」


………

……


結局今後自ら接するつもりもないからいいかと考え、自分の名前と経験して来た事を一部ぼかして全て語って聞かせていた。

違う幻想郷から来たと思われる事、レミリアに仕えていた事、大往生して気がついたら若返ってこの世界に居た事。

全てを聞き終わったレミリアは驚いたようだが納得したかのように頷き、咲夜は自身の事ではないとわかっていても照れて赤くなっていた。


「結局記憶は完全には戻らなかったけど幸せな一生だったかな」


「……なるほどね。重ねて見てしまうから私達とは関わり合いになりたくないと」

紫は関わり合いになりたくないと言っていた事をあっさり理解し、胡散臭い笑みを浮かべている。


「ええ。厄介事に関わり合いたくないって意味もありますが」


「でもどこで暮らしているかはわからないけど、よく生きていられるわね」


「まぁ、はっきり言えば俺は全生命体の天敵だと思われますから。敵対しなければ何もしないですけど」

邪神達に物凄く愛されており、敵対したり手出しをすると大変な事になる。


「あ、彼等が最近ようやく連絡がついたって喜んでたのは君の事だったのかー」


「ええ、そうですよ諏訪子さん。……何か最近人間と言うカテゴリーから外れ始めている気もします」

立派な外道の術を使う魔導師な時点で人間辞めてるようなものだが、さらに薬まで飲んでかなり厄介な存在になっている。




様々な話をしながら証拠を見せたりして心が軽くなった宴会から数日が経った。

相変わらず鈴仙だけは来るが、他には誰も来ない平穏な日々を過ごしている。


「……しかし、生涯通して生活に必要な色んな魔法開発しててよかった。米や野菜も一日で収穫できて、どんな土地でも作れて便利だ」

肉は鳥等を弓で射殺して手に入れたり、遊びに来る邪神達が差し入れとして様々な肉を持ってきてくれたり、迷いの竹林の奥地に引きこもっていても生活が出来る。


「一日寝てるか本読んでるかだよね」

そういう鈴仙は居間に置かれたクッションをお腹に乗せて仰向けになっていた。


「朝はしっかり鍛えてるから問題ない。……兎さんは少し痩せすぎだし、肉を付けた方がいい」


「……その方がタイプ?」


「いや、これが一般的な意見だと思うよ」

無理に痩せようとする女性がダメなようで、しっかりご飯を食べて肉付きのいい女性が好み。


「……別に他の人間がどう思うかなんて興味ない」


「まぁ、それは兎さんの自由だから」


「それで恭夜はどんな子がタイプなの?」

名前で呼ばれないのも慣れてきたらしく、逆に落ち着くようになっている。


「それはあまり気にした事ないな。今までは来る者拒まず、去る者追わずだった」

レミリアやフランに求められて答えた時点で危険が危ない。


「今までは、って事は今は違うの?」


「そうだね。……いい加減割り切って新しい伴侶でも見つけるべきなんだろうけど」

まだまだ咲夜への未練が残っていて活動もしたくないらしい。


「それならさ、予約してもいい?」

ガバッと勢いよく上半身を起こし、眼鏡をかけて本を読む恭夜に聞いていた。


「予約って?」

本に目を落としたまま聞き返している。


「何を割り切るのかは分からないけど、いつか割り切った時は私を奥さんにするって」


「んー……まぁ、兎さんがその時まで俺を好いてくれていたらね。いつになったら割り切れるかわからないから」


「それじゃあ……これに署名してね。よかったー、前もって作っておいて」

細かい文字がたくさん書かれた契約書のような物を懐から取り出し、朱肉まで用意している。


「どれどれ……うん、欲望に忠実なのは素直でよろしい。ただ永遠亭所属になるのとペットにされるのはちょっと困るかな。間違いなく永琳先生と輝夜さんが付け加えたみたいだけど。筆跡真似るの上手いなこの二人」


「えっ、嘘!? ……いつのまに書き加えたんだろう」


「とりあえず斜線で消しておくよ」

所属とペットに関する項目に斜線を引き、残りの条件を飲んでサインをして朱肉に親指をつけてから名前の横に押している。


「ありがとう!」


「これでも兎さんの事は結構気に入っているからね」

最初は来られるのが嫌で嫌で仕方なかったようだが、自分の欲望に忠実な鈴仙のお陰で少しずつ咲夜の事も思い出に変わっていっている。


「早くこれ使える日が来ないかなぁ」


「そこまで想ってもらえると男として嬉しいよ」

指を拭いてから再び本を読み始めていた。

こんな未来もあるかもしれない。

鈴仙ルート固定の引きこもりチートマンな三週目。




真Ⅳの難易度が高すぎてビックリした。

アルラウネまでは全滅せずに行ったけど、流石に辛くなったから二回全滅して難易度下げた。

まさかのスティーヴンにびっくりしたなー。


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