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こんな休日の過ごし方

最近人里に出来たお洒落な喫茶店、外来人の者達が作ったお店に恭夜は立ち寄っている。

西洋風の外観でオープンテラスもあり、喫茶店と言うよりはカフェと言った方が正しいのかもしれない。


「氷とかどうやって手に入れてるのか気になる所だけど……ここの出資者が守矢の神々な時点で予想は出来るな」

里の人間や外来人は見られるのが嫌なのか専ら中におり、テラスには恭夜一人だけがいて目立っている。


「アイスコーヒーはそれなり、ついでに頼んだケーキは砂糖とバターが贅沢に使えないからか高い割に微妙。これなら作らない方が儲けも出ると思うんだけど……」

毎週紫から素材を貰っている恭夜でも無塩バターや砂糖が貴重なのは分かっているから、売れないだろう高いケーキを作るのはどうなんだと悩んでいた。


人の流れを眺めながらストローでコーヒーをかき回し、カランカランカランという氷がグラスに当たる音を響かせている。

あまりに堂々とテラスにいるからか、通りすぎていく者達も自然すぎて気にしてすらいない。



「午後はどうするか。午前中はあの亡霊に雷くらって大変な目に遭ったし、出来るなら安全な場所に……」

人里に来る途中で屠自古と遭遇し、世間話でもしようと話しかけたら女の敵!と叫ばれて追いかけ回されて雷に打たれたらしい。


「女の敵って言われた意味がわからん」

自然にフラグを立てたり、クラッシュしたりと女心を弄ぶような男に見えていたのかもしれない。


「いえ、あなたを言い表すにはぴったりだと思いますよ」

アイスコーヒーの入ったグラスを手にした衣玖が現れ、テーブルの向こう側に座っていた。


「衣玖さんまでそんな事を」


「本当の事です。私と出会った時点でがんじがらめ、誰と結ばれても死亡フラグが立つとか何やったんですか」

アプローチをしながら調査もしていたようで頭を抱えたらしい。


「いや、知らないです。……え、そうなると俺は誰ともお付き合いも結婚も出来ないんですか?」


「今のままじゃダメでしょうね。危ない者にもフラグを立てているみたいですから、強くなって全て丸ごと包むくらいしか」


「これ以上強くなるには人間である事を辞めないといけない気がするんですけど」

勇儀、白蓮、美鈴、萃香という格闘のエキスパートに鍛えられているから気づいていないようだが、既に格闘に関しては外の世界の人が到達出来ない境地に踏み込んでいる。


「それくらいの覚悟がないと踏み出せないって事ですよ」


「覚悟……そうそう。最近三秒くらいなら時を止められるようになったんですよ」

咲夜との絆が深まり、器が少し満たされた事による副次効果だったりする。


「それは人間辞めてます」

アイスコーヒーを飲みながら的確に指摘していた。


「ですよね、咲夜も驚いてましたよ。あ、これ食べかけでよければどうぞ」

少しだけ食べたケーキの皿をフォークごと衣玖の前に置いた。


「あら、ありがとうございます」


「いえいえ」

ストローでコーヒーを飲み口の中を潤している。


「……あなたが作った物の方が美味しいですね」

一口食べて素直に感想を述べていた。


「紫さんとのパイプがないと簡単に無塩バターとか大量に手に入らないから仕方ないですよ」

紫にまとまったお金を渡していて、そこから材料費が支払われている。


「お菓子作るの大好きですよね。総領娘様のワガママでピーチパイを作って頂いた時も嬉しそうでしたし」


「嬉しそうに食べてくれるのを見るのが好きなんですよ。それに天子さんはあれから遊びに来る度に桃をたくさん持ってきてくれますから」

餌付けは完了したらしく、週に一度は必ず遊びに来ている。


「自身が出来る範囲でワガママを受け止めてくれる恭夜さんに甘えているみたいですね。無理な事を押し通そうとする時は厳しく叱ってから優しく言い聞かせてくれていますし、こちらとしてはとても助かっていますよ」


「俺が嫌われたとしても間違った事を正さないと、あの異変の時のような過ちを犯すと思いますから。俺より長く生きていたとしてもやってる事が子供みたいなものですし」

主であるレミリアが間違った事をしようとした時に止めるのも恭夜である。


咲夜はあまり止める気がないようで必然的に恭夜に回ってくる。

一度だけレミリアがガチ泣きする程に怒らせてしまった事もある。

その光景を見て自分達が怒られている訳ではないのにパチュリーはガタガタ震え、咲夜は涙目になり、美鈴は土下座、フランは見なかった事にして部屋から出てこなかったりと、紅魔館で怒らせてはいけない者ランキングで堂々の一位にランクインしている。



「ふふ、やっぱりそういう部分は変わらないんですね……はい、あーんしてください」

話を聞きながら食べていたケーキの残り少しをフォークで掬い、手を添えて差し出していた。


「……あ、あーん」

恥ずかしくなったが人通りも一時的に途切れ、何より美人な女性にしてもらえたので素直に従っている。


まぁ、タイミングよく人通りが途切れたのも完全にフラグなわけで。



「明日の記事は『紅魔館の執事、人里で密会!? 恋人は大人の女性?』で決まりね」

ニヤニヤしながらカメラを構えている天狗が一名。


「お、お前は射命丸文!」

折角の休日に捏造記事を書こうとする文が現れた事で嫌そうに顔を歪めている。


「私は構わないですけど」


「ふっ、明日の新聞を楽しみにしておくことね!」

そのまま空に飛んで逃げようとして……


「……フィルムは返してもらった。さらばだ、歴戦の烏天狗よ」

いつのまにかカメラから取り出したフィルムを手にしていて、文のポケットにフィルム代をかなり多めに入れたらしい。


格好をつけていたが文が飛び去って戻って来ないのを確認すると、かなり苦しそうにしながら椅子に座った。

咲夜の能力とは違い、時を止める度に身体にかなりの負担がかかってしまうので出来るだけ使いたくないらしい。



「……まぁ、普通はそうなりますよね」

椅子を隣に運んでフィルムを預かり、苦しそうに突っ伏している恭夜の背中を優しく撫で始めた。


「と、時を止める事を度々強いられるのは運命石の扉の選択だとでも言うのか……」

輝夜と遊んだゲームに影響を受けている。


「はいはい、辛いなら喋らないでいいですから」


「……」

お言葉に甘えたのかガクリと再び突っ伏した。


………

……


「持続時間延びないし、身体への負担凄いし、咲夜とペアで戦った方が効率いいしで微妙すぎる」

二十分程でようやく回復したようで、残りのアイスコーヒーを飲み干して里を散策し始めていた。


「確か後は炎、風、雷が使えるんですよね。そうなると後は氷と光と闇で完璧ですね」


「それはシンメトリカル的な意味でですか?」


「はい、ドッキング的な意味でです」

勇気でなんとか出来そうな会話をしている。


「私的には定刻通りにのマイ……ところで衣玖さん、今日はこれから何か予定はあるんですか?」


「ないですよ。あなたに付いていくだけです」

微笑みながら恭夜の隣を歩く姿は長年連れ添った妻のようであり、二人は違和感なく里に溶け込んでいる。


「それなら歩き回ってみましょうか。お昼は俺の行きつけの蕎麦屋で奢りますよ」


「ええ、行きましょう。お蕎麦楽しみにしておきますね」

近すぎず遠すぎずの絶妙な距離感で並んで歩いており、その距離感が安心するのか女性からの好意に疑り深い恭夜の好感度が上がっている。


「あそこは餅入りのたぬき蕎麦が美味しくて……。まだ昼には早いですから、まずは広場に行ってみましょうか」



仲良く談笑しながら里の広場に着くと、設置してある掲示板を眺め始めた。

妖怪退治、仕事の依頼、困り事の解決等の張り紙が幾つも貼ってあり、中には特定の個人を指定する物もある。

その内の一枚を見て皆がざわざわと騒いでいた。


「……紫さんからの依頼、しかも俺指名で貼ってあるとか予想外すぎるわ。しかもこの感じからして数分前に貼られたような」

釣られて見てみると自分を指定した紫からの依頼である事に気づき、冷静にそれを見る事で心を落ち着かせている。


『指定:七夜月恭夜 依頼者:八雲紫 依頼内容:忙しい式を楽にしてあげる為に 冷たく見られても 貴方の作ったいなり寿司がほしいの。 報酬:そちらの希望するもの』


「うわ、これ八雲のサイン入りとか俺以外が手に取れない細工までしてある。藍の好みドストライクの味付けを把握してるから俺指定なんだろうけど」

何度か里で偶然出会い仲良く買い物をし、今じゃ自然と呼び捨てに出来る程に藍と仲良くなっていた。


「作るんですか?」


「作らないと無理矢理スキマに押し込まれそうですし、帰ってからでも作りますよ」

誰も触れる事が出来なかった紙を剥がし、畳んでポケットにしまっている。


「この前もいきなりスキマに飲まれそうになって、必死に抵抗してましたね」

天子と共に紅魔館を訪れて恭夜にもてなされていた時の事らしい。


「その分はしっかり仕返ししてますからお互い様なんですよね」

手をワキワキさせながら悪い顔をしていた。


………

……


蕎麦屋でお昼を食べて衣玖と別れ、さてどこに行こうかと悩んでいるといきなり視界が真っ暗になった。


「だーれだ?」


「早苗」

迷わず即答している。


「正解です。懐かしいですねー、外に居た時に古いと分かっていてもやった甲斐がありました」


「商店街のおばさん達に冷やかされたよなー」

デート的なものを毎週していたり、遅くなる日は迎えに行ったりと早苗は同級生から羨ましがられていたり。


「本当に懐かしいです。こうして冷やかして回りましたね」

恭夜の腕に自然に腕を絡めて歩き始めた。


「ゲーセンのUFOキャッチャーで乱獲してたらお店の人に止められたんだっけ」

ダイレクトにモーションを反映させる筐体に入るタイプの格ゲーで無双したり、早苗と仲良く太鼓で遊んで非リアな方々に爆発しろと念じられたり忙しかった。


「ふふ、あの時のお菓子まだ残ってますよ? 保存出来るタイプでしたけど、流石に諏訪子様も飽きちゃったみたいで」


「あ、それなら今度食べに行くよ。その時は久々に泊めてもらうかもしれないけど」


「はい!」

布団は泊まりに来ると翌日には自分の物と入れ換え、恭夜の匂いに包まれて寝るのが最近のブームらしい。


「私はカツ丼を所望するわ」

仲良く腕を組んで歩いていると、いきなり二人の間に霊夢が割り込んできた。


「……霊夢さん、何でわざわざ真ん中に割って入るんですか」


「気分よ、気分。それよりも恭夜、貴方は今度はいつ逃げ込んでくるの? 一ヶ月前はレミリアが暴投したグングニルが直撃して、クビになったって泣きそうな顔で逃げ込んできたけど」

レミリアや紅魔館の者から冷たく(勘違い)される度に博麗神社に逃げ込んでいて、霊夢と魔理沙に慰められながら一週間は引きこもる。


スピア・ザ・グングニルの誤射を受けた事でラーニングしており、レミリアから格闘弾幕用にと偽神槍『スピア・ザ・グングニル・フェイク』という中二回路全開なスペルカードのネーミングを与えられている。



「き、恭夜さんの泣きそうな顔……!?」

弱音を吐いたりネガティブな姿を見た事がなく、そんな姿を見ている霊夢に驚いていた。


「……ふっ。ええ、そうよ。付き合いも長いし、子猫に懐かれてほにゃっとした笑顔を見たりもしてるわ」

勝ち誇りながら早苗に語って聞かせており、ここぞとばかりにどや顔を決めている。


「やめて!」

まさかの霊夢の暴露に恥ずかしさで耳まで赤くなり、微笑ましいものを見る目で里の者達に見られている。


「ふ、ふん! 私なんて恭夜さんの一糸纏わぬ姿を見てるんですから!」


「い、一糸纏わぬ姿……!?」

カウンターをくらうとは思わなかったらしく、かなり動揺していた。


「社会的に抹殺される! この紅いのと蒼いのに抹殺される!」

このままでは不味いと言い争う霊夢と早苗の手を掴み、自身の限界を越えた速さで空に飛んでいってしまった。



博麗神社に到着すると二人の手を放してその場に座り込んだ。


「一糸纏わぬ姿ってどういう事よ!」


「言葉通りの意味です。それに私と恭夜さんはLOVEで始まってLOVEで終わる糸で結ばれているんです」

そんな恭夜を尻目に火花を散らしながら争いを再開していた。



「……早苗からは好かれているんだと信じたい。これでからかっただけですよ(笑)とか言われたらマジで死ねる」

好意を与えられる事に物凄く疑り深く、最近になってようやく早苗の好意を半分くらい信じている。



「霊夢さんが恭夜さんに持っていた好意は友人に対するものだったんじゃないんですか?」


「……異変じゃない妖怪退治に付き合ってもらった時に色々あったのよ」

その時の事を思い出して頬を赤らめている。


雑魚だからと慢心した霊夢を諌めながらも、霊夢が動きやすい絶妙なアシストをしたらしい。

そして本来退治するはずではなかった妖怪に奇襲されてしまい、咄嗟に霊夢に覆い被さるようにしてかばって怪我をしていた。

この単純な事が切っ掛けで異性として意識し始めてしまい、今までプールされていた様々な好感度も上乗せされた結果がこれ。



「ぐぬぬ……」


「あれで五分よ、五分」

大体皆似たような立ち位置に立っていて、紅魔館組が二歩くらい抜きん出ている。



「……」

渦中の人物は二人の話が中々終わらず退屈になり、箒を取りに行って境内の掃除をしていた。



後日、博麗の巫女と守矢の現人神の二股疑惑の新聞が配られ里での評価が少し下がってしまった。

そして両手に銃剣を握り、爆笑しながら逃げる烏天狗を追い掛け回す姿も見られた。

その途中博麗の巫女に退治を依頼するはずだった妖怪が立ち塞がったが、邪魔だとすれ違い様に首を斬り捨てて退治した事で評価が少し上がり変動値は0。

今のまま誰かを選ぶと、どこかでデッドエンドフラグが立つくらいの交友関係。

死後もある世界だからどのみち逃げられないだろうけど。




Fate/EXTRA CCCは面白かった。

AUOもSNのとは違って普通に面白いし強いし。

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