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魔法より魔術の適性があったのかも

レミリアに与えられた二日間の休みを二柱の神に呼び出されて守矢神社で過ごしていた。

紅魔館に帰ってきた恭夜は禍々しい本を何冊も持っていたが、あのパチュリーでさえ息を呑む程のもので誰もその事に触れようとしない。

それは恭夜の部屋にある本棚に並べてあり、持ってきた本人はそれをたまに見ている。


「き、恭夜? それ読んで……平気なの?」

結局パチュリーも本が気になるようでそわそわしながら尋ねていた。


「……え? ああ、俺は平気みたい。予想外の出来事で本物見ちゃってるし、やたらフレンドリーで気に入られちゃったしで今更冒涜的な内容の本見ても何ともない」

パチュリーの必死の懇願でため口に呼び捨ての対応をする事になり、これでレミリア以外には敬語やらを使わずに済んでいる。


「本物……?」


「這い寄る混沌とか大いなるクトゥルフとか。そんな神々やらが人間サイズで何体も居て、それが諏訪子さんと神奈子さんの友達とか予想外すぎた」

知り合いと言われて他にも色々な神様を紹介され、どんな友人関係を築いているのか不思議で仕方なかった。


「……よく発狂しなかったわね」


「いや、正直この手の事には慣れたからね。外来人のぐっちゃぐちゃな死体とかよりは遥かにマシ。独特な臭いも演出だから普段はしないって言ってたしね。ハスターさんから黄金の蜂蜜酒を戴いたけど、あれはびっくりするくらい美味だったなぁ」

見た目はアレな神々だったが日本語でやたらとフレンドリーに話しかけてきて、危険なのは創作の中だけで実はそんなに危険ではないと本人達が言っていたようだ。


「……」

予想外の交遊関係に開いた口が塞がらなくなっている。


「俺を呼んだのもTRPGでGMをしてほしかったからみたいで、そんな素人な神々の探索者達を発狂させて全滅させて来た。『俺達を全滅させに来た時の恭夜の顔でリアルSAN値削れるわー』とかあの見た目で言われた時は笑うしかなかったわ」

そんな図太くゲーム中だけドSな恭夜を気に入ったようで、呼び出したら来てくれるようになっている。


「……要するにその本に記載された神々や、その眷族に気に入られた訳ね」


「そうなるね。妖怪に対する最強の切り札を手に入れた事になるけど、正直遊び仲間だし迷惑かけたくないんだよなぁ……」

楽しいセッションだったようで神とか人間とか関係なく友人として仲良くなっていた。


「……貴方、人間である事を辞め始めてるわよ」


「止まった時の中を動ける時点で人間辞めてる気がするよ」

パタンと本を閉じて本棚に戻してからパチュリーの方を見た。


運命を操る紅い悪魔。

総てを破壊する紅い悪魔の妹。

時を止めるメイド。

あらゆる魔法を駆使する魔女。

気を使って門を守る体術に秀でた妖怪。

そして新たに異形の神々を招来する事が出来る執事が加わり、化物揃いの紅魔館がより一層手がつけられなくなっていた。


何か言いたそうなパチュリーが口を開くと、外の世界から持ってきた携帯から着信音が流れ始めた。

電波がなく着信するはずがないのだが、恭夜は当たり前のように懐から携帯を取り出して通話ボタンを押している。



「はい、七夜月です。……あ、ニャルちゃん? うん、うん。それなら、また諏訪子さんとか含めて遊ぼうか。ニャルちゃんはクトゥグアとも仲良くしないとダメだよ。あのSANチェックはそんな二人に対してのペナルティだったんだから」


「私の中の這い寄る混沌のイメージが覆されていくわ」

恭夜が誰と会話しているのか分かったようで、色々な意味でショックを受けている。


「話の中とはいえ自分で発狂するとは思わなかった? あはは、確かに。ハスターさんとクトゥルーが潰し合いを始めて、神話生物が巻き込まれて倒されるとか予想外だったけど」

GMを困らせようとしたわけではなくナチュラルにそんな展開になってしまい、収拾を付けるのが大変だったらしい。


「……」

恭夜の胸元に密着して声を聞き始めたが、聞こえてくるのは凄く美しい女性の声だった。


「うん、それじゃあ今度はこっちから電話するから。またねー……ふぅ、前回はダンディーな男の声だったのに今回はやたらセクシーな女性の声だったなー」


「確かに凄く艶やかな声だったわね」

これ幸いとばかりに密着したまま離れようとせず、擦り擦りとマーキングのように顔を胸元に擦り付け始めた。


「輝くトラペゾヘドロンも渡されたけど、あれでニャルちゃん呼ぶの面倒なんだよね。今は最近外で廃れてきた携帯があるから便利でいいわ」

ガラケーであっても外に居た時の最新機種であり、電話帳には主に神様の名前ばかりで早苗、はたて、紫の名前が逆に浮いている。


「へー」

既に興味が恭夜に移り、くんかくんかと匂いを嗅いでいて空返事。


「……」

パチュリーの帽子をそっと取り、悪戯心が芽生えたようでその頭に顔をくっつけてみた。


「汗と香水と男特有の……きゃっ! ちょ、ちょっと!」

自身の匂いを嗅がれ始め慌てて離れようとしたが、恭夜が抱き締めていて離れられない。


「とりあえず仕返し。女の子って凄く柔らかいし、いい匂いするしどうなってるんだろう」

片手で軽く脇腹辺りを撫で、ナチュラルにセクハラ行為に及んでいる。


「やっ! どこ触って……! きゃあっ!」


「可愛いですよ、パチュリー様……」

軽く耳に息を吹き掛けながら囁き、小悪魔が言っていたパチュリーのからかい方を実践していた。


「あっ……はぅ」

顔を真っ赤にしてぎゅっと恭夜の服を掴み、胸元に顔を埋めてぷるぷるし始めた。


「……やばい、めっちゃ可愛い」

頭を撫でながら、もうこのままパチュリーを押し倒してしまおうかと考えてしまうくらいの破壊力。


肩に手を置き胸元からそっと離すと、耳を真っ赤にしながら俯いてしまった。

その顎に手を当てて上を向かせ、そのまま強引に唇を奪おうと顔を近づけていく。

恥ずかしさでどうにかなりそうだったパチュリーだが、可愛らしく目をぎゅっと閉じてキスがしやすいように少し顔を上げていた。

もう少しでキスをしてしまうという所でハッとした恭夜が慌てて顔を引き、頭を振って煩悩を追い払っている。



「……パチュリー、また何かしただろ」


「な、にゃにもしてないわ!」

目を開き慌てて否定しているが、少し噛んでいて怪しさ爆発だった。


「ポケットに男をその気にさせるポプリが入ってるの見たんだけど」


「え、嘘っ!? ……はっ!」

慌ててポケットを確認し始め、見えていない事が分かった所で恭夜の意図に気がついている。


「ああ、嘘だぜ。だがマヌケは見つかったようだな」


「……してやられた訳ね。ええ、そうよ。いい雰囲気になった時に男をその気にさせるポプリを持っているわ。でも悪いかしら? 私は偶然持っていただけで、いい雰囲気になったのは私のせいじゃないもの」

バレたならしょうがないとばかりに澄ました顔で開き直り始めていた。


「小悪魔さんもグルだったんですね、わかります」

流石の恭夜も露骨なまでのパチュリーの執着具合に、実は俺の事が好きなんじゃないか?と少しだけポジティブに捉えている。


ただそれすらも演技でしたーとか言われたら立ち直れないと警戒は怠ってはいない。



「そんなわけないじゃない。……そう言えば自称ヴァンパイアハンター含め、襲撃者をかなりの数片付けた褒美に広い部屋を与えられたのよね」

追求されるとマズイと感じたのか露骨に話を逸らしに来ていた。


「……うん。やたら大きいベッドがある事以外は特に以前の部屋と大差ないけど」

追求してもいいことはないと考えて話を合わせている。


「レミィに頼まれたから私が魔法で作ったの。大きくて複数人で一緒に寝れるようにしてあるのよ」

複数人で寝れると言ってから露骨にチラッチラッと恭夜を見ていた。


「朝起きると咲夜が潜り込んできてたりするから困る。いつのまにか絶対安心領域クローZにメイド服が数着置いてるし、最近隣で寝てるのに違和感なくなってきてるしで色々やばい気がする……」

同室で背を向けあって着替えをするようにもなっており、このまま行くとナチュラルに咲夜エンドに到達してしまう。


「咲夜、美鈴、小悪魔、私、フラン、咲夜、美鈴って感じのローテーションを組んでいるのに咲夜にしか気づいてないの?」

びっくりした顔で恭夜を見ている。


「……怖い怖い怖い! 何それ凄く怖い! お前達最近遠慮なさすぎて怖いよ!」

毎日誰かしらが部屋に侵入し、隣で寝ているのを知って物凄く怖がっていた。


「失礼ね。『これだけ大きいベッドだと一人で寝るの寂しいなー、なんて』って言ってたから一緒に寝てあげてるのよ」

今まで勝手に侵入してこっそり隣で寝ていたのに、何故か上から目線で偉そうにしている。


「ここで開き直るとかどうなってるの……。どうせなら起きてる時に来てくれればいいのに」

特に紅魔館の癒し担当であるフランとは一緒に寝たいようだった。


「それがお望みならそうするわ」

それだけ言うといそいそと部屋から出ていった。




その後は特に何事もなく夕飯も終え、妖精メイド達に誘われていた飲み会におつまみを持参して参加している。

部屋に入ると最近入ったばかりの妖精メイドも全員居り、広めな四人部屋でちょうどよかった。

恭夜が入って来たのを見て新入り数人は緊張でカチカチになってしまったが、プライベート故に小粋なジョークで場を和ませている。

来た当初に一緒に魔理沙を撃墜した五人の妖精達はお酒の準備をしたり、恭夜のジョークに合いの手を入れたりと長く一緒に働いているだけあり息があっていた。

その合いの手を入れてきた部下にセクハラをして頬をつねられる恭夜の姿を見て緊張も解けたようで、新入りも愉快そうに声を上げて笑っている。

道化になった甲斐があったもんだと考えながらも、セクハラした事を咲夜に告げ口されたらどうしようと不安になっていた。

飲み会が始まって酒も入っていい気持ちになり、夜も更け始めた頃に一足先にお暇している。


「あー、いい気持ち。適度にアルコールが入るのが一番いいわ」

自分の部屋の前に着き、鍵を開けて扉を開いた。


「あ……おかえり」

クローZに自分の服を何着か掛けていたパチュリーが恭夜に気づき声をかけている。


「……まぁ、居るだろうなって予想はしてたよ。何かまたベッド大きくなってない?」

酔いも醒めて冷静になり、周囲を見回して気になった点を突っ込んで尋ねている。


「咲夜、美鈴、小悪魔、フラン、私でローテーションしてるのは話したから知ってるわね。それで私の後は全員一緒にってさっき決まったのよ。だから六人で寝れるサイズにしたわ」

髪をふぁさってやりながら可愛らしいドヤ顔を決めていた。


「そんな事をされると俺の性欲がマッハで危険が危ないんだが」


「大丈夫、もしそうなって暴走してもちゃんと縛る為の縄は用意してあるから。美鈴がいれば止められるもの」


「ですよね」

寝ている咲夜の頬を優しくぷにぷにしたりするくらいの勇気しかないから割と安全かもしれない。


「鋼を越えた緋緋色金の自制心に期待するわ」


「生殺しとはこういう時に使う言葉か……」




おまけ


飲み会が始まる前の様子


「さっきから合いの手を入れてきてるけど、こいつ等も君達みたいに小さかったんだよ。それが今じゃ色んな場所がこんな立派になって……」

そう言いながら隣に腰かけていた妖精メイドの尻を軽く撫でている。


「あらあら、おいたはいけませんよメイド長補佐〜?」

いきなり触られビクッとして頬を赤らめたが、怒ってますアピールと共に頬をギューッ!と強くつねり始めた。


成長して個性が出た中でもお姉さんタイプになった者であり、成長した妖精メイド達の中でもスタイルが抜群に良い。

恭夜の指示で油断していた魔理沙を叩き落とした締めの存在でもあり、レミリアよりも恭夜に忠誠を誓っている節がある内の一人。



「いだだだだ! うそうそ! だからつねるのやめて!」


「まったく、飲み会になるとおいたばかりするんですから」

まさかの初セクハラ行為に心臓がバクバクしているが、表には出さず対応している。


「俺は悪くねぇ! 撫でやすい位置にいたのが……うそうそ! 魅力的だったからつい撫でちゃったんです!」

普段の仕事での堅いイメージしかなかった新入りの者達も、プライベートの緩い恭夜を見てクスクス笑い始めていた。


「みんなも気をつけなさい、この方はプライベートだといつもこんな感じなのよ。ただメイド長達には頭が上がらないから、助けを求めるならメイド長か美鈴さん、幽香さん辺りがおすすめね。……私はどうしてもと言うのなら好きなだけ触られても」

最後はチラ見しながら聞こえないくらいの声で言っている。


「?」

はーい、と皆が返事をする中チラ見されている意味が分からず不思議そうに見ていた。


「……はぁ。メイド長達も苦労する訳ね」


「何が?」


「色々ですわ」

好きでもない男に身体を触らせるはずもなく、触られても照れ隠しに頬をつねった程度で済ませているのに気づかれず少しガッカリしていた。

冒涜系男子。

きっと遊びに旧神も混じってるくらい緩い世界。

電話で呼べばすぐ来る邪神とかお手軽。

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