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再会はしたけど一部改竄されています

異変解決時の宴会を山の神社でやる事になった時、いつのまにか妙な結界を張られてしまい恭夜だけ神社から脱出不可能になって二日目。

本日ようやく帰れると言われ、その前に談笑をしていた。


「異変の原因が貴女方だったのには驚きましたよ。手加減なしの霊夢に早苗が撃墜されてたのを見た時はフリーズしましたし」

慌てて八意印の薬を使って治療して、気を失った早苗を背負って後を追ったのは言うまでもない。


「私達もビックリしたよ。まさか恭夜がこっちの世界の住人だったなんてねぇ。道理で私達を見ても驚かないはずだよ」


「あーうー。また一緒に暮らせるね!」

恭夜の膝が凄くお気に入りらしく、上に座ってニコニコしている。


「まぁ、言っても信じてもらえないと思ってましたからね。諏訪子さん、残念ですけど俺は紅魔館のレミリア・スカーレット様の従者ですので、一緒に暮らす事は出来ないんです」


「ふふっ、うふふふふ」

早苗は今朝から妙におかしく、恭夜を見る目が凄く色っぽい。


「えーっ! ……じゃあ、恭夜の部屋にこれ置いといてくれたら我慢する」

そう言うと割と大きめな蛙の置物のような物をどこからか取り出した。


「まぁ、それくらいならいいですけど。ただ大きめですし、部屋の隅になりますけどいいですか?」


「うん、いいよ。置いてあるだけでいいから」

分社扱いにして行き来自由にする気満々である。


「私と恭夜さんが結ばれるのは天命だったんですよ。名前は違っていましたけど、あの方は間違いなく恭夜さんでした。夢では夫婦でしかも娘まで居たんですから、これは間違いないですね!」

守矢神社の神々の中では早苗だけが見たらしく、朝から様子がおかしかったのはそのせいらしい。


「わー、早苗もそのタイプだったかー。白狼天狗の犬走さんよりはマシかもしれないが……」


「いきなり走ってきたと思ったら恭夜に飛びついて顔を舐め始めて、服を脱がし始めた時は私と早苗の二人だけで止めたんだよね。神奈子と巫女と魔法使いが赤面して固まっちゃったから」

抵抗する恭夜を押さえつけ、顔を舐めて口内を蹂躙して満足してから脱がし始めたらしい。


あまりの展開に早苗は驚き固まっていたが、恭夜がスラックスを脱がされて悲鳴を上げた瞬間は素早く、普段からは想像できないような鋭いドロップキックで椛をぶっ飛ばしたようだ。

諏訪子が縄を使って拘束し、ようやく大人しくなったが恭夜はトラウマを植え付けられてしまっていた。



「だってあんなの見せられたら思い出しちゃって……」

恭夜をチラ見するポニテな神奈子は普段の凛々しい雰囲気の欠片もなかった。


「本気で怖かったです。世の中の女性が男に襲われる怖さってのを、逆の立場で体験するとは思わなかったですよ……」

ちなみに酔って理性が吹っ飛んでいたとはいえ神奈子に対して強引なキスをし、心を奪ってしまったこいつに椛を責める資格はないと思われ。


正気を取り戻した椛が土下座して謝るという光景が新聞になり、文が追いかけ回されているのを恭夜は知らない。



「いやー、涙目の恭夜さんはレアでしたね。……名残惜しいですが、今日で一時的にお別れですね。絶対会いに行きますから、あの私の告白の返事を期待してます。YESかはいのどちらでも私は……」


「早苗。八雲紫がフェアじゃないから、告白の件はなかった事にしたって言ってたよ?」


「告白……?」

慧音が上手い事やったらしく、恭夜は別れの日に早苗からお弁当を受け取った事しか覚えていない。


「それだと私だけ一歩遅れてるじゃないですかやだー! あの綺麗なメイドの女性とか反則ですよー!」


「よ、よく分からないですけど俺はもう行きますね。お嬢様が心配してくださっていると思うので」

ジタバタしだした早苗を放置し、一目散に守矢神社から脱出していった。




行きに手当てをした河童の少女に帰りに寄ってほしいと言われたのを思い出し、川の辺りで降りるとうろうろし始めた。

気配は感じるのでどこに居るのかは分かるが、分からないフリをするのも大人のマナー。


「確か……河城さんだったっけ。手当てをした時に赤くなってたのが可愛かったな」

あまり男に触れられた事もなく、さらに人間が相手でとても恥ずかしかったらしい。


「ひゅいっ!?」


「うん?」

奇声が聞こえて振り向くと誰も居ないが、そこに気配だけは感じる。


「私なんて、その、可愛くなんて……」

何もない空間から照れた声だけが聞こえてくるのは少し不気味だった。


「河城さん、だよな? 姿が見えないんだけど」


「あ、ごめん!」

何かごそごそしたと思ったら、いきなりにとりの姿が目の前に現れていた。


「あ、見えるようになった。こんにちわ、約束だから寄らせてもらったよ」


「うん、待ってたよ。今日はこの前のお礼にこれを渡そうと思って」

背負っていたリュックをおろし、ごそごそと何かを漁っている。


「あれは霊夢達に悪い印象を持ってほしくないって意味もあるから、お礼とかはいいよ」

薬や包帯等は全部恭夜が自腹で購入しており、ボランティアのようなものなのに毎度異変が起きる度に強制的に連れていかれて正直困っていた。


「そう言わないで。私も作った物を使ってくれる人がいると嬉しいからさ。……じゃーん! 煙幕玉だよ! 恭夜って逃げる専門だって言ってたから、昔作ったやつだけどあげる」

プリングルスのような筒に五つほど入っており、筒ごと恭夜に手渡している。


「マジか。最近やたら速い妖怪とか多くて、逃げても追いつかれたりするから本気で助かるよ。それで使い方はやっぱり地面に叩きつけるの?」

それを受け取り本当に嬉しそうに感謝の言葉をにとりに告げ、手頃な岩の上に腰かけて使い方を尋ねていた。


「まずそれは真ん中の……」

隣に腰かけると早速説明し始めた。


………

……


「しかし、のびーるアームとか凄いな。今度時間がある時にもっと見せてもらってもいい?」

発明品を見せてもらっていたようで色々な物に一喜一憂していた。


「いいよいいよ! いやー、盟友はわかってるねー!」

人見知りをするにとりと簡単に打ち解けて、次に会う約束まで取り付けている。


「ドリルは怖いけど男のロマンだから。それじゃあ、俺はもう行くよ。またなー!」

ふわりと宙に浮かぶと手を振りながら飛んでいってしまった。


「またねー!」

ぶんぶんと手を振るにとりに、他の河童達も珍しい物を見たという気持ちで眺めている。



しばらく飛んでもうすぐ紅魔館だというタイミングで嫌な予感がして、恭夜は近くの木の陰に身を潜めていた。

そっと空を見上げていると疾風のように現れた射命丸文。

キョロキョロ見回している所を見る限り間違いなく恭夜を探しており、早く帰ってくれと祈りながら見守っている。


「……ピンクか」

ちゃっかり見ているし、相手に見つかっても仕方がないかもしれない。


「さっきまでここら辺を飛んでいたはずなのよね」

プライベートモードで探しているようで、何か用があるのかなかなか飛び去ろうとしない。


遂には地に足を降ろして探し始める始末。

今なら館の中まで逃げ切れるんじゃないか?と考えたのが運の尽き。



「……ふふふ、無駄無駄無駄無駄。私は伊達で幻想郷最速を名乗っているわけじゃないのよ」

文じゃなければ逃げ切れたかもしれない速さで紅魔館に逃げていくが、相手がかなり悪かった。



「美鈴の姿が見……!」


「遅いですねぇ、遅すぎます。このまま戻りますよー!」

文に捕獲されてしまい、折角帰ってきたのに妖怪の山に凄い速度でUターンしている。


捕まった恭夜は口をパクパクさせていたが、だんだん顔が青くなり最後は身体中の力が抜けてぶら下げられたまま飛んでいった。



許可を得ていたようで恭夜をぶら下げていても何も言われず、自身の家に運び込んでいた。

様子がおかしいのに気がついたのは椅子に座らせた時らしく、真っ青な恭夜の顔を見て大慌て。


「……はっ…はぁっ…はぁっ…」

文が慌てている最中に目を覚ましたようで、酸素を取り込むのに必死。


「よ、よかったぁ。取材をする前に死なれたらどうしようかと……」

取材後だったら死んでもオッケー的な考えのようで、恭夜からの信頼度補正があるとしたら間違いなく今0になっている。


「……アリスに操られた時より死ぬかと思った。一瞬こまっちゃんがビックリした顔でこっちを見てたような」


「それじゃあ、まずは山の神様達との関係から聞かせてもらいますねー」

ニコニコした笑顔と敬語になった文は可愛らしいが、プライベート時の文の方をメインで知っている恭夜は少し身震いしている。



それからたっぷり三時間、質問に次ぐ質問に疲れながらも丁寧に答えていた。

後日出来た新聞に不気味なくらい恭夜を持ち上げる内容が載せられ、知り合った様々な者達が紅魔館を訪ねてくるようになるのを今の恭夜は知らない。


「はい、記事に使う写真を撮りますから笑顔でお願いしますよー」

残りは写真だけとカメラを構えて笑うように強要していた。


「……」

たまに来るゲストに接する時に使う、作った微笑みで対応している。


「うん、いい微笑みですねー! タイトルとして『紅魔館に住む謎の男、その全貌に迫る!』。少し脚色しましょう、成長した妖精メイドを手込めに……」


「それは脚色じゃなくて捏造だろ! 花果子念報を作ってる天狗を見習ってちゃんとした記事を書いてくれよ……」


「? ……あぁ、あの引きこもりの。でも刺激が必要だと思わない? メイド長とラブラブチュッチュッしてるとかでもいいんだけど。山の神様達とか永遠亭の兎、何よりあの風見幽香の反応も見てみたいし」

すっかりプライベートモードになっており、敬語が消え去っている。


「何の反応を見たいのかは知らないけど、俺なんかとそんな関係とか書かれたら咲夜さんが可哀想だろ」

恋をして傷つく事を極端に恐れ、さらにネガティブ過ぎて自ら踏み出す事はない。


恭夜の攻略難易度が激難なのは確定的に明らか。

一定の好感度に達するとそこから一切好感度が変動せず、リセット不可のランダムで起きるイベントやアクシデントで選択をミスらずにフラグを立てないとクリア不可くらいに難しい。



「まぁ、楽しみにしてて。それより椛がちゃんと謝りたいって言ってたわよ。本能の赴くままに貪ってしまいました、とか言ってたけど」


「犬走さんか……」

顔が赤くなったり青くなったり忙しい。


「まぁ、拒否しても連れていくんだけどね。どうなるか見物で面白そうだし、記事になるかもしれないから」


「保険が、保険が欲しい。射命丸さんが助けてくれたりは……」

恐る恐る尋ねているが期待は全くしていない。


「そうねー……紅魔館に忍び込んで妖精メイド達に聞き込んだ情報によると、貴方はお菓子作りが得意だって聞いたわ」


「まぁ、それなりにだけど」

様々なお菓子作りも日常の中の一つになっており、毎日違うおやつが出てきてレミリア含めて皆が楽しみにする程の腕になっている。


「それじゃあ、もしもの時に助ける代わりにそのお菓子を私にも作ってもらおうかしら。もし本当に美味しいのなら、私の新聞に貴方のお菓子作りコーナーを新しく載せるのもいい考えだと思わない?」


「でもレシピとか載せても面白くないと思うよ。設備がないと作れないお菓子だってあるから」


「まぁ、それもそうね」

まだ知り合って半年くらいで、あまり興味もなく取材すらしていないから互いに好感度は0に近い。


そんな話をしながら文の家を出ると再び文にガシッと掴まれ、青褪める恭夜を尻目に文は再び高速で椛の家まで飛んでいった。



ぐったりしながら到着すると既に家の前で椛が待っており、手を振りながらモフモフな尻尾もぶんぶん振っていてとても犬っぽかった。


「死ぬ……一日に二回は死んじゃう……」

文が掴んでいた手を離すと地面にへたり込み、必死に酸素を取り込んでいる。


「あぁ、ご主……じゃなくて恭夜さん、肩を貸しますから早く中に」

何かを口走りそうになっていたが甲斐甲斐しく肩を貸し、文を見ずに家の中に入っていった。


「……あの堅物の椛が知り合ったばかりの、しかも人間の男をねぇ」


………

……


「この前は嬉しくて我を忘れてあんな事をしてしまって、ごめんなさい」

恭夜が落ち着くと綺麗な土下座で誠心誠意謝り始めた。


「うー……犬走さん、今後自制出来ます?」

まだ少し恐れているようだが基本的に女性には弱く、肩を貸してもらっている時に間近で見た椛に微笑まれたのも恐怖を和らげる一因になったようだ。


「はい。あれはあまりに嬉しくて我を忘れてしまっただけなので、今後は自制できますから安心してください」


「それならよかった。それじゃあ、俺はもう帰り……もう少し居ます」

座布団から立ち上がり帰ろうとしたが、椛の隣に座る文の目だけ笑っていない微笑みに屈している。


「あ、それならお茶出しますね。この前人里で恭夜さんが購入していたのと同じお茶の葉があるんですよ」

うきうきした様子でお茶を淹れに行ってしまった。


「あ、お構いなくー……何で俺が買ったお茶の葉がわかったんだろう?」

店員以外誰も居なかったはずだし、と悩んでいるが答えが出るはずもない。


「……これはちょっと怖い事になりそうだから記事にするのはやめておくべきね」

恭夜の呟きで何かを察したらしく潔く諦める事にしたらしい。


「まぁ、いいか。射命丸さんの期待には添えそうにもないね」


「まぁ、空振りだった分はお菓子に期待させてもらうわ。お茶飲んだら私はお暇するから、逃げるなり残るなり好きになさい」

顔見知りから知り合いにランクアップしたのはいいものの、まだまだツンツンした態度である。


「まぁ、もう平気だと思うよ。どうせ強者からは逃げられないのは身を持って経験済みだし……」


「お茶ですよー」

三人分の湯呑みの乗ったお盆を持ってニコニコしながら椛が戻ってきた。




結局文と共に椛の家を出て、妖怪の山から出られる方向を教えてもらい山道をひたすら歩いている。いきなり足を踏み外して崖から落下、下の方にあった大木の太い枝に掴まるも何故か根本から折れてさらに落下。

何とか着地には成功したが歩き出した瞬間に滑って転んで顔面を強打し、ごろごろと地面を転がり回っていた。


「……何て運の悪い。色んな厄が渦巻いてて心配だから追いかけてきてみたけど」


「……ひ、雛さんじゃないですか」

異変の前に仲良くなっており、定期的に厄を取ってもらう仲だったりする。


「厄を取るその前に……触れ合い触れ合い」


「それ俺が厄で一時的に不運になるの前提過ぎて辛い」

ぺたぺたと嬉しそうに触れてくる雛を見ると拒否できず、不運の後の幸運を期待する事くらいしか出来なかった。


「私の事を聞いていても普通に話しかけてきたり、思いっきり抱き締めてきたりしたのは貴方が初めてだったのよ。触れ合う暖かさを教えた恭夜が悪いわ」

隣に腰を降ろして恭夜に寄りかかり、身体を預けて目を閉じている。


「いや、あれは抱き締めたんじゃなくて誰かがやってた弾幕ごっこの流れ弾が雛さんに当たりそうだったから引き寄せただけで」

腕を掴んで引き寄せたら、そのまま腕の中に収まってしまったらしい。


「そんなバレバレな言い訳しなくてもいいのよ? でも恭夜の幸運の値が人並外れていてよかったわ。こうして私の厄が付いていても常人くらいの幸運に落ちる程度だもの」


「じゃあ、さっきのあれは何だったんだろう。少し楽しかったけどさ」

妖怪や厄神様に関わって怪我程度で済んでいるのだから、人並外れた幸運がある事だけは確か。


「あれは貴方の不注意。木の実に気を取られて足を踏み外して落下、あの勢いで枝に掴まれば流石に折れるわよ。あの木の枝も大木の中でも細かったもの」

全部見ていたがそのまま行かせて今に到る。


「お菓子作りに使えないかなーって考えてたら……ね?」

よくお地蔵さんにお供えしたり、雛にも厄を取ってもらう代わりのお供えとしてクッキー等の焼き菓子を渡している。


お地蔵さんにお供えしたものは恭夜が立ち去った後に妖精達が美味しくいただくシステムになっており、最近はお地蔵さん周辺ではあまり悪戯されなくなって平和である。



「危ないから次からは気をつけなさいね。……でもあのマドレーヌは絶品だったわ」


「あれはお嬢様も褒めてくださったし最高の出来だったよ」

紫が週に一度はお菓子用の無塩バター等々を差し入れてくれるので、毎日楽しく作っている。


「……でも毎日焼き菓子を食べていたら太っちゃいそうね」


「女の子って大変だね」

エネルギー消費量がただでさえ激しいのに、さらに太らない体質の恭夜は咲夜や慧音に羨ましがられている。


「男の子っていいわね」



結局この日は紅魔館に帰れたのが夜になってからで、咲夜にしこたま怒られたのは当然の事だった。

早苗と椛だけ追体験組、雛さんとは結構前に遭遇済みで顔見知り。

秋姉妹はまたいつか。

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