もう妖怪でいいんじゃないかな?
ほんのちょっとの平和な時期を過ごし、二つの異変を乗り越えた結果……
「もうお婿に行けない……」
両手足をギプスで固定され、布団に寝かされていた。
「ごめんね、こんなに怪我させちゃってごめんね……」
兎耳ブレザーの少女が布団の傍で水につけたタオルを絞り、謝りながら恭夜の身体を丁寧に拭いている。
「半分は俺のせいだし、痛みはもうなくて大丈夫だから。鈴仙にはそんな泣きそうな顔をやめてほしいよ」
怪我のせいで身動きが取れず、面倒を看てくれている少女に感謝している。
「でもぉ……」
自分がした事を思い出し、涙声でグスグスし始めた。
「俺が時間稼ぎを請け負ったんだし、仕方ない事だったんだよ」
霊夢達を黒幕の元に行かせる為、鈴仙の相手を請け負ったのが原因でこんな事になっているようだ。
両脚は鈴仙に折られているが、両腕は霊力を暴走させて鈴仙に撃ち込んだなんちゃって極太ビームのせいだったりする。
それが直撃して鈴仙を気絶させる事は出来たが、反動で筋肉はズタズタになり骨は折れるわで結果ドロー。
「……うん。あ、そう言えばね経過を見た師匠が『七夜月恭夜は化け物ね』って言ってたよ? 人にあるまじき回復力、一週間で骨折が治るなんてありえないって。後でギプスを外しに来るって」
「ば、化け物……。ようやく手足を自由に使えるようになるのかー」
トイレ等は人型になれる妖怪兎の子達か鈴仙が世話をしていたようで、ご立派な物もしっかり見られちゃっている。
「今日は姫様もお見舞いに来るって言ってたから、私はそろそろ行くね? ……貴方に私に関する記憶がほとんどなくても、私は貴方が大好きだからね」
最後に小声で囁きながらタオルで拭くのをやめ、ピンクの兎柄パジャマのボタンをしめていく。
「姫様って……確か輝夜さん?」
「うん。師匠もその時に一緒に行くって言ってたから、無茶はしない……はずだから」
輝夜が無茶をしないという自信がなく、目を逸らしてタオルと水の入った桶を持って出ていった。
鈴仙の言葉で不安な気持ちのまま数十分が過ぎている。
何分かに一度妖怪兎が入ってきてはジーッと眺めては出ていく、これを繰り返されて少し居心地が悪かった。
「……」
トランセルとかってこんな気持ちなのかな、と身動きの取れない状態でぼんやりと考えている。
「記憶喪失ねー。中二病が憧れる状態になるなんて流石ね、元恭司」
長い黒髪のとても美しい少女が、ニマニマしながら顔を覗き込んできた。
「残念系美人」
その顔を見た瞬間に口が勝手に動いていた。
「……あはっ。少しだけ覚えてるんじゃない」
思わぬ言葉にビックリしていたが笑みを浮かべて、うりうりと頬を引っ張っり始めている。
「はいはい、あまり元恭司をいじらないの。一応怪我人なんだから。とりあえず簡易的に作ったギプスを外して、後はここで一週間くらい経過を見るから勝手に帰っちゃダメよー」
銀色の髪を三つ編みにした美しい女性も覗き込み、何故か三つ編みの先で鼻の辺りをこちょこちょし始めた。
「ちょっ、くすぐ…ハッ……クシュ!」
我慢できるはずもなく、思いっきりくしゃみが出ている。
まだ固定されている手で押さえられるはずもなく、サッと引いた銀髪の女性に被害はなかったが黒髪の女性にヒット。
袖で顔を拭ってニッコリと惚れてしまいそうな笑みを浮かべると一度恭夜の視界から消え、再び現れた時にはその手にクワガタを持っていた。
「スタッグビートルホールド!」
恭夜の顔にクワガタを置き、楽しそうに叫んでいる。
「全快したら絶対仕返ししてやる……」
クワガタを刺激しないようにそーっと頭を動かし、そのまま顔から逃がそうとしていた。
「ほら、そこに鼻あるし早く挟みなさいよ」
だがしかし、つんつんとクワガタを突っつく存在がいる事を忘れてはいけない。
「それじゃあ、足の方から外すからねー」
銀髪の女性はそんな騒ぎを意に介さず、足のギプスを外し始めた。
「こいつら自由かよ!? ……早く、早く腕のギプスを外して! 挟まれる前に!」
「やっぱり名前が違うだけで完全に同一人物ね。……今度は絶対に死なせないわ」
脚のギプスを外しながら呟いており、聞いてないフリをしている。
「取ってほしい? ねぇ、クワガタ取ってほしい?」
「う、うん。早く、早く取って」
クワガタの動きが止まり、どこを挟もうか品定めをしているように見えていた。
「それなら質問に答えて。こんな感じのもの見なかった?」
スッと蓬莱の玉の枝を見せて確認している。
「あ、それ俺の部屋にも飾ってある。枝に付いてるのがアイスの実みたいで急に欲しくなって、霖乃助に譲って貰ったんだ」
そのまま部屋のインテリアになっており、かなりお気に入りらしい。
「教えてくれてありがとう。恭夜には私と結婚できる権利をあげましょう」
いきなりとんでもない事を口走り、顔の上のクワガタを取りどや顔で覗き込んできた。
「いや、いいです」
結婚するなら鈴仙のがいいなぁ、と失礼な事を考えながら引いている。
「ちょっ、何で引いてんのよ! しかも即答しないでよー! 私、これでも色んな男に言い寄られてたんだからね! 光栄に思いなさいよー!」
よく見えないが子供みたいにジタバタと暴れており、カリスマなんて微塵もなかった。
「はい、もう自由に動いていいわ」
「永琳先生、お姫様が暴れてますが」
久々に布団から出て、ヤダヤダヤダーと暴れまわる輝夜を見て引いていた。
「いつもの事だから平気よ。それより私達の事は呼び捨てにする約束のはずだけど?」
両腕の治療まで無料にして貰えたのも、永琳から提案を受けたからだったりする。
永琳と輝夜はかなり前から別世界を体験していたようだが、鈴仙は気絶している時に体験したらしい。
異変解決後に涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになった鈴仙に背負われ永遠亭に到着。
両手足の骨折と怪我のあまりの痛みで運ばれている時の振動によって気絶→覚醒を繰り返し、いっそ殺してくれと永琳に泣きついていたとか。
「普通に美人さんを呼び捨てとか照れちゃうんだよ……。何故か妹紅、慧音も呼び捨てため口を強要してくるし」
あの二人は恭夜が来た七月には既に体験しており、部屋まで用意してくれていたらしい。
幸いてゐを除く永遠亭の三人に妹紅と慧音という、昔の恩人・友人達に関するちょっとした記憶だけは戻っていた。
原因はちょっとしたアクシデントにより興奮した慧音による頭突き連発だから笑えないが、違和感なく接する事が出来るようになったので結果オーライ。
あまりに強烈な頭突きラッシュで昔の名前まで思い出していたが誰にも言わず、これからも七夜月恭夜で貫く事を決めていた。
「あらお世辞かしら?」
「本音。外で何をしていたのかは覚えてないけど、幻想郷の女性はレベルが段違いだと思うよ。ただ美しさに危険さも比例しているのは言うまでもないだろうけど。妖怪の女性はその美しさで惹き寄せて喰らうんだろうし」
永琳や輝夜も能力含めて危険だと判断しているが、警戒したとしても瞬殺確定なので諦めてその美しさを堪能している。
「そうね。ところで八雲紫に貴方の能力について聞いたんだけど」
永琳の言葉にまだジタバタしていた輝夜も反応し、二人の会話に耳を傾け始めた。
「戦闘にも日常にも役に立たない耳掃除をする程度の能力さ」
だが紅魔館の面々はその耳掃除のテクニックに堕ちており、週に一度は必ず各々の部屋にお呼ばれするようになっている。
「後で私にもしてもらえないかしら? あの八雲紫が気を失う程の耳掃除の技術に興味があるわ」
「耳栓を貸してもらえるなら。こっちは真剣にやってるのに、みんなエロい声出したりするから集中できなくなるんだよ」
技術がどんどん上達しているせいでもあり、最近は耳栓をしっかりしてから挑んでいる。
「安心していいわ。私はそんな声絶対に出さないから」
「そう言ってた萃香が二分もたなかったんだけどな。喉に角が突き刺さるかと思ったわ」
余裕そうな顔をした鬼の幼女も陥落していた。
レミリアにワインを注いだり、他の者達にお酌をして回ったりと、自分はお酒を飲まずに給仕をしていたらしい。
するとそれを見ていた萃香にいきなり勝負を吹っ掛けられ、勝てそうな耳掃除で対決を提案。
始めに警告をしたが永琳のような発言をして、早く耳掃除をしろと要求。
経験済みの紅魔館組と紫は痴態を晒す事になる萃香に同情をしつつ、wktkしながら勝負の行方を注視していた。
そして耳掃除が始まって二分も経たずに嬌声を上げ始め、最後にふーっとやられて完全沈黙の大勝利。
しばらくして意識が覚醒したらしく、慌てて膝枕の上から飛び退き恥ずかしさからかマッハで逃げていったらしい。
「それなら二人きりの時にしましょう。……少し怖くなったわ」
「はい! はいはい! 永琳がここでやらないなら私! 私が先にしてもらう!」
ジタバタしていた輝夜が目を輝かせながら立ち上がり、手を挙げてアピールし始めた。
「クワガタで悪戯したからやだ」
プイッと顔を背けている。
「永琳もなんとか言って!」
妹紅が体験していない事を先に体験して自慢したいらしく、とにかく必死だった。
「はぁ……もう仕方ないわね。恭夜、今後私の薬を購入する時に払ってもらうお金は定価の八割でいいわ。だから姫に耳掃除をしてもらえないかしら」
「……わかったよ。八意印の薬が多少安く買えるようになるなら」
自分へのメリットが大きく、少し悩んだが了承していた。
ちなみに異変時にいつも持ち歩いている薬箱の中身は、今回の異変解決時から全て永琳が作った物に取り替えられている。
普段の生活でかかる病に使えるものから、怪我をして応急処置が出来るような物まで揃っていて使い勝手もかなりよくなっていた。
「賢い子は好きよ。これでダメなら脅す方向になっていたもの」
素敵な笑顔だが背筋がゾクゾクするような笑顔である。
「メリットのある案で了承してよかったわ……」
「ほら、早く私に膝枕して耳掃除をしなさい」
恭夜が今まで寝ていた布団をぽふぽふと叩き、早くしろと急かしていた。
「何というわがままプリンセス。まぁ、レミリアお嬢様の思いつきよりは何倍もマシだけど」
布団の上で正座をしながら日々無茶を言う、素敵な主の事を思い返している。
ジャグリングをしながら一輪車に乗る姿が見たいという要望に必死に答え、大道芸人への道を歩き始めていたり。
咲夜と向き合い互いにナイフを投げ合い、投げられたナイフの柄を掴んで互いに投げ返す危険な二人技もお手の物。
「……何かドキドキするわ。優しくしてね?」
膝に頭を乗せただけでドキドキしていた。
「あ、今のちょっとドキッと来た。美鈴とか小悪魔さんみたいに髪を束ねてもらえばよかったなー」
輝夜の耳にかかっている黒髪をそっと退けながら呟いている。
「んっ」
少しくすぐったかったようで身体を動かしていた。
「こら動くなってば。……さて永琳先生からお借りした、この耳掻きでピッカピカにしてやんよ」
口角を上げ、ニィッと笑いながら耳掻きを持つ姿を見た永琳がビクッ!と身体を震わせている。
………
……
…
「あぁぁ……」
右耳を徹底的に掃除されただけで既に顔が惚け、他の女の子達と同様に涎が垂れている。
「町の中にー裸、君の側にー」
輝夜の声が聞こえないように歌を歌い、私物のハンカチで涎を拭いた。
「ひっ……あ……は、反対……も?」
涎を拭われてこちら側に戻ってきたらしく、後頭部を膝に乗せて潤んだ瞳で見上げてくる。
「うん。流石永琳先生だ、腕を動かすリハビリなしでも何ともないぜ! しかし、みんな終わった後に耳にふーってやると意識飛ぶよね」
「……」
一部始終を見ていた永琳はキャンセルするべきか、体験してみるべきかで悩んでいた。
「よいしょ。残りの左耳始めるから大人しくするように」
輝夜の頭を掴み、左耳が上に来るように動かしている。
「んっ!」
ギュッと恭夜のパジャマの裾を握り、第二ラウンドの始まりを待っていた。
………
……
…
「心がないー、だから裸の子ー」
歌いながら取った耳垢を紙に包み、耳掻きを持って決めていた。
輝夜は布団で沈黙しており、時折身体をビクッとさせている。
永琳はゴクリと喉を鳴らし、頬を赤く染めながら自身の身体を抱き締めていた。
「蓬莱人に対しての快楽責め、これは苦痛を与え続けられるよりも……」
自分もこうなってしまうのかと、今から期待と不安で胸がいっぱいである。
「自分でやってもそこまで気持ちよくないんだけどなー。スッキリはするけど」
自分の耳に耳掻きを入れながら呟いていた。
「んんっ! それよりあの二人がもうそろそろ来そうだし、私達は一度部屋から出ていくから」
ハッとして寝転がったままの輝夜を背負い、可愛らしくウインクをして部屋から出ていってしまった。
「行っちゃった。……知ってるけど知らない二人なんだよなぁ」
暇になり部屋を漁っていると支給されていた執事風な仕事着の新品を発見し、いつまでもパジャマで居たくないらしくそれに着替え始めた。
生地が以前の物よりも数段良くなっており、備品として香霖堂で見つけてきたと思われるレトロな懐中時計とそれを付けるシルバーのチェーンまである。
見覚えのない楕円の箱を開けるとシルバーのフレームの眼鏡が入っており、試しにかけてみると度は入っていないのがわかった。
「懐中時計、咲夜さんからのプレゼントかな。この眼鏡は誰が置いていったんだろう」
伊達眼鏡だが似合っていて、今の格好にはピッタリすぎている。
「恭夜ー、お見舞いに……」
部屋に入ってきた、もんぺ姿の女性が眼鏡装備で執事仕様の恭夜を見て息を呑んでいた。
「どうした、妹紅? 早く入ってくれないと私が中に入れないんだが」
その後ろにはもう一人女性がいるようで、中に入らず固まった妹紅と呼ばれた少女に話しかけている。
「でも俺、眼鏡は好かん」
眼鏡を外してケースにしまい、元の位置に戻していた。
「あ……な、なんでもないよ、うん」
チラチラと恭夜を見ながら部屋に入ったが、妙に落ち着かない態度になっている。
「……怪我の具合はどうだ?」
動きがおかしな妹紅を訝しげに見ていたが、続いて部屋に入り素敵な笑顔で尋ねていた。
「あ、慧音……さん」
違和感なく呼び捨てにしたが、頭突きをされた時の恐怖を思い出して敬称を付けている。
「そのまま呼び捨てで構わない。この前の頭突きは……お前が悪いな、うん。鈴仙に世話をされていたのがいけない」
「動けない怪我人の俺に対する頭突きラッシュは悪いだろ常識的に考えて……。そのせいで断片的だけど貴女方の事は思い出したけどさ」
ショック療法を期待したのか、鈴仙も止めずに頭突きをされる姿を見守っていてくれたらしい。
「まぁ、結果オーライと言うやつだな。それよりもまた私と一緒に暮らしてはもらえないのか?」
既に部屋は用意してあり、恭夜が来るだけで以前のような生活が始まる。
「紅魔館所属だから。それに俺はもう戻れない所まで来てる」
外から来た存在だけだが、同じ人間という種族を処理している事で二人と仲良くするのは難しいと考えていた。
「……それは奪う為じゃない、生きる為なんだろう?」
既に全てを察しており、それを含めて恭夜という存在になったこの男を受け入れている。
「何だかお見通しすぎて怖いなぁ……」
「何年も一緒に暮らして居たんだ、お前の考えている事だったら手に取るように分かるさ。……今回は紅魔館の者達に恭夜を預ける事にするよ。まぁ、レミリアにクビにされたら私が引き取るから問題は一切ないな」
本当は今すぐにでも歴史を改竄して一緒に生活をしたいが、それを望んでいないのが分かっているから我慢している。
「みんな酷いよね、俺がクビになる前提で話すし。で、あの蓬莱人さんは何でモジモジしながら俺をチラ見してるんすかね?」
座布団にちょこんと座っている妹紅を指差して慧音に尋ねていた。
「さぁ……」
「とりあえず立ち話もなんだし、俺達も座ろう」
部屋の隅に置かれた座布団を用意し始めた。
………
……
…
「ないわー……」
「まさか妹紅が……」
何故モジモジしていたのか理由を聞いた二人は、信じられないものを見るような目で妹紅を見ている。
「う、うるさいな! 仕方ないじゃない!」
顔を赤くしたままプイッとそっぽを向いていた。
「眼鏡をかけた執事仕様の恭夜に一目惚れ……か。眼鏡は本体じゃないぞ?」
「まさかの眼鏡萌えに俺も驚きを隠しきれない。でもいいよね眼鏡を掛けてる人って。永琳先生とか慧音は似合うと思うの」
眼鏡萌え一号であり、パチュリーが眼鏡を掛けている時はこっそり眺めていたりする。
「……だって、あんなキリッとした表情見たことなかったんだもん」
ドキドキしっぱなしなようで、眼鏡を掛けていない恭夜の顔も真正面から見れなくなっている。
「……ああ」
何かを察したようで同意するように頷いていた。
「……あれ? 俺、遠回しに馬鹿にされてる?」
「ドストレートに馬鹿にしてる。いっつもへらへらしてたし、やたらスケベだし、やたら私に構うし、あれだけ憎んでたのにいつのまにか私も輝夜と仲良くなってたし……」
とことんマイペースで色々と引っ掻き回された事を思い出していた。
「うっ」
あまり今と変わらなかったりする。
「それに私よりは遥かに劣るけど、炎を使えるようになった時のはしゃぎ方は子供だったよね。うまくコントロール出来なくて、使う時は毎回火傷してたけど」
「炎なら霊力のコントロールが出来るようになってすぐに使えるようになったけど、火傷はした事ないな。……ほら。火を点けたりする時に便利でマッチの経費が半分くらい減ったけど、代わりに俺の仕事が増えたんだよなぁ」
人指し指の先に小さめの炎が灯っているのを見て、妹紅が絶句しているが気がついていない。
「……火柱が出るかと思って避難したんだが」
人差し指を立てた瞬間廊下に逃げ出したらしく、ひょこっと顔を出して覗いている。
「あ、あれだけ私が教えても制御出来てなかったのに……」
「よくわからんけどドンマイ」
orz状態の妹紅の肩をポンと叩いて慰めていた。
「火のコントロールが出来なくて、もしもの時の為にと水の魔法を覚えてきたと思ったらそっちも大変だったな……」
慧音も色々と大変だったらしく、溜め息を吐きながら色々と思い出している。
「パチュリー様曰く、魔力やら霊力やらを一緒くたにして使わなければ安全なんだってさ。力の通り道に霊力と魔力が螺旋のように通ってるんだって。今の貴方には片方だけでも精一杯なんだから、霊力だけを意識しなさいって。どっちの制御も出来なくなって無理矢理撃ち出した結果が入院だったわけだけど」
「私達にはその手の専門家が居なかったのが敗因だったわけだな」
「タブンネ」
騒いで暑くなりジャケットを脱いだがハンガーがなく、皺にならないように綺麗に畳んでいる。
「もっと早くに気がついていれば……。それより紅魔館での生活はどうだ? いじめられたりはしていないか?」
「いじめはありません。最近はお嬢様がセクハラ発言ばかりしてきて困ってる。グングニル凄く格好いいですねって言ったら『恭夜も持ってるでしょ? 夜になると暴れだす危険なグングニル。それともゲイボルグかしら?』とかニヤニヤしながら言われて一瞬固まったよ」
レミリアはどこで間違えたのかカリスマ溢れる姿から、そこらのエロ親父みたいなのに進化してしまったらしい。
「あのレミリアが、か?」
「どのかは分からないけど、レミリアお嬢様が。咲夜さんと一緒に行動してる時だけなのがまた……」
ちなみに咲夜は恭夜の仕事着半ズボン化計画には大賛成らしく、虎視眈々と機会を狙っていたりする。
「……まぁ、あれだ因果応報」
ナチュラルにセクハラされたりしていたから同情する気はないらしい。
「溜め息吐いてナイチチってボソッと呟かれた時は本気で燃やそうとしたっけ」
「俺はこの二人とどんな関係だったんだろう……」
前作からの引き継ぎで永夜組は超優遇。
所属の関係上、今後そんなに出てこないかもしれないからこその超優遇。
それぞれが追体験したのは
妹紅、慧音、輝夜は正史に近い、誰とも結ばれないまま過ごす平穏な日々の世界。
鈴仙と永琳は個別ED後の世界。
来週PSPで出るデジモンアドベンチャー、原作再現+ウォーゲーム再現+クリア後に歴代主人公が出るとか買うしかない。
アニメには出なかったヤマト、太一以外の究極体も出るとか胸が熱くなるな。