八雲家で二日目
二日目
「昨晩は夕食を藍さんと一緒に作って、橙ちゃんと一緒にお風呂に入って、紫様のマッサージをして、藍さんに呼ばれて部屋に行ったんだったな」
布団をたたみながら昨日の事を思い出していた。
「愚痴を聞いてあげてる時に話した、俺に対するお嬢様の無茶振りで同情されると思わなかったなぁ。『咲夜、逆立ちして腕立て伏せをしながら歌を歌いなさい。偶然恭夜もいるしスカートの中が見えて……あら、恭夜が変わりにやるの? いいわよ、ほら始めなさい』とか日常の一部すぎて特に何とも思わなくなってるけど」
なかなかブラックな紅魔館の従者生活。
ただこれは咲夜をかばわせる事で、咲夜の恭夜に対する好感度を上げようというレミリアの作戦だった。
レミリアの思惑通りに咲夜の好感度は鰻登りだが、最近は罰ゲーム的な物が多くなってきていて当初の目的を忘れかけている。
熱々おでんの時はリアクション芸人さながらの反応で、箱の中身を当てるゲームの時は中に入っていたザリガニに指を挟まれて大騒ぎしてレミリアを楽しませていた。
「もしもお嬢様に捨てられた場合、ここで働かせてもらうのはいいかもしれない。橙ちゃんはいい子だし、藍さんは厳しくも優しいし、紫様は……紫様は……美人だし」
紫に関してだけは何も思い浮かばなかったらしく、当たり障りのない美人で妥協していた。
「……時間が止まる回数増えてるなぁ。俺が抜けただけで大変になってるとは思えないが」
布団は干さなくていいと前日に藍に言われており、部屋の隅に寄せて重ねている。
執事風な服は風呂上がりに取り上げられてしまい、現在はピンクのパジャマと青年男子には精神的にキツい物を着用していた。
そして枕元には黒い作務衣が置かれており、今日一日はそれを着る事になるらしい。
「……作務衣にいい生地を使ってるのは流石八雲という事なのか。俺がやるのは主に家事だし、安い生地のでよかったような」
パジャマを脱いで作務衣を着用し、動きやすさといい生地を使っている事に驚いている。
宛がわれた部屋を出て台所に向かうと既に藍が立っており、食材を並べて朝食の献立を考えていた。
遅かったわけじゃなかったと安心し、並べられた食材に目を向けるとスーパーで購入して梱包された物が多い。
「藍さん、おはよう。朝食なら味噌汁は油揚げとほうれん草、甘鮭を焼いて後は焼き海苔でいいんじゃない?」
割烹着を借りて着用し、並べられた食材から朝の献立をチョイスしていた。
「おはよう。よし私は鮭を人数分焼くから、恭夜は味噌汁を頼むよ」
「はい」
仲良く並んで朝食の支度を始めた。
しばらくすると朝食の香りに誘われて橙が現れ、藍に言われて箸などを運んでいる。
寒い冬も咲夜の手が荒れないようにと毎日米を研ぎ続け、レミリアから米研ぎマイスターの称号を与えられた恭夜が自然に米を研いでいる。
他にもトランプやカードを使った様々なゲームが半端なく強く、勝つ事は不可能だと言われてカードゲームマスターの称号も与えられていたりする。
「電子ジャーとかここはどこなのかを凄く聞きたい。ガス台とかレンジもあるし、よく考えたら昨日借りた部屋にテレビとかあったし」
五合の米をジャーにセットし、水を五合のラインまで注ぎながら呟いた。
「それが知りたいのなら紫様に仕えるしかないぞ。今の仮契約状態じゃなく、本当に紫様に仕えないと」
「残念。だけど科学の力って凄いなぁ」
早炊きを押してから炊飯のスイッチを押し、引き続き味噌汁の具を切り始めた。
「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かないとも言われているからな」
「あぁ、それってクラークの法則だったっけ。確かに便利すぎて、魔法に見えてもおかしくないかも。この先、科学はどうなっていくんだろうなぁ」
未来に思いを馳せながら手を動かしている。
ご飯が炊き上がり、他の物も作り終えて三人でテーブルに運んでいく。
運び終えるとスキマが開いて紫が現れ、皆でいただきますのご挨拶。
恭夜は隣に座った橙の世話を焼きつつ、皆のおかわり等を請け負ったりといつもとそんなに変わらない朝食だった。
「藍様がお父さん、恭夜兄ちゃんがお母さん、私が子供みたいでした!」
「ああ、確かにそんな感じだった。だが橙、それだと紫様だけ居なかった事になる」
「橙ちゃん、その流れだと紫様はお祖母ち……」
三人で洗い物を片付けながら雑談をしていたが、聞いていないと思って失言をした恭夜がスキマに消えていった。
藍と橙は余計な事を言わないでよかったと顔を青くし、口を滑らせて生け贄になった恭夜に感謝をしている。
「紫様は藍さんの姉かな、うん」
何を見て何をされてきたのかは分からないが、たったの数分で目が死んだ恭夜がスキマから落とされて帰ってきた。
「そ、そうだな」
「にゃ、にゃー」
二人とも目を逸らし、見なかった事にしている。
………
……
…
「……あの、これに何の意味が」
片手だけの倒立をしてバランスを崩さないようにしている。
「恭夜、お前が霊力を練ってそれを弾幕として使うのは間違っていないんだ。だがそれが遅すぎて話にならない」
藍が監督役として指導する事になり、庭で今日一日限定の特訓に入ろうとしていた。
「いや、それとこの倒立に何の関係があるのかを」
しかも池の真ん中にある、水面に出ているのが掌が乗るくらいの大きさの岩の上で倒立をしている。
「いや、全然意味なんてないけど?」
指示しておいて酷かった。
「しまった、ここに拾われたらレミリアお嬢様レベルのが二人に増える」
紫と藍のタッグで毎回こんな無茶を言われたら終わると、そのまま浮いて藍の側まで飛んでいく。
「まぁ、正直基礎が完全に出来ていてやる事がなかったんだよ。修行っぽい事をさせてみようかなってね」
可愛らしくペロッと舌を出している。
「……それはずるいわぁ」
凛々しい女性のまさかの仕草に顔が赤くなって目を逸らしていた。
「まぁ、弾幕を放つイメージが固まれば自衛できるレベルの弾幕を張る事は出来るだろう。何か切っ掛けがあれば出来るだろうから安心していい」
「はーい」
「掃除や洗濯は終わらせているし、余った時間は私と話でもしよう」
縁側に腰掛けて隣をぽんぽんしている姿が可愛らしい。
「うん」
「ところで恭夜は今日までで何人始末してきたんだ? お前の主は吸血鬼、力量を見極められない馬鹿な人間が来たりするだろう?」
隣に腰かけた恭夜に対してドストレートに尋ねている。
「三人くらいかなぁ。大体美鈴が狩るし、姑息な手段で侵入して来る奴は少ないから。紫様から送られてきた人間とか、迷い込んできた傲慢で厚顔無恥な人間の解体も含めるならもうたくさんしてるけど」
ケロッとした顔であっさりと答えた。
恭夜がこっそりと逃がしてあげたりしているのは礼節を弁えた人間や、本当に迷い込んで来た人間に子供くらいだったりする。
一見優しい様に見えるが逃がす事しかせず、道中は妖怪や妖精等も多々居り、里に無傷で辿り着ける確率は物凄く低い。
「ほう、しかし解体する事に抵抗はないのか? 同じ人間だろう?」
「俺は何の能力もなく、ただ飛べて一定の能力が効かないだけの人間だから。レミリアお嬢様の庇護と自身に対する甘さを捨てないと生きていけないよ」
出来れば解体したくはないようだが、生きていく為には仕方のない事と割り切っている。
「この世界なら強い者の庇護下にあった方が安心できる、か」
強者に護られる事の大切さを知っているから、恭夜の行動を否定はしないようだ。
「捨てられたくないってのもあるよ。自分に関する記憶がない俺の名付け親でもあるしね」
「そうか。話は変わるが、お互い主に無茶な要求をされている同士だ。他にどんな無茶な要求をされたのか教えてもらえないだろうか?」
人間が耐えられるレベルの要求が気になっていたらしい。
「いいよ。グツグツ煮込んだ熱々おでん、あれを美鈴と俺の二人羽織りで食べろと言われた時はいっそ殺してくれと思ったなぁ……。後ろは天国だったけど」
当時の苦行を思い出して少しげんなりしていたが、何か違う事を思い出してニヤケている。
「あ、熱々……従者というか外の世界の芸人みたいな事をさせられているんだな。それと後ろは天国だった?」
「美鈴が密着してたから。いい香りがしたし、こう背中にムギュッと……あ」
苦行とトントンなご褒美でもあり、ニヤケ顔の原因でもある。
「これからはムッツリエロ男爵と呼ぼうか」
美鈴の名前が出た段階で勘づいていたらしく、自白も聞いてからはジト目で見ていた。
「それはマジでやめて! 余計な事まで言わなきゃよかったー!」
「ふふふ、冗談だ。お前も性欲を持て余していそうな立派な青年の一人だものな」
「くっ……そんな風にからかうなら、もうさんを付けて呼ばん。藍って呼び捨てにしてやる」
恭夜の出来る精一杯の抵抗はかなり空しいものだった。
「ああ、全然構わない。逆に呼び捨てのが嬉しいくらいだ」
願ってもない申し出に、微笑ましいものを見るような目で見ている。
「ら、藍」
試しに呼び捨てにしてみたようだが、だんだん恥ずかしくなってきたのか顔が赤くなり目が右往左往し始めた。
「自分から私の名前を呼び捨てにしておいて、そんなに照れる姿を見せられるとこちらまで照れてしまうよ」
ただ藍と呼び捨てにされただけなのに、それが嬉しかったようで頬が緩むのを止められない。
「うー、失敗した……。女性は魔理沙、霊夢、美鈴、アリスしか呼び捨てにした事がないのに、無理するんじゃなかった」
「まぁ、今後呼び捨てにすると言った責任は取らないとな?」
悪戯っぽい笑みを浮かべ、手を伸ばしてワシワシと頭を撫で始めた。
「呼ぶ度に緊張しちゃうじゃんか……」
藍のなすがままになっている。
………
……
…
お昼も終わり、午後は何をしたらいいのかと悩んでいると紫の部屋に行くよう藍に指示を出されていた。
到着するとすぐに座布団に座るよう促され、正座で着席すると紫が膝に頭を乗せていた。
そのまま無言で見つめ合う二人、しばらくすると耳掻きを手渡され……
「もう、らめぇ……」
息も絶え絶えになり、白い肌を紅潮させ瞳を潤ませながら悶えていた。
「うーん、エロいでありますなー」
耳掃除だけで妖怪の賢者を倒すという、非公式記録を樹立している。
「貴方の能力は……ふぅ、ずばり耳掃除をする程度の能力よ! 長いこと生きてきたけど、こんなに気持ちいい耳掃除は初めて……」
「み、耳掃除……もっとこう、中二的な能力がよかったなぁ。時を加速させる程度の能力とか、時を吹っ飛ばす程度の能力とか」
よりにもよって微妙すぎる能力になっていたようだ。
「別にいいじゃない。貴方は守るよりも守られる方が似合うもの、攻撃的な能力はいらないわ」
キリッとした表情でそんなことを伝えているが、まだお腹側に顔を向けたままである。
「あ、忘れてた。ふー」
そんな紫に対してトドメとばかりに耳に息を吹き掛けていた。
「ひうっ!!」
クリティカルヒットだったようで涎がツーっと口の端から垂れ、身体の力が全て抜けている。
「……これが能力補正というやつか。これは耳掃除で商売が出来るかもしれん」
巧みな耳掃除テクニックを我が物とし、それを商売に使えないかと考え始めていた。
全然動かない紫の髪に触れてみたり、部屋の中を見回してみたりと紫の意識が戻ってくるのを待っている。
頭をしっかりと膝に乗せ、いつの間にかすやすや眠っている紫の寝顔を観察。
そして地球がどうして丸いのかを考え始めた時にようやく紫が目を醒ました。
「う、うーん……。凄い快感が背筋を駆け抜けたような……」
身を起こすとごしごしと目を擦り、何が起きたのかを忘れていた。
「おはよう」
「……あ。や、やるわね。この私、八雲紫を戦わずして倒すなんて」
恥ずかしい姿を余すことなく見られたのを思い出し、頬を赤らめながらいきなり開き直り始めた。
「いや、そう言われても全然嬉しくないからね? 俺の勝ち方が情けなさすぎるし」
幻想郷の有名人相手に誇れる勝利が今の所一つもなく、逆に誇ったらいけない勝利ばかりである。
「これからは毎週通う事にするわ。恭夜のテクニックを一度体験したら、他のじゃ満足できない身体に……」
「その言い方は凄い誤解を招くからやめてよね。それに俺は耳掃除を商売にするつもり。外の通貨で言えば、両耳で五百円くらい」
本人は無難な金額を考えたようだが、拘束される時間を考えるとかなり安かった。
「それじゃあ、これで貴方が死ぬまで私はフリーパスね。気にしなくていいわ、外の世界でちょっと稼いだお金だから」
スキマから小さめのアタッシェケースを取り出し、そのままそれを開けると中には札束が詰まっている。
「……」
開いた口が塞がらないとはこの事のようで、同時に余計な事を言わなければよかったと考えていた。
「これで一千万あるから、二万回分よね。死ぬまでには有り余りそうだけど、その分はチップとして受け取って頂戴」
そう言うとアタッシェケースを閉じて恭夜に渡すと、再び寝転がって膝に頭を乗せてきた。
「正直引いたわー。大金すぎて現実感もないわー、ここ幻想郷だけど」
「そのくらいは私にとっては端金よ。色々やってるからね」
外の世界でも色々とやっているようで、恭夜に渡した金額も片手間に稼いだあぶく銭のような物らしい。
「まぁ、受け取るけどさ。外貨も使えるってこの前言われたばかりだし」
「そうね……もっと稼ぎたかったら外の世界に出稼ぎに連れていってあげてもいいわ」
抜け駆けする機会は多い方がいいと、皆を出し抜く事を早速考えていた。
「それはお嬢様から許可を戴けたらにするよ。妖精メイド達の服を新調するのにどれくらいかかるかなー。フランドール様にぬいぐるみ作りも頼まれてるし、正直お金は幾らあっても足りない」
妖精メイドがどのくらい居るのかまでは把握出来ておらず、最近は新しい妖精メイドが入ってきたりと大変だった。
「あら、自分の為には使わないの? 服とかお酒とか」
「紅魔館にいると大体欲しいものは手に入るからね。本ならパチュリー様に頼めるし、体を動かすなら美鈴もいるし。服はあの眼鏡の店主がいる店で安く買えるから。『恭夜は僕の親友だからね、君には八割引で提供させてもらうよ』って、いつのまにかあいつと親友になってたんだ」
趣味と呼べる物が読書と体を動かす事で、どちらも紅魔館でなら無料で楽しめる物だった。
この世界の霖之助は男色の気があるのではないかと思えるくらい恭夜に優しい。
買い物に行くと嬉しそうに店内を付いて回り、商品の説明をしながらお茶に誘ってきたりする。
最初は恭夜に対して全く興味がなかったようだが、毎週商品を見に行く内に常連になり、そこから友人になり親友へとシフトしていったらしい。
男の友人が出来た事を互いに喜び、冬場に二人で褌一丁で寒中水泳的な事をして騒いでみたり、二人で里に遊びに行く計画を立てたりとちょっとだけ高校生男子みたいな二人だった。
「そうなの」
穏やかに微笑み、そのまま目を閉じると優しく頭を撫でられ始めていた。
「チルノと大ちゃんにお菓子を買ってあげたり、俺を捕食しようとするルーミア餌付け用のお菓子も買ってるけどね」
優しく紫の頭を撫でながら呟いている。
「……」
懐かしさすら覚える心地良さに、再び意識を夢の世界へと飛ばしていた。
………
……
…
「橙ちゃん、お兄さんはこの場所が怖いです」
「えっ、ダメでした?」
忘れ物を取りに行くと言うので付いてきてみたら見事なまでの廃村である。
辺りが暗くなり始め、朽ちた家等が凄く不気味だった。
かつて人が生活していた痕跡があるから余計に恐怖心を煽っている。
「いや、精神的に来る物があって……」
何か化け物が出てくるんじゃないかとキョロキョロと見回している。
「……ワッ!!」
悪戯心が疼いたようで、後ろを向いた隙に大きな声を出し背中を軽く押していた。
「びっ……ビビってねーし。怖くねーし」
声に驚き背中を押された事で跳ね上がり、虚勢を張りながら地面に伏せている。
「怖かったんですね」
「……うん」
恥ずかしそうに立ち上がり、小さな声で返事をしていた。
「それなら手を繋いでいけば大丈夫ですよ! 何が来ても私が守ってあげますから!」
「う、うん」
実際橙のが強いから言ってることは間違っていないが、小さなプライドが木っ端微塵である。
しばらく手を繋いで歩いていると一軒のでかい廃屋があった。
かつての地主か何かの家のようで、入り口は朽ちて開いているが中は真っ暗。
「……いててててて、お兄さんぽんぽん痛くなってきたから先に帰ってトイレに」
「ほらほら、早く行きましょう!」
手を握ったまま絶対に離そうとせず、グイグイ中に突き進んでいく。
「ちょっ、グイグイの少女すぎるだろ!」
それからビビりと橙が屋敷をしばらく進むと、大広間のような場所に出た。
暗い室内をよく目を凝らすと、そのど真ん中に橙が忘れたと思われるポシェットが落ちている。
「橙ちゃん、これは間違いなく孔明の罠だ。あれを取りに行くと四方八方からとんでもない化け物が」
「よかった、やっぱりここだった」
ビビりの言葉には耳を傾けず、手を離して一目散に走って取りに行った。
「ま、待ってくれー!」
怖くなり後を追いかけていった。
すぐに追いつくと周囲を警戒しつつ、橙の手をギュッと握るのを忘れない。
ビビりを見てすっかりお姉ちゃん気分なのか、ポシェットを回収してからギュッと握り返している。
物凄く情けない光景だが、橙がビビりを守るという使命感に燃える姿は可愛らしいものだった。
………
……
…
そんな楽しかった三人との時間もあっという間に過ぎ去り、本日ももう就寝の時間がやってきた。
翌日の朝食後には紅魔館に帰る事になっており、借りた目覚まし時計をセットしている。
「明日は帰ったらすぐにお嬢様に報告、それから咲夜さんの手伝いをしてからパチュリー様の講義。昼は美鈴達にお弁当を差し入れして、夕方にフランドール様の部屋でお勉強を見て……」
小悪魔から貰った手帳で明日の予定を確認している。
「夜の自由時間に風呂に入って、部屋で本を読む。いつも通りの一日かな……お嬢様に呼び出されなかったらだけど」
咲夜とセットで呼び出され、無茶なお願いをしてこないのを祈りながら布団に入った。
「もうすぐ夏かぁ……」
異変のせいで五月近くまで冬が終わらず、春が物凄く短かった。
ついに念願の能力的なものを手に入れた、守るより守られるのが似合う恭夜。
耳掃除勝負だったら最強かもしれない。