特別編 きっと世界を狙える人達
新たな里が出来て一年が経ち、逸般人が更に増えたが平和にやっていた。
「一周年記念で里長を変えようと投票箱を用意したら、俺の名前が書かれた紙しかないっていう歴史的大勝利に終わったでござる」
「ある意味で里の雑用係みたいなものですから、マスターになっても仕方ありませんね」
「基本的に面倒な事は恭夜に押し付けていくスタイルだな」
「解せぬ……そういやあの子が弾かれて落ちてきた鉄の塊を集めて河童とドクターウェストである程度復元したら、元はデモンベインとかリベル・レギス並のサイズの巨大ロボだったのが判明したんだっけ」
紫に飛び散ったのは集めて処理しろと言われて集めたらしい。
「ああ。持ち主が好きにしてくださいと言ったせいで、変態白衣と河童達がデモンベインに使う予定だったパーツを使って改造を始めて妾達のは後回しにされたのだ」
「あんな状態から話を少し聞いただけでシステム面やらコンセプトも理解するとか、ドクターウェストも河童達も天才すぎて……」
「どうせだからと中身を全取っ替えして、ピーキーにすると張り切っておったぞ」
「古明地さとり監修で読心防止策も施されるとの事です」
もしもの事態に備えて様々なカスタマイズと元々の運用の方面での強化が施され始めている。
「まぁ、話を聞いた限りコアは自爆の際に吹き飛んでないみたいだしな。ガワだけそれの大きなロボットになるだけか」
………
……
…
心を楽にしてもらう意味も込めて、もう会えない人への手紙を入れるポストを設置していた。
そしてそれに目をつけた暇を持て余した神々に郵便配達をさせられるようになっている。
「あなたはそこに」
「うわぁぁぁ!! 正気に戻れぇ!」
割れた状態の目で恐ろしい事を呟こうとする恭夜に、アルは揺さぶりひっぱたいて正気に戻そうとしていた。
「マスター……あの世界で同化されかけたトラウマが……」
赤いからと手紙を届けにはリベル・レギスで行っており、戦闘をする気がないので装甲で身体を覆った状態である。
「怖かったなぁ……対話って危険な行為だわ」
某世界で幾度もトレースさせられていく内に魂レベルで覚醒しており、対話を積極的に行うようになっていた。
「最終的には対話(物理)でどうにかしましたね」
「手紙を届けるだけで何であんなに苦労しないといけないんだろうなぁ……最初からあれとかマジで死ぬんじゃないかと」
それでビビり手紙箱を撤去しようとしたが何故か動かすことが出来ず、木箱で作っていたはずが謎の金属製の箱になって中の手紙が濡れたりしないようになっていた。
「はぁはぁ……んくっ、今までがんばって汝に与えられた物が実は異世界だと総てオリジナルと同じ効果を発揮する仕様じゃなければ危なかったな」
「マスターが手紙を渡して、更に相手から手紙を預かったのですから戦わずに帰ってくればよかったのでは?」
「一宿一飯の恩もあったし……何より俺の心に踏み込んできたのが気に入らなかった」
何よりも数多の世界で敷かれたレールをぶち壊して来たからか、今回も知らず知らずの内にやらかしたらしい。
「そんな事を言いながら横槍を入れて二人ほど助けていましたよね」
「どっちも偶然だけども。あのランスの技術を記録してあった映像から再現しようとしてたり、河童達は楽しそうで羨ましいわ」
「だが妾達がいない単独起動の時には最高の武器になるのではないか?」
現在は一人で乗るとバルカンと格闘しかなく、遠距離武器や強力な武器がないただの案山子ですな。
「マスターテリオン単独と俺単独でやったらビックリするくらいボッコボコにされたしなぁ……それよりも俺が連れてきたあいつらの某四姉妹の三女と早苗に挟まれて大変だった話を聞いてくれないか?」
「それは毎日の事だから妾はパスだ」
「寧ろ誰かしらに絡まれない日の話が聞きたいですね」
「無理だろそれは……暑いから井戸で水を被ろうと上着とシャツを脱いで置いて、それが持ち去られないくらい無理だろ。新品のが置かれてるのは最後の良心なんだろうけども」
「まぁ、汝のは需要があるから仕方がないな。特に帰ってきてすぐに制限がなくなった汝の本気を見ている者達は特に」
「マスターのマギウススタイルは誰が力を貸すかで見た目が変わるのが面白いですし」
「最初は誰がやっても同じだったのに、エセルドレーダが分かりやすく差別化しましょうって言い出して変わったんだっけ」
自分ががんばるわけじゃないからと完全に人任せにしていたようだが。
「妾だとピッチリした黒いボディスーツみたいなので白い長髪紅目」
「私はあのマスターテリオンを参考にした服と髪の色と長さ」
「ルルイエ異本の美鈴を参考にして男用に合わせた中華っぽいのが一番いいわ。お前達のはどっちもピッチリしてて身体のラインがこれでもかってくらい出るし」
「それが皆に好評なのだがな」
「私の方はもっと露出させないのかと要望が来ています」
「変態しかいないのかよ。男の裸とか誰得だよ」
………
……
…
恭夜の作った里にルールはほぼないが殺傷沙汰や強引なナンパ等は禁止であり、遊びに来た住人以外がルールを破ったりすると住人達が全力で排除にかかってくる。
「最近加わったひょろっとした女装が似合いそうな男が凄い有能で助かるなぁ。彼も見知った顔の見知らぬあれだけど」
「汝がなんだかんだ言いながら里長を押し付けようとしたら、逆に言いくるめられて補佐に収まってしまったな」
「矢面には立ちたくないって言われちゃったんだぜ。まぁ、里の修繕費とか色んなやるべき事のリストアップしてくれるから助かってるわ」
「最近は人が増え始めて家の建設もしないといけませんね。建築に鬼が手を貸してくれるのもマスターのお陰です」
「俺が妖怪側扱いだからなのか、色んな妖怪が普通に買い物したり昼夜問わず歩いてるくらいだからな。凄いエレガントな見知った顔の見知らぬ外人さん、あの御方が里に来た時は正直勝ったと思った」
最近では某四姉妹の長女、レミリア、恭夜、エレガントな御方の四人で紅茶をよく飲むらしい。
「動きやすい服装で麦わら帽子に手拭い、鍬を持つ姿も驚く程にエレガントだったな」
「その姿も素敵すぎてなー。俺、補佐、エレガントな方で話をすると戦術やらの話題によくなる。もし里に危険が迫ったら、補佐の指揮で動く事とかも決まってたりするし」
世界を狙えそうな面子が揃っているが、それぞれが里を気に入っているらしく防衛に力を注いでいる。
「足場を崩す作戦ばかり立てそうな気がするのだが」
「それは被害がやばいから止める。まぁ、上手く俺達を使えばそんな事をしなくても対処出来るだろ」
「寧ろマスターの扱いに頭を悩ませるかもしれません」
「……それと今まで目を逸らし続けてたけど、俺のいない二週目は飽きたから来ちゃった♪とか言いながらやってきたあのメカウサ耳のアイツはマジどうしよう」
末期に生まれ変わったら云々言っていた相手が、まさか強くてニューゲーム状態で来訪して住み着くとは思わず本気で頭を抱えている。
「天災と変態と河童達による悪夢のコラボレーションですね」
「とりあえず上手くやってるってあいつから聞いた時は目が飛び出すかと思ったわ。……そしてお前達以外で俺の事を一番知ってる存在っていうね」
「ウサ耳繋がりなのか鈴仙と張り合ったり、性格は大分丸くなっていたのが妾としてはよかった」
「そうね。そしてまたマスターはあのおっぱいに簡単に誘惑されて手を出しているのだけど」
「好きな仕草や服装に髪型まで把握されてるから俺の理性は瞬殺だったわ。幸せそうにお腹を撫でる仕草をみんなの前でされると、背筋がヒヤッとするのは何でだろうね」
一番後から来て子供が最初に出来たら間違いなく皆に詰めよられるのは確定だが。
「こちらでは誰が一番になるかと考えているからだろうな」
「あー、ここ一年は手紙の配達以外は平穏だったし異世界に逃げたいわー」
「あ、それは神々が里作りをしてるマスターを面白おかしく見ているからみたいです」
暇潰しには最適らしくちょっかいを出してこなかった。
「アイツを連れてきたのもその為かよ」
「元から関係のある幻想郷に住む者達、共に海を取り戻すのに力をあわせた多くの者達、そして天才で天災のマスターとの子を産んだ者……混沌としていますね。これで更にマスターが手を出した魔法少女が来たり、桃色髪のツンデレ少女が来たら手に終えなくなりますね」
「いや、マジでやめて。今になって色々やらかした事を後悔してるんだから」
そんな未来を想像しただけで顔色が悪くなっている。
「この世界だけだからと口説いたのが仇になったな」
「でもどっちもあっちに未練あるタイプだから大丈夫だな。寧ろあの変な三國志の世界のが怖い」
「マスターは言われるがまま、言い寄られるがままに手を出しましたからね」
やる事がない時は本当に来る者拒まずで手を出し放題だった。
「今補佐の資料をまとめてたら、目が永琳の手で治された元狙撃手の兄ちゃんが里に住む許可が欲しいって。先日もあの茶髪天パと金髪オールバックの知り合いらしいメカニックとかも来たし」
許可の判子を押して済みの箱に入れながら話している。
「続々増えているな。提督で革新者で種が割れて新人類で魔導師の汝」
「俺にステータス欄があったらとんでもない事になってそうな件について」
「デモンベインにつけられた試作射撃用射出子機を巧みに扱うようになっていますしね」
「あれ邪魔なんだよなぁ……」
勝手に色々付けられるらしく、文句を言うと次には別のものになっているから諦めがついている。
「あれらは換装用だと納得しないといけません。あまり言いますとフルアーマーデモンベインなる全部乗せで装甲まで追加された重い鬼械神になります」
「何それちょっと惹かれる」
「妾もそれには惹かれる」
恭夜とアルはエセルドレーダの発言に思いっきり惹かれていた。
「使い終わった武器や装甲は外して身軽になって、相手が安心した所に本来のシャンタクやらを出せば二度美味しいじゃないか」
「それにあの世界の時のように、恭夜がいつかまた一人になってしまった場合に使える外付け武装は必須かもしれないからな」
アルもちゃんと後々の事を考えて言っている。
「それはそうね。マスター単体だとデモンベインが使える技がバルカンと格闘だけだもの」
「一人で動かせるだけの魔力はあるんだけどなー」
ただし一人だと性能はがた落ちし、武装から再生能力等の有利な物がなくなってしまう。
「寧ろ一人で動かせるだけでも十分な化け物です」
「普通は魔導書のサポートがあってようやく動かせ、更に魔力を吸われるのだが……我が主はアイオーンをフルパワーで稼働させてもケロッとした顔で笑っているから恐ろしい」
「里の運営が落ち着いたらまたどっか行かされるんだろうなぁ……」
ギリセーフなラインを再び果敢に攻めていくスタイル。