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魔天道  作者: 外野透哉
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第二十六話 アゾネ山

ー前回のあらすじ

 基礎トレーニングをすることになった犬飼 魔虎。

そのトレーニングをこなしたのち、熊本県のアゾネやまに魔戒が出たとの報告を受ける。

 相手は初の最上戒…

 夜の山道は、湿った土と腐葉の匂いで満ちていた。


 視界は悪く、木々の隙間からわずかに月明かりが差し込むだけだ。


 すでに何班もの戦闘部隊が先行して投入されているはずだが、生きて戻ってきたという報告はない。


 静かすぎる。


「しかしなんで魔戒は、こうも群れるやつが多いのかねぇ」


 歩きながら摩稀がぼやく。


「魔戒によるんじゃねぇのか。俺が最初に戦ったやつは単独だった」


 魔虎は前方を警戒しながら答えた。


「戦略的には、群れるのは間違ってない」


 才牙の声は冷静だった。


「まぁね」


「つーか、なんで俺だけ今回も参戦なんだよ。また夜だし……」


 魔虎が不満を漏らすと、美穂がにやけた表情で肩を揺らす。


「だって仕方ないでしょ〜。主人公なんだもん」


 瞬が呆れたように、美穂の肩にそっと手を置く。


「やめなよ、そういうの……」


「なんの話だよ」


 魔虎は首をかしげる。

 何も知らない犬飼 魔虎……。



 闇の奥へと足を進めていく。


 その瞬間だった。


 山の奥から、耳を刺すような甲高い音が響き渡る。


 キィィィン――。


「うっ……なに、この音……」


 美穂が思わず顔をしかめる。


「索敵します」


 千智が即座に前へ出る。


輪廻解錠りんねかいじょう――索敵探知サークルレーダー


 一瞬、空気が張りつめる。


「周辺に二体。残りは範囲外です」


「位置は」


「北に六百メートル先が一体。西に七百メートル先が一体」


「じゃあ、俺は北を狩る」


 才牙は即断だった。


「おい単独行動かよ。死亡フラグだぞー?」


 魔虎が半ば冗談めかして言う。


「全員で動いて一体ずつ狩ってたらキリがない。それに四体いる。最上戒も混じってる可能性が高い」


 才牙は立ち止まらず続ける。


「全員と正面からやるのは不可能だ。どうせ分かれることになる」


「確かに……」


「だから俺は単独で行く」


 才牙は振り返らず、そのまま闇の中へ消えた。


――行っちまった……


「じゃあ、私と摩稀ちゃんと千智くんで西に行きましょ」


 美穂も分かれることを提案する。


「そうだね」


「サポートします」


 すると今度は瞬が魔虎に言う。


「じゃあ、僕たちは真っ直ぐ行こう」


「おう」


 さらに二手に分かれ、それぞれが別の闇へ踏み込んでいく。



 魔虎と瞬は、斜面を駆け上がっていた。


 足元の枯葉が音を立てる。


「犬飼くん」


「なんだ」


「なんで週一で校内走ってたの」


「それ今聞く!?」


「いや、気になって」


「それは……」


 言いかけた、その時。


「獲物、見つけた」


 低く歪んだ声が、木々の間から響く。


「これは中戒だと思う」


 瞬が即座に判断した。


 次の瞬間、魔戒が指を鳴らす。


 キィン――!


 高周波が空気を震わせ、二人は反射的に耳を押さえた。


――うっ……さっきの音……こいつか……


「こんなもん?」


 音波の魔戒が、嘲るように笑った。



 一方、別方向。


 三人は、異様な光景を前に立ち尽くしていた。


「……ッ……」


 言葉にならない。


「これは……死体……?」


 倒れている戦闘部隊の隊員たち。


 だが、それらは糸で操られる人形のように、不自然な動きで立ち上がっていた。


 そして、こちらへ向かってくる。


――まずい……死んでるから幻覚が効かない……!


――本体はどこ……!


輪廻解錠りんねかいじょう――索敵探知サークルレーダー


 千智が再び発動する。


「……ダメだ。範囲外……!」


――遠隔操作……!


――ごめんなさい……!


 美穂は目を逸らし、死体を突き飛ばし、頭部を木の枝で貫いた。


 だが――


「……うそでしょ……」


 動きは、止まらなかった。


 再び、ゆらりと迫ってくる。



 山の中央。


 闇の中で、誰かが愉快そうに笑った。


「ふふ……無駄だよ。その子たちはゾンビとは違う」


「私が動かしてる。だから、脳を壊しても動き続ける」


「ほんと、やらしい戦い方だな」


「あんたに言われたくないなぁ」



 そして才牙は、開けた場所で足を止めた。


「お、来た来た〜」


「上戒……ハズレ、かな」


「ハズレ?」


「最上戒じゃなさそうだからな」


「俺じゃ力不足か?」


「そうだな」


 そいつはニヤリと笑った。


「へぇ……じゃあ、ちゃんと楽しませてやるよ」


 次の瞬間――


 拳が飛ぶ。


 左頬に来るはずの一撃。


 だが、衝撃は右頬に走った。


――な……なぜ……


「俺の名前は反顛羅はんてんら。よろしくな」


――この能力……あべこべか……厄介だな……



 森の中央。


 誰かが、静かに呟いた。


「さて……誰が来るかな」

ちなみに、アゾネ山のモデルは、熊本県にあるとある火山です!

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