第二十二話 ご対面
ー前回のあらすじ
犬飼 魔虎は水とプラズマ、辛島 迅は敵の武器を奪い、水無瀬 雫は水をかけることで見えない敵を可視化することで勝利し、無事合流することができた。
残すは伽藍髑髏のみ。
瓦礫と崩れた壁に囲まれた廊下で、三人は足を止めた。
「魔虎、お前……大丈夫か? すげぇボロボロだけど……」
迅が息を整えながら、魔虎の全身を見渡す。
「犬飼くん、大丈夫?」
雫も心配そうに覗き込む。
「あぁ……敵の相性が最悪でな。ちょっと無茶した」
魔虎はそう言って肩を回すが、明らかに動きは重い。
「てことはやっぱり……」
雫が言葉を濁す。
「あぁ。俺たち、それぞれ別の魔戒とぶつけられてたみたいだな」
迅が周囲を警戒しながら答えた。
その時、魔虎の中に小さな違和感が芽生える。
――待てよ……おかしくないか?
「なぁ……なんで俺たち、今こうして合流できてる?」
「どういうことだ?」
迅が振り返る。
「俺たちを分断したかったなら、戦いが終わった後も、建物を変形させて合流できないようにすればよかったはずだ。入れ替えたり、引き離したり……やりようはいくらでもあった」
「確かに……」
雫も頷く。
「それなのに、戦闘が終わった途端、何事もなかったみたいに道が繋がった。まるで……」
「誘い込まれてる、ってことか?」
迅が低く言う。
その瞬間、頭の奥に直接響くような声が届いた。
(ワシのところまで……上ってこい)
三人は同時に顔を上げる。
「……聞こえたな」
魔虎が言う。
「うん」
「聞こえた」
一瞬の沈黙のあと、迅が肩をすくめた。
「とりあえず、行くしかねぇだろ」
「だな」
こうして三人は、魔戒の核を求め、再び校舎の奥へと進み出した。
廊下を進み、教室を一つずつ確認していく。
「にしても……どこにあるんだ」
魔虎が呟く。
「本当に、どこにも無いね……」
雫は机の裏や天井を見回す。
「もう全部回るぞ、これ……」
迅の声には焦りが滲んでいた。
1年1組から3組、2年、3年。男子トイレ、職員室、校長室。考えうる場所はすべて確認した。
「ほんっと、どこにもなくないか?」
「無いってことは……ないよね? 魔戒なんだから……」
「あぁ。魔戒である以上、核が存在しないなんてことはない。絶対にどこかにある」
「つっても、残ってる場所なんて……」
迅が言いかけた時、魔虎の視線が階段の先に止まった。
「……まだある」
二人が魔虎を見る。
そして、魔虎は階段の先――屋上を指差す。
「なるほど……!」
「ビンゴかもな」
階段を見上げた瞬間、再び声が響く。
(やっと気づいたか)
三人は無言で階段を駆け上がった。
屋上への扉の前で、三人は立ち止まる。
「……ここか」
床は不自然に隆起し、壁は生き物のように伸びて扉を包み込んでいた。
「見るからに厳重だな」
「壊しても無駄そうだね……すぐ再生しそう」
「一応、試すか。雫、頼めるか?」
「任せて!」
雫は一歩前に出る。
「輪廻解錠――水蓮華!」
放たれた水の刃が防御壁を削る。しかし、崩れた箇所は即座に蠢き、元に戻っていく。
「……やっぱダメか」
「十分だ。ありがとな」
「でも、ここまで強固ってことは……間違いなく核はこの先だな」
魔虎は顎に手を当てる。
――力技じゃない……別の方法……
その時、ひらめきが走った。
――この三人なら……いけるか……?
「なぁ、迅。磁鋼収束の範囲って、どのくらいだ?」
「ここから……理科室くらいまでは余裕だな」
「よし。やってみるか」
「何を?」
「この廃校自体が魔戒の肉体だとしたら……電気を流し続ければ、制御できなくなるはずだ」
「なるほど……継続ダメージか!」
「輪廻解錠――磁鋼収束!」
理科室、家庭科室、あらゆる教室にあった金属が迅の元へと集まり、防御壁へと投げる。
「雫、アクアリウムで閉じ込めてくれ!」
「輪廻解錠――アクアリウム!」
金属の塊は水に包まれ、その場に固定された。
「一応、離れるぞ!」
三人は距離を取る。
――威力は抑えめに……
「輪廻解錠――蒼電砲!」
金属、水、そして蒼いプラズマが混ざり合い、防御壁に猛烈な電流が走る。
「伏せろ!」
魔虎がそう叫ぶと、三人は身を伏せ、放電の嵐をやり過ごした。
(やるじゃないか)
「解除……!」
迅と雫が同時に能力を解く。
「今だ。動き出す前に通るぞ」
三人は砕けた扉を突破し、屋上へ踏み出した。
次の瞬間、屋上の床が歪み、巨大な眼が開く。
床と一体化した、髑髏の形をした魔戒が姿を現した。
「ッ……なんだ、これ……」
「あれが……魔戒……?」
「分かってはいたが……デカすぎだろ……!」
「やっと辿り着いたか……ワシの餌どもよ」
低く、歪んだ声が屋上に響き渡った。




