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魔天道  作者: 外野透哉
18/22

第十八話 七不思議

ー前回のあらすじ

 魔戒が元人間と知り、心が抉られる犬飼 魔虎。

だがそこに、犬飼 魔虎の心を支えようと、水無瀬 雫が買い物に誘う。

 さらに翌日の朝。

 犬飼 魔虎の部屋のドアが、軽くノックされた。


 ガチャ、と音を立てて扉を開ける。


「……水無瀬?」


 立っていたのは、水無瀬 雫だった。

 だが、その姿に、魔虎は一瞬言葉を失う。


 白いワンピース。

 いつもの制服とは違い、柔らかく、どこか大人びた雰囲気を纏っていた。


 雫は少し照れたように視線を逸らし、小さく口を開く。


「どう……かな?」


 昨日、二人で並んで選んだ服だった。


 魔虎は一拍遅れて、正直な感想を口にする。


「に……似合ってる……」


 自分でも驚くほど声が上ずる。

 頬が一気に熱くなった。


 雫はその反応を見て、ふっと笑う。


「えへへ……最初は、犬飼くんに見てもらいたくて……」


――ズキュンッ!


 胸の奥を、確かに撃ち抜かれた感覚がした。



 昼時。

 キッチンに立った辛島 迅が、妙に張り切った声を上げる。


「今日は俺が昼メシ作るわ!」


 しばらくして、鍋いっぱいのカレーが完成した。

 全員が席につき、スプーンを手に取る。


 一口。

 沈黙――


――不味い……


 誰も口には出さないが、全員の表情が物語っていた。

 その空気に気づき、迅が首を傾げる。


――あれ? 反応おかしくね……?


 迅も自分のカレーを口に運び、次の瞬間、顔を歪めた。


「マッズ!! は!? なんでレバー入ってんだ!? 俺、入れた覚えねぇぞ!」


 それに、淡々と返したのは梶 才牙だった。


「鉄分。大事だろ」


 全員が一斉に才牙を見る。


「お前かー!」


 才牙は、ほんのわずかに視線を落とした。


「いくらなんでも、カレーにレバーはねぇだろ……」


 迅が呆れたように言う。


「血……使う……鉄分……必要……」


――なんだよ……才牙が落ち込んでるの、珍しすぎだろ……


 魔虎は話題を変えるように、雫へ声をかける。


「水無瀬、大丈夫か? よかったら後で、なんか作ろうか?」


 雫は慌てて首を振る。


「ううん、大丈夫! ありがとう!」


「そっか」



 二週間後。

 夜。


 上戒の魔戒が出現したとの報告を受け、現場へ向かうことになった。

 生徒は通常、入学から二週間経つと本格的に任務に参加できる。

以前の入学初日に参戦というのは、異例。


 場所は、郊外の廃校。

 向かうのは、犬飼 魔虎、辛島 迅、水無瀬 雫の三人だった。


 校門の前で立ち止まり、魔虎が周囲を見回す。


「……ここか」


 雫が、魔虎の背後で小さく身を縮める。


「こ、怖い……」


「やっぱ雰囲気あるなぁ」


 迅が軽口を叩きながらも、視線は周囲を警戒している。


 三人は、軋む音を立てる校舎の中へ足を踏み入れた。


 魔虎が昇降口の扉を開ける。


「……開いてる」


 雫が小さく声を漏らす。


「うぅ……」


 その直後、突然物音が響いた。


 ガシャン!


「ひぃっ!」


 雫が悲鳴を上げ、魔虎が即座に身構える。


「ッ……!」


「ビビった……」


 迅が胸を押さえながら呟く。


「にしても、本当にいるのか?」


 魔虎が辺りを見渡す。


「魔戒っぽい気配、そんなに感じねぇな」


「こういう廃校に出るってことは、七不思議系だろ」


 魔虎は指を立てる。


「定番だ。女子トイレ!」


 三番目の個室を勢いよく開ける。


「ひぃ!」


 雫の悲鳴が響くが、中は空だった。


「……いねぇな」


「次は理科室だろ。人体模型!」


 迅が扉を開ける。


「……動きそうにもねぇな」


「じゃ、じゃあ……音楽室……?」


 雫が恐る恐る扉を押し開ける。


「……ここも異常なさそう……」


「じゃあ、どこに――」


 その時。


 ガチガチ……


 三人の動きが止まる。


「今の音、なんだ!?」


 迅が声を荒げる。


「わかんねぇ……」


 魔虎が低く答える。


「こ、こわい……」


 雫の声が震えた。


 次の瞬間、床が歪み、壁がうねり始める。

 校舎そのものが、生き物のように変形した。


 雫が悲鳴をあげる。


「ひぃ!な、なにこれ!」


 続けて魔虎も驚く。


「マジかよ……!」


 迅が規模の大きさに驚く。


「規模デカすぎだろ……! 本当に上戒か!?」


「上戒の中でも……相当強いぞ、これ」


 迅が歯を食いしばる。


「クソ……! 足場が不安定すぎて動けねぇ!」


 魔虎は周囲を睨みつける。


「本体は……どこだ……!」


――まさか……!


 魔虎の嫌な予感が、確信に変わる。


「お前ら! 外に出ろ!」


「え!? なんでだよ!」


「いいから早く!」


 三人は来た道を引き返し、昇降口へ向かう。


 だが――


「……嘘だろ」


 壁が変形し、出口は完全に塞がれていた。


 魔虎は息を呑み、叫ぶ。


「この廃校に魔戒がいるんじゃない……!」


 拳を握り、言い切る。


「廃校そのものが、魔戒なんだ!」


「マジかよ……」


 迅が呆然と呟く。


「だったら……大きすぎる……」


 雫の声が震えた。


 その時、校舎全体に響くような声が降ってくる。


「やっと気づいたかぁ」


 三人は一斉に周囲を見渡す。


「この中に入ったからには、もう逃げ場はないぞぉ」


 声は、壁から、床から、天井から、同時に聞こえてくる。


「ワシ、伽藍髑髏がらどくろの餌じゃ」


 歪んだ笑い声が、夜の廃校にこだました。

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― 新着の感想 ―
レバー美味しいのに……。 ( ・∇・)好き嫌いは、駄目だよ。
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