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魔天道  作者: 外野透哉
16/21

第十六話 正体

ー前回のあらすじ

 犬飼 魔虎は、炎をプラズマに変え、新技を習得する。

全員の訓練は終了した。

 翌日。


 自室のベッドに仰向けになり、犬飼 魔虎は天井を見つめていた。


――はぁ……一体なんだったんだよ、あいつは……。


 脳裏に、否が応でも昨日の光景が蘇る。



 一日前。


 実技の授業を終え、全員が元の位置に集合していた。

 息を切らしながらも、誰の表情にも確かな手応えが浮かんでいる。


「みんなお疲れ様!今日だけですごい成長だよ!」


 永瀬 脩の声が、場を和ませた。

 実際、全員に能力の開花の兆しが見えていた。その瞬間だった。


 ドン、と空気を叩き潰すような衝撃音。


 脩の背後に、何かが降ってきた。


 砂埃が舞い上がり、視界が塞がれる。

 だが、それ越しでもはっきりと分かる。


 異質。

 明らかに、この場の誰とも違う存在。


 空気が歪み、周囲の音が一瞬遅れて聞こえた。


「ッ……!!」


 脩が息を呑んだ。


――なんだ……!?


 魔虎が身構えた、その時。


「やっと見つけた」


 悲しく、嬉しげ声が砂埃の奥から響いた。


 辛島迅の表情が、はっきりと強張る。


――コイツはやばい……!


 次の瞬間、迅が動いた。

 迷いのない踏み込み。


輪廻解錠りんねかいじょう 磁厘爪じりんそう!!」


「よせ!」


 磁仙の制止も間に合わない。

 だが、その攻撃は――あまりにも簡単にかわされた。


「まあまあ、そんなにカリカリしないでよ、辛島迅……」


 砂埃が晴れ、姿を現した男。

 その口元には、薄い笑み。


 迅が息を呑む。


――コイツ……!


「別に今日は戦いに来たわけじゃないんだ。ただの挨拶だよ」


「挨拶?」


 脩が怪訝そうに問い返す。


「そう。僕の名は、羅墜らつい


 梶 才牙が小さく復唱する。


「……羅墜?」


 その瞬間、魔虎は見逃さなかった。

 羅墜が舌を見せた一瞬、そこに刻まれていたローマ数字。


 Ⅲ。


 そして、羅墜の視線が魔虎に向いた。


「ああ、君が確か、鬼灯と契約したって子か。名前は分からないけど」


「……なんの挨拶だ」


「また会うだろうからね」


 迅が鋭く問い詰める。


「どういうことだ」


「直に分かる」


 そう言い残し、羅墜の姿はふっと掻き消えた。


「……何しに来たんだ」


 凩 摩稀の呟きが、重く落ちる。


 その直後、鬼灯が実体化し、口を開いた。


「あいつが姿を現したついでに言っとくぞ」


 場の空気が張り詰める。


「まずは、魔戒ゲートの正体だ。結論から言う」


 一拍置いて、鬼灯は言い切った。


「魔戒の正体は、()()()だ」


「ッ……!!!」


 言葉の意味が、すぐには理解できなかった。


「正確にはだ。一般人にも目視できる魔戒が、元人間だ」


 鬼灯の声は淡々としている。


「契約前の魔戒が、契約者アグラーと、魔戒自身が契約すると決めた相手にしか見えない理由……それは、契約時に力に耐え切れず死んだ場合、そいつの肉体を魔戒が乗っ取るからだ。元々人間の肉体だから、見える」


――そんな……


 魔虎の呼吸が乱れる。


――てことは、俺が今まで殺してきたのは……人間……!?


 膝から力が抜け、地面に崩れ落ちる。

 視界が狭まり、息がうまく吸えない。


「犬飼くん、大丈夫?」


 水無瀬雫が背中をさすってくれる。


「……悪い……」


 鬼灯は続けた。


「だが、ごく稀にだ。強い憎しみや激しい感情によって、魔戒に取り込まれるどころか、逆に魔戒を取り込む者もいる」


 その声に、全員が耳を傾ける。


「体は魔戒。だが自我は、人間時代のまま」


「そんな存在は、魔戒が生まれてから約二千年間――一度も生まれなかった」


 鬼灯は、そこで一拍置いた。


「正確には違うな。

 生まれたのは、二千年前に現れた最初の五体だけだ」


 場の空気が、さらに重く沈む。


「それ以降、二千年もの間、同じ存在は一体として生まれていない」


「だからこそ、そいつらは"例外"であり、"異常"だ」


 場が凍りつく。


「そういうやつらを集め、魔戒の元凶――霊閻れいぜんが組織したのが、五芒衆ごぼうしゅうだ」


 魔虎は歯を噛みしめる。


――魔戒の元凶……霊閻……!

  そいつが……俺の殺すべき相手……!


「五芒衆のメンバーは、(いち)(がい)崩禍(ほうが)()(がく)禍輪(からん)(さん)(あい)猛爆(もうばく)()(きら)魅麗(みれい)()(よく)(れい)()()


 鬼灯は一つずつ告げる。


「そいつらは全員、特戒とうかいだ。位は体の別々の場所にローマ数字で刻まれている」


「壱ノ怒は背中にI、弐ノ楽は右手の甲にII、参ノ哀は舌にⅢ、肆ノ喜は胸にIV、伍ノ欲は額にⅤ」


「……待てよ」


 魔虎が口を開く。


「"いた"ってどういうことだ」


「ああ。さっき言っただろ。二千年間、そんな存在はいなかったってな」


 鬼灯は少し間を置いた。


「だが四年前、その均衡が崩れた」


「魔戒を取り込んだ者が、現れたんだ」


「しかもそいつは問題児でな。相当強い」


 迅が眉をひそめる。


「……は?」


「そいつは、参ノ哀だった猛爆を倒した」


 ざわめきが走る。


「そして霊閻は、そいつの実力を認め、元は猛爆の位であった――参ノ哀を与えた」


「それが……さっきの男、羅墜だ」


「……マジかよ……」


 誰もが言葉を失っていた。


「お前らはいずれ、そいつらとも戦うことになる」


 鬼灯の声が重く響く。


「今までの敵とは桁が違う。いつその時が来てもいいように、気を抜くな」



そして、現在――


ーー今まで俺たちが殺してきたのは、元人間……


――霊閻……ぜってぇ許さねぇ……必ず殺す……


 犬飼 魔虎は、静かに拳を握り締めた。

 羅墜が現れた理由は、まだ分からない。


 だが、確実に歯車は回り始めていた。

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― 新着の感想 ―
元が人間なら、最初になった人は 何やかんやで、なってしまったのかな。 ゜+(人・∀・*)+。♪ あ、書き方が変わりましたね。 こちらの方がいい感じですね
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