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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
8章 お父さんの誕生日

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74話 殿下と黒猫

 わたしたちは慌てて箒に飛び乗った。

 ブレスから逃れたのは、間一髪。


「ルルティア、無事か!?」

「はいっ!!」


 カーライル殿下も間に合ったようで何よりである。

 ただ二人で安堵する暇はない。だって後ろから「ギャオオオ」と不死鳥が追いかけてきているからね。


「コアラああああ、なんでこんなに恨まれてるのおお?」

「ぐも?」

「かわいい顔するんじゃない腹立つうううう!!」


 爆速飛行しても、余裕そうなコアラはさておいて。


「にゃんにゃんにゃん! にゃにゃ!」


 珍しく、シェンナちゃん必死に何かを叫んでいた。

 相手は殿下……ではなく、不死鳥か?


「シャンナちゃん、不死鳥と知り合いなの!? じゃあなに、コアラとも前世からの知り合い……まさかコアラ、シェンナちゃんのストーカーだったりしないよね!?」

「ぐもも?」


 うわぁ、わっかんない。この三匹どういう関係だったんだろう?


 シェンナちゃんは前世お姫様とか言われても納得だけど……あれかな。どっかのコソ泥と世界を駆ける県警とかかな。『あやつが盗んだのは……あなたの心です』みたいな。まあ、今がまさに追われているからね。捕まったらジ・エンド。生命の燃えかすエンドだからね。


 ……と、今まさに不死鳥のブレスを「どりゃああああ」とドリフトな勢いで躱したところだから、そんな想像をしてしまうのだけど。


 いつの間にか高度をあげて、山頂付近を旋回中。


 本当はじっくりと巣がないか探したいんだけどなぁ。

 ぜんぜんまわりを見る余裕がないよぉ。


 だって、とりあえず命が大事。

 わたしの命ならともかく、カーライル殿下に何かあったらね。

 命をかけて彼を守った国王陛下が、元気になっても笑えないもんね。


 だったら、わたしが囮になって――そう、コアラに不死鳥に軽く攻撃するように命じようとしたときだった。


「にゃおおおおおん!」


 シャンナちゃんが吠える。すると、後方に炎の玉が生まれた。それはまっすぐに不死鳥にぶつかって……て、カーライル殿下、なに命じてるの!? 不死鳥を怒らせるなんて、そんなの、今わたしがしようと思っていたこと……。


「逃げろ、ルルティア」

「ギャオン♡」


 幸い、不死鳥はシェンナちゃんからの攻撃に怒るどころか喜んだ(?)ようで、目をハートにしてカーライル殿下たちの箒へ一直線。


「にゃおん!」


 しかも、そのときだ。わたしたちの箒が横からの突風に煽られる。


 わわ、これじゃあ、バランスが!?

 思いっきり風に箒をひっくり返されて、五歳児の握力じゃ箒を掴んでいられない!?


 しかもコアラはなぜか箒からわたしのほうに跳んでくる。とっさの抱っこには成功したけど……もうこのまま落ちるしかないじゃん!?


「きゃあああああああああああ!」


 真っ逆さまの中、箒にまたがる殿下とシェンナちゃんの優しい顔が見えた。


「達者でな、ルルティア」


 その瞬間、わたしは理解する。

 わざとだ……殿下たちはわざと不死鳥を煽り、わたしたちを撃ち落としたんだ。


 不死鳥の囮になるために。わたしたちを逃がすために。


 ――もっと、もっとわたしが早くそうしなきゃいけなかったのに。


「不死鳥、こっちだぁ!」


 手を伸ばしても、殿下たちは飛んでしまう。

 遠く、遠く、はるか遠く。


 五歳の手なんか届くはずがなくて。


 次の瞬間、ドンッと背中に走る強い衝撃に、わたしは息を詰まらせる。


「うぐっ」


 痛い……だけど、生きてる……。

 ゆっくり一呼吸だけするも、特別胸が痛いなんてこともなかった。


 妙にふかふかしている背中部分を確認してみれば……枯れ草がたくさん詰んであった。枝とか固めた泥でできたこの場所の中には……。


「ピッピッ、ピピピ!」

「ピピピピピ?」

「ピッピピピ!」

「ぐも~~~~!?」


 赤や金の羽毛に包まれた丸い物体に追われるコアラがいた。大きさはコアラより大きいようで、珍しくコアラが必死に逃げている。


 まあ、コアラにも怪我はないようで何より、かな。

 そして、赤や金の羽毛の丸いのは……わたしは思わず奥歯を噛みしめる。


 あぁ、ここは不死鳥の巣なんだね。すぐそばに割れたばかりであろう大きな卵の殻が落ちていたからだ。


 あぁ、殿下……見つけた、見つけたよ。

 その殻を抱きしめて、わたしは再び空を眺めた。


 目的のものは見つめた。あとは、帰らなきゃ。

 みんなで、元気に! 


「早く……早く殿下のもとへ戻らないと……」

「ぐもも」


 わたしが早く殿下のもとへ戻るために立ち上がろうとするも、赤い毛玉に突かれているコアラに手を掴まれる。やめろ、と言わんばかりに。


「なんで? 疲れたとか言っている暇ないからね!?」

「ぐもも」


 それでもコアラが首を横に振りながら見ているのは……折れた箒だ。


「あ……」


 幹の真ん中二カ所でポキポキと折れてしまった箒。わたしの身体が小さい五歳児のものであっても、もう乗ることは不可能だろう。


 そりゃそうだよね。あんな高さから落ちたら……わたしたち自身に怪我がないだけでも運がよかったということだ。


 今も空高く、殿下たちは不死鳥と戦っているというのに。


「どうしよう……どうしよう、コアラ……」

「ぐも……」


 情けないわたしは、目からポロポロと涙を落とすしかできないなんて。


「なんかできないの!? ここからぶっといビーム出すとか! コアラがでっかく巨大化するとかさあ!!」

「ぐもぅ~」


 そんな無茶なって顔してないで、どうにかしてよ。


 五歳の身体じゃ……たとえアラサーの大人の身体だとしても、わたしひとりじゃ何もできないんだよ……。コアラが協力してくれないと、この世界じゃわたし何にもできないんだよ……。


「助けてよ……コアラ、助けてよ……」

「ぐも……」


 下げたわたしの頭を、コアラが短い腕をめいっぱい伸ばして撫でてくれたときだ。

 頭上から、声が聞こえた。


「ルルちゃん、多少は反省した?」


 わたしたちは顔をあげる。

 ユーリさんがまるでお父さんのような優しい顔でわたしを見下ろしていた。


作者から、ここまで読んでくれた皆様へお願いです


「ぐもぐも」「にゃんにゃん」「ギャッギャッ」「ピッピピ」

などと、少しでも思っていただけましたなら、

(今回、話の展開はけっこうシリアスだったのに鳴き声オンパレードでしたね笑)


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