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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
8章 お父さんの誕生日

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70話 コアラと不死鳥

 不死鳥のいきなりブレスで、絶対絶命のピンチである。

 ちなみに、コアラのバリアはわたし以外にも、カーライル殿下や護衛の兵士さんたちも守っている。護衛の兵士、弱いじゃないかって? ちゃんとがんばってくれてるよ。コアラのバリアに重ねがけしてバリアを張ってくれている。


 他の護衛の兵士さんたちに後ろには、カーライル殿下とシェンナちゃん。殿下たちは何か叫んでいるようだけど、この場で一番尊い命だもんね。わたしはコアラのバリアが一番強固だから、必然と前に立つしかないわけだけど。


 あぁ、ユーリさんに付いてきてもらえばよかった……。正直、わたしがご遠慮いただいたのだ。というか、ミハエル殿下に頼んで、この遠征をユーリさんの耳に入らないようにしてもらった。……だって、あれはだめ、これはだめって、うるさそうじゃん?


 まあ、今となってはユーリさんとユカリさん助けて状態なんだけどさぁ!

 その結果、わたしはコアラを振ること以外何もできないんだけどさぁ!


「コアラああああ、どうにかしろおおおおおお!?」

「ぐもももも、もももももももももも!」


 わたしのシェイクのせいで、コアラの声が震える。

 そのとき、ふと不死鳥が噴き出したように見えたのは、わたしの気のせいだろうか。


 まるで「ぷっ」と笑うように。


 そして、ブレスの炎が止んだ。同時に、不死鳥が大きな羽根を翻して去っていく。

 その雄大な翼や尾っぽを眺めて、わたしたちは安堵の息を吐いた。


 助かった……また、なんとか生き延びた……。


 その中で、真っ先に駆け寄ってくるのはカーライル殿下だ。


「ルルティア、大丈夫か!?」

「だいじょぶじょぶですよ……というか、なんかすみません」


 わたしが頭を下げれば、必然と抱っこしているコアラも頭を下げる羽目になる。

 そんなわたしたちに、殿下は当然のように小首をかしげた。


「どうして、ルルティアが謝るんだ」

「だって不死鳥、コアラに因縁があるようだし」

「そうなのか!?」


 そんな当人コアラは、殿下の使い魔である黒猫シェンナちゃんに「にゃんにゃん」と話しかけられていた。


「にゃんにゃんにゃ?」

「ぐもぐも」

「にゃにゃにゃんにゃん?」

「ぐもーも、ぐも」


 傍から見るだけだったら、「にゃんにゃん」「ぐもぐも」大層微笑ましい光景なのだけどね。

 こう絶体絶命の直後だと、すっごく『こいつら何を話しているんだろう』というのが気になるわけでして。


 わたしはコアラを持ち上げて、顔を見合わせる。


「ねぇ、コアラ。なにかわたしたちに隠していることない?」

「ぐも?」

「もうわかってるんだからね。コアラはいつもバカなフリしているだけでしょ?」

「ぐもーも?」


 とはいっても、絶対に口を割らないこともわたしはわかってしまっている。これでもコアラのご主人だからね。わたしは。


 だから試しに、にっこりと攻め口を変えてみることにした。


「ねぇ、シェンナちゃん。シェンナちゃんも何か知ってたりするのかな?」

「にゃにゃにゃん! にゃん、にゃにゃんにゃ!」


 あぁ、一生懸命お話している黒猫ちゃんがかわいいよー。

 かわいいし、コアラよりも通じている感はあるけれど……。

 やっぱり、「にゃんにゃん」だけじゃ何を言っているかがわかんないね……。


 わたしが項垂れていると、カーライル殿下が真剣な顔付きで、不死鳥が去っていった方を見つめていた。


「しかし……どうして不死鳥は去ってくれたのだろうか?」

「あれじゃないですか。幼女にシェイクされているコアラがブルブル面白かったから、『ざまぁねーな』って溜飲が下りたとか」

「なんだそれ?」 


 本当になんだそれですけどね。

 だけど、どうしても不死鳥の小ばかにしたような『ぷっ』顔がわたしの脳裏から離れないのだ。


 わたしたちが、そんな会話をしていたときだった。


「これから、どうなさいますか?」


 護衛の隊長さんが、恭しくカーライル殿下に尋ねてくる。

 当然、この場で一番偉いのは王太子殿下だ。だから、殿下が「捜索を継続する!」と言えば、彼らは従わざるを得ないのだろうけど……。


 隊長さんの視線は鋭い。今すぐ『撤退指示を出せ!』と言わせたい眼差しだ。

 それを、カーライル殿下も察しているのだろう。だけど、殿下はチラチラわたしのほうを見てくる。


「オレひとりなら、継続したいところだが……」


 これはわたしの判断を仰いでいるというより、わたしがいるから危ない目に遭わせたくないっていう気遣いがヒシヒシと伝わってくる。


 十一歳のボーイにそんな心配されちゃったらさぁ……。

 メンタルアラサーとしては、親指を立てて「行こうぜ!」というしかないじゃない!


 ……と、わたしがカッコよく決めようとしたときだった。

 黒猫シャンナちゃんがトコトコとどこかへ歩いていく。


 道なき道の奥、低い枯草が生い茂った場所。

 そこで「にゃーん」と鳴いたシェンナちゃんが、何かを咥えて戻ってきた。


 赤と金のコントラストが美しい、わたしの腕くらいの長さがある羽根。

 これは、紛れもない――不死鳥の羽根!


「シャンナちゃん、えらいっ!」

「さすがはオレのシェンナだ!」


 カーライル殿下がシャンナちゃんを抱き上げた。わしゃわしゃと撫でられているシェンナちゃんもとても嬉しそうだ。


 一方、わたしのコアラはのそのそとわたしの首後ろに回ってはウトウトとし始めていた。


 あーもう、俺の仕事は終わりですか。

 そうですよね、ちゃんとわたしたちのことは守ってくれましたもんね。うん、なんか腑に落ちないけれど。


 だけど、目的を達成したことには変わりない。


 材料はすべて集まった。

 あとは、国王陛下に贈るお守りをつくるだけだ。


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