61話 幼女と推し
ユーリさんが言う、俺の祖先。
つまり滅んでしまったという亡国の人たちのことだ。
ユーリさんは無謀にパルキア王国に挑んできた国の王子だったんだけど、まだ幼かったこともあって、ミハエル王弟殿下が養子という形で保護したんだよね。そのため、責任取っての一族処刑から逃れることができたという過去があるらしい。
そんなユーリさんの国が作った祠……?
それ、ヤッバイものが眠っている可能性があるのでは?
「ユーリさん、その眠っていたやつ、開いちゃって構わないので?」
「あまりよくない。だけど、やっぱり祖国の復興を夢みて、無理をしてしまうやつらも少なからずいるから。そいつらに現実を見せるなら、早いほうがいいかと思って」
わたしはコアラといっしょに「ほーん」「ぐもーん」とする。
つまり、ユーリさんはこの人たちの作戦を成功させるつもりはないらしい。
あれかな……どうにか同郷の人たちの罪を少しでも軽くしたいとか、被害を少なくしたいとか、そんなことを考えているのだろうか。
でも、それってユーリさん自身が危なかったりしないのかな?
ましてや、堂々とわたしに話しちゃってるぞ?
「こんなこと話していて、あの人たちに恨まれたりしないので?」
「ここに集まっているのは、俗にいう過激派だから。未だにパルキア公語を覚えていないようなやつらだよ」
言い方からして、ユーリさんは祖国の方々をあまり望ましく思っていない様子。
それでも、亡き国の王子として、責任をとろうとしている。
公爵令嬢の誘拐に加担したとして、いや、その首謀者として裁かれることになるかもしれないのに。
「ユーリさん、やっぱり推せる……」
「なんか素直に喜べない気がするのは気のせいか?」
ユーリさんはジト目を返してくるけど、リンリンと興奮しているユカリさんの音が聴こえる。
同志よ、一連の事件が落ち着いたら、ゆっくりユーリさんについて話あおうね!
「それじゃあ、さっさとその祠にあるものを調べにいきましょうか!」
「いや待って? ルルちゃんはここで待機だよ。ほら、オディリア嬢ももうすぐ目覚めるだろうからさ。あの女性陣たちと休憩して……」
たしかに、指されたほうを見れば、一味の女性子どもが果物を食べたり、水を汲んでお茶を沸かしたりしている。オディリアさんも雑には扱われていないようで、大きな麻布の上に寝かされていた。もうすぐ起きるという言い方からして、睡眠薬などで眠らられているのだろうか。
ともあれ、オディリアさんに大きな怪我はなさそうだ。
ならば安心して、わたしも洞窟探検に行けるというもの!
「まあ、わたしがユーリさんの言うこと聞いた試しってないですよね!」
「同意したくないけど、同意せざる得ない……」
「そもそも、ついてきてもらいたくないなら、わたしが起きる前に探検してくればよかったわけで」
「本当はそのつもりなんだけどね。コアラくんがペチペチした程度で、起きる眠りじゃないはずなんだけどなぁ……ユカリさん、手を抜いた? あ、抜いてない。コアラが悪い? ……そいうことみたいだよ」
そういうことなら、わたしはコアラに親指を立てるしかないよね!
「コアラ、ぐっじょぶ!」
「ぐっもも!」
そんなあいだに、ユーリさんが「やれやれ」と踵を翻す。
とたとたついていっても、何も文句は言われない。
「でげれけ、ぐっしも。おべし」
「ぎゃぎゃっと。しも。おべし」
ユーリさんが毅然と過激派の人と話すけど、何言っているのかやっぱりわからん。
ともあれ、滝の裏の洞窟の中はひんやりしている。少し暗いかなーと思っていたら、頼む前にコアラが鼻ピカーしてくれた。護衛(?)の過激派の人たちが「おべし」「おべし」と騒ぎだすけど、ユーリさんの「おべし!」でだんまりしてくれた。だから、おべしってなに?
ともあれ、たまにピトッと水滴が落ちてくる以外、特に問題のない洞窟だ。
先頭のユーリさんの半歩後ろを歩きながら……聞いてもいいのかな?
「そもそも、どうしてオディリアさんが誘拐されたので?」
「ここの封印を解かせようとしていたらしい。オディリア嬢は高い魔力を持つということで有名だからね。あいつらも、まさか同じ会場に俺がいたことは予想外だったようだ」
「代わりに、ユーリさんが解いたと?」
「そう。オディリア嬢の安否を約束させてね。あいつらとしても、いきなり王子が出てきて驚くどころか、まさか魔力持ちになっていたとはって無駄にありがたがられたよ」
うーんと、なんか話が微妙につながらないぞ?
わたしが小首を傾げていると、ユーリさんが苦笑する。
「俺がそもそも処刑を免れた理由が、子どものとき魔力なしだったから。だから過激派のやつらも、俺に秘術の封印を解かせよう、ましてや国の復興をさせようという気も起きなかったらしい。もっと土台を整えてから、最後に飾りに添えようとでも思ってたんじゃないかな」
なかなか過激派の人たちも、ずる賢いというか。
無理やりなところが過激というか。
そんな国同士のいざこざは、元平和のジャパニーズには難しいので、さておいて。
わたしは話の中で聞こえたファンタジーなワードに着目することにする。
「ひじゅつ?」
「そう――ここには、かつて魔王を倒した魔法が眠っているらしい」
その言葉を聞いたとき、コアラが小さく「ぐも」と鳴いた気がした。
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