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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
7章 公爵令嬢の初恋

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60話 幼女と外国語

 わたしが丁寧に挨拶したにも関わらず、盗賊らしき人たちは「どーもどーも、おれたちは」と挨拶と自己紹介を返してくださらない。幼稚園からやり直したほうがいいのでは?


 だけど、それをコアラに問うよりも前に、わたしは目を瞠ることとなる。


「ぐんぎゃー、はっは、おべし!」

「ぐがー、はっはっ、おべし!」


 わたしは思わず、コアラと顔を合わせる。


「ぐもぐも言っているけど、コアラ、あの人たちが何言っているのかわかる?」

「ぐんも」

「わかんないかー。困ったなー。別の国の言葉なのかなぁ?」


 まあ、わたしもコアラが何を言っているかは全部雰囲気なんだけどね。

異世界転生の妙で、わたしは自然とパルキア王国の公語を普通にマスターしているはずである。それなのに、なに言っているのかわからん。コアラ語よりもわからん。「おべし!」て怒られている雰囲気しかわからん。


「とりあえず、ぶっ飛ばしとく?」

「ぐも!」


 そう、コアラを意見が一致したときだった。


「ルルちゃん?」


 背後に、黒い笑顔の気配を感じる。


 振り向きたくない。

 だけど、振り向かないとあとが怖い。


「ぐもーー!」


 というわけで、コアラをわたしの肩に載せて代わりに確認してもらった途端、コアラは「ぐも」と嬉しそうにむしゃむしゃと背後の人からもらったユーカリの葉を食べ始めた。


 おいコアラ、一瞬で買収されてるんじゃねえ。


「ちゃんと俺、見てたからね。コアラぱんちでオディリア嬢に怪我させたらどうするつもりだったの?」

「はい、すみません。ユーリおにーさま」

「お兄さんじゃない、パパでしょ?」


 いいや、お兄さんです。

 なぜかパパと呼ばれたいらしいですが、あなたはれっきとした義兄です。

 養父よりもパパらしいことばかりしてくれているだけで。


 ともあれ、覚悟を決めて振り返ると、ユーリさんがしっかりと未だ走り続ける馬車の上に上がっていて。こんなバタバタしているのに、ちゃんと走行を続けるお馬さんはすごいね……と話をすり替えるまえに、ユーリさんが口を開く。


「おべし、ぐんぎゃーぐんぐんぎゃっは」


 ……え?

 今の、盗賊さんの言葉だよね?


「ぐんぎっとぐんれーの。ぐんぎゃっは?」

「ぐんだーのっと。ぐんだーは!」

「おべし! ぐんだべぐんぎっとーのっは!」


 だけど、しっかりと。

 ユーリさんは、盗賊さんたちと謎の言語でしっかりと意思疎通を図っていて。


「ユーリさん、あの……どういう……?」


 わたしがおそるおそる尋ねると、ユーリさんが苦笑した。


「このままオディリア嬢と殿下のもとへ戻って、俺のことは何も報告しないことってできる?」

「できるわけないですよね」


 即答である。

 何も報告しないというのも無理だし、それ以前に、わたしに黙ってこのまま帰れと?


 そりゃあ、オディリアさんは早く屋敷に戻してあげたいけど、それができるほどわたしがメンタル成人だったら、そもそもここまで老人の杖をまたいで飛んできていないという話。


「じゃあ、やっぱりついてきてもらうしかないかぁ」


 そんなわたしに、ユーリさんは諦めたようにため息を吐く。


 いやだなぁ。巻き込みたくなかったのになぁ。

 そんな愚痴をぐちぐちしてから、ユーリさんは手短に命じた。


「ユカリさん、眠らせて」

「えっ?」


 どんな使い魔も、主人の命令には忠実だ。

 だって、基本的に使い魔は主人のことが好きで、この世界に顕現しているのだから。


 それはコアラも、ユーカリの木の精霊であるユカリさんも例外ではなく。


 リンリンと、鈴のような音が聴こえる。

 その心地よい音色に誘われて、わたしの瞼がどんどんと落ちていった。


 コアラの鳴き声が、やたら遠くに聴こえる。




「ぐんもーぐんもー」

「ぐもーっ!」


 ぐもーとペチペチされたら、ぐもーっと飛び起きたくなるのが五歳児よ。

 というわけで、ちょっと身体が痛いけど、コアラに叩き起こされて、わたしは跳ね起きた。


 木々の緑の香りが気持ちいい。さらに小滝から跳ねる水しぶきが、ほどよくわたしの肌を冷やしてくれる。お日様も昇って、キャンプした後のような清々しい朝だ。


 そんな大自然の中の目ざめを満喫する暇もなく、ゴゴゴと大岩がズレる様な地響きに身を構える。滝のまわりにひとが集まっていた。どうやら滝の裏に入り口ができたのかな?


 集まるひとたちは、みんなくたびれた格好をしていた。盗賊とは少し違う様子だ。大人が多いけど、子どももチラホラ見受けられる。雰囲気でいえば、スラム街とかにいそうな人々が、空いた滝裏の入り口に大きな歓声をあげていた。


「ぐっぎゃぐぐんぎゃおんもー!」

「ぐぐっぎゃぎゃゆゆんもー!」


 そんなおんもーに対して「大袈裟だよ」と苦笑しながら、わたしたちの元へやってくるのは、ひとりの青年。見間違えるはずがない。わたしの自称パパのユーリさんだ。


「ルルちゃん、おはよう。どこか痛いところはない?」

「首とか肩がちょっと痛いです」

「ごめんね。すぐに柔らかいベッドで眠れるようにしてあげるから」


 コアラを抱きかかえるわたしに、特別怪我などないことがわかって安心したらしい。

 それでも、ジーッと睨み続けるわたしに、ユーリさんは観念したように視線を滝に向けた。


「下手なことに巻き込んですまない。ここは、俺の祖先がつくった祠なんだ」


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