54話 幼女と公爵令嬢①
ちょっと……ちょっとだけ興味があった。
わたしたちのちゅどーんは、学園最高峰の魔法使いである生徒会長さんに、どこまで通じるのか。
噂によればオディールさん、魔法の成績も学年トップを完走間近。
入学時から保持していた高い魔力を努力で磨き、王城の魔法騎士団からの推薦もきているのだという。だけど、公爵令嬢という立場から、家を守るために断る予定なのだとか。
前世感覚でいえば、もったいないなぁと思わないでもないけど。
それでも、そんな人にちゅどーんしてみた結果を、わたしは知りたい!
「いくよ、コアラ。ちゅどーん!!」
「……なるほど」
わたしとコアラの一世一代のちゅどーんである。
それに対し、オディリアさんは冷静に手を掲げた。
その手の先ではばたいているのは、垂れ耳のうさぎ。長い耳を羽根のようにはためかせ、そのミミという名の彼女の使い魔は、彼女の合図を待っていた。
「ミミ、防御」
ただ、それだけ。
それだけの指示で、オディリアさんのまわりにドーム状の防御壁が展開される。
轟音と砂塵が落ち着いてから、防御を解いたオディリアさんが髪をかきあげていた。
当然、耳が羽根になっているうさぎのミミちゃんも変わらずパタパタしている。
「まあ、低学年でこの威力は誇ってもいいと思うわ」
「それだけ~!? もっといろいろないんですか~!?」
わたしたちの必殺技である。
このちゅどーんで、今までどれだけの難敵を……て、物理的につらい相手と戦ったことはないのだけど。
それでも、もっと驚くとか、楽しいリアクションがほしかったのに!
「だって、威力だけだもの。来るとわかっている単純な爆発ほど防ぎやすいものはないわ」
「そんなぁ~……」
しょんぼりである。わたしって、実はたいしたことなかったのかもしれない。
詰んだ……もしかして、わたしの人生詰んだ……?
チートだと思っていた魔法がそうでもなかったとか、けっこう今後の人生ツラくなってくるのでは? ダメだ、ちょっと久々に涙腺が緩んできたかもしれない。
すると、コアラがわたしの肩を叩いてくる。
「ぐーもも」
「それってどんまいってことかい?」
「ぐも!」
「あんがとよ、相棒……」
そのときだった。オディリアさんが慌ててどこかへと走って行ってしまう。
え、そんなにめんどくさかったですか?
すみません、失恋を励ますどころか、めんどくさいだけの幼女ですみません。
だけど、オディリアさんはすぐに戻ってきた。
差し出してくるのは、紙コップに入ったジュースだ。どうやら買ってきてくれたらしい。
「そんなに落ち込まなくても大丈夫よ! 本当にこんな威力を出せる学生は、わたくしくらいよ。これからもっとあなたの魔力は増えるだろうし、他にも搦め手を覚えていけば、いくらでもその魔法の活用法はあるわ!」
顔を逸らしながらも、口早で励ましてくれるオディリアさん。
ちょっとツンデレだけど、いい人だ。
間違いなくいい人だ、この人!
生徒会長として、後輩と絡む機会は多いと思うんだけどね。それでも自分の腰くらいの身長の子どもは慣れていないのだろう。
わたしはジュースを受け取りながらも、なんとなく聞いてみた。
「オディリアさん……もしかして、あんまり子どもと絡んだことない?」
「そ、そんなこと邪推しないでちょうだい! いいから、それ飲みながらベンチに座って休憩するわよ!」
かわいいぞ、オディリアさん。わたしの中の評価が爆上がりだ。
うふふとしながら、促されたベンチに座る。
すると、オディリアさんもため息をつきながら隣に座ってきた。
「…………」
「…………」
そわそわしている。わたしの挙動を気にしながら、めっちゃそわそわしている。
え、かわいい。この子かわいい! このままずっと観察していたい!
こういう不器用な子、わたしの大好物である。
だからこそ、ますます思うのだ。
オディリアさんには、しあわせになってもらいたいなぁ。




