52話 幼女の恩返し
ご無沙汰しております! ひと段落したので、またこちらの更新を再開しますね!
本当の五歳からしたら、男女の修羅場など怖いだけである。
しかし、わたしはアラサーな人生も経験済みの幼女である。
男女の痴話げんかもれっきとしたエンターテインメントだ!
「その話は、もう終わったことだろう」
「それは父が勝手に決めた話です! わたくしは、あなた以外の男と結婚するつもりはありませんわ!」
ユーリさんが強い語気で話しているところ、初めて見た……。
やっぱり、わたしに対してはかなり優しく話してくれているんだなぁ。
「俺のどこに執着する理由があるんだ? 魔力か? それとも俺の故郷に興味があるのか?」
「どちらでもありませんわ! あなた自身のことをお慕いしているだけです!」
ロマンスである。女性からの熱烈アピール、わたしは好きだなぁ。
それでも、ユーリさんの表情は険しいままだった。
「気持ちはありがたいけど、俺だってようやく婚約解消を受け入れることができたんだ。今更蒸し返さないでくれないか」
「ユーリ様にとって、結局わたくしは政略結婚の相手でしたの?」
「……そうだよ。だから、もう俺に関わらないでくれ」
その言葉に、オディリアさんの瞳が急激に潤む。
彼女はそれを隠すように、慌てて踵を返して。
バタンと強く扉が閉められると同時に、わたしは言った。
「ユーリさん、さいてー」
「どうしてだ? 誠実に受け答えしただろう!?」
おやま。わたしに対してもいつもより語気が強い。怖いとまでは言わないけどね。
それでも、さすがは五歳の身体。
昔よりは馴染んできたとはいえ、自然とコアラを抱きしめる手に力がこもる。モフモフ。
おかげで、ちゃんと反論することはできそうだ。
「でも、もうちょっとオンナゴコロを考えろというか、容赦がなさすぎるというか……」
「気持ちに応えられないのに、中途半端に慈悲を残してどうする? さっさと俺のことなんて『嫌な奴』と忘れてもらって、早く次の男を探してもらうほうが、彼女の人生においての最善じゃないのか?」
「たしかに……」
同意しつつも、ちょっぴりわたしは不服である。
あなたも十八歳にしては達観しすぎじゃない?
もうちょっと、思春期の少年らしい葛藤してもよくない?
「ねぇ、コアラ。どう思う?」
「ぐもおおおおおおおおお」
「きみは興味なさそうだねぇ」
「ぐもおおおおおおおおお」
わたしが話しかけても、コアラは相変わらず睡眠から目覚めることはないんだけど。
「……とりあえず、わたしはオディリアさんを追おうかな」
「どうして?」
そう問いかけてくるのは、ずっと我関せずだったミハエル殿下。
別にルルティアが行く必要ないんじゃ。
そう言いたげな男二人に視線を受けて、わたしは思いっきり口を尖らせる。
その目で、わたしは確信した。
こいつら二人とも、まともに恋愛したことないな。
対して、わたしは前世で恋人がいたことありますし?
ドヤ顔を返す権利があるというものだ。
「失恋したあと一人になると、余計にマイナス思考になっちゃうものなんですよ」
「だから五歳児が何言ってんの」
ミハエル殿下からのツッコミが入るけど、わたしは気にしない。
だけど、部屋から出る直前で、一つだけ質問を残す。
「ユーリさんは、本当にオディリアさんのことは好きじゃなかったんですか?」
「……俺なんかが、彼女と結ばれていいはずないだろ」
「なるほど?」
わたしはニヤリと笑って、部屋を出る。
あのユーリさんの浮かない顔、これはロマンスの香りがしませんか!?
「ここは、わたしがひと肌脱ぐっきゃないよね! コアラ!」
「ぐもおおおおおおおおおお」
やっぱりコアラは興味がない様子だが。
わたしだって、ユーリさんのことは好きだ。
燃える森で盗賊に襲われたとき。
馬車旅の途中で、盗賊に仕返しされそうなとき。
里帰りに付き合ってもらったとき。
ユーリさんにはたくさんの恩義がある。
今も毎日おいしいお弁当をつくってもらっているのだ。
さあて、幼女の恩返しといこうじゃありませんかっ!
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