45話 ニワトリの小屋
寮の近くへ戻って、見せてもらったのはバケツに入った穀物だった。
バケツにはそれぞれ、トウモロコシや麦、お米のくずなどが入っている。それに加えて、自慢げに見せられたのが虫だ。バケツの中でうにょうにょしている。
「虫はニワトリにとって大事な栄養源なんだぞ!」
「へぇ、知りませんでした……」
正直言って、気持ち悪い。動物は好きだけど、虫や爬虫類はそれほどである。
それでも殿下の気分を損ねないため、ミハエル殿下から聞いてましたとは言わずに知らないフリをしてみせれば、殿下は嬉しそうに鼻の下を擦っていた。かわいい。
次にカーライル殿下たちに連れていかれたのは、女子寮の裏手だった。
頭にタオルを巻いて、脚立に座ってトンカチを弄っている姿が、とてもよく似合っていた。
「お、ルルちゃん。今日の授業はどうだった?」
「滞りなく……」
「はは、また子どもらしくない返答だなぁ」
ユーリさんである。ミハエル殿下の養子仲間で、わたしの自称パパで、亡国の王子というステータスが多すぎる男は、今日もいい感じで見た目が地味。ほんと、亡国の王子が日曜大工しているってどうなの?
「ユーリさん、こんなこともできたんですね……」
「まあ、あの森の小屋も、俺が自分で建てたからねぇ」
あの森とは、ユーリさんと出会った森のことだろう。疲れに負けて、わたしが思わず不法侵入しちゃった小屋である。ログハウスとして十分立派だったと記憶しているが……お弁当づくりだけでも十分なのに、改めて能力チートな男である。
「パパヂカラ強すぎでは?」
「五歳の子どもを立派なレディにするまで、がんばるよ」
やっぱり十八歳がいうセリフでも落ち着きでもないことはさておいて。
ユーリさんが作っているのは、ニワトリ小屋でいいのかな?
小学校でよく見たようなアレである。
「ニワトリを鳴かせないのは難しい。だから、ニワトリが鳴いてもよい環境を作ろうと思ったんだ!」
「それで白羽の矢が立ったのが、新人用務員の俺ってわけ」
「なるほど」
コアラと同様である。コアラに寝るなと言っても無理な話だし、ユーカリ以外を食べろと言っても無理だった。無理なものは無理なのだ。だったら、こちらが使い魔の要望に合わせた環境を作るしかない。
裏手といっても、寮から少し距離もある。これから朝に「コケコッコー」としたとて、被害は最小限で済むだろう。
まあ、王太子という権限があってこその力技だけどね。それでも、ひとりの少女が救えたなら、悪くない権力の使い方ではなかろうか。
「ニコちゃんも、これからゆっくり寝られそうだね」
「はい……はい、ありがとうございます……」
近くでよく見れば、メガネの奥の目の下にはけっこうな隈ができている。この一年、満足に寝られていなかったのではないだろうか。わたしより年上とはいえ、まだ十歳。とてもつらかったことだろう。
「よし、じゃあニワトリさんに小屋の住み心地をチェックしてもらおうか!」
わたしが促すと、ニコちゃんがおそるおそる小屋にニワトリを放ってみる。
「コケーッ!」
元気よく歩き出したニワトリさん。
風通しがよく、地面も土。これからニワトリも好きなだけ地面を掘れるような環境だ。
だけどニワトリって、案外ひなたぼっこも好きなんだよね。
止まり木に登ったかと思えば、とっても気持ちよさそうに目を細めていた。
ちゃんと産卵箱も用意してあるし、害獣に襲われないように周囲も金網……じゃなくて、ユーカリの細い枝が網目状に巻かれている。ニワトリは決して強い動物じゃないからね。使い魔だから普通のニワトリと一緒じゃないかもしれないけれど、予防するに越したことはない。
……なんで、こんなにわたしが詳しいのかって?
当然、前世は自ら飼育委員を飼ってでていた動物好きなので!
「これにて一件落着だね、コアラ」
「ぐもおおおおお?」
コアラのいびきが、なんか不安げに聞こえた気がした。
……のは、やっぱり気のせいではなかったらしい。
「コケコッコッコッ、コケーッ!」
それは、真夜中だった。
目覚めたコアラがモゾモゾ餌を探してるなーとユーカリの葉を出してあげようとしたところ、外からおびただしいほどのニワトリの鳴き声が聞こえる。
「行くよ、コアラ!」
「ぐも……」
ユーカリをお預けされて、しょんぼりのコアラ。
そんなのを無視して無理やりコアラも抱っこで連れてくれば、誰かがニワトリの小屋に向かって、火球を投げつけようとしていた。
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以下は作品紹介サイトです。
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とってもおもしろい漫画にしてもらったので、ぜひぜひよろしくお願いします!!




