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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
5章 すっごい魔法

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閑話 コアラの事情・後


 その日、ルルティアは早くに寝た。

 実家から直帰して、さらに連日の魔法訓練。四歳児の身体で疲れていないはずがない。


「コアラ……やめて、ちゅどーんやめて……」


 かわいいものだ。俺の夢を見ているんだな。


 だけど、夢の中の俺は何をしているんだ?

 ルルティアは俺を何だと思っているんだ?


 と、そんな幼女と添い寝はとても役得だが、俺にもたまにはやることがある。

 使い魔特権として、いざというときに主の身体を借りることができる。


 とくに、主が子どもの場合は容易だ。自我と身体の同一性が成人よりも甘いからな。しかも、前世の記憶持ちの主の場合は、むしろすぐに乖離しやすいといえよう。


 このシステムは、いざというときに幼い主を守るためのものである。前は、シェンナちゃんを蔑ろにしていた少年に文句を言うときに使ったな。そして、今回は、ひとりの男に会いにいく。


「ルルティア、こんな時間に……」


 そいつの寝室を無断で開ける。そいつは俺をひと目見るや否や、冷たく目を細める。


「あ、ルルティアじゃないようだね。こんばんは、コアラくん? わざわざルルティアの身体を借りたということは、俺に話があってきたってこと?」


 ミハエル殿下は、前世からの知り合いだ。

 そのときと、彼の姿は何の変わりもなかった。

 一〇〇〇前……俺が人間として生きて、世界のために戦っていたときの知り合い。


 そんな昔馴染みに、俺がかける言葉は一つしかない。


「おまえ、彼女に自分を殺させようというのは本気なのか?」

「本気だよ。じゃなきゃ、なんのために養女になんてすると思うの?」

「長生きは、おまえの悲願だったじゃねーか」


 当然、俺はこいつがどうして『亡霊』となってしまったのかを知っている。


 元から、生きることに希望を見出していない男だった。

 むしろ、死ぬために生きていた男だった。


 そんなバカな男が、同じようにバカな男の気まぐれで、生き長らえることになった。


 一〇〇〇年もの長き時間を。

 人が死んで、生まれ変わっても余るほど長き時を。


「そういうってことは、亡霊になる前の僕を知っているということでいいのかな?」

「そんなに死にたいなら、俺が殺してやる。だから、この子を巻き込むのはやめろ」

「きみがひとりでどうやって殺すつもり? 彼女がいないと、何にもできない使い魔のくせに」


 そう――今の俺はしょせん使い魔。

 主がいないでできることと言ったら、ちょっと身体を借りて夜の散歩をするくらい。

 しかも、おつかれの四歳児の身体。早くベッドに戻さなければ、明日に響いてしまうだろう。


 窓から見上げた月は、今も昔も変わらない。

 とても冷たく、不気味でキレイだ。

 その前の飾られた鳥かごの中の青い鳥を、今も不気味に照らしている。


「……その鳥は、元気か?」

「相変わらずだよ。僕といっしょで、ずっと死にたがっている」


 この鳥が、こいつの使い魔。

 諸悪の根源。こいつを無駄に生きながらせ、共に死にたいと願う張本人。

 とても苦しそうに細い息をしているだけの鳥は、飛ぶことも、鳴くことすらもできやしない。


 そんな鳥を見やりながら、ミハエルは笑い混じりに聞いてくる。


「コアラ人生は、どう?」

「……なかなか性に合ってる」


 こいつとは、決して友達ではない。

 関係性を言葉にするなら、ただの仕事仲間。あるいは雇用関係。


 だから不必要な馴れ合いもない。

 けれど、まったく情が湧かないというほど、冷めた関係でもない。


「本当に、死にたいのか?」

「死にたいよ。勇者だったきみたちが殺してくれなかったら、誰が僕を殺せるというんだ?」


 そんな疲れ切った笑みに、俺は嘆息を返す。


「……わかった。でも、あくまで今の俺らは使い魔だ。嬢ちゃんがどうするか、だ」

「うん……ありがとう」


 俺は部屋を出てから、今一度嘆息した。

 こんなに嬉しくない謝辞もない。


 こんな昔馴染みと、寂しがりやの主のために、俺ができること――。


「コアラって、こんな苦労性な動物だっけ?」


 その自嘲に応えてくれる者は、誰もいない。


 ◆


「ルルティア! 復学の許可が下りたぞ!」


 パーティーが終わって、数日後。

 わたしとカーライル殿下のもとへ、フクロウさんが復学許可証を運んできた。

 しっかり学園長のサインもある。

 ついでに『調子に乗りすぎないように』という一言も添えられていた。


「それはコアラ次第だよねー、コアラ?」

「ぐも?」


 準備は何が必要だろうか。

 予習に復習、あとは小石の魔法の確認かな。

 なんて、わくわく巡らせながらコアラのブラッシングをしていたときだ。


 当たり前のように、ニコニコとしたミハエル殿下とユーリさんが部屋にやってくる。


「当然、僕も一緒に学園に戻るからね」

「俺も用務員として雇われることになったから」

「ぐも?」


 もう、コアラと一緒に「ぐも?」と首を傾げても問題ないよね。

 だって、わたしは四歳だもの。


 どうやら、わたしの学園生活リベンジは賑やかになりそうだ。 


5章はこれにて終了です!

6章からは再び学園編。新キャラも登場してわちゃわちゃしていく予定ですので、これからもご愛読いただけますと嬉しいです!


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