表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
5章 すっごい魔法

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/82

32話 幼女と家族会議

 二人に対して、わたしは笑みを作る。


「珍しいですね。お二人そろってなんて」

「揉めるからタイミングをずらすようにしていたんだけどね。さすがに、今は俺もこの人も譲りたくなかったから」


 苦笑するユーリさんに、ミハエル殿下が口を尖らせた。


「そういや、ユーリも僕のこと『パパ』って呼んでくれたことないよね。遠慮しないでいいんだよ?」

「……さて、ルルちゃん。気持ちは落ち着いたかな?」


 ユーリさんの完全どスルーに、ミハエル殿下が不満を喚いているのはさておいて。

 ユーリさんは躊躇うことなくベッドのわたしの隣に腰かけると、そのままわたしを膝の上に載せてくる。わたしの膝の上にはコアラがいるから、なんかの三兄弟スタイルだ。


「あの両親、今もルルちゃんとの面会を求めているんだけど……無理やり追い返すことはできないのか? 言いづらいけど、ろくでもないやつらなのは明白だろう」


 どうやら、わたしの失態はユーリさんの耳にも入っている様子。

 そうだよね、そうでもなきゃ、二人そろってわたしの顔を見に来ることなんてないものね。


 当たり前だけど、ユーリさんの膝の上に載せられても、まるで怖くない。

 むしろ落ち着くくらいだ。元騎士らしく肉厚な体をしているから、安定感も抜群だし。

 コアラも異論がないようで、ユーカリをもちゃもちゃし続けてる。


 ミハエル殿下も、そんなわたしたちの隣に座ってくる。


「ま、おそらく、ルルティアがコアラを手懐けている話をどこからか聞いて、手放すのが惜しくなったって算段だろうね。一族から魔女が出たら、数代は安定だから」

「そうなんですか?」


 わたしが問いかけると、殿下が「よいしょ」とわたしの脇を持ち上げる。

 着地地点は、ミハエル殿下の膝の上。


「名声はもちろん、うちの国、昔から偉業にはかなりの金銭で報いているんだよ。それに、カーライル殿下がルルティアにご執心という話も、こないだの派手な出迎えやパーティーで広まっている。未来の王太子妃の親……その地位を捨てたい貴族なんていないんじゃないかな」


 なるほど、わたしはかなりの金ッ゙ルらしい。


 そんなわたしをとられて、ムッとしているユーリさん。

 ミハエル殿下はどこか得意げだ。


「陛下が僕の娘にしておくよりも、侯爵家の娘にしておいたほうが結婚後にラクだからという理由で、彼らを迎えたらしいね」


 ミハエル殿下の膝の上も、悪くない。適度に細くて幼女の足としては跨ぎやすい。


 我ながら、二人にはだいぶ懐いたものだなぁと思っていると、殿下がわたしの顎の下を撫でる。


「それに陛下は、やはりルルティアも実の両親を恋しがるのではないか、とお考えのようだ。まあ、普通の四歳なら、そうだよね。普通の子どもならそうだと僕も思うよ」


 わたしは猫ではないのだが?

 そう抗議する意図も兼ねて、わたしはミハエル殿下を見上げた。


「やたら『普通』を連呼してますね?」

「安心して、普通の子どもは両親をちゅどーんしないから」


 くっそ、キラキラ笑顔が引け目のせいで、いつも以上にまぶしい。

 こうなりゃ、わたしはもう一人のパパに甘えるしかないじゃないか。


「ユーリパパぁ♡」

「こういうときだけ甘えてくるんじゃない」


 全然痛くないデコピンをしてくるけど、一瞬嬉しそうにしたのを、わたしは見逃していないぞ。それでもすぐに気を取り直す真面目さが、ユーリさんの良いところだ。


「ルルちゃんの好きにしていいんだぞ。俺らのそばが良ければ、大きくなるまでいくらでも面倒みてやるし、実家に帰りたいなら、もちろんそうしていい。俺らに気兼ねする必要はないからな」


 その二択を迫られて……わたしはゆっくりと深呼吸をした。

 コアラをぎゅっと抱きしめて、腹を括る。


「……わかりました。じゃあ、実家に帰ります」

「ルルちゃん……」

「ルルティア……」


 寂しそうなミハエル殿下と、心配そうなユーリさん。

 だけど、わたしの決意は固いのだ。


「それで堂々と、過去の遺恨をちゅどーんしてきます!」


 おいこら、パパたちよ。揃って頭を抱えるんじゃない。

 なんやかんやそっくりな二人に苦笑してから、わたしはコアラを向き合う形で抱き直す。


「悪いけど、付き合ってくれるかな、コアラ」

「…………ぐも」


 食事に夢中だったコアラが、一瞬だけわたしを見上げて返事をくれる。


 ずっとウジウジしていても、仕方ないしね。

 憶測だけするなんて、四歳児には難しいのだ。


 ぜーんぶスッキリしてから、今後の身の振りを考えましょう!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




コミック1巻発売!!

fv7kfse5cq3z980bkxt72bsl284h_5m4_rs_13w_9uuy.jpg
Amazon購入サイト




― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ