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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
4章 王宮の亡霊

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23話 幼女とおめかし


「あらあら、噂通りのかわいい子」

「一度、こうしてお風呂に入れてあげるのが夢だったの~」

「見て、このコアラくん。濡らしたらシナシナになってる」


 わたしたちは王宮のメイドさんに大人気だった。

 わたしも誰かにお風呂いれてもらうのなんて久々である。極楽だ……まぁ、メンタル大人なんだから、それが普通なんだけどさ。それでも長旅の疲れでエステ気分は最高である。


 コアラは……すっごく困った顔をしているけどね。

 濡れるとゆるい顔がとても情けない姿になるんだけど、それを他人に見られるのが恥ずかしいらしい。いつもより固くなっている姿がかわいいね。


「ぐもぅ」

「はいはい、終わったら今度こそユーカリ食べようね」

「ぐも」


 そんな優雅なアワアワタイムのあとには、ピカピカ美幼女ルルティアができあがりました。ドレスも借りて、まさに絵本の中のお姫さま。


 だけど個人的には、モッフモフのコアラのほうがポイント高いけどね。あ~モッフモフ。わたしも学園では一生懸命に洗っていたけど、やはりプロの手は違う。蝶ネクタイも着けられちゃって、コアラはいつもよりも不愛想だけどね。


 そんな状態でのお茶会はたのしい。生クリームたくさんのふわふわケーキやミルクたっぷりのお茶も久々である。野宿は少なかったとはいえ、やはり旅は幼女の身体にきついものがあったのだ。このままおいしいご飯を食べて、フカフカのベッドで眠たいなー。なんか仕事があった気がするけど、今のわたしは四歳だもん。後回しでいいよねー。


 お世話してくれるメイドさんらの「きゃわいい~♡」という黄色い視線をスルーしつつ、わたしとコアラがそれぞれ目の前のケーキやユーカリの葉を堪能していたときだった。


「ほら、ルルちゃん。また口のまわりが汚れているよ」


 登場そうそうパパ発現してきた人物に、わたしは思わずフォークを落とす。


 えらいイケメンが登場したな。

 こげ茶の髪も整えられて、さらに育ちの良さが際立っていた。正装も姿勢の良さから上手に着こなし、まさにどこかの御曹司。


 ……ま、懐から取り出した白いハンカチで、まっさきにわたしの口を拭いてくるのは、まさしくユーリさんなんだけどね。


 わたしは拭き拭きされながらも口を動かす。


「ユーリたん、かっこいいでしゅ!」

「それはどうもありがとう。ルルちゃんもすごくかわいいよ。お姫様みたいだ」

「ありがとうございます」


 拭き拭きが終わって、今一度ユーリさんの全身を確認する。


 お姫様と言われたのなら、王子様と返したいところ。

 だけど、どうにもその言葉が出てこなかったのは……あれかな。ずっと肌が汚れていただけで気にしてなかったけど、元から肌の色がわたしたちと少し違うらしい。褐色とまでは言わないけれど……まさに懐かしい黄色人種といったところか。


「ユーリさんの肌の色……」

「……うん、ルルちゃんとは違うね。変かな?」

「いえ、むしろ落ち着きます」


 なんたって心は今もジャパニーズ。元からハリウッド俳優よりも、時代劇俳優に密かに憧れていたくらいである。よく友達から渋いと言われてたっけ……。


 そんな昔を懐かしみながらも、これからは前世無縁だったパーティーである。

 カーライル殿下が、わたしを歓迎するために用意してくれたんだって。


 今度はどんなドッキリが起こるんだろう……。モブ貴族たちが一斉に踊り出したりするのだろうか。


「よっと」


 そして、当たり前のようにユーリさんに抱っこされるわたしとコアラ。


「……え、なんで抱っこ?」

「だってエスコートするにも、身長差がありすぎるし」

「手を繋げばいいのでは!?」


 わたしの身長は、ユーリさんの腰に届くか届かないか程度である。そりゃあ、よくある男女が腕を借りて……みたいなポーズはできないだろう。


 だけど、抱っこ!? 

 人前で、お貴族様のパーティーで抱っこ!?


「子どものお披露目ではよくあることだよ?」


 そんなさも当然のように言われても、あなたは自称のパパでしょうが!?


 なんてジタバタしても、元騎士さんの束縛から逃げられるはずもなく。

 パーティー会場の扉が開かれると、思っていたよりは素朴な拍手に迎えられる。とはいっても、三十人くらいのお貴族様がいるけどね?


 ど真ん中にウエディングのようなビックサイズなケーキが聳え立っていた。なるほど、十歳児が四歳児を歓迎するに微笑ましいサービスである。


 その横でどや顔のカーライル殿下が待ち構える一方、わたしは周囲をキョロキョロ。


「御者さんはいないんですね」


 ここまで一緒に旅してきたのだ。最後はうっとうしかったが、パーティーで美味しい物を食べてもらいたかったし、なんやかんやお礼もお別れも告げていない。


 でも、あくまで御者さんが貴族のパーティーに参加するのもおかしな話だよなぁ……。


「いるよ?」


 その声に、わたしは振り返る。

 とってもにこやかなミハエル王弟殿下が、そこにはいた。


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― 新着の感想 ―
うん…気づいてないのはお嬢様だけ…… 嫉妬メラメラな御者の発言が楽しかったです
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