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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
4章 王宮の亡霊

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20話 幼女と象

 またユーリさんの手が伸びてくる。


「ほら、また口の横にソースがついているよ」


 四歳美少女のお口を拭き拭きする、生真面目そうな若いパパ。

 その光景は、どの宿や食堂でも生暖かく見守られていた。


「あたらしいおしぼりと、サービスの果実水です」


 店員さんからのサービスにも、この青年の教育は止まらない。


「ありがとうございます。ほら、ルルちゃんもお礼を言って」

「あ、ありがとうございましゅ……」

「はい、よくできました」


 多少噛んでしまうのは問題ないらしい。四歳児だからね。

 そんなことより、頭をナデナデするのやめてもらえませんかね?


 恥ずかしいのですが!


 このユーリさん『俺はルルちゃんのパパになる!』と宣言してから、とにかくパパ度がすごい。溺愛だけじゃない。ダメなときはダメという、もうお手本のような幼稚園児のパパの理想を体現してくれていた。十八歳のくせに。妙にしっくりくるほどのレベルで。


 本当の四歳なら嬉しいのかもしれないけど……いや、わたしも決してイケメンからのナデナデ自体は嫌ではないのだけど……人前は勘弁してもらませんかね? 


 と、わたしがモジモジ俯いていたときだった。


「うわー、人前で頭を撫でるとか恥ずかしくないんですかー?」


 隣の席から飛んでくる野次は、御者さんである。

 今までは外のお馬さんの傍で、軽食を食べていたんだけどね。最近は食堂の中にもついてくるようになった。まあ、けっこうな長旅でお疲れだろうし、それはまったく構わないんだけどさ。それこそ、テーブルも同じでいいのにと思っているくらいだし。


 なのに、なぜ険悪な雰囲気になる?


「四歳の娘の頭を撫でる行為のどこが恥ずかしいのですか?」

「いやいやー一般的にはそうかもしれませんが、娘さんは恥ずかしがっているようなのでー。パパと自称するわりには、娘さんの気持ちがわかっていないなーっと」

「この子は愛されることに慣れていないようなので、こうして身体に覚えさせているんです。部外者が口を出さないでください」

「部外者っ! そうですね、僕なんて御者はしょせん部外者ですねー。で、あなたはその子のなんなんですかぁー? ただの調査対象さん?」

「んなっ!?」


 だから、どうして急に御者さんにキャラが出てきたの!?

 しかも、こんな煽り属性なんていらないから!?


「コアラぁ、どうにかしてよ~」

「ぐもおおおおおおおお」


 当然、こういうときにコアラは寝ているわけで。

 ていうか、起きていても役に立たないな。こんな宿の食堂でぶっ飛ばしてもらうわけにはいかないし。


 わたしが「ぐぬぬ」している間にも、二人の口喧嘩は続く。

 だったら「ぐぬぬ」していても疲れるだけと察したわたしは割り切ることにした。


「てーいんさん、このかじつちゅいおいしいでしゅ♡」

「まあ、かわいい♡ 試作品のケーキもたべる?」

「たべましゅ!」


 ……別に、男たちが不毛な喧嘩をしていたところで、わたしとコアラに害はないし。これもまた四歳児の処世術である。




 そんな処世術で割り切れたのも、訳がある。

 この謎の道中の終わりが見えていたからだ。


 パルキア王都の王宮は、白亜の宮殿と緑の庭園のコントラストがまさに芸術といった光景だった。

 しかも、わたしたちの馬車が門を潜った途端に鳴り響く管楽器。青空に打ちあがる花火と紙吹雪。そしてのっしのっしと歩いてくる象が、わたしたちを出迎えてくれた。


「なんで象!?」


 象である。何度目を擦っても、あの灰色で鼻のながーい象である。

 コアラがいきなり登場したときもビックリだったけど、象もかなりのビックリだ。なんたってサイズが象。パオーンという鳴き声がまさに象。


 え、パルキア王国って、全体的にご都合主義な理想ヨーロッパって感じな国だったと思うんだけど……象って、インドやアフリカの動物じゃなかったっけ?


 他にも玉乗りする猿や、七色の鳥が周囲を彩っているけど……やっぱり象だな。象のインパクトには敵うまい。


「待っていたぞ、我がい、い……愛しのルルティア!」


 そんな先頭の象に乗っている照れた顔に、見覚えがある。

 金髪に将来有望な顔付きの十歳児は、カーライル=フォン=パルキア。


 四歳のわたしを浮気者呼ばわりして決闘まで申し込んできた結果、『にゃんこのうらみ!』と四歳児におしりビンタされた、わたしの婚約者である。


 そして、わたしはすぐさま気が付いた。

 カーライル殿下の肩に、元気そうな黒猫ちゃんが載っている。

 この一か月半で、無事に快復したようである。


 よかったよかった。

 そんな黒猫シェンナちゃんに「やっほー」と手を振ると、なぜかカーライル殿下の顔が真っ赤になる。


 どうしたのかな、象に乗ってドヤっていた自分に恥ずかしくなったのかな。

 ちょっと早めの中二病に気付けて何よりである。


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