閑話 カーライル殿下の事情③
◆
オレの名はカーライル=フォン=パルキア。パルキア王国の王太子である。
王太子たるもの、いついかなるときも動じてはいけない。
常に威厳のある風格で、臣下や民草を安心させなければならない。
帝王学の基礎として、オレは物心ついたときから常々言い聞かされてきた。
……でも、それがとっても難しい。
「ななな、なんだ、この手紙はああああああ!?」
「にゃーん?」
使い魔であるシャンナはだいぶ元気になり、最近はまたよくオレの肩に載るようになってきた。従魔医師の話では、そろそろ魔法を使っても大丈夫という診断が下りた。もう二、三日様子見てから、少しずつ訓練に付き合ってもらうつもりだ。
……と、シェンナのことは今はいいんだ。
問題は、オレが雇ったルルティアの護衛からの報告書である。
『ルルティアはたしかに浮気者だ。これはしっかりと教育をしなければ。王宮についたら、僕が一生籠の中に入れていても、問題ないよね?』
おそらく、この手紙はオレにルルティアが王宮に着くまでに籠を用意しておいてほしいということなのだろう。
籠の中ってなんだ?
どのくらいの籠なのだろうか?
ルルティアの籠だから……オレの身丈より少し小さいくらいのサイズで入るのだろうが、ずっと座りっぱなしも辛かろう。大きめを用意するに越したことはない。
というか、一生籠の中で生活する妻とか聞いたことないが?
結婚式のときも籠ごと行うのか!? そんな結婚式は見たことも聞いたこともない!
あの方がそんな滑稽なことを言いだすとは思えないから……きっと、これには何か別の意図が込められているのだろう。オレはそう結論付けた。
「ベンジャミン! この手紙はなんて書いてあるんだ!?」
「殿下は文字も読めなくなったのですか?」
「違う! 言葉の奥の意図が読み取れんだけだ!」
「拝見させていただきます」
オレがベンジャミンに報告書を渡すと、ベンジャミンは「ふむ」と頷いた。
「殿下は精神的に病気になってしまうほど、誰かを好きになったことがありますでしょうか?」
「病気になるほど……だと?」
よくわからないが、オレは大病をしたことがないから、おそらくないと思う。
ルルティアのことは好きだ。ミハエル叔父上のことも大好きだ。
だけど、まだまだ足りないと。
この報告書は、そうおっしゃりたいのだな!
オレは生唾を呑んで確認する。
「そんな状態になれば、この手紙の意図が読み取れるようになるのか!?」
「さようでございます」
「なるほど……これはただちに訓練しなければ……」
そう考えてみるも、パッと解決策も訓練内容も出てこない。
だけど、とりあえずオレはルルティアや叔父上に笑っていてもらいたい。
だから、楽しいことをしてみればいいのだろうか?
「ひとまずオレの愛の大きさがルルティアに伝わるように歓迎してみよう」
報告書によれば、ルルティアはもうすぐ王宮に着くのだという。
さっそくパレードの手配をしなければ!
「にゃおー?」
使い魔のシャンナが不思議そうな声で鳴く。
そうか、シェンナも象は見たことないもんな。他にも七色に輝く鳥や踊る猿も見せてやろう。
きっとシャンナもルルティアも喜んでくれるに違いない!
「シェンナも楽しみにしておけ!」
オレがシェンナを撫でると、シャンナは嬉しそうに鳴く。
ついでにベンジャミンがオレに隠すようにぷるぷると笑いを堪えている。
……まぁ、ベンジャミンはそういうやつだ。笑っている暇があるなら、仕事を押し付けるに限る。
「それではベンジャミン! 象の手配を!」
これにて3章はおしまいです!
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