18話 コアラとデート
子どもの頃、大好きだったアニメがある。
転生美少女魔法使いが、ドラゴンやモンスターを魔法で華麗にやっつけていたのだ。
モンスターだけではない。人々から奪ったお宝を集めて悦に浸っている盗賊たち。彼らに『正義はここにあり!』と高いところから容赦なく言い放ち、魔法でちゅどーん!!
このファンタジー世界、正直なところ、前世よりも治安が悪い。
そして、法整備もけっこう甘い。
しかも、わたしは何をしたって許される幼女である!
「コアラ、いけえええええっ!」
「ぐもおおおおおおおおお!」
コアラが吠えると、盗賊たちがちゅどーんと夜空へ飛んでいった。
野営地近くの山間である。四歳の足で三十分もせずに、たしかにユーリさんの話のとおり、小規模ながらも盗賊さんの根城を発見した。
「なんで、いきなり!?」
「夜襲だ! 噂の新手勢力か!?」
突然のわたしたちの攻撃に、慌てふためく盗賊さんたち。
ほう、噂の新勢力なんてのもあるのか。覚えておこう。
四歳児メモリーに保存しておきながら、わたしは再びコアラにお願いする。
「よしコアラ、もう一発!」
「ぐもおおおおおおおお!」
ちなみに奇襲である。本当は「なんだかんだと聞かれたら」みたいに口上を述べてからちゅどーんしたかったんだけどね。念には念を。ちょっとビビりな元アラサーメンタル。万が一があると怖いので、いきなりちゅどーんにしておきました。まともな口上考えてなかったし。
この調子なら、今度は口上を述べてからでも大丈夫そうだ……と安心したときには、盗賊のみなさんは伸びていました。
倒れる盗賊さんは八人。吹き飛んでいった人もいれたら、十五人くらいだったのかな。
全員ほどよくこんがりしながらも、ちゃんと息があるところがありがたいファンタジー補正。コアラがそのあたりは調節してくれているのかもしれないね。
「ありがと、コアラ」
「ぐも」
なんやかんやコアラもノリノリだった気がする。
普段なかなか魔法を使えないから、コアラなりにストレスたまっていたりしているのかな?
なら、お互いの発散に、盗賊退治は取り入れた方が良さそうだね。
悪者討伐は世界の平和にも繋がるし、一石二鳥!
というわけで、憧れのスッキリのあとには、お楽しみまでついている。
そう――お宝回収だ!
金銀財宝、宝石いっぱい!
全部の指に豪華な指輪を嵌めて、金の山で滑り台!
ちょうどお誂え向きの洞穴を覗いてみれば、まんまるした革袋が並んでいるじゃないですか。
「ふふふ、隠し場所は工夫しなければだめですよ、奥さん」
「ぐもぅ?」
深夜のテンションで変なことを口走ってみたら、コアラから不審者を見る様な目で見られてしまった。……ごめんって。ずっと四歳しているとさ、わたしにもなんやかんやストレスあるんよ。たまには一人で酒を飲みながらテレビに口悪くツッコみたいなーとか、アカペラ大合唱したいなーとかさ。
ともあれ、わたしはワクワクしながら革袋を開く。
そこにはキラキラ眩しい……と、期待したものはなかった。
フライパンやお鍋などの鉄製品とか、黄ばんだ紙の本だとか、泡立ちの悪そうな石鹸だとか。金銀もあるにはあるけど、滑れる山を作るには程遠い。全部集めてみれば数か月暮らしていけそうなくらいはあるけど、たまに実家で執事さんが帳簿をつけていたときに数えていた小口現金のほうがたくさんある。十五人で暮らしたら、何週間食べて行けるだろうか。
「……もしかしてわたし、なにか勘違いしていたのかな」
「ぐも?」
「よくも……おれたちの生活費を……!?」
雄々しい声に振り向けば、目の前に迫る切れ味の悪そうな大きな斧。
四歳児でなくてもわかる。
わたしは今、自業自得で詰んだのだと。
「ぐもっ!?」
とっさにできることは、コアラを抱き込んで丸くなることだけ。
この一撃の盾になれたら、コアラは逃げられるよね?
なんなら、わたしごと敵を吹き飛ばすことだってできるはず。
「ぐも! ぐもももも、ぐも!」
わたしの腕の中で、コアラが暴れる。
こんなところまで連れてきたのは、わたしだ。
なにがなんでも、コアラだけはわたしが守らなくちゃっ!
「ぐもーーーーーーーっ!」




