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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
1章 コアラとの出会い

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2話 コアラの実力


 何度も確認するが、コアラとは、日本の動物園で人気者のあいつである。

 ずっと木にくっついている、耳と鼻が大きなゆるい癒やし系動物。

 主な出身地はオーストラリア。主食はユーカリ。

 かわいいけれど、日本では個人が飼育することはできなかった。絶滅危惧種だからね。


 あと、コアラには他にも大きな特徴がある。

 一日の大半を寝て過ごすのだ。


「いい加減起きんかーいっ!」

「ぐも"おおおおおおおお」


 起きねえ! こいつ、前世のコアラに忠実で、まじの一日二十時間寝てやがる!

 揺すっても、叩いても起きない。耳元で叫んでも起きない。何のための大きな耳だ? しかもファンタジー調整で軽いとはいえ、わたしの左腕から本当に離れないので邪魔である。


「ねぇ、とっくに他の使い魔くんは起きてるよ? 結構前にコッケコッコー聞こえてたよね?」

「ぐも"おおおおおおおおおおおお」


 しかもイビキがうるせええええ!

 前世十連勤したわたしでも、そこまでは寝汚くなかったぞ!?


 ちなみに、主食のユーカリの葉は毒性があり、その毒を消化するために長い間寝ているというのが動画で学んだ豆知識。しかもユーカリ自体に栄養は少ないから、その限りある栄養による活動時間でもあるらしい。


 ……いや、もっと食べましょ?

 好き嫌いはいけないとお母さんに教わっていてほしかった。コアラのお母さんも同じ食生活間違いなしだけど。


 ちなみにこの世界の魔法は、使い魔を介さないと魔法が使えないらしい。

 他の魔法ファンタジーの言葉を借りるなら、精霊魔法みたいなものである。わたしの魔力を糧として、使い魔くんがわたしのイメージ通りに魔法を発現してくれるのだ。


 つまり、このコアラが起きてくれないと、いくら私に魔力があっても魔法が使えない!


「ルルティア嬢……これは、初級魔法なのですが……」

「すみません……使い魔が、本当に起きてくれなくて……」

「ぐも"おおおおおおおおおおお!」


 十歳前後のクラスメイトがバンバン小石を飛ばしている中、四歳のわたしはペコペコ平謝りを繰りだすしかなかった。相手は召喚師の儀でもお世話になった、あのお兄さんである。本来の先生が長期休暇をとってしまったため、急遽新入生の世話をしてくれることになったんだって。フードを目深にかぶっているから、顔は見えないんだけどね。


「それじゃあ、ちょっと罰として……」


 先生が懐から猫じゃらしを取り出した。な、なにをする気……?

 そんなとき、助け舟を出してくれたのが婚約者のカーライル殿下だった。


「先生、そのくらいにしてあげてください」

「カーライル……殿下……」

「先生の時間は有限です。使い魔の使役もままならない幼子の相手ではなく、もっと有能な生徒に時間を割くべきでは?」

「ああああ、待ってカーライル、殿下! 僕はコアラをただコショコショしてみたくて~~!!」


 教師といえど、王族の王太子殿下より立場は下。

 ねこじゃらしを片手に持った先生はコアラに興味津々らしいけど、殿下に腕を引かれてしまえば、逆らうことができないらしい。


 ともあれ、わたしの気分は悪いけど……殿下の言動は、謝罪祭りから救ってくれたと言えるかもしれない。だけど、戸惑う先生をよそに、殿下のわたしを見る目は冷たかったから、ポジティブ解釈にも無理があるかもしれないけどね。


 先生から解放されたわたしは、グラウンドの隅で頭を抱える。

 

 詰んだ……本当に詰んだ……。

 まじでこのコアラ、魔法実践の授業があるときに限って寝ていやがる。


 先生は色々試したがったようだけど、餌で釣ろうが、叩こうが、耳を引っ張ろうが起きないのだ、こいつは。


「あーあ、わたしのコアラはかわいいなー」


 どんなにやけくそで自分に言い聞かせても。

 わたしは一ヶ月のあいだ、実技授業に一度も参加することができなかった。


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