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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
3章 乙女のあこがれ

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14話 幼女と18歳


「かわいい娘さんですね」

「いえ、妹です」

「えっ?」


 あらら、また不思議な顔されちゃった。

 今は元・燃える森(根源たるユーリさんとユーカリの精霊のユカリさんが離れたので、もう燃えないはず)から二つほど離れた宿場町である。ミハエル殿下から『王宮へ連れてきて』とのお手紙をもらってすぐに御者さんも来てくれたので、再び馬車旅。おかげで野宿することなく、宿場町ごとにベッドで寝かせてもらっている。


 だけど、そのたびにこれなのだ。


「いや……俺、こう見えてまだ十八でして。子どもはちょっと早いかと……」

「あらあら、そうですよね。お兄さんしっかり者に見えるからつい……ごめんなさいね」


 宿屋のおかみさんに、ときには食堂の店員さんに、こう間違えられること五回目。

 案内された部屋に荷物を置いてから、わたしは切り出す。


「もう親子でもいいのではないでしょうか?」

「諦めないでよ、ルルちゃん……俺、まだお父さんになる自信がないよ……」

「ぐもおおおおおおおお」


 トホホな論点がズレているのと、コアラがいつも通り寝ているのはさておいて。

 このユーリさんは十八歳。たしかにわたしが子どもだとしたら十四歳のときに孕ませたことになるので、前世の日本の基準だと、親から「ばかもーん」な事案である。このファンタジー世界のほうが婚期は早そうだけど、それでも十四歳は早すぎるらしい。


「俺、そんなに老けているのかなぁ……」

「ぐもおおおおおおおおおおお」

「はは……コアラくんにまで肯定されちゃった……」


 まあ、コアラはいつもどおりのいびきなわけだが。

 ユーリさんは心底お悩みのようだが、おかみさんたちの気持ちもわかる。


 このユーリさん、言われてみれば大人っぽいのだ。老け顔ともいう。こう……今まで真面目が顔に出ているというか。苦労してきたんだろうな、というのが顔に出ているというか。


 元アラサーからしたら、それでもやっぱり若いんだけどね。古風系イケメンには違いないし。キラキラ眩しいミハエル殿下みたいなタイプより、わたしはこっちのほうがタイプである。きっと十年後くらいに、ユーリさんの良さをわかってくれる人が増えるんじゃないかな?


 ……と、そんなフォローを四歳がするのも不自然なので、わたしは聞こえなかったふりをする。だって、こんな問題は些末なことだから。


 たとえば、わたしのルルティアという名前が貴族すぎて旅がしづらく、ユーリさんに『ルルちゃん』と呼んでもらうたびに耳がむず痒いことだとか。


 たとえば、行く先々でわたしの左腕のコアラを稀有な目で見られることだとか。

 たとえば、コアラのいびきがうるさくてユーリさんが寝不足だとか(わたしはもう慣れた)。


 わたしたちの道中は、問題ばかりなのだ。


「ところで……ルルちゃんって、ミハエル王弟殿下のなに?」

「助手ですね」

「四歳なのに?」

「わたし、天才なので」

「……そうだね。四歳でこんなに敬語がきれいな時点で、普通の子どもじゃないよね」

「おそれいります」

「ぐもおおおおおおおお」


 それに、わたしの身元もなんだかんだ明かしていない。元侯爵令嬢で、現在王弟殿下の娘になってます、なんて安易に話して、過剰な気遣いされたら面倒だしね。


 まあ、ただの兵士ではなく騎士って、ある程度身分のある人からの推薦がないとなれないものらしいから、ユーリさん自身もどこかの貴族だった可能性もあるのだけど。特に話してこないことに、わざわざ触れないのはお互い様だ。ま、こんなこともこれから起きることに比べれば、些末な問題。


「とりあえず、今日は寝ようか」

「そうですね」

「ぐもおおおおおおおお」


 そして、わたしたちはとっても暗い気持ちで床につく。

 そう……一番の問題は、これから起きるのだから。


「ぐもおおおおおおおおおお」


 コアラのいびき声に紛れて、りんりんとした鈴の音が聞こえた気がする。




 翌朝、ハラハラと落ちてくる何かに、わたしは目を開ける。


 珍しく軽い左手で拾ってみると、それは木片のようだ。屋根の一部かな。今日も怪我せずに済んだのは、運がいいのか、それとも実はコアラの加護でもついているのか。


 今朝もユーリさんのほうが早く目覚めて、呆然と空を眺めている。


「おはようございます、ユーリさん」

「あ……うん、おはよう、ルルちゃん」


 今日も目覚めたら、ユーカリの木が爆誕してました。


 そして、珍しくわたしの左腕が軽い理由はすぐに目の前。コアラがユーカリの木に登って、もしゃもしゃとお食事中だからである。


 ちなみにサラッとスルーしてましたが、ユーカリの精霊ユカリさんの姿と声は、森を出たらわたしには聞こえなくなりました。なんかまわりにユーカリの木があるごとにユカリさんの力が増すんだけど、旅の最中は当然ユーカリの木がないので、わたしには見えないんだって。ユーリさんは常に見聞きできるらしいけどね。


「またこれ……弁償ですかね?」

「弁償しないわけにもいかないだろ……」


 まあ、ですよね。屋根を突き破って、ユーカリの木が爆誕してしまったからね。


 たとえわたしから姿が見えなくても、今日もユカリさんの恋心はハッスルしているらしい。元気そうで何よりである。


「コアラとケンカして、火事起こさないだけ今朝はマシでは?」

「あはは……慰めてくれてありがとうね……」


 とりあえず、今日もかわいいわたしのコアラに声をかける。


「コアラ、今日もおいしいご飯よかったねー」

「ぐも~」


 どうせコアラにゃ、わたしが遠い目をしていることなど気が付きまい。 




 そんなこんなで、わたしたちの旅の一番の問題点は、ところ構わずユーカリの木を爆誕させてしまうことなのだが……派生的に、困っていることがある。


 それをとうとう、ユーリさんは馬車に揺られている最中に暴露した。


「というわけで、あまり四歳の子どもにこういうことを話したくないのだけど……路銀がそろそろ尽きそうです」

「ですよね!?」


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